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【5領域】言葉とは。ねらいや内容、遊びの実践例と援助のポイント

子どもに身につけてほしい力を分野別にまとめた保育の5領域。5領域における「言葉」について知りたい保育学生さんもいるのではないでしょうか。今回は5領域の「言葉」とは何か、そのねらいと内容を解説します。また、遊びの中で「言葉」を育むための年齢別の実践例と、保育士としての援助のポイントをまとめました。

笑顔の女の子の写真

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5領域の視点の一つ「言葉」とは?

5領域における「言葉」について、文部科学省「幼稚園教育要領」をもとに紹介します。



そもそも5領域とは


5領域とは、幼稚園教育要領や保育所保育指針で示された教育内容のことをいい、「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5つに分類されています。


それぞれの領域に、子どもの生きる力の基礎を育むための「ねらい」と「内容」が示されています。


保育学生さんは、この5領域に示された「ねらい」と「内容」をもとに、保育指導案を書き、保育を行なっていく必要があります。


また、保育を行なうときは、どれか1つの領域のみをピックアップするのではなく、それぞれを組み合わせた一体的な保育を行なうことが大切になるでしょう。



5領域における「言葉」とは


では、今回着目する5領域の「言葉」とはどんなものなのでしょうか。


文部科学省の幼稚園教育要領によると、5領域における「言葉」について、「経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し、相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て、言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う。」と説明しています。


ここでは子どもに育ってほしい力を「表現する力」、「聞く力」、「言葉に対する感覚」の3つに分けて解説します。


それぞれの力を育むことで、以下のような子どもの姿につながっていきそうです。


言葉で表現する力:自分の思いや考えを言葉で伝える力

  • 「おはよう」「いってきます」など挨拶をする。
  • 保育士に自分のやりたい遊びを言葉で伝えて、おもちゃを出してもらう。
  • 保育士の質問に対して、手を挙げてみんなの前で発表する。

相手の話す言葉を聞く力:相手の話に耳を傾け、理解する力

  • 保育士が手遊びを始めたら「話が始まる」と考えて周りに集まる。
  • みんなの前で発表している子どもをじっと見て、何を言っているか聞こうとする。

言葉に対する感覚:言葉の美しさや面白さに興味を持ち、自ら表現してみようとする力

  • 楽しい響きのオノマトペ(擬音語)を気に入って、何度も繰り返し言う。
  • 絵本や物語を読んで、想像上の世界に思いを巡らせる。

これらの力をバランスよく身につけていくことで、言葉の伝え合いを通して交流したり、言葉を使って自分の思いを友だちと共有したりできるようになるのですね。


そのため保育士として働くときは、子どもたちにこれらの力がバランスよく育っているか、足りない力をどうやって伸ばしていくべきかということを考えて指導計画を立てていくとよいかもしれません。


出典:幼稚園教育要領/文部科学省



5領域「言葉」のねらいと内容

5領域の「言葉」に示されるねらいと内容を、文部科学省の「幼稚園教育要領」「幼稚園教育要領解説」をもとに紹介します。



ねらい


そもそも保育におけるねらいとは、子どもが保育を通して身につけてほしい資質や能力などを示したものです。


子どもたちにはこんなことができるようになってほしい、こんな気持ちを味わってほしいと考えながら保育士さんたちはねらいを定めています。


文部科学省の幼稚園教育要領によると、5領域の「言葉」に示されたねらいは以下の通りです。


(1)自分の気持ちを言葉で表現する楽しさを味わう。
(2)人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう。
(3)日常生活に必要な言葉が分かるようになるとともに、絵本や物語などに親しみ、先生や友達と心を通わせる。


言葉で伝えることや相手とのやりとりを楽しむとともに、絵本や紙芝居などを通じていろいろな言葉にふれる経験ができるとよさそうですね。



内容


保育における内容とは「子どもが環境に関わって行なう事項」のことを指します。
つまり子どもが園生活で経験してほしい具体的な行動などを示していると言えるでしょう。


幼稚園教育要領に示された、5領域の「言葉」の内容を大まかに3つに分類して紹介します。


5領域の言葉における内容

実際の保育の中で、子どもたちはこのように細かく活動の分類をしながら過ごしているわけではないですが、上記のように捉えると理解しやすいかもしれません。


日常生活の中の言葉のやり取りを通して、言葉の力を獲得しているのがわかりますね。
保育士として子どもと関わるときには、言葉の楽しさや親しみを感じられるようにするとよさそうです。


そのための工夫として、笑顔でうなずきながら話を聞く、話を聞いてほしいときにはパペットを使って興味を引く、言葉の楽しいリズムや響きのある絵本を読むなどができそうですね。



このように保育活動を通して言葉を育みたいときは、これらを参考に指導案のねらいを立て、活動を考えていくとよいでしょう。


出典:幼稚園教育要領/文部科学省

出典:幼稚園教育要領解説/文部科学省



5領域「言葉」を育む遊びの実践例

絵本を見て笑う女の子の写真

ucchie79/shutterstock.com

5領域における「言葉」を育むことができる遊びの実践例を年齢別にみていきましょう。



構成遊び:1歳児


1歳児クラスで構成遊びをするときの「言葉」を育む援助の実践例をみていきましょう。


保育の流れ

子どもが遊べるようにブロックの用意をしておきましょう。

好きな大きさや色を選んで遊べるように、色々なパーツを揃えておくとよさそうです。


ねらい

ブロックでの構成遊びを通して、簡単な言葉で命名したり保育士とやり取りをしたりしながら遊ぶことを楽しむ。


子どもの姿

  • ブロックをつなげて形が変わることを楽しむ。
  • ブロックで作ったものを料理に見立てて命名し、食べ真似をする。
  • 友だちの使っているブロックがうらやましくなり、取ってしまう。

保育士の援助

「でんしゃ、がたんごとん」「ぶどうだ、いただきます」など、オノマトペや簡単な挨拶を使って子どもといっしょに遊び、ブロックで見立て遊びを楽しめるように配慮するとよいでしょう。


子どもが完成品を見せに来たら、「がんばって作ったね、やったね」「大きいのができたね、うれしいね」と子どもの達成感を代弁するとより嬉しさを味わえそうです。


1歳児でブロックの取り合いになってしまった時は「これがほしかったんだね」「かしてって言うんだよ」と子どもの気持ちを代弁するとともに、仲介をしていくとよいですね。



ままごと遊び


3歳児クラスでままごと遊びをするときの「言葉」を育む実践例をみていきましょう。


保育の流れ

ままごとの道具を用意して、子どもが自由に遊べるようにしておきましょう。

いろいろな役割ができるように、カバンやエプロンなどの道具を用意しておくとよさそうです。


ねらい

ままごと遊びを通して、日常会話に親しむとともに、役と場面を共有しながらやり取りを楽しむ。


子どもの姿

  • お人形を赤ちゃんに見立てて、「えーんえん、ほら、あかちゃんが泣いている」「ミルクをあげるね」と共通のおもちゃを仲立ちとして遊ぶ。

  • お母さん役、お父さん役、お姉さん役に分かれて、「いってらしゃい」「お弁当持った?」などイメージを共有しながら日常会話のやり取りをして遊ぶ。

保育士の援助

子どもといっしょに遊びに入り、「今日のごはんはなにかな」「お買い物に行ってきます、 お店屋さんはどこかな?」とイメージが膨らむような声掛けをするとよいでしょう。


文字に親しむ機会を持てるよう、お店屋さんの看板などを作れるような道具を用意するとよいかもしれません。


トラブルになったときは、それぞれの子どもの言いたいことを受け止めるとともに「○○ちゃんはこうしたかったんだって」と代弁し、相手の気持ちに気づけるようにするとよさそうです。



リレー遊び


5歳児クラスでリレー遊びをするときの「言葉」を育む実践例をみていきましょう。


保育の流れ

あらかじめ決めていたチームに分かれて作戦を立てて、リレーをしましょう。
勝負のあとチームで振り返りをする時間を設けるとよさそうです。


ねらい

リレー遊びを通して、言葉による話し合いや伝え合いを行なって目的や気持ちを共有する。


子どもの姿

  • 作戦会議で、それぞれの走る速さを考慮しながら話し合い、走る順番を決める。

  • 保育士さんの「バトンを落とさず走れたらもっと速くなるよ」という言葉から、どうやったらバトンを落とさずパスできるか話し合う。

保育士さんの援助

チームの協同性を育めるように、子ども一人ひとりがどんな思いで走っているか伝えあう機会を作るとよいでしょう。


また、みんなの前でアイデアを発表する時間を設け、子どもの考えや気持ちを共有していけるように援助するとよさそうですね。


みんなの前で発表するのが苦手な子どもには、別の時間に部屋の隅などの安心できるスペースで個別に思いを聞いてみるのもよいかもしれません。



5領域「言葉」を育むための援助のポイント

5領域「言葉」を育むために、保育士が行なうとよい援助のポイントをまとめました。



子どもの気持ちに共感する・代弁する


保育学生さんが子どもの気持ちや考えを「○○したかったのかな」などと代弁することで、思いを表現してわかってもらうことの嬉しさを感じられるでしょう。


特にまだうまく話すことができない乳児の場合、子どもの気持ちを代弁していくことで語彙を増やすことにつながりそうです。


また、子どものつぶやきに対して保育学生さんが共感して肯定していくことで、安心して言葉を発せるようになりそうですね。



子どもの発言を受け止め、言葉で伝え合うことを楽しめるようにする


保育学生さんがニコニコしながら子どもの話にうなずいたりリアクションをしたりすることで、子どもは話をする楽しさを味わい、もっと話をしたいという意欲が湧くでしょう。


言葉での伝え合いが楽しめるよう、自分の気持ちを知ってもらう嬉しさを味わう経験ができるとよいかもしれません。



相手の話を聞こうとする態度を養えるようにする


自分自身が伝える楽しみや喜びを感じることで、自然と友だちの話を聞こうとする態度が育めるとよいでしょう。


保育学生さんが子どもたちの間に立って仲立ちをしたり、話を聞くときのルールについて話あったりといったことで聞く態度を養っていけるとよさそうです。



言葉の豊かさを味わえる機会を作る


絵本や紙芝居を通して言葉の豊かさやふれる機会を作るとよいでしょう。
また、絵本を読むことで文字に興味を持つきっかけにもなりそうです。


長い話を聞けるようになったら、物語の読み聞かせをするのもよいでしょう。
感じたことを言葉で伝え合うことにより、クラスのみんなで同じ世界観を共有する一体感を得られそうです。


保育学生さんが読み聞かせを行なうときは、言葉の響きを味わえるような臨場感のある読み方をしたり、日常でも子どもの表現した言葉を褒めたりするとよいかもしれません。



5領域の「言葉」をしっかりと理解し、保育に活かそう

今回は5領域における「言葉」について、主に幼稚園教育要領をもとに紹介しました。


5領域における「言葉」の領域では、子どもが言葉を使って思いを表現する力、人の言葉を聞く力、言葉の豊かさを味わう感性といった能力を育んでいくためのねらいと内容が示されています。


保育の中で実践する際には、1歳児など低年齢では子どもの気持ちや気づきを代弁するとともに、オノマトペや簡単な言葉を使って言葉で表現する楽しさを味わえるようにするとよさそうです。


幼児の場合は、言葉を使って友だちと思いを伝え合う機会を作ることや、物語を通して想像を膨らませたり友だちと感想を共有したりする経験が大切といえそうですね。


5領域の「言葉」をしっかり理解して、保育での子どもとの関わりに活かしていきましょう。

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