保育実習において紙芝居の読み聞かせをするとき、選び方や読み方について知りたい保育学生さんもいるのではないでしょうか。また、子どもたちに伝えたいことを手作りの紙芝居を用いて表現したいという方もいるかもしれません。今回は、保育現場での紙芝居の特徴や効果、選び方、紙芝居の手作り方法、演じ方のポイントを紹介します。
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■目次
保育現場にとっての紙芝居
紙芝居は、1930年頃に「街頭紙芝居」という形で日本において誕生し、やがて家庭版紙芝居や教育紙芝居として全国に普及したようです。
現代の保育現場にとっての紙芝居は、子どもたちと交流しながら多くのことを伝えられる魅力的なアイテムの一つです。
紙芝居の読み聞かせは、行事への導入や活動の切り替えのときなど子どもたちの注目を引きたいタイミングで取り入れられている場合が多いでしょう。
保育実習では、実習生さんが絵本や紙芝居の読み聞かせを任されることもあります。実習先への事前挨拶または初日に「この日に紙芝居の読み聞かせをお願いします」と、あらかじめ指定されることもあるかもしれません。
保育実習を控える保育学生さんの中には、そもそも絵本と紙芝居はどう違うのかや紙芝居が子どもに与える効果などが気になる方もいるのではないでしょうか。
まずは紙芝居にはどのような特徴や効果があるのか、絵本との違いも含めて見ていきましょう。
紙芝居の特徴と子どもに与える効果
紙芝居の特徴と子どもに与える効果を紹介します。
紙芝居の特徴
絵と文でできている絵本とは違い、紙芝居は見る側に絵の情報しかないので、読み聞かせる人の役割がとても大きいといえるでしょう。
紙芝居には、表に絵、裏にナレーションやセリフ、効果的に演じるための参考として、「演出ノート」や「ト書き」が書かれています。そして場面を抜き差しすることで物語が進んでいきます。
表は大きな紙に目一杯絵が描いてあり、少し遠くてもよく見えるので、同時に複数人に対して読み聞かせする場合に向いている教材といえるでしょう。また、読み手からも子どもたちの表情がよく見えるので保育士さん自身も楽しめるかもしれません。
紙芝居は絵を見ながら読み手の声を聞いて想像を膨らませながら楽しむことができます。そのため、話を聞くというよりも、演劇を見る感覚に近いといわれています。
つまり、絵本を「読み聞かせ」といのに対し、紙芝居は「演じる」と表現することもあるようです。
紙芝居の効果
紙芝居が子どもたちに与える効果として、以下のような力を育めるでしょう。
- 聞く力:集中力を養い、人の話を聞く力が伸びる
- 共感力:「読み手」と「聞き手」が、互いに物語の世界を共有し共感する
- 想像力:紙芝居の1場面から、絵に描かれていない部分を想像し、想像力を育む
- 国語力:話を繰り返し聞き、言葉の語彙力が身につく
- 文章力:紙芝居の起承転結、話の流れ、文章の組み立て方を理解できる
紙芝居の場合は、子どもが掛け声で参加するなど、より物語の世界に入り込みやすい工夫がされている作品もあります。同じ空気の中で「読み手」と「聞き手」が互いに心を動かし、共感する力が育まれていくのが最大の効果といえるかもしれません。
【年齢別】保育実習での紙芝居の選び方
保育実習において紙芝居を読み聞かせるときには、担当するクラスの子どもたちの様子にあわせて紙芝居を選ぶ必要があるでしょう。
ここでは、年齢別の紙芝居の選び方を紹介します。
0歳児、1歳児、2歳児
0歳児、1歳児、2歳児におすすめなのは、8場面で構成された短い紙芝居です。この時期の子どもたちにとって長い物語の流れを理解するのは難しいかもしれないので、簡単に完結するものがよいかもしれません。
色や絵がはっきりとしていて見やすく、効果音や擬音の繰り返しのあるものなどを選ぶと、注目を集めやすいでしょう。
3歳児、4歳児、5歳児
3歳以上の幼児クラスになると、徐々に長くてストーリー性のある紙芝居も、集中して聞くことができるようになってくるでしょう。そのため、12場面や16場面の紙芝居も楽しめるかもしれません。
保育行事の導入として季節にまつわるものや生活習慣や食育をテーマにしたもの、子どもが参加できる問いかけやなぞなぞがあるものなど、さまざまなジャンルの中から子どもの様子にあわせて選ぶとよさそうですね。
保育実習に向けた紙芝居の手作り方法
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保育実習を控えた保育学生さんの中には、部分実習や責任実習において取り組みたいテーマやイベントに関する紙芝居を自分で手作りしてみたいと考える人もいるかもしれません。
ここでは、手作り紙芝居の基本的な作り方とポイントを紹介します。
作り方
紙芝居を手作りするときは、以下の4つのステップにもとづいて作成するとよいでしょう。
1.脚本を考える
まずは紙芝居のテーマを決めます。その後、ストーリーに必要な登場人物と、登場人物の会話を中心に演じやすい脚本を作りましょう。
「起・承・転・結」の形式を基本に考えるとストーリーが作りやすいかもしれません。
2.コマ絵(ラフ)を描く
次に、脚本のストーリーの展開にもとづいて絵を描き起こします。
できあがったコマ絵から流れを検討し、場面設定をしましょう。
3.ひな形を作る
次は、ひな形としてコマ絵をもとにした小さなサイズの試作品を作ります。
それを保育実習先の先生や友人などに確認してもらい、改善点や演じ方を検討するとよいかもしれません。
4.本書きしてできあがり
最後に、ひな形をもとに大きなサイズの画用紙などに本書きをしてできあがりです。
本書きのときは、遠くからでも見やすいよう絵の具やカラーマジックを使って色づけし、はっきりとしたコントラストになるよう意識するとよいでしょう。
紙芝居を手作りするときのポイント
紙芝居と手作りするときのポイントとして、以下のようなことが挙げられます。
- 引き抜くことを考えて登場人物の配置などを工夫する
- 登場人物が一瞬にして変身するなどワクワクできるような絵の変化をつける
- 掛け声やクイズなど子どもが参加できるような展開を考える
- 一つの画面に多くの絵や文字をかかないようにする
このようなポイントや実際の紙芝居の展開を参考にしながら、自分の思い描くストーリーを子どもたちに伝えられる紙芝居を手作りできるとよいですね。
保育実習で紙芝居を演じるときのコツ
最後に、実際に保育実習で紙芝居を演じるときのコツを紹介します。
作品を下読みする
演じる前には、必ず作品全体をしっかりと下読みして理解しておきましょう。
登場人物の性格はどうなのか、絵の雰囲気と展開はどのようなものかなど、分析をきちんと行うことで、実際に演じるときにより臨場感のある表現ができるかもしれません。
声に変化をつける
紙芝居の内容によって、以下のような声の変化をつけるのもよいでしょう。
- 登場人物ごとに声色を変える
- 感情をこめてセリフを読む
- 楽しい雰囲気のときには明るく弾むように話す
- ハラハラする展開では少し早口にする
このように、抑揚や話す速さに工夫をして表情豊かに演じることも、紙芝居を演じるコツの一つかもしれません。
間を生かす
次の展開への期待感やドキドキ感を生む「間」を大切にすることを意識するとよさそうです。
画面の展開の際だけでなく、一つひとつのセリフの間に工夫を凝らして生かすことも、ストーリーを面白くするポイントになります。
紙芝居を演じる練習を他の人に見てもらうなどして、より効果的な間の使い方を検討しておくとよいでしょう。
引き抜き方を工夫する
紙芝居の引き抜き方も演出の一つとなります。
すっと引き抜くだけでなく、途中で止めてみる、そろりそろりと引き抜くなど、場面の展開に応じて引き抜き方を工夫して、ストーリーに面白みを加えるとよいかもしれません。
保育実習に紙芝居を取り入れて、子どもたちを惹きつけよう
今回は、保育実習にとっての紙芝居とはどんなものかや年齢別の選び方、手作り方法、演じるときのポイントについて紹介しました。
紙芝居は、絵本とは違ってページを抜くことで場面展開するので、子どもたちは劇のようなワクワク感を味わえるでしょう。また保育士さんも、ストーリーにあわせた演じ方を工夫し実践することで、子どもたちの反応も楽しみながらいっしょに共感できるかもしれませんね。
紙芝居を演じた後は、絵本の読み聞かせのときと同様、「この話では〇〇が悪かったね」と保育士さん個人の意見を言わないことや、子どもたちに感想を求めないこともポイントです。物語の余韻や一人ひとり浮かんだ思いを楽しむ時間も大切にするとよいでしょう。
保育実習に紙芝居を取り入れて、子どもたちといっしょに物語の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。