保育実習でパネルシアターを演じてみたいという保育学生さんもいるかもしれません。パネルシアターは、制作キットや手作りで簡単に準備することができ、題材の内容も自由にアレンジできるのが特徴です。今回は、パネルシアターの魅力や活躍する場面、簡単な作り方、演じるときのポイントを紹介します。
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■目次
保育におけるパネルシアターの魅力とは
パネルシアターとは、パネル布を被せた「パネル板」に、絵を施して切り取った「Pペーパー(不織布)」を貼ったり外したりして、物語を展開する人形劇のことです。
1973年にお寺の住職である古宇田 亮順(こうだ りょうじゅん)さんが創案したもので、長きにわたり全国の保育現場で親しまれています。
保育現場におけるパネルシアターには、以下のような魅力があるでしょう。
- 子どもたちに語りかけや問いかけをしたり、その場で内容を変えてみたりと、さまざまな楽しみ方ができる。
- 人形の作り方を工夫すれば手品のような演出もできるので、子どもたちも途中で飽きることなく楽しめる。
- 見せる子どもたちの発達段階に応じて展開や演出を変えられることで、身につけてほしい力を伸ばす手助けができる。
- 材料さえ集めれば簡単に人形を手作りすることができ、オリジナルのストーリーも考えられる。
このように、パネルシアターには子どもにとっても保育士さんにとっても多くの魅力があるようです。
手作りした人形は大切に保管すれば長持ちするため、学生のうちにたくさん作っておけば、保育実習だけでなく入職したあとも使い続けることができるかもしれませんね。
パネルシアターが活躍する保育の場面とねらい
では、パネルシアターは保育現場においてどのような場面で活躍するのでしょうか。
活躍する場面の例とねらいを見ていきましょう。
活躍する場面
ペープサートは園児の注目を集めたいとき、今までやっていたことと違うことをするとき(場面転換)に最適でしょう。
次の活動に移りたいけど、なかなか園児たちが注目してくれずまとまらないときやほかの保育士さんが遊びや製作の準備をしている間など、パネルシアターによって子どもたちを惹きつけることができそうです。
また、七夕やお正月などのイベントや園内行事で、季節にあった題材や物語を演じれば、より盛り上がりそうですね。
歯みがきや交通ルールなどにまつわるお話をしたい場合にも、それに沿った題材のパネルシアターを用意すると注目を集められるかもしれません。
パネルシアターのねらい
保育におけるパネルシアターのねらいとして、以下のようなことが挙げられるでしょう。
- 観察力や集中力、参加する積極性を養う。
- 簡単なストーリーを理解する。
- 空想力や想像力が広がる。
- 身の回りの日常生活に興味をもつ。
- 場面ごとの事物の名前や人物の行動へ興味をもつ。
- 言語化能力や表現力が広がる。
お話の途中で応答したり、歌ったり踊ったりすることで、自然と子どもたちの積極性や話す力を引き出すことができるでしょう。
また、変化に富んだ演出を見るなかで興味や関心が高まり、「次はどうなるのだろう」「こんなものが出てきたぞ!」と集中して場面を観察し、次の展開を想像する力が身につくかもしれません。
手作りパネルシアターの簡単な作り方
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保育学生さんの中には、実際にパネルシアターを手作りしてみたいと考える方もいるかもしれません。
題材に沿った型紙などが揃ったキットを使う方法もあるようですが、ここでは、最初から簡単に手作りできるパネルシアターの作り方を紹介します。
用意するもの
パネルシアターを手作りするときは、以下のようなものを用意するとよいでしょう。
- Pペーパー(不織布)
- ネル布(パネル布)
- ベニヤ板、段ボール、スチロール板など
- 鉛筆
- 油性フェルトペン
- はさみ
- 絵の具と筆または太めのカラーペン
Pペーパーとは、不織布の一種で、ネル布の起毛に引っかかることで絵人形が貼りつきます。
またネル布とは、コットンフランネルの略称で、綿織物を起毛した布生地のことです。
パジャマなどにも使われる一般的な布地なので、手芸店などで入手できるでしょう。
作り方
簡単なパネルシアターの作り方を、手順ごとにくわしく紹介します。
1.パネル(板)を用意する
用意したベニヤ板などにネル布を張ります。
布地を板に巻きつけてピンと張り、板の後ろをガムテープなどで貼ります。
片面ネルの場合には、起毛が外側になるように注意しましょう。
2.パネル人形の下書きをして枠線を書く
型紙にPペーパーを重ねるなどして鉛筆で下書きをしてから、油性フェルトペンでなぞります。
Pペーパーに書いた鉛筆の線を消すことは難しいので、慎重に書くことを意識しましょう。
3.色を塗る
下書きをしたら、絵の具などで色をつけていきます。
グラデーションをつけたい場合は乾いてから色鉛筆などで行うとやりやすいかもしれません。
着彩にはポスターカラーのみでなく、一般的な水彩絵具、色鉛筆、クレヨンでを使っても可能です。Pペーパーはにじみやすいので、隣接する部分が乾いてから塗るようにしましょう。
4.縁取りをする
絵の具が完全に乾いたら、太めの油性フェルトペンなどで縁取りを行います。
パネル人形をくっきり見せるには、アウトラインをくっきり太くかくのがポイントです。
下にペンの跡が付かないように、下敷きや新聞紙などを敷いておきましょう。
5.切り抜く
持ち手となる部分を残して、外側をはさみで切り抜いてできあがりです。
パネル人形を両面にしたい場合は2枚ずつ作り、接着剤で貼り合わせるとよいでしょう。
仕掛けの作り方
パネルシアターで人形が動いたり、人形やアイテムのポケットから何かが飛び出したりする「仕掛け」を施すと、子どもたちの気分をより盛り上げられるかもしれません。
ここでは、パネルシアターの仕掛けの作り方を簡単に解説します。
裏表貼り合わせ
裏表で違う絵をかいたPペーパー同士を貼り合わせ、反転させることで場面を素早く切りかえる仕掛けです。
たとえば魚が池に飛び込む、動物が振り返るなど、簡単でもアイデアはいろいろあるでしょう。
重ね貼り
大きなパネル人形の上に、小さなパネル人形を重ねて貼りたいときに使います。
Pペーパー同士はくっつかないため、小さな絵人形の裏にネル布を貼っておくことで、重ね貼りができるようにします。
切込み
パネル人形に切込みを入れれば、ポケットにものを入れる、人形の着せ替えをするなどの演出ができるようになります。
パネル人形の裏にネル地で袋を作ってポケット状にしておけば、切込みから何かを出し入れできるでしょう。
糸止め
手足を動くようにしたい場合は、胴体と手足の境目を糸で固定して糸止めしましょう。
多方向に動くため、走る・踊るなどの動きを演出したいときにぴったりです。
まずパネル人形の手足や頭と胴体など、動きを付けたい部分を別々に作っておきます。
糸を通し、玉止めして固定して、動くようにすればできあがりです。
細い糸だと切れることがあるため、2重にするなどの工夫をするとよいでしょう。
パネルシアターを演じるときのポイント
最後に、保育実習などでパネルシアターを演じるときのポイントを紹介します。
子どもの目線にあわせた設置をする
ステージは子どもの目線の高さに設置し、子どもが見やすいように作ります。
保育学生さんが人形を貼るためパネルの前に入ることもあるので、子どもたちには少し離れてもらうようにしましょう。
パネルはイーゼルなどを使って多少の傾斜をつけ、子どもが見やすい高さに調整しておくのが大切なポイントです。
人形の貼り方を意識する
保育学生さんは利き手がパネル側になるように袖口に立ちます。
人形を貼るときは立ち位置より遠い方から貼っていくことで、曲がっていないか確認しやすくなったり、洋服の袖などが引っかかって人形が落ちることも少なくなったりするでしょう。
子どもたちを惹きつける演出をする
演出方法も工夫することで、より子どもたちを惹きつけられるかもしれません。
簡単な演出のアイデアを紹介します。
引っ張り
人形に貼っておいた糸を引き出して動かす演出方法です。
糸のついた人形を貼るとき、そっとパネルボードの裏に糸を垂らしておき、後で引っ張れば、太陽が昇る演出などがより魅力的に見えるかもしれません。
ずらし貼り
何枚もの人形を重ねて持ち、パネルボードに広げていく手法です。
手のひらサイズの人形なら、何もないところから次々とものが現れる手品のような演出ができるでしょう。
パネルシアターを簡単に手作りして、保育園で演じてみよう
今回は、保育におけるパネルシアターの魅力や活躍する場面、手作りするときの簡単な作り方、演じるときのポイントを紹介しました。
パネルシアターは、子どもの想像力や集中力を引き出すことのできる人形劇です。
人形は、制作キットを利用したり、手作りしたりすることで簡単に準備できるでしょう。
袋張りや裏打ちなどの仕掛けを作っておくと、より子どもたちが楽しめるかもしれません。簡単な作り方を参考にしながら保育学生さんオリジナルのお話や物語のパネルシアターを手作りするなどして、保育実習や入職後に子どもたちの前で演じてみてくださいね。