憧れて目指した保育の仕事。しかしいざ働き始めると理想と現実の違いに悩みや不安を抱える一年目の保育士さんは少なくないようです。目標に対してうまくいかないときなど、どのような対策をすれば乗り越えられるのでしょうか。今回は、元保育士がまとめる保育士一年目に抱えやすい悩みの例や対処法について紹介します。
metamorworks/shutterstock.com
保育士一年目が抱える悩みとは?
一年目の新人保育士さんは、慣れない仕事からさまざまな悩みを抱えることがあるようです。その悩みが解消されなければ、不安やつらさを感じることもあるでしょう。
大きくわけて一年目の場合、
- 子どもとの関わり方
- 職場の人間関係
- 保護者の対応
以上の3つについて悩みを抱えることが多いようです。
それぞれどういった悩みなのか、例を紹介します。
子どもとの関わり方
大学や専門学校で子どもの姿について学んでいても、実際の現場で子どもとの関わりになると戸惑ってしまうこともあるようです。
想定していなかったことが起こったり、子ども同士のケンカが頻繁に起ったりして、冷静に対処することや穏やかな感情で子どもに接することが難しく思えることもあるでしょう。また、子どもに伝えたいことをうまく伝えられないなどのジレンマを抱えることもあるかもしれません。
職場の人間関係
職場の人間関係も、保育士一年目の方にとっては多い悩みのようです。特に多いのが先輩保育士さんとの関係が挙げられます。たとえば、先輩保育士さんが自分にだけ冷たい気がする、先輩を見ると緊張してうまくコミュニケーションがとれないなどがあり、先輩保育士さんを意識するあまり仕事に支障が出てしまう場合もあるかもしれません。
保護者の対応
保育士さんの仕事の一つである保護者対応。保護者との関わりや関係作りは、子どもとの関わりとはまた違った難しさがあります。そのため保育士一年目の頃は特に、関わり方がわからないという悩みを抱えることも多いようです。
保育士一年目では、子どもたちに対してだけではなく職場の先輩や保護者に対しても悩みを抱えることがあるのですね。
このように一年目ならではの悩みがあるようですが、実際の現場ではどのような仕事をしているのでしょうか。
また、一年目の保育士さんが心がけるべきことについて見ていきましょう。
保育士一年目の仕事内容と心がけること
保育士一年目では、以下のような仕事を行うことでしょう。
- 先輩保育士の保育補助
- 子どもの身の回りの世話
- 子どもの成長や発達にあわせた環境設定
- 保護者の対応
- 週・月・年間の保育カリキュラム設定
- 連絡帳記入・お便り作成・成長の記録などの事務作業
- 行事の計画・実行
- 保育園内の清掃・環境整備
- 職員会議・外部研修などへの出席
これらの仕事は、初めてだと慣れないことも多いため難しく感じ、どのように対応すればよいのかわからないこともあるでしょう。
しかし保育士一年目ですべてを完璧にこなそうと思う必要はありません。
上記の仕事内容はもちろんですが、一年目の保育士さんには特に心がけてほしい大切な仕事について紹介します。
子どもをじっくり観察する
仕事をこなそうとするあまり、子どもとの関わりを後回しにしてしまうこともあります。一年目においては、まずは子どもと関わり、じっくりと様子を観察することを意識しましょう。
保育カリキュラムの設定やおもちゃの選定は、子どもと関わり発達段階を把握した上で行えることです。また保護者の対応や連絡帳の記入も、子どもの様子をしっかりと見ることで保護者の方にくわしく様子を伝えられますね。
わからないことは積極的に聞く
わからないことをそのままにしていると、いつになっても仕事が覚えられません。先輩保育士さんに仕事内容を聞いて覚えることも、保育士一年目の大切な仕事です。
積極的に質問し、教えてもらったことはメモを取っておくと、仕事も早く覚えられますし、真剣な姿勢が伝わるかもしれません。
保育士一年目では、これらのことを大切にした上で、ほかの仕事はやりながら少しずつ覚えていくようにしましょう。
次は、悩みの対処法について見ていきましょう。
保育士一年目の悩みの対処法
milatas/shutterstock.com
保育士一年目の悩みには、大きく分けて子どもとの関わり、職員との関係、保護者との関わりの3つがあるとお話しました。
これらをもとに元保育士のエピソードとあわせて対処法を紹介します。
子どもとの関わり方
まずは、子どもとの関わり方についての悩みの対処法について見ていきましょう。
子どもの目線になって関わる
子どもたちのことをしっかりと観察して、子どもの目線で関わることを心がけましょう。
保育士さんになりたての頃はどうしても、子どもにとって適切な関わり方や遊び方をしなければと思ってしまいがちです。
子ども目線で、楽しいと思える遊びを想像しながら関わってみることが大切です。子どもが好きな遊びを思い切り一緒に楽しみ、そして一緒に遊んで楽しかったと子どもが感じてくれたら、信頼関係の第一歩が築けるかもしれません。
先輩保育士に相談する
先輩保育士さんも子どもとの関わり方に悩みながら、保育士としての経験を積んできたことでしょう。だからこそ、後輩の悩みもよく理解することができます。
子どもとうまく関わることができないときには、「遊びの場面で」や「食事のときに」など具体的な場面を加えて先輩保育士さんに悩みを相談するとよいでしょう。そして受けたアドバイスをもとに、保育の仕方をまねして吸収することが大切になります。
筆者も保育士時代は、「先輩に相談できるのは一年目の特権」と考えて、じっくり観察しながらよいところをどんどんまねしていましたよ。
目標設定をして一つずつ乗り越える
急に全ての仕事と保育をこなすのは不可能です。初めはできなくて当たり前だと考えましょう。そして一つひとつ目標を立てて、一つずつできるようになっていけばよいのです。
たとえば、働き始めて1カ月は、子どもの名前と顔、保育の流れを覚えることから始めます。次の1カ月は子どもと一緒に楽しく遊ぶことを目標に、次の1カ月は先輩保育士のまねをしながら声かけを意識する、など一つひとつ自分の中で目標を立てて乗り越えていけば、当初できなかったこともいつの間にかクリアできているかもしれません。
初めから完璧にこなそうとすると、結局全てが中途半端になってしまいます。一つ目標がクリアできたら自分をしっかり褒めてあげてくださいね。それを習慣にして、仕事や保育ができるようになっていく楽しさが感じられると、少しずつ自信もついていくはずです。
職場の人間関係
次に職場の人間関係についての悩みの対処法を紹介します。
自分から話しかける
先輩に苦手意識を持ってしまい、話しかけづらいという方も多いかもしれません。しかし、そこはあえて自分から話しかけるように心がけてみましょう。
元気な挨拶はもちろんのこと、「細かなことでも先輩保育士に報告や連絡をする」「わからないことは自己判断をせずに相談をする」など報告・連絡・相談を丁寧に行うことが大切です。円滑に仕事が進むことはもちろんですが、コミュニケーションのきっかけにもなりますよ。
聞きたいことがあるときは、いきなり質問するのではなく、「今お時間よろしいですか?」といった一言を置いてから聞くようにしましょう。
子どもとの関わり方や保育内容など、先輩保育士さんの保育を見て「いいな」と感じた部分を話題に出してもよいですね。褒められてうれしくない人はいません。人間関係を築く第一歩として、相手のよい部分を見つけて伝えることを大切にしましょう。
注意を成長のヒントととらえる
先輩保育士さんが注意をするとき、感情的に怒ることもあるかもしれません。そのようなときは「この先輩は私に何を学んでほしくて怒っているのか」と先輩の意図を冷静に考えると、自分の成長のヒントが見えてくるでしょう。
先輩保育士さんが「なにを言ってもこの子にはわからないだろうな」と諦めていたら、その相手に怒ることもないはずです。保育の場面ではいつでも近くに先輩がいるとは限りません。先輩保育士さんが自分に期待してくれていると、前向きに捉えられるとよいですね。
ただし先輩保育士さんがあまりに非常識に怒っていたり、自分だけでは解決できないと感じたときには、主任や園長に相談するということを頭にいれておきましょう。
保護者の対応
最後に、保護者の対応についての悩みの対処法を紹介します。
まずは気持ちのよい挨拶から
関わり方がわからないときには、まずは笑顔で気持ちのよい挨拶することから始めることが大切です。初めての保育士さんと関わるときには、保護者の方も緊張しています。笑顔の挨拶は保護者の緊張を解き、親近感を持ってもらえる第一歩になるでしょう。
保護者の方も仕事で疲れて帰ってきたときに、保育士さんから「おかえりなさい」と笑顔で声を掛けてもらえるとうれしくなるものです。気持ちのよい挨拶で保護者の気持ちをつかみましょう。
積極的に保護者と接する
保護者の方に苦手意識を感じると、自分から話しかけづらくなってしまいます。しかし、そのようなときこそ積極的な会話を心がけましょう。子どものよいところや園での様子を具体的に伝えられるとよいですね。
保護者の方は園での子どもの様子を知りたがっていますし、わが子のよい面を褒められて嫌がる親はいないでしょう。そのためには、園での子どもの様子をよく見ておくことが大切です。子どもの様子をよく見て積極的に伝えてくれる保育士に対しては、保護者の方もよい印象を持ってくれるはずです。
また全ての保護者と偏りなく接することも意識しましょう。関係が築けている保護者の方とは話しやすくフランクになりがちですが、人によって接し方を変えていると、無意識に接し方に差が出てしまうかもしれません。保育士と保護者という距離感を保ちながら、よい関係づくりができるとよいですね。
保育という仕事の素晴らしさややりがい
milatas/shutterstock.com
ここまで紹介してきたように、保育士一年目は悩みを抱えやすく、なかなか仕事の楽しさを感じられないかもしれません。しかし、そのようなときこそ「保育士になりたい」と感じたきっかけの気持ちを大切にすることがポイントです。また保育の仕事のよいところを思い浮かべ、自分のモチベーションを上げる考え方をしてみてくださいね。
ここで保育士さんのやりがいや素晴らしさについて確認しましょう。
子どもの成長を感じられる
子どものそばで寄り添い、成長を間近で感じられることは保育士さんの特権です。毎日の仕事に必死で、成長を感じている余裕がないこともあるかもしれませんが、一年経って振り返るときには確実に成長した姿を見せてくれるはずですよ。
仕事で悩んだときには目の前の子どもの姿を見て、成長した様子を思い浮かべてみましょう。そうすることで、保育士さんは子どもの成長を感じ、一緒に成長できる素晴らしい仕事であることを再認識できそうです。
行事などで達成感や感動が得られる
保育園では季節を感じる行事や子どもの成長を保護者の方と一緒に喜びあう行事など、さまざまなイベントがあります。行事をやり遂げたときには準備の大変さを忘れるほどの達成感と感動を味わうことができますよ。
子どもたちが懸命に頑張る姿、自分たちで計画した行事に子どもや保護者の方が喜んでくれる姿は、保育士さんにとって大きな喜びや自信につながるでしょう。
保護者から感謝される
保育士は「ありがとうございます」と言われる機会の多い職業です。保護者の方との関係作りは難しい面も多いですが、子どもと真剣に向きあっている様子は必ず伝わります。だからこそ感謝の言葉をもらえたらとてもうれしくなるでしょう。
一年の終わりに「先生が担任でよかった」と言ってもらえた感動は、他の職業ではなかなか味わえないかもしれません。毎日の積み重ねがそのような感動につながると思うと、保護者の対応にも前向きになれるのではないでしょうか。
保育士一年目で悩んだときは、どんどん周りに頼ろう
今回は、保育士一年目に抱えやすい悩みの例や対処法、保育士という仕事の素晴らしさについて紹介しました。
初めから完璧に仕事も保育もこなせた保育士さんなどいません。先輩保育士さんも、一年目の頃は多くのことに悩み、時には不安やつらさを感じながらも成長して今の姿があるのでしょう。
一つひとつクリアしていき、悩んだときは順番に乗り越えていくことが大切です。また一人で解決しようとせずに、周りをどんどん頼ったりモチベーションが上がる考え方をしたりして、保育技術や人間関係の築き方を備えていってくださいね。