自分に自信がない人の方が、保育士に向いている?!...新卒保育士さんへのアドバイス(2)

保育の仕事って、正直に言って簡単ではありません。
子供も保護者も、そして同僚も、周囲が全部人間相手の仕事で、「これが正解」っていうものがあるわけではないからね。
そんななかで、多くの人が「自分には保育の仕事は向かないのではないか?」という悩みにぶつかってしまいます。
実習などで、そういう壁にぶつかり、落ち込んだという学生さんも多いと思います。
僕もよくそんな相談を受けるのですが、その悩みや問いを持つ多くの人のお話を聴いてきてわかったことがあります。

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自分に自信のない人=自己評価が低い人が、実は保育者に向いている?!

意外なことに、そう悩んでいる人の仕事の悩みや、保育に対する思いを丁寧に聴いていくと、もうほとんどと言っていいくらい、むしろその人たちは子供のことや保育のことをよく考えて、真剣に仕事に向き合っている人たちなのです。
逆に、その人を責めている職場の同僚などの方が、子供に寄り添えていない保育をしていることを感じます。

自分の保育に自信満々になりすぎると、子供ではなく「自分のため」の保育になってしまう

僕自身の経験としても、自分の保育に自信満々な人の方が、自己評価のための保育をしてしまっていたり、客観的な視点に欠ける自分本位の保育になっているのをひんぱんに見かけてきました。
こういったところを踏まえて考えてみると、一般的には自分の仕事に対しては自信を持って望むことは大切とされていますが、保育はちょっと特殊なところがあるなと思います。

自信がないのは、「自分の状態に疑問を持てる姿勢」があること

「自分の仕事はこれでいいのかな・・・・・・」と感じているような、自分への自信のなさや、自己評価の低さというものが、実は有用な資質になっているのではないかと思えるのです。
もちろん自分の仕事に自信を持てるのは、大切ではあるのですけどね。
でも、保育施設というのが狭い社会の職場でもありますし、保育の仕事というのが的確な判断基準が必ずしもあるわけでなく、ともするとその保育者だけの主観的、独善的な視点におちいりやすいところがあります。
だからこそ、自分の状態に疑問を持てる姿勢のある人には、保育者として必要な、ある種の資質があると考えられます。

自分に自信がないからこそ、同じ気持ちの子供にも寄り添える

実際に、そういった自分にあまり自信が持てなかったり、自己表現・自己アピールが苦手だったりする人は、同様の気質を持つ子供に寄り添うことがしやすいです。
ちょっと自分に自信がなかったり、引っ込み思案だったりする子供たちは、なかなか大人の目にとまらないので、通常の保育では適切なケアを欠いていることが少なくありません。
そんなとき、たとえ保育は上手でなかったとしても、そういう自分に寄り添ってくれる保育者がいたということは、その子たちの大きな力になります。

きっとあなたを必要とする子供がいる

ですから、自分は保育士に向かないのではないかという疑問にぶつかり、悩んでしまったときは、クラス運営とか、行事の出来・不出来とかそういうことは置いといて、子供と自分の関係だけを見直して見て下さい。
そのときに、どこか少しでも「子供から信頼されているところがある」と思えるのならば、きっとあなたを必要とする子供がいるということでしょう。
子供にはいろんな子がいます。
だから、保育者にもいろんな人がいていいのです。

保育者の一番大切な資質は「おおらかさ」

保育者の適正としてなにかひとつだけあげて下さいと言われたら、僕はまっさきに「おおらかさ」と答えます。

いろんな子供がいて「当たり前」だと受け入れよう

子供はそもそもが未熟な存在としてあります。
たくさんの失敗もしますし、思い通りに動いてくれないこともあります。
一度伝えたとしても、できないこともたくさんあります。
対応のしにくい個性を持っている子もいますし、さまざまな家庭背景も持っています。
大人が思い描くような理想的な子供ばかりではありません。
それが当たり前なのです。
もし、理想的な子供ばかりだとしたら、そもそも保育士の専門性などいりません。そういった子であれば、誰がみたって保育できます。
だからこそ、許容しがたい子、受容しがたい子を受け入れられてこそ、本当の保育者と言えるのです。
「この子は、正しい姿になっていないから正しい姿にしなければならない」と型にはめてしまうようなとらえ方をする人よりも、「ああ、この子はこういった姿をもっているのだな~」とおおらかに受け止められることが保育者の適正としてもっとも重要なことだと僕は考えています。
「正しい子」を作り出さねばならないという意識は、それがたとえ職業的な善意であったとしても、当のその子は「自分は大人から受け入れられていないんだな」と否定的な受け取り方をしてしまうのです。

じっくり待ち、自然にその子本来の良さが出てくるのを待とう

だから、保育者は、粘土細工をこね回すようにして、子供を正しい姿にしなくてもいいのです。
一緒に生活したり、遊んだりするなかでつちかわれる信頼関係をベースに、自然と子供本来の良さが出てくるのを、じっくりと待てることがもっとも子供を伸ばせる関わりになるのではないかと思います。

プロフィール

保育士おとーちゃん(須賀義一)
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2009年、保育士としての経験などを元にブログ『保育士おとーちゃんの子育て日記』を開設。
現代の子育てに合った具体的な関わり方を伝えつつ、多くの人からの子育ての悩み相談にも応える。
著書に『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』『保育士おとーちゃんの「心がラクになる子育て」』(ともにPHP研究所)など。
東京都江戸川区出身、墨田区在住。一男一女の父親。

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