就活や入職後などに備えて、正しい敬語の使い方を身につけておきたい保育学生さんもいるでしょう。尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い分けや、ビジネスシーンで役立つ言い回しなどを押さえておきたいですよね。今回は、よく使われる正しい表現を一覧にまとめ、間違えやすい敬語の使い方について問題形式で紹介します。
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正しい敬語の使い方を押さえよう
敬語とは、聞き手への敬意を示すための言葉であり、用いることで相手の立場を尊重する姿勢を伝えることができます。
正しく使えれば、お互いのコミュニケーションを円滑にして、人間関係を築きやすくすることにもつながるかもしれません。
就職活動では、応募先の園の担当者と接する機会がたくさんあります。面接の場だけでなく、メールや電話でのやり取りなど、あらゆる場面できちんとした言葉遣いが求められるでしょう。
また保育園に入職した後は、先輩保育士さんや保護者など、幅広い年代の人と関わる機会が増えるため、今のうちから正しい敬語の使い方や基本的なポイントを知っておくとよいですね。
まずは、敬語の種類について見ていきましょう。
敬語の種類「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」とは?
敬語には大きく分けて尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があります。
動作主が誰なのか、また場面によって使い分ける必要があるため、しっかりと違いを把握しておきましょう。
尊敬語
意味
尊敬語は、相手の行為に対して敬意を表す際に使用します。
保育現場では、先輩保育士さんや保護者に対して使うことが多いかもしれません。
使い方の例
使い方には2種類あり、一つ目が以下のように言いまわしが特定の表現に変わるものです。
- 食べる→召し上がる
- 言う→おっしゃる
もう一つは、前後に「お(ご)~になる」「される」をつけて表現する使い方です。
- 聞く→お聞きになる
- 読む→お読みになる
謙譲語
意味
謙譲語は、自分や自分の身内・組織の行為をへりくだった言い方で相手への敬意を表す言葉です。
使い方の例
謙譲語にも2つの使い方があり、一つ目が以下のように言い回しが特定の表現に変化するものです。
- 見る→拝見する
- 会う→お目にかかる
もう一つは、前後に「お(ご)~する」「お(ご)~申し上げる」をつけ足す言い回しです。
- 待つ→お待ちする/お待ち申し上げる
- 相談する→ご相談する
丁寧語
意味
丁寧語は、丁寧な表現をすることで聞き手に対して敬意を表す言葉です。
行為をする動作主や聞き手などを問わず使うことができます。
使い方の例
一般的に語尾に「です」「ます」「ございます」をつけて、丁寧な表現にします。
- する→します
- 帰る→帰ります
丁寧語は日常会話でもよく使われるため、覚えやすいかもしれません。
一方で、尊敬語と謙譲語は家族や友人との会話では使われることが少ないでしょう。普段から使い慣れていないからこそ、使い分けを把握しておくとよいですね。
よく使われる敬語表現一覧
ここでは、就活中や保育士として働き始めてからも役立つ、よく使われる敬語表現を一覧にしてまとめました。
敬語の使い方や言い回しに悩んだときは、マニュアルのように参考にしながら活用してみてくださいね。
【Q&A】間違えやすい敬語の使い方
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就活中は、話し言葉を使っていないかといったところを重点的にチェックされるようです。
そこで、ここでは〇✕問題の形式で、学生さんによくある間違った敬語表現を紹介します。問題にチャレンジして、自身が正しい敬語の使い方を理解できているか確認してみましょう。
二重敬語について
Q1.「〇〇さんがおっしゃられたように」
答え:✕
「言う」の謙譲語「おっしゃる」に「られる」がついた表現です。
これは、尊敬語が二つ重なる二重敬語といって、正しい使い方ではないため、「〇〇さんがおっしゃったように」という表現を使用するとよいでしょう。
Q2.「〇〇先生は、先ほどお帰りになられました」
答え:✕
尊敬語である「お~になる」に「られる」がついた表現です。不自然に感じない方もいるかもしれませんが、これも二重敬語であり間違った使い方であるため、「〇〇先生は、先ほどお帰りになりました」などと使うとよいですね。
「お」と「ご」の使い分けについて
Q3.「ご連絡お待ちしております」
答え:〇
接頭語に「ご」をつけて丁寧な言い回しにする表現です。
基本的に、和語には「お」漢語には「ご」をつけるというルールがあるため、「ご連絡」は正しい言葉です。
「連絡いたします」「連絡お待ちしております」でも問題ないようですが、敬語を用いる際は「ご」をつけた方がより丁寧になるでしょう。
Q4.「〇〇さんにお電話を差し上げました」
答え:〇
先ほど紹介した接頭語のルールでは、和語には「お」漢語には「ご」がつくと説明しました。
しかし、例外として漢語であっても「お」がつく言葉があります。電話は漢語ですが、丁寧な表現にする場合は「お電話」となるため覚えておきましょう。
園長先生や主任保育士さんに対する言い回しについて
Q5.「お疲れ様です」
答え:〇
仕事の労をねぎらう際、先輩保育士さんや主任保育士さんなど目上の人に対しては「お疲れ様です」を用います。
間違われやすい表現として「ご苦労様です」がありますが、これは目上の人が目下の人に対して使う言葉とされているので、間違って使わないよう注意しましょう。
入職後に、園内の職員さんや外部の人とやり取りをするときは、「お疲れ様です」を使うとよいですね。
Q6.「なるほど」
答え:✕
「なるほど」は、同意を表す副詞や感嘆詞であり、正しい敬語表現ではありません。特に上司など目上の人に使うと失礼にあたってしまうため使用はNGです。
相手の言っていることに同意したり納得したりしたときは、「おっしゃる通りです」「確かに」「わかりました」といった言い回しを用いるようにしましょう。
尊敬語と謙譲語の使い分けについて
Q7.「〇〇さんのもとへお伺いします」
答え:〇
「伺う」は、自分の動作に対して述べる謙譲語であるため、正しい使い方です。
「お伺いいたします」という表現は間違って使われやすいですが、二重敬語であるため使わないように注意しましょう。
Q8.「今朝は朝食をいただきましたか」
答え:✕
「いただく」は自身の動作に対して用いる謙譲語であるため、間違った表現です。
この場合、相手の「食べる」という動作に対して敬意を払う必要があるため、尊敬語である「召し上がる」を用いましょう。
正しくは「今朝は朝食を召し上がりましたか」となります。
その他
Q9.「了解しました」
答え:✕
丁寧語ではあるものの謙譲語ではないため、上司や目上の人に使うと失礼になってしまいます。
入職後、先輩保育士さんから指示をもらったときなどは、「承知しました」と言うようにしましょう。
Q10.「すみませんでした」
答え:✕
一見丁寧に謝罪をしている表現のようですが、ビジネスシーンではふさわしくないとされています。
謝罪をする際は、「申し訳ありませんでした」「申し訳ございませんでした」といった言い回しを使いましょう。
Q11.「こちらが先ほどのマニュアルになります」
答え:✕
「〇〇になります」という表現はよく使われることが多いですが、正しい使い方ではありません。
「~になる」というのは本来変化するものに対して使われる言葉なので、状態が変化しないものについて述べるときは「です」「ございます」を語尾につけましょう。
正しい敬語に直すと、「こちらが先ほどのマニュアルでございます」となります。
正しい敬語の使い方を知って、就活に役立てよう
今回は、保育学生さんに向けて正しい敬語の使い方を問題形式で紹介しました。
敬語は、話の聞き手や話題に上った人に対して敬意を払う言葉で、お互いが気持ちよくコミュニケーションをするために大切な役割を果たしています。
保育士は園内の職員だけでなく保護者とも接する機会が多いので、不快な印象を与えないようきちんとした言葉遣いを知っておくことが大切です。
今回紹介した言い換え表現の一覧をマニュアルとして活用して、就活や入職後に向けて正しい敬語の使い方を身につけておきましょう。