認可保育園とは。運営や配置基準、認可外保育園や幼稚園との違いなど

認可保育園とは、国の基準を満たした保育園という「認可」を受けた保育施設です。以前は定員20名以上の保育所が一般的でしたが、現在ではより保護者のニーズや自治体の実情に寄り添うため、認定こども園や地域型保育事業など、新たに認可施設として制度が整えられた形態の認可保育施設もあります。身近な子育て支援施設である認可保育園についてまとめました。

認可保育園とは認可外保育園や幼稚園と違い
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保育所(認可保育園)とは

保育所は児童福祉施設の1つ

保育所とは、保護者が働いているなどの何らかの理由によって保育を必要とする児童を預り、保育することを目的とする施設で、児童福祉法第7条に規定される「児童福祉施設」の中の1つでもあります。

認可保育園とは

「認可保育園」という呼び名が一般的に浸透していますが、法律上で認可保育園は上記の「保育所」という名称になります。自治体が運営する公立保育所と、民間団体が運営する私立保育所があります。

保育所の役割と仕事

就学前の0~5歳の子どもを定員原則20人以上で預かります。就労などのため家庭で保育のできない保護者に代わって保育する施設です。利用できる保護者は自治体によって「保育の必要性の認定」を受けた世帯で、共働き世帯、親族の介護などの事情で、家庭で保育のできない保護者に限ります。利用時間は夕方までの保育のほか、園により延長保育を実施しています。

保育所の認可とは

認可とは簡単に言えば、国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理等)をすべてクリアして、都道府県知事に認可された施設のことです。認可によって、運営費として国から補助金が受けられます。

認可は自治体に申請

認可保育園として運営を始めるには自治体に申請をして認可をもらう必要があります。
認可保育園として運営、開設の準備を始めるには、上述の国の基準、自治体の定める基準に加えて、建設に関する条例や運営のための補助金が下りるかどうかなど各種関係法令などと照らし合わせてさまざまな条件をクリアする必要があり、自治体と相談したうえで申請します。こうして認可保育園として認められることで運営を始めることができるようです。

保育料金と補助金

認可保育園の運営費

認可保育園の運営費は、その多くが補助金といわれています。国や自治体から開設や建設、経営に関する運営費が支給されているようです。これから保育士として働く上でも、自身の勤める園の運営状況は知っておきましょう。

認可保育園の運営費の補助金

現在の認可保育園の補助金は公定価格から利用者負担である保育料を引いた額となります。
公定価格は保育所運営にかかる大まかな費用であり、保育料は認可保育園が手にすることのできる制限された収入です。本来であれば、保育料として収入を得たいところを、保育サービスを安価に提供するために保育料は上限が設けられています。
そこで、運営にこれくらいかかるだろうという公定価格から、実際に受け取る収入の保育料を引いた、いわば認可保育園の負担になってしまう部分を国や自治体が補助金という形で補うことが認可保育園へ支給される補助金の大まかな位置づけです。
実施されている補助金の内容は自治体ごとに異なり、補助金制度の中には施設側の自己負担が発生する場合もあるため一概には言えませんが、その運営費の多くを補助金で賄うことができるでしょう。

出典:「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」/内閣府

出典:公定価格の仕組みについて/内閣府

認可保育園は幼児教育・保育無償化の対象

少子高齢化問題に本格的に取り組むため、政府は2019年10月からスタートする消費税率の引き上げによって確保できる財源を、子育て世代や子どもたちに活用する方針を決定しています。それが「幼児教育・保育無償化」です。認可保育園は保育無償化の対象施設になっています。

出典:幼児教育の無償化について/内閣府

無償化の対象となる認可保育施設と子どもの年齢

国と自治体の認可を受けた認可保育施設は、無償化の対象施設になります。

<無償化の対象となる認可保育施設>

・保育所
・認定こども園
・地域型保育
(小規模保育・事業所内保育・家庭的保育など)

無償化の対象年齢

政府は幼児教育無償化の対象となる子どもとして、「3歳から5歳までの全ての子ども及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子ども」と範囲を定めています。

無償化による保育料の徴収

無償化によって、認可保育園の保育料の徴収に変化があります。

保育料は徴収なし

今までも認可保育園の保育料は市町村が窓口となり徴収していましたが、今後は保護者は保育料に関しては支払うことがなくなります。

保育無償化対象外の費用は保育園が徴収

保護者から実費で徴収する費用に関しては、無償化の対象にはならず、従来通り保育施設側が実費を保護者から直接徴収します。

<保育無償化の対象外費用>
・通園送迎費
・食材料費
・行事費 などの経費

出典:「幼児教育の無償化に関するFAQ(2019 年2月 18 日版)」/内閣府

広がる認可保育施設の範囲

現在認可保育園と一般的に言われているのは「保育所」を指すことが多いのですが、待機児童問題などの解消のために平成27年より本格スタートした子ども・子育て支援新制度によって、新たに「認定こども園」と「地域型保育」が認可保育施設として普及しはじめました。共働き世帯、親族の介護などの事情で、家庭で保育のできない保護者の認定を受けた子どもを預かる、保育所と同じ機能を果たしています。

認定こども園

就労には保育士資格と幼稚園教諭免許の両方の取得を求められるケースが多いようです。
幼稚園と保育所の機能や特長をあわせ持ち、地域の子育て支援も行う施設です。
0歳から2歳は「保育の必要性の認定」を受けた保護者の子どものみ利用できます。利用時間は昼過ぎごろまでの教育時間に加え、保育を必要とする場合は夕方までの保育を実施しています。3歳から5歳の子どもについては、保護者の働いている状況に関わりなく教育・保育をいっしょに受けます。保護者の就労状況が変わっても、通いなれた園を継続して利用でき、園によっては延長保育も実施しています。

出典:「認定こども園」/内閣府

地域型保育事業

保育所(原則定員20人以上)より少人数の定員で、0から2歳の子どもを保育する新しい形態の保育事業です。「保育の必要性の認定」を受けた保護者の子どもが利用できます。地域型保育事業は、保育ママや小規模保育園など、少人数で家庭的な雰囲気のもとで保育が行われる形態の施設が多いことが特徴です。
地域型保育事業には、次のような形態の施設があります。

【地域型保育事業の形態】

・小規模保育事業
・事業所内保育事業
・家庭的保育事業(保育ママ)
・訪問型保育事業

出典:「地域型保育事業の概要」/内閣府

認可保育園の管轄と職員配置基準

認可保育園の管轄は厚生労働省

認可保育園の管轄は厚生労働省、根拠法令は児童福祉法第7条に基づいています。

出典:「幼稚園・保育所に関する行政体制」/内閣府

認可保育園の職員配置基準とは

保育園が運営する上で満たさなくてはならない基準があります。その一つが保育士の配置基準です。これは厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」に定められています。保育士一人で子ども〇人まで保育ができるという基準であくまでも最低基準です。
現場でより質の高い保育をしていこうとするならば、より多くの保育士が必要になり、現在では国が定めた配置基準以外に、地域の実情に合わせて都道府県が配置基準を定めている自治体もあります。

職員配置基準

保育士の配置基準

子どもの年齢 保育士の配置基準
0歳児 子ども3人に対し保育士1人
1~2歳児 子ども6人に対し保育士1人
3歳児 子ども20人に対し保育士1人
4歳以上児 子ども30人に対し保育士1人

※ただし、保育所1園で常に2人を下回ることはできません。

出典:「保育士養成について」/厚生労働省

保育士以外の職員の配置基準

嘱託医及び調理員は必ず配置が必要です。
ただし調理業務を全て委託にする場合は、調理員を置かなくても問題ありません。

認可保育園の公立・私立の違いと運営(経営)母体

公立保育園と私立保育園

保育所は、2000年以降の規制緩和により、公立保育所の民営化が進んでいます。
そのため現在では、国の運営基準を満たして認可されている認可保育施設には「公立保育園」と民間運営による「私立保育園」があります。
どちらの保育園も、国や自治体からの運営費の補助金を受けて運営しており、保護者が支払う保育料も市町村の窓口に支払うため、その額に違いはありません。
公立保育園と私立保育園の違いは、施設の運営母体の違いによって保育士の働く環境面や子どもを預かる保育方針などに違いが生じる場合があります。

公立保育園の運営

公立は、自治体(市区町村)が設置と運営している保育園のことです。そのため、公立保育園で働く正職員の保育士は、地方公務員という扱いになります。

私立保育園の運営

民間団体や企業が運営する保育園になります。主な運営は 社会福祉法人、学校法人、宗教法人、 NPO法人、株式または有限会社、個人運営など、さまざまな運営母体が認可保育園の運営に参加しています。

認可保育園の保育士の給料

認可保育園や他の認可保育施設の給与

認可保育園や、認定こども園など他の認可保育施設の給料平均を、勤務環境や勤務施設別に比較してみました。公立は私立と比較して高い傾向ですが、公立の保育園は民間企業に委託運営が進んでおり、総じてその施設数は減少傾向にあります。また、自治体による地域差も大きいようです。

<認可保育施設の保育士の月給平均>

公立 私立
保育所 279,797円 262,158円
認定こども園 251,128円 242,043円
小規模保育(A型) 227,136円
事業所内保育(20人以上) 217,568円

出典:「平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について」/内閣府

処遇改善とキャリアアップ研修

国は、平成29年度(2017年)から「技能・経験に応じた処遇改善」を導入しています。
保育士の処遇改善として始まった「キャリアアップ研修」では、指定の研修を経て新しい役職に就くことで待遇を改善するという制度です。具体的には、保育経験が3年以上ある保育士を対象として、条件を満たせば職務分野別リーダーとなることができ、経験年数によって処遇改善手当が加算されます。

出典:「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善について」/内閣府

認可保育園と幼稚園の違い
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認可保育園と幼稚園の違い

保育所と幼稚園は、子どもの保育を行うというほぼ同じ内容であるにも関わらず、それぞれの所轄省庁の違いによって、次のような違いがあります。

幼稚園と保育所の違い

幼稚園 保育所
所轄省庁 文部科学省 厚生労働省
根拠法令 学校教育法第1条 児童福祉法第7条
機能・役割 ・満3歳児~小学校就学前
満3歳から小学校就学の始期に達するまでの幼児を対象に教育を行う学校
(特区においては2歳児入園が可)
・0歳児~小学校就学前
保護者の就労等により保育に欠ける乳児又は幼児等を保育する児童福祉施設
教育・保育内容 幼稚園教育要領 保育所保育指針
1日の教育・保育時間 4時間を標準として各園で定める。(39週以上) 8時間を原則とし,保育所長が定める。(約300日)
必要な資格 幼稚園教諭普通免許状 保育士

出典:「幼稚園・保育所に関する行政体制」/内閣府

出典:「幼稚園と保育所の比較一覧」/文部科学省

認可保育園と認可外保育園(無認可保育園)の違い

認可外保育園(無認可保育園)とは

認可外保育園とは、認可保育園に比べ、基準が緩やかに設けられている施設です。補助金等の収入源はなく、それぞれの認可保育園でも目的や特色、目指す保育内容は異なります。例えばベビーホテル、企業内保育所など、ユーザー(保護者)のさまざまなニーズに合わせた、一般でいう「無認可保育園」が身近では多いのではないでしょうか。
都市部では、認可外保育施設が認可保育園の定員に漏れた3歳未満児(待機児童)の保育、延長保育や24時間保育の受け皿として、保護者のさまざまなニーズにこたえています。

出典:認可外保育施設について/東京都福祉保健局

運営費の違い

認可保育園と認可外保育園にはさまざまな違いがありますが、大きな違いの1つに保育料と運営費の違いが挙げられます。

認可保育園

認可保育園は国及び自治体から補助金が出るため、保育料や預かる子どもの割り振りの窓口が、各自治体の市区町村になり、各園に子どもが割り振られます。保護者が保育料を支払う場合は家庭の所得水準によって異なります。
また、保育園の運営や設備、保育士の給料には補助金が出るため、安定した運営が見込まれます。

認可外保育園

一方で認可外保育園はそれぞれの施設に保護者が直接応募します。基本的には国や自治体からの補助金が出ないため、保育料は全体的に高くなる傾向です。都市部では国の基準は満たしていないものの、都市部の保護者のニーズを満たした、自治体独自の基準を満たした施設に認証を与え、補助金を出す制度を設けている自治体もあります。
そういった園での保育料安くなるので、一部の園では認可保育園と変わらない水準の料金になることもあります。
認可外保育園には基本的に国からの補助金は出ないことから、園の収入は保護者からの保育料が大きな割合を占めると考えられます。

認可保育園は国の制度変更をより反映していく

認可保育園は国や自治体の補助を受け、国や自治体の保育制度、方針、保育士の待遇面での改革や改正を反映する保育園と言えます。また、福祉施設の1つとして、今後も地域に密着した子育て支援の拠点として、子どもと保護者に寄り添っていく施設と言えるでしょう。

※情報は2019年6月時点のものです。

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