児童養護施設で働くには?仕事内容や資格、給料・求人状況を徹底解説!

児童養護施設とは家庭での生活が困難な児童を養育する施設です。保育士資格を活かして働ける就職先のため、役割や仕事内容、働き方などが気になる保育学生さんもいるかもしれません。今回は児童養護施設で働くにはどうしたらよいか、求人状況や資格について解説します。また、仕事内容や給料、やりがいについてもまとめました。

児童養護施設で働く保育士の写真

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児童養護施設とは

児童養護施設とは、虐待や親の失踪などで、家庭での生活が困難な児童を保護し、養育することで自立を支援する施設です。

厚生労働省の資料では、児童養護施設を以下のように説明しています。

児童養護施設は、保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により特に必要のある場合には、乳児を含む。)、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設。

出典:児童養護施設等について/厚生労働省から抜粋

つまり児童養護施設とは、子どもたちの生活の拠点であるとともに、自立して生きていけるよう支えていく、第二の家庭のような施設であると言えるでしょう。

児童養護施設の実態

厚生労働省の資料によると、児童養護施設は2016年10月時点で全国に約600施設ほどあり、入所している子どもは約2万7000人となっています。

児童養護施設の設置数は2001年から2016年で1.09倍も増加しているという実態があります。

また児童虐待による相談も増加傾向にあるため、児童養護施設の需要は今後さらに高まることが予想されます。

入所する子どもの対象年齢

児童養護施設は、乳児を除く18歳に至るまでの子どもを対象にしています。

ただし、場合によっては乳児も対象となり、退所年齢となる18歳を過ぎても、子ども発達・自立の状況に応じて支援を続ける場合もあるそうです。

児童養護施設では、20歳まで措置延長ができるため、18歳以上でも入所の継続が可能であることを覚えておくとよいですね。

さらに、児童養護施設は高い養護性を持つ施設であることから、義務教育修了後、または高校中退で就職する場合でも、できる限り入所を継続する必要があると考えられています。

子どもたちの入所理由

児童養護施設に子どもたちが入所する理由はさまざまです。

厚生労働省が2018年に発表した「児童養護施設入所児童等調査の結果」によると、児童養護施設の入所理由として、以下が挙げられています。(※各数値、父母で合算)

  • 父母の虐待・酷使(22.5%)
  • 父母の放任・怠だ(17.0%)
  • 父母の精神疾患(15.6%)

ほかにも、父母の死亡や離婚・養育拒否などの入所理由が多いという実態があるようです。

このように親子関係に問題を抱える子どもには、特に心理的なケアや援助が必要になるため、児童養護施設の有用性は高いと言えるでしょう。

出典:社会的養護の施設等について/厚生労働省

出典:児童養護施設運営指針/厚生労働省

出典:児童養護施設等について/厚生労働省

出典:児童養護施設入所児童等調査の概要/厚生労働省

児童養護施設における職員の役割と仕事内容

児童養護施設で働く保育士の写真

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児童養護施設で働く職員の役割

児童養護施設で働く職員の役割として、以下の2つが挙げられます。

  • 家庭的養護と心理的な回復:入所した子どもたちが愛され大切にされていると感じ、信頼関係や自尊心を取り戻していけるようにする
  • 家族との連携と自立支援:子どもたちが健全に成長し、自立するための支援を行う

それぞれくわしく見ていきましょう。

生活(家庭的養護と心理的な回復)

児童養護施設で働くには、入所する子どもが抱える多様な問題に配慮する必要があります。

虐待体験や両親との分離体験などによって、子どもたちは心の傷や深刻な生きづらさを抱えているという実態があるようです。

職員は子どもが抱える問題を充分に把握し、寄り添い、信頼関係を構築していき、一人ひとりに合った対応をすることが重要になるでしょう。

また、担当する子どもの年齢層が幅広い(主に1歳過ぎから18歳)ことも特徴で、子どもの年齢に合わせて適切な養育・教育を行う必要があります。

自立支援(家族との連携と自立支援)

児童養護施設の子どもは、保護者の死亡や養育困難、不適切な養育などの入所理由があります。

そのため、保護者自身も子どもをうまく育てられないことに悩んでいるかもしれません。
子どもや親の問題状況の解決や緩和を目指して、家族と連携をすることも大切です。

さらに、保護者に代わって、生活の支援や自立に向けたサポートもしています。
職員は子どもたちが家庭に戻れるように援助し、進学・就職などによって自立できるように、退所後も長い目で見守る支援を行っています。

職員の仕事内容

児童指導員の1日の流れは、食事や入浴など安定した生活環境の手助け、引き取りに関する保護者との面談、学校行事への参加や進学・就職相談などの業務がメインになるようです。

児童養護施設の職員は子どもたちの親代わりでもあるため、勤務時間も24時間の中で交代制の施設が多いそうです。

複数のスタッフで早番、中番、遅番とシフトを組むため、遅番では夜勤勤務するケースもあります。どんな勤務形態か事前に把握しておくといいかもしれません。

出典:児童養護施設運営指針/厚生労働省

児童養護施設で働く職員の配置基準

仕事内容がわかったところで、児童養護施設における職員の配置基準を見ていきましょう。

児童養護施設で働いている職員

児童指導員・保育士

保育士や児童指導員は入所児童の健全な成長を育むために、日常生活の指導や支援を行っています。

保護者に代わって子ども達の養育を中心となって担う、養育の専門職といえるでしょう。

嘱託医・看護師

嘱託医や看護師は主に入所児童の健康管理を行います。
状況によって、けがの手当や薬の投与を行うこともあるようです。

家庭支援専門相談員

ソーシャルワーカーとも呼ばれる家庭支援専門相談員とは、児童養護施設などで働く職員のことを指します。

家庭のサポートが主な役割で、子どもの引き取りについて保護者と話し合ったり、里親の委託を支援したりしています。

また、退所した子どもたちの相談と援助、地域の関係機関との連絡や調整、子育て家庭の相談や援助などを行うようです。

心理療法担当職員

心理療法担当職員は児童養護施設や児童自立支援施設などで働く、心理療法を行う職員のことです。

入所児童だけでなく保護者に対しても、カウンセリングなどの心理療法を実施して心のケアや支援を行います。

また、心理の専門家としてほかの職員へ助言や相談を行うこともあるようです。

里親支援専門相談員(里親支援ソーシャルワーカー)

里親支援専門相談員は、児童相談所の職員や地域の里親会等と連携して、子どもを引き取りたいという里親を支援したり、施設と里親をつないだりしています。

里親を対象とした研修やアフターフォローなどを行うこともあるでしょう。

栄養士・調理員等

栄養士や調理員は児童の食事提供と栄養管理を支援します。

栄養士はバランスのとれた献立を作成して食事管理を行い、その献立にもとづいて食べやすいよう工夫して調理します。

子どもたちの健康状況に応じて、バランスのとれた献立や美味しい食事を提供して、成長のサポートを行っているようです。

児童養護施設の配置基準

児童養護施設では、以下の人員の配置が児童福祉法に定められています。

  • 保育士、児童指導員
  • 看護師
  • 医師
  • 栄養士(40人以下の施設は配置なしも可)
  • 調理員(調理業務を全部委託する場合配置なしも可)
  • 個別対応職員
  • 家庭支援専門相談員
  • 施設長

心理療法担当職員(必要な児童が10人以上いる場合、職業指導を行う場合)なども状況によって配置する必要があるようです。

このうち、児童指導員及び保育士の配置基準は以下のように設定されています。

児童養護施設の配置基準

45人以下の施設では、上記の配置基準からさらに1人の職員が追加されることとなっています。

出典:最低基準等及び措置費における職員配置基準について/厚生労働省

児童養護施設で働くには

児童養護施設で働く保育士の写真

polkadot_photo/shutterstock.com

次に、児童養護施設で働くにはどうすればよいか具体的に説明します。

必要な資格

児童養護施設の配置基準は、職種や職員数に応じて決められていました。

資格職に関しては、主に保育士、社会福祉士、心理療法士、看護士、管理栄養士などが挙げられるようです。それぞれくわしく紹介します。

保育士、嘱託医、看護師、栄養士、調理師

上記の各職員については、国家資格を有していることが求められます。

児童指導員

児童指導員になるには、任用資格が必要になります。
以下が任用資格を取得するための要件です。

  • 社会福祉士、精神保健福祉士の資格を有する。
  • 大学または大学院で、社会福祉学、心理学、教育学、または社会学を履修して卒業する。
  • 小・中学校、高校等の教員免許を取得したうえで、都道府県知事に適当と認められる。

上記のほかに、児童福祉事業経験者が児童指導員の任用資格を取得することができます。

家庭支援専門相談員

社会福祉士や精神保健福祉士の資格がある方、児童養護施設などで5年以上の勤務経験がある方は目指すことができます。

施設長

児童養護施設の施設長として働くには、社会福祉主事任用資格や児童福祉司任用資格を有していている方で、なおかつ厚生労働大臣が指定する者が行う研修を受ける必要があります。

事務員・用務員

特に資格は必要ないようです。
しかし、事務やオフィスワークでの実務経験やPCスキルの民間資格などがあると、入職後もスムーズに業務に取りかかれるかもしれません。

児童養護施設の求人状況と応募方法

公立の児童養護施設

正規職員として公立の児童養護施設で働くには、保育士資格などの資格を取得したうえで、公務員試験に合格する必要があります。

地方自治体に採用されて公務員として働くため、安定した給料をもらえることがメリットでしょう。

採用方式は自治体によってさまざまですが、児童養護施設などの福祉系の職種を希望しても、定期的に人事異動があるため別の部署に異動になるかもしれません。

ただし、近年では臨時職員としての募集も増えているようです。
臨時職員の場合、異動はありませんが、1年や6ヶ月など定められた期間での契約になるようです。

公務員試験の採用に関しては、希望の自治体のホームページを確認しましょう。

私立の児童養護施設

私立の児童養護施設では、各施設の運営法人が独自に求人を出しているため、働くには次のような方法で応募するとよいでしょう。

  • 施設の公式ホームページを常にチェックする
  • 有資格者向けの求人サイト(保育士専門など)で求人案件を検索する
  • ハローワークなどの求人案件を検索する
  • 学校の就職支援課で常に情報を収集する

私立の児童養護施設で働くには、日頃から情報をチェックしておくことで、求人を見逃しにくくなるでしょう。

給料に関しても、深夜手当やシフト手当などを含めて月給19万~21万円など、充実した待遇の施設もあるようです。

なかには正規職員のほかにも、アルバイトやパートを募集している場合もあるそうです。

資格を持っていない学生を対象に保育補助や調理補助、事務といったアルバイトを募集している場合もあるかもしれませんね。

児童養護施設に応募するときの志望動機の書き方

児童養護施設に応募する際、志望動機の書き方で悩む方もいるかもしれません。
児童養護施設の志望動機では、子どもに対する思いや考え方、応募した理由を明確にすることがポイントです。

「大学の授業での学びから児童福祉に興味を持ちました」「ボランティアや実習を通して、児童養護施設で働くことが目標になりました」など、強い気持ちが伝わる体験や動機がを考え、アピールしてみましょう。

児童養護施設で働くやりがいと大変さ

児童養護施設で働く保育士のやりがい

家族のように愛情深くかかわることができる

児童養護施設で生活する子どもにとって児童養護施設は家庭であり、職員は本当の親代わりのように愛情を注いで育てていきます。

心身のケアが難しいと感じることもあるかもしれませんが、そのぶん成長のよろこびは大きく、やりがいが感じられるかもしれません。

一番近くで寄り添って成長を見守っているからこそ、子どもが困ったときや悩んだときに「〇〇先生に聞いて欲しい!」と頼り慕ってくれることも、児童養護施設の保育士として働くやりがいといえそうです。

幅広い年齢の子どもの支援ができる

児童養護施設には、主に1歳児から18歳までの子どもが入所してきます。

乳幼児期の子ども接する保育士さんとは異なり、学童期や青年期に差し掛かる子どもの育ちを支えられることは魅力と言えるでしょう。

多様なコミュニケーションや学校生活のサポート、キャリア形成など、子どもの人生にかかわることをいっしょに考えていけるという大きな目標ややりがいを感じられそうです。

社会に貢献できる

困っている子どもや保護者を支える児童養護施設は、社会にとってなくてはならない施設です。

子どもの貧困やネグレクトなどの社会問題に直接アプローチしつつ、関係機関と協力しながら問題を解決できる立場でもあるため、社会に貢献しているという実感を得ることができるでしょう。

やりがいを持って社会のためになる仕事に就きたいと考える保育学生さんにはぴったりかもしれません。

児童養護施設で働く保育士の大変さ

夜間勤務と土日祝に勤務がある

子どもたちの生活の場である児童養護施設は、24時間365日体制で稼働しています。

そのため職員は、夜間勤務や土日祝祭日の勤務を含めて、シフトによる交代制で働く必要があります。

体調管理やスケジュール調整が大変な面もありますが、夜間手当などで給料に反映されることもあるため、その点はメリットと捉えることができそうですね。

忍耐力が必要

さまざまな理由で児童養護施設に入所してくる子どもたちには、これまでの経験から大人への信頼感を失っている場合もあります。

そのため、入職したばかりの職員に対しては「本当に信頼できる人かな?」という思いから試すような行動をするかもしれません。

保育学生さんの忍耐力が問われますが、それを乗り越えたぶん、子どもと厚い信頼を結ぶことができれば、やりがいやうれしさなどを感じられるでしょう。

子どもと保護者への支援の難しさ

児童養護施設の入所理由は一人ひとり異なるうえ、心のケアが必要な子どももいるでしょう。

子どもたちの心にいかに寄り添い向き合っていくのか、保育士にとって経験や対応力の幅を広げる努力も必要になりそうです。

また、引き取りにおいては保護者との関わり方においても、コミュニケーション力や状況に応じた判断力が求められる場面も出てくるかもしれません。

それぞれの家庭が持つ問題に寄り添い、ともに解決に向かうために、丁寧に対応する真摯さと、勉強し続ける姿勢を大切にしましょう。

児童養護施設で働く前にやっておくとよいこと

児童養護施設で働くには、事前に仕事内容や働く環境を知ることが大切かもしれません。

以下のような方法を通じて、児童養護施設の現場に参加してみましょう。

児童養護施設の施設実習に参加する

保育士資格の取得要件として設定される施設実習では、児童養護施設での実習を選べる場合もあるようです。

その場合は、学校からの紹介施設を探して実習申し込みを行うとよいでしょう。

自分で施設を探して申し込むこともできるようですが、学校からの申し込みを優先している施設が多いかもしれないので、確認しておくとよいですね。

児童養護施設でボランティアやアルバイトをする

実習以外にも、児童養護施設のボランティアやアルバイトを経験することで、仕事内容や施設の雰囲気がわかり、就職活動に活かすことができるでしょう。

ボランティア

児童養護施設のボランティアに参加するには、施設の運営法人やNPO法人のホームページから応募窓口を探してみましょう。

また、大学や専門学校を通じてボランティアを募集している場合もあるため、学生課に問い合わせるのも一つの方法です。

アルバイト

児童養護施設には、学生アルバイトの求人を出しているところもあるようです。

職種はさまざまですが、WEBで求人情報を探すこともできるでしょう。

夏休みや春休みなど長期休暇の期間に、学生アルバイトに参加するのもよいかもしれません。

児童養護施設で働くには役割や仕事内容を把握したうえで、スキルや資格を取得しよう

今回は、児童養護施設とはどんな施設か、働くにはどうすべきかなどを説明しました。

児童養護施設には、さまざまな入所理由で保護者から離れて生活する子どもたちが暮らしています。

社会的に自立できるように、子どもだけでなく保護者や里親に対しても支援を行うことが大切でしょう。

児童養護施設で働くには、実習やボランティアに参加して雰囲気を掴むと、仕事内容をイメージしやすくなるかもしれません。

仕事内容や必要な資格、スキルなどを把握して、児童養護施設への就活に活かしてみてくださいね。

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