保育士資格を取得するためには、筆記試験だけでなく実技試験にも合格しなくてはいけません。実技試験は音楽、造形、言語表現と3つありますが、今回は「言語表現」についてくわしく説明します。保育士試験の言語表現で行われる内容や過去の課題から予想した問題例、また合格につながる練習方法のポイントも紹介します。
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■目次
保育士試験における言語表現とは
保育学生さんの中には、「言語表現で何をしていいか分からない」「言語表現はどんな練習をすればいいの?」と悩む方もいるのではないでしょうか。
そもそも保育士資格を取得するための試験では、筆記試験に合格すると音楽表現に関する技術、造形表現に関する技術、そして言語表現に関する技術の3つの中から2つを選んで受験します。
言語表現に関する技術では、あらかじめ物語と子どもの年齢、人数が発表され、約3分間の中でストーリーをすべて話し終えなくてはなりません。その際、音や絵を使わずに保育学生さんの言葉と身振りや手振りを活かして、目の前に子どもたちがいる想定で物語を伝えることになります。
言語表現は子どもたちに向かって話す技術を見られるため、声のトーンや話し方、子どもに物語を想像されるための工夫が大切といえるでしょう。
今回は、保育士試験の実技の一つである言語表現に関する技術において、合格につながる練習方法や言語表現の過去の問題例、実技課題で意識すべきポイントを紹介します。
まずは、保育士試験の言語表現で意識するポイントから見ていきましょう。
保育士試験の言語表現で意識するポイント
保育士試験の言語表現で意識するポイントについて具体的に説明します。
子どもの人数を意識する
言語表現の問題では子どもの人数が明記されています。
過去の問題では、子どもの人数が15人、20人と異なることがあります。一見すると言語表現の実技には関係ないと思うかもしれませんが、言語表現ではその場にいる子どもたち全員に聞こえるように話すことが大切になってきます。
想定された人数が多いと子どもの数だけ横に広がっていたり、縦に長くなったりすることが考えられるでしょう。人数が多いときは声を少し大きくしたり、目線を配るときも左右をきちんと見たりするなど、子どもがいる空間を意識することが重要になるようです。
子どもの年齢を考える
言語表現の問題では子どもの年齢を意識することも重要になります。
保育士試験の言語表現は3歳児の子どもたちに対して、1つの物語を3分間で話すことになります。3歳児の子どもたちに向かって話すため、3歳児でも分かる言葉遣いをする必要があります。
物語の題材となる絵本では、時折子どもには難しい表現が使用されていることがあります。言語表現の実技で話すときは分かりやすい言葉に直して話すといいでしょう。
身振りや手振りを活用する
言語表現に関する技術では、2019年度より適切な身振り、手振りを交えて話すという一文が試験概要に追加されました。
以前の言語表現の実技では、身振りや手振りについて特に明言されていなかったいため、行うと失格になるのではないかと言われていたこともあったようです。しかし、2019年から「適切な身振り・手振りを加えてください」という一文が追加になり、話す際に取り入れても問題ないようになりました。
過剰に身振りや手振りでは問題があるかもしれませんが、物語を盛り上げるために適度に加えることで、子どもたちの興味を惹くことができそうです。
このように、言語表現は物語をただ暗記して話すのではなく、子どもたちに向かって話すことを想定しているため、子どもの人数や年齢、適切な身振り、手振りを活用して楽しんで聞いてもらえるようにしましょう。
保育士試験の言語表現に向けた練習方法
実技試験の言語表現では、 3歳児クラスの子どもたちに「3分間のお話」をすることを想定して行います。そのため、合格するためには子どもに伝わるように話したり、時間を意識したりすることが大切になるでしょう。
言語表現の実技試験で合格するための練習方法についてくわしく説明します。
子どもたちを惹きつける話し方を意識した練習
言語表現では、3歳児の子どもたちに向かって話す想定で行われるため、子どもに伝わる話し方や最後まで集中して話を聞いてもらうことが大切になります。
自分の話を飽きずに聞いてもらうためには、
- 話すスピードを調整する
- 話すときの声の大きさ
- 話の登場人物になりきる
などが挙げられるでしょう。
子どもたちを惹きつける話し方についてそれぞれ見ていきましょう。
話すときのスピードを調整する
言語表現で子どもたちに向けて話すときは、話すスピードが重要になります。
話すスピードが早いと3歳児の子どもたちは物語を理解できず、飽きてしまうことも考えられるため、物語に入りやすいような早さで話す練習が必要になります。かといって、話すスピードをすべて一定にしてしまうと、単調になってしまい子どもたちが聞いている途中で飽きてしまうかもしれません。
そのため、物語の内容に合わせて話すスピードを調整するといいでしょう。
たとえば、うさぎとかめを話す場合は競争が始まる前はややゆっくり読み、うさぎとかめがよーいどん!と走り出したら読むテンポを少し早くするなど、内容によって早さを変えることでより子どもたちを物語の世界に引き込むことができそうですね。
話すときの声の大きさ
言語表現で子どもたちに向けて話すときは、話す声の大きさも重要なポイントといえます。
話す声が小さいと子どもたちに聞こえにくく、かといって大きすぎるのも聞こえづらくなり、喉を傷めるため避けたほうがいいようです。言語表現で話すときは、普段よりもやや大きい声で話すのを心がけるといいでしょう。
ただし、話の内容によってはわざと内緒話のように声をひそめることで、子どもたちは気になって身を乗り出して聞こうとするかもしれません。子どもたちが集中して聞いてもらう、ということも言語表現では求められますので、自分の話に興味を持ってもらうために声の大きさを調整する練習も大切です。
登場人物になりきる
言語表現で子どもたちに向けて話すときは、物語の登場人物になりきることもポイントといえでしょう。
役者のように上手に演じるのではなく、子どもたちを飽きさせないために、登場人物になりきって表情や声の調子を変えることで集中力が続くように工夫します。ずっと同じ声のトーンで話していると、登場人物なのか地の文なのかも分かりにくいですし、子どもたちも聞くことに飽きてしまうかもしれません。
登場人物の感情に合わせて読んでいるときに表情を変えたり、登場人物の年齢や性格、人柄を自分なりにイメージしながら声色を変えたりすると、子どもたちも楽しんで聞いてくれそうですね。
制限時間を意識した練習
保育士試験の言語表現に関する技術では、3分間に話をまとめて話す技術が求められます。
そのため、3分間で物語を意識した練習が必要です。
話す内容が決まったらタイマーなどで時間を計り、体感で3分間話せるようにしましょう。
言語表現の実技では時間を過ぎてしまったり、余ってしまったりしても保育士試験に合格した方はいるようですが、あくまで物語を3分間にまとめて話すことが求められますので、3分を過ぎたけれど話が終わっていないという状態だと合格は難しくなるかもしれません。
自分が話しやすい台本を作る
言語表現では時間内に終わらせるために、自分が話しやすいような台本を用意するといいでしょう。
一般社団法人 全国保育士養成協議会「公式ホームページ」によると、保育士試験の言語表現では物語が載っている絵本や道具の使用は禁止されており、使用すると失格になるばかりか、3年以内は保育士試験が受けられなくなるようです。そのため、物語をすべて暗記する練習が必要になります。
しかし、物語の内容によってはストーリーをすべて話していると、制限時間を過ぎてしまうことがあるかもしれません。3分におさまらないときは、ストーリーの大筋が変わってしまわなければ、話の内容を多少カットして話しても問題ないようです。
さらに、登場人物と多いと演じ分けるのが大変なため、登場人物が少ない話を選ぶと読み聞かせがしやすくなるでしょう。
このように、言語表現に合格するための練習方法として、子どもたちを惹きつける話し方や制限時間内を意識する、自分が話しやすい台本を作ることが挙げられます。
子ども向けの話し方が分からない方や自分で話を作るのが苦手という方は、言語表現の本を参考にしたり、子どもたち向けの話し方の動画を見たりすると、練習のヒントになりそうですね。
保育士試験の言語表現に関する問題例
保育士試験では過去に行われた実技試験の課題や筆記試験の問題は、一般社団法人 全国保育士養成協議会「公式ホームページ」にて掲載されています。そちらの過去の試験問題を参考に、言語表現で目安となる問題例を見ていきましょう。
言語試験の例題1
3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択して、子どもが集中して聴けるように話してください。
「うさぎとかめ」
「おむすびころりん」
「ももたろう」
「3びきのやぎのがらがらどん」(ノルウェーの昔話)
- 子どもは15人程度が自分の前にいる想定。
- 一般的なあらすじを通し、3歳の子どもがお話の世界を楽しめるように、3分にまとめてください。
- お話の内容をイメージできるよう、適切な身振り・手振りを加えてください。
言語試験の例題2
3歳児クラスの子どもに「3分間のお話」をすることを想定し、下記の1~4のお話のうち一つを選択して、子どもが集中して聴けるように話してください。
「おむすびころりん」
「てぶくろ」(ウクライナ民話)
「3びきのこぶた」
「にんじん、ごぼう、だいこん」
- 子どもは20人程度が自分の前にいる想定。
- 一般的なあらすじを通し、3歳の子どもがお話の世界を楽しめるように、3分にまとめてください。
- お話の内容をイメージできるよう、適切な身振り・手振りを加えてください。
保育士試験の実技は試験官を前に行いますが、言語表現は大勢の子どもたちに向けて話すという設定で行います。子どもが楽しめるようにしっかりと目線を向けながら、適度な身振り、手振りを交えて話すといいでしょう。
練習方法や意識するポイントを理解して、保育士試験の言語表現で合格を目指そう
今回は、保育士試験の実技で行われる言語表現に関する技術について、合格につながる練習方法や問題の中で意識すべきポイント、過去の実技課題から問題例を紹介しました。
言語表現は3歳児の子どもたちの集団に話すことを想定して行うため、集中して話を聞いてもらえるように子どもたちに向けて話す態度や話す技術、言葉遣い、目線や身振り、手振りなども試験では見られているようです。
あらかじめ実技試験の内容は発表されていますので、子どもたちがいる空間を想像して惹きつけるような話し方や3分間で終われるように練習を重ね、保育士資格が取得できるように合格を目指しましょう。