保育園の絵の具遊びに活用できるスパッタリングの技法。網にブラシをこすりつけたら霧のように絵の具が散る様子に、子どもたちも夢中になってくれるかもしれません。今回は、保育でスパッタリングをするときのねらい、やり方や道具の選び方などを紹介します。また、指導するときのコツや製作のアイデアもまとめました。
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■目次
保育に活用できる「スパッタリング」の技法とは?
スパッタリングとは、霧吹きとも呼ばれ、絵の具をぼかし網などにぬりつけてブラシでこすると、霧のように絵の具を散らすことができる技法のことです。
まるでスプレーをかけたような飛び散り方は、星空や雪景色のようにも見えるため、さまざまな製作に活用できそうですね。
スパッタリングを保育で行うには、以下のようなねらいがあるでしょう。
- 絵の具が飛び散る様子を楽しむ
- 遊びを通して絵の具のさまざまな遊び方に気づく
- スパッタリングの道具の使い方を知る
- 絵の具の量やこすり方を工夫しながら製作する
絵の具が飛び散ったときの不思議な模様や、普段と異なる絵の具の使い方を楽しめるよう声かけや環境設定を工夫するとよいですね。
簡単に取り入れられるスパッタリングですが、きれいに絵の具を散らすには少しコツが必要なようです。
くわしいやり方や道具選びのポイントをみていきましょう。
スパッタリングのやり方
スパッタリングのやり方やポイントを、道具・工程のジャンル別に紹介します。
用意する道具
画材屋さんなどではスパッタリング専用の道具も売られていますが、身近なもので代用することも可能です。
ここでは道具選びのポイントを紹介します。
ぼかし網
金属製の細かい網目が特徴であるぼかし網は、絵の具を塗ってこすりつけるのに使用します。
保育園によっては備品として用意されていることもあるかもしれません。
このぼかし網は茶こしやアク取りなどで代用することが可能ですが、注意が必要なのが網目の大きさです。
大きすぎると絵の具が垂れ落ちてしまい、細かすぎると絵の具がうまく飛び散らないため、購入した網は保育学生さんが前もって飛び散り方を確認するとよいでしょう。
ブラシ
硬めの毛でできたスパッタリングブラシは、ぼかし網をこすって絵の具を飛び散らすのに使う道具です。
これも、歯ブラシで代用することができます。
その場合、なるべく毛が硬く大きなサイズのものを使用するとやりやすいでしょう。
また、毛の密度が高いものよりも、少し間隔が空いているものの方が、絵の具が飛び散りやすいようですよ。
筆
絵の具をぼかし網に塗るために使うのが筆です。
筆でこすりつけてスパッタリングをすることも可能ですが、少しコツが必要となるでしょう。
初めて行う際はブラシを用意した方がスムーズかもしれません。
絵の具
絵の具を用意するときは、水の分量に注意して溶かしましょう。
使用するぼかし網の目が大きいときには絵の具を増やす、目が小さいときには絵の具を減らすといったように調整します。
準備段階で、水を少しずつ足しながら実際にスパッタリングをしてみて、確かめていくとよいかもしれません。
画用紙
絵の具を散らすには、四つ切りなどある程度の大きさがある画用紙を用意しましょう。
また、画用紙の色は、絵の具の色と組み合わせてさまざまに表現を楽しむことができます。
黒の画用紙に黄色い絵の具で夜空のお星さまをえがく、水色の画用紙に白い絵の具で雪をえがくなど、組み合わせ方を工夫して製作するのもよいですね。
新聞紙
スパッタリングをしていると、広範囲に絵の具が飛び散ります。
画用紙の下に新聞紙を敷いておくと後片付けの負担が減りそうですね。
加えて、子どもたちにも汚れて大丈夫な服に着替えてもらうことも大切な配慮です。
遊び方
それでは、スパッタリングのくわしい遊び方を解説します。
1.画用紙を配置する
汚れ防止の新聞紙の上に画用紙を配置します。
アレンジとして、丸や星など好きな形にカットした型紙を上に載せておく遊び方もあるようです。
型紙の部分だけ飛び散った絵の具の色がつかず、型紙の形が白く浮き出たような表現をすることができるでしょう。
2.絵の具をぼかし網につける
筆を使って、絵の具をぼかし網に塗ります。
垂れないように注意して、少しずつ塗っていくとよいでしょう。
絵の具が多すぎて垂れ落ちてしまったときのために、新聞紙の上で塗るようにするとよさそうです。
3.ブラシで絵の具をこする
ブラシでぼかし網をこすり、絵の具を散らしていきましょう。
少しずつ絵の具が散っていくため、根気が必要な工程かもしれません。
2歳児や3歳児が行うときは、保育学生さんが手を添えながらやるとよいでしょう。
また、スパッタリングに2色以上の絵の具を使うときは、色を変える度にぼかし網とブラシを洗う必要があります。
色ごとに使用する道具を分けておくと簡単ですね。
参考動画:スパッタリングで楽しくお絵かきしよう!/保育士バンク!
スパッタリングを保育に取り入れるときのコツ
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スパッタリングを保育活動で行うときの、配慮や援助のポイントを紹介します。
絵の具の量や道具を調整する
初めてスパッタリングをやる子どもは、要領がわからず絵の具が散らなかったり、ボタッと落としてしまったりするかもしれません。
スパッタリングに適した道具の用意や、絵の具の分量を調整しておくことで失敗を少なくすることができるでしょう。
保育学生さんが前もって試しておく
道具を用意したら、前もって保育学生さんがスパッタリングをしてみることも大切となりそうです。
簡単だと思ったら意外に時間がかかった、絵の具の色によっては飛び散りにくいものがあったなど発見があるかもしれません。
そうした気づきを得ることで、環境設定を工夫したり声かけに活かしたりすることができるでしょう。
子どもが使いやすい道具や環境を用意する
使いやすい道具を使用することで、子どもたちも製作を楽しめるでしょう。
道具を選ぶときは、子どもの手で持ちやすいサイズであるかどうか、簡単に絵の具を飛び散らすことができるかといったことを基準にするとよさそうです。
また、手を拭くためのタオルや、道具を置いておける場所を用意しておくこと、子どもがやりやすい姿勢で作業できること(机が低すぎないか、画用紙全体がちゃんと見えるか)などをシミュレーションしておくことが大切です。
これらのポイントやコツを参考に、指導案作成や当日の援助に活かしてみてくださいね。
スパッタリングを活用した保育製作のアイデア
ここでは、保育園で使えるスパッタリングを活用した製作のアイデアを紹介します。
スパッタリングの花火
スパッタリングを使って花火を表現する製作です。
用意するもの
- 絵の具(各色)
- ブラシ
- ぼかし網
- 折り紙
- 画用紙(黒)
- えんぴつ
ポイント
紙を取ったときに浮き出る花火の模様が幻想的です。
色を変えるときは、ぼかし網を洗うようにすると絵の具が混ざらなくてよいですよ。
切り絵は、はさみを上手に使えるようになった5歳児クラスなどで行うようにしましょう。
低年齢の場合、レースペーパーなどを使用するのもよいかもしれませんね。(スパッタリングの花火のくわしい説明はこちら)
落ち葉が浮き出るスパッタリング
落ち葉を画用紙に載せてスパッタリングを楽しめます。
用意するもの
- 絵の具
- 筆
- ブラシ
- ぼかし網
- 落ち葉
- 画用紙
作り方
1.画用紙の上に落ち葉を置きます。
2.絵の具をぼかし網につけ、ブラシでこすりつけます。
3.乾かして落ち葉をとったらできあがりです。
ポイント
落ち葉の輪郭が浮き出るよう、まんべんなく絵の具を散らすときれいに製作できるでしょう。
また、画用紙だけでなく、絵の具が散った落ち葉もカラフルで見栄えするので、作品に貼りつけて使用するのもよさそうです。
園庭や散歩先で子どもたちが拾った落ち葉を使えば、より愛着のある作品に仕上がるかもしれませんね。
雪の日
スパッタリングの絵の具を雪に見立てます。
毛糸をくるくると渦のように巻いて、雪だるまの製作をしてみましょう。
用意するもの
- 絵の具(白)
- 筆
- ブラシ
- ぼかし網
- 画用紙(紺)
- 毛糸(白)
- 画用紙で作った目玉
- 接着剤
作り方
1.絵の具をぼかし網につけ、ブラシでこすりつけて画用紙に絵の具を散らします。
2.(1)の画用紙に接着剤を塗りながら、渦状に毛糸を巻いて丸をかいていきます。
3.(2)の丸を2つ作り、目玉をつけて雪だるまを作ったらできあがりです。
ポイント
スパッタリングの模様と、毛糸の温かみのある雰囲気が組み合わさった雪だるまの製作です。
毛糸を渦のように巻いていく工程は、接着剤を少しずつ塗り足しながら作りましょう。
接着剤を皿に出し、綿棒の先につけて使えるようにすると簡単かもしれません。
保育にスパッタリングを取り入れて、不思議な絵の具遊びを楽しもう
今回は、保育でスパッタリングをするときのやり方や道具、ねらいなどを紹介しました。
網に絵の具をつけてブラシでこすることで、飛び散った絵の具の模様を楽しむスパッタリングは保育製作に活躍しそうな技法です。
子どもと行うときは、前もって絵の具の飛び散り方や水の分量などを確認することで、スムーズに活動を進められるでしょう。
スパッタリングのやり方やねらいを参考に、実習や入職後に保育に取り入れてみてくださいね。