求人票で目にする試用期間とは、端的に言えば本採用の前段階となるお試しの期間のことです。どうして設けられているのか、また正社員でも期間中の給料や待遇に変化はあるのかなど知りたい保育学生さんも多いでしょう。今回は、新卒として入職を控える保育学生さんに向けて、試用期間とは何かをくわしく解説します。
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求人票にある試用期間とは
就職活動をするなかで目にする求人票の「試用期間あり」という記載。
試用期間中はどんなことをするのか、そもそもなんのためにあるのかなど疑問に思う保育学生さんもいるかもしれません。
ここでは試用期間とは具体的にどのようなものなのか、設けられる目的とともに紹介します。
試用期間の意味
試用期間とは、雇用側が本採用を前提として、試験的にその人を雇用する期間のことを言います。
一般的に、新卒だけでなく中途採用であっても設けられることが多く、正社員やパート・アルバイトなど雇用形態にかかわらず幅広く導入されています。
具体的な期間に決まりはないため、園によって長さは異なるでしょう。新卒採用の場合、およそ3カ月から半年程度が目安と覚えておくとよいかもしれません。
試用期間の目的
試用期間は、保育園側が保育士さんの適性や資質を見るために設けられています。
近年、採用スピードが早くなったり選考ステップが簡素化したりしたことで、履歴書や面接だけではその人の性格やスキルを把握しきれないことがあるようです。こういったことから、新卒保育士さんの適性を見極めるために定めていると考えられるでしょう。
また、一定期間働いてもらうことで、遅刻や出勤日数と言った勤務態度を評価するためでもあると言われています。
試用期間の有無は園によって異なるため、就職先によってはないケースもあるでしょう。
ただし、試用期間がある場合は就業規則や雇用契約書などでその旨を明確にしておく必要があるので、入職前に確認することが大切です。
試用期間とは何かを踏まえ、次からは保育学生さんが気になる給料や退職の可否などについて見ていきましょう。
試用期間における給料や待遇
正社員として本採用されたときと試用期間中で、給料や待遇に変化はあるのでしょうか。くわしく説明します。
給料
正社員として採用された新卒保育士さんの場合、一般的に試用期間中であっても給料に変動はないようです。
なかには、本採用のときよりも低く設定しているケースもあるようですが、その場合は求人票にその旨が記載されています。
この場合、給料が低くなることに関して本人が合意していれば違法性はないものの、都道府県ごとの最低賃金を下回っていないかという点は念入りに調べておきましょう。
また、試用期間中であっても、残業が発生した場合には残業代が支払われることとなっています。もし、入職前に渡された雇用契約書などに残業代に関する記載がなければ、就職先に問い合わせましょう。
待遇
試用期間であっても労働契約を結んでいるため、正社員と同じ待遇を受けられることとなっています。そのため、借り上げ社宅制度や研修制度など、園ごとの福利厚生を受けられないといったことはないでしょう。
もちろん、対象となる労働者には各種社会保険に加入させることが雇用側の義務となっているので、社会保険に加入することもできます。
試用期間中でも退職できる?
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試用期間中に、「園の雰囲気が合わない」「働き続けるのが難しそう」と感じたら退職できるのでしょうか。
実際、試用期間中であっても退職をすることができますが、即日辞めることは難しいでしょう。
その理由として、退職の申し入れについて就業規則で「〇カ月前まで」と規定されているケースが多いため、就職先の園で決まりがあればそれに従う必要があるからです。
また、民法では「労働期間の定めがない契約(正社員採用)の場合、労働者はいつでも解約の申し入れをすることができ、申し入れをしてから2週間で雇用契約が解除される」ことが示されています。
そのため、就業規則に記載がなければ、遅くとも退職日の2週間前までに伝えましょう。場合によっては新しい人材を採用する必要性がでてくるので、意思が固まったらできるだけ早めに申し入れをするとよいですね。
試用期間にありがちなトラブルと対処法
試用期間中は、雇用側と労働者側の認識の違いによってトラブルが発生することがあるようです。ここでは、新卒保育士として入職した後に起こる可能性があるトラブルとその対処法をまとめました。
【ケース1】本採用を拒否された
試用期間終了後に正社員での本採用を拒否されるケースがあるようです。
試用期間は法的に労働契約を結んでいる状態であるため、本採用の拒否は労働契約の解除にあたります。つまり、解雇と同じことになるので、客観的に合理的な理由がない限り認められません。
もし、「経歴詐称」や「出勤率が90%に満たない」、「無断欠勤を何度も繰り返した」など解雇に相当するとされる事由に当てはまらないにもかかわらず本採用を拒否された場合は、園側にきちんと説明を求めましょう。
【ケース2】試用期間中に解雇された
「雰囲気が合っていない」「能力が足りない」などの理由から、試用期間中に突然解雇されるということもあるようです。
先述したように、試用期間中でも労働契約を結んでいる状態なので、園側は解雇に相当する合理的な理由がなければ辞めさせることはできません。上記のような理由で解雇を言い渡された場合は不当解雇となります。
また、試用期間開始から14日以内の解雇であれば解雇予告は不要とされていますが、それを過ぎた場合は少なくとも30日前までに通知してもらう必要があるので、あわせて覚えておきましょう。
解雇事由は就業規則に記載しておかなければならないと定められているので、事前にきちんと目を通しておくことが大切です。もし、不当に解雇された場合は園側にくわしい理由の説明を求め、場合によっては弁護士や窓口に相談することも検討しましょう。
【ケース3】試用期間を延長された
勝手に試用期間を延長されてしまうというケースもあるようです。
試用期間の長さは法律で定められているわけではないため、一般的に以下のポイントを満たしていれば問題ないようです。
- 就業規則に試用期間の延長に関する記載がある
- 延長する正当な理由がある
- 試用期間の延長について双方が合意している
また、1年以上の試用期間が設定されている場合は違法となるケースもあるようなので、もし延長を園側から伝えられたら、理由や期間についてきちんと話し合う必要があるでしょう。
出典:民法/e-Gov法令検索
入職後に向けて、試用期間とは何かを知ろう
今回は、試用期間とはどのようなものかについて紹介しました。
試用期間とは、正社員での本採用を前提として試験的に設けられている期間のことです。
多くの園では新卒保育士さんの適性を見極めるために3カ月程度用意されていることが多いようですが、期間中であっても給料や待遇に大きな変化があることはないでしょう。
試用期間とは言えきちんと労働契約を結んでいるので、就職先の園から本採用の見送りや解雇など不当な扱いを受けたと感じた場合はしっかり対処することが大切です。
試用期間とは何かをきちんと理解し、入職に向けた不安を解消しておきましょう。