保育士としてのスキルアップには、どのような方法があるのでしょうか。資格取得やキャリアアップ研修の活用、保育や教育の本を読むなどが一般的に挙げられるかもしれません。今回は、保育士のスキルアップについて、役立つ資格や研修、スキルアップのための目標設定の仕方を解説します。
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■目次
保育士のスキルアップにはどんな方法がある?
近年、保育士は保育・教育の質の向上や多様化する保育ニーズに対応するため、専門的な知識が求められる機会が増えたことから、スキルアップを行う保育士が増えている傾向にあるようです。
そもそも保育士のスキルアップには、
- 保育・教育に生かせる資格を取得する
- キャリアアップ研修を活用する
- 保育・教育に関する本を読んで知識を向上させる
などの方法が一般的に挙げられるでしょう。
保育士不足や早期離職が進んでいる中で、スキルアップを目指すことは自分自身の専門性の向上やキャリアアップが明確になり、長く続けられることにつながるかもしれません。
今回は、保育士のスキルアップに役立つ資格や研修ついてくわしく紹介します。
また、スキルアップをする上での目標設定のポイントについても解説します。
これから保育士を目指す保育学生にとっても、役立つコラムなので参考にしてみてくださいね。
資格取得は保育士のスキルアップにつながる
近年、保育のニーズは多様化してきており、専門性の向上など保育士のスキルアップに役立つ資格がさまざまあるでしょう。
2018年度、東京都は「保育士が取得したい資格」というアンケート「平成30年度東京都保育士実態調査結果」を実施した結果、「保育実技」、「特別な支援を必要とする子どもの接し方」、「発達心理学」に関する資格取得を希望する人が多いことがわかりました。
上記の結果は、保育士のスキルアップに大きくつながるかもしれません。
どのような資格があるのか具体的に紹介します。
絵本専門士
絵本専門士は、絵本や子どもに関する高度な知識、おはなし会やワークショップなどを運営する技能や豊かな感性を身につけた絵本の専門家ともいわれている資格です。
保育園や幼稚園では、子どもたちに絵本の読み聞かせを行うところも多いのではないでしょうか。絵本の読み聞かせは、言語力、感性、文脈理解力、物事の理解力の発達に効果があるといわれています。そのため、日々の保育や教育に役立つだけでなく、保育士のスキルアップにつながる資格として人気があるようです。
資格受講料はだいたい6万5000円ほどで、絵本専門士になるには、30コマ(1コマあたり90~120分)の授業で一定の成績を修め、すべての授業を終了した後に行う修了課題において、資質や能力があると評価される必要があるようです。
子どもたちに絵本の読み聞かせをするための技術や絵本に対する知識を向上させたい場合は、取得に励んでみるのもいいかもしれませんね。
リトミック指導員
リトミック指導員は、リトミックを活用して子どもの年齢に合った指導を行えるようになる資格です。手遊びや歌うことが多い園に向いている資格かもしれません。
そもそもリトミックとは、スイスの作曲家が考えだした音楽を用いた教育法です。子どもが音楽やリズムに合わせて楽しく身体を動かすことで、「身体的」、「感覚的」、「知的」といった潜在的な基礎能力の向上を目的としています。
リトミック指導員の資格を取得するためには、養成学校に入学して集中して学ぶ、もしくは研修会に参加したり、通信講座で勉強したりと受講方法を選ぶことができます。
方法によって年間の受講料は5万円から100万円程度と差があるため、自分に合った方法で受講するといいかもしれません。
ネイチャーゲームリーダー
ネイチャーゲームリーダーとは、自然を活用した遊びを提案し、自然と人を結びつける自然案内人とも呼ばれることがある資格です。
ネイチャーゲームは心と体で自然を感じることで、豊かな自然の表情を楽しむ自然体験活動を指しており、ネイチャーゲームに関心がある18歳以上の方であればネイチャーゲームリーダーの講習が受講可能なようです。
ネイチャーゲームは現在170以上あるため、自然を楽しみながら子どもたちと遊ぶヒントになりそうな資格ですね。ネイチャーゲームリーダーの講習では1泊2日、もしくは2泊3日で、室内や野外において12以上のネイチャーゲームの体験、そして指導実習と座学などを行うそうです。
1泊2日の講座と2泊3日の講座では資格受講料が異なり、教材や入会金、リーダーの登録料など諸々の費用を合わせるとだいたい1万円ほど別途かかるようです。また、資格を取得した後も更新費用が必要になるようなので、詳細をきちんと確認するようにしましょう。
チャイルドマインダー
チャイルドマインダーとは、取得すると自宅や訪問先で最大4人の子どもを預かることができる、少人数保育スペシャリストとして注目されている資格です。
0歳児から12歳児までと幅広い子どもを預かることができ、イギリスでは70年以上の歴史がある国家資格として知られています。少人数の子どもを預かるため、一人ひとりに対してきめ細やかな保育ができそうですね。
また、チャイルドマインダーは通学制、もしくは通信制で学ぶことができるようです。受講料は通学制の場合は、入学金と合わせて15万~40万円前後、通信制の場合は12万~20万円前後となっているそうなので、目安として検討してみるといいかもしれません。
育児セラピスト
育児セラピストは、発達心理学の知識にもとづいて子どものたちの心を育み、保護者に適切な育児のアドバイスを行うのに役立てられる資格です。発達心理学を学びたい方や保護者など対人関係を強化したい方に向いている資格といえるでしょう。
発達心理学やアタッチメント理論(愛着理論)を学ぶことは、子どもの発達に関する知識や育児知識を深めることにつながります。さらに、子育てに不安を抱える保護者に対して、具体的な回答を行うことにつながり、セラピストということもあって癒すというスキルも身につくかもしれません。
育児セラピストの受講料は、前期と後期を合わせて20万円程度のようです。年会費や更新料が不要となっており、一度資格を取得した方は再受講制度を活用すれば約3万円でもう一度受講することができるなど、くわしい要件などは事前に確認するようにしましょう。
臨床発達心理士
臨床発達心理士とは、大人、子どもと年齢を問わずに発達に関する問題を見定めて、具体的な支援を行うことができる資格です。多様化する保育ニーズへの対応や、特別な支援を必要とする子どもと接する際のスキルが向上しそうですね。
ただし、臨床発達心理士になるために申請の要件を満たさなくてはいけません。発達心理学に関係する大学院を修了しているか、公認心理師資格を取得している、臨床経験が3年以上あるなど自分にあてはまる要件を確認しておきましょう。
臨床発達心理士の公式ホームページによると、認定審査料は約3万円となっていますが、登録料に1万円前後、年会費として1万円ほどが別途かかるようです。
さらに、臨床発達心理士の有効期間は5年となっており、資格を更新するためには5年の間に研修会などに参加して新しい知識を得て、更新料を支払う必要があるそうです。
くわしい内容は臨床発達心理士の公式ホームページ等で確認するようにしましょう。
認定病児保育スペシャリスト
認定病児保育スペシャリストは、病児保育専門の認定する日本初の資格となっています。育児保育が行えることの証明にも活用できたり、保育中に子どもが突然発熱したときも慌てずに対応できたりするので、日常保育の中でも役立つ資格といえるでしょう。
認定病児保育スペシャリストは、子どもが突然の体調不良を起こした場合に、保護者に代わって適切なケアと保育行うときに役立つ資格です。病院などの施設に入院している子どもの保育を行うには、医療保育専門士や認定病児保育専門士の資格が必要になるようです。
この資格は、インターネットを使用したWeb講座での資格受講が可能となっています。そのため、自分の好きな時間に勉強でき、働きながらでも取得に励みやすい資格といえるでしょう。受講料は約5万円、資格登録料は5000円ほどを目安に検討してみるといいかもしれません。
このように、保育士のスキルアップに役立つ資格はさまざまあります。
ほかにも、保育士の資格には運動保育士、ベビーマッサージ、ベビーセラピスト、認定子育てアドバイザー、チャイルドコーチング、レクリエーション・インストラクター、医療保育専門士などがあるため、自分のスキルアップしたい分野に合わせて選ぶとよさそうです。
受講に必要な要件や受験料については変更になるケースもあるため、受講前にきちんと確認するようにしましょう。
キャリアアップ研修を利用すれば保育士のスキルアップを実現できる
保育士のスキルアップには資格取得だけでなく、キャリアアップ研修を活用するのもよいでしょう。
キャリアアップ研修とは、政府が実施していている処遇改善制度のうちの「処遇改善等加算Ⅱ」に該当する研修制度のことです。
内閣府「平成30年度子ども・子育て支援新制度市町村向けセミナー資料
」によると、キャリアアップ研修は、保育士に役職を設けることでキャリアパスの仕組みを作り上げ、一定の技能や経験がある職員に対して適した手当を給料に加算するものとしています。
保育士のスキルアップにおいて、キャリアアップ研修を活用すれば、自分自身の専門性の向上だけでなく、キャリアパスが明確になるというメリットがあります。また、技能や経験に応じて給料が上がることもメリットといえるでしょう。
キャリアアップ研修は、目指す役職によって受講するときの要件が変わってきます。たとえば「職務分野別リーダー」、「若手リーダー」という役職では、経験年数がおおむね3年以上、専門的な分野においてリーダー的な役割を担当している保育士であり、なおかつ専門的な分野の研修を修了していることが要件となっています。
また、保育園や幼稚園など施設の規模によっても、役職を配置する人数が異なるため、キャリアアップ研修を活用するときは、園長や主任保育士などに確認してみるとよいでしょう。
キャリアアップ研修は、目指す役職によって必要な要件が異なりますが、要件を満たすことで保育士のスキルアップに役立つだけでなく、給料の加算にもつながる制度なので、視野にいれてみるといいかもしれませんね。
保育や教育の本を読むこともスキルアップに役立つ
日々の業務が忙しく、資格取得やキャリアアップ研修を受講する時間をなかなか割けないという保育士もいるかもしれません。
そのような場合に、保育や教育に関する本を読んで知識を得ることも、スキルアップに役立つといえるでしょう。保育士のスキルアップに役立つ本には、入門書や専門書がよく挙げられていますが、漫画やエッセイ、小説、絵本など気軽に読めるジャンルから入る方法もあります。
また、保育士のスキルアップに役立つ本を読むことによって、
- 自分の好きな時間にスキルアップに役立つ知識を習得できる
- 本で得た知識を実践しやすくなる
- 漫画やエッセイなどでは、楽しみながら知識を得ることができる
などといったメリットがあります。
子どもの発達から保育士のノウハウ本など、保育や教育に関する本は多岐にわたって出版されているようです。保育士のスキルアップに役立つ本を読むことで、知識が深まるだけでなく、本で得た知識をすぐに実践しやすくなるので、参考にしてみてくださいね。
保育士のスキルアップにおける目標設定のポイント
資格取得やキャリアアップ研修などによるスキルアップは、保育士のモチベーションアップにつながるでしょう。また、目標設定を行うことでキャリアパスが明確になり、自分に必要なスキルを改めて知ることができるかもしれません。
さらに、目標設定を行うことで自己評価をしやすくなるでしょう。保育施設によっては、自己評価を掲出して公表するところもあるようです。
厚生労働省「保育所保育指針解説」の資料によると、保育士などは、保育の計画や記録を行うことで自分の実践を振り返り、自己評価を行うことで保育の専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない、としています。
ここでは、保育士のスキルアップにおける目標設定のポイントについて説明します。
勤務年数によって具体的な目標設定を立てる
保育士のスキルアップにおける目標設定を行うポイントとして、勤務年数によって具体的な目標を設定立てるようにすると、自分が今何をクリアしていく必要があるのかが明確になるでしょう。
保育士のスキルアップにおける目標設定は、はじめから高い目標を立てるのもよいですが、まずは基本のことから考え、応用したものに対応できるようにすると、達成のために努力しながら新たな目標を見つけることにつながるかもしれません。
たとえば、1年目は「報告や連絡、申し送りはきちんと行う」など、社会人の基礎的なことを目標設定にすると、基本を学べるだけでなく習慣として身につくようになるでしょう。
2年目は、1年目の振り返りや反省を生かしつつ「子どもや保護者と信頼関係を築く」といった、保育や教育に絡めた目標設定にしてもいいかもかもしれません。
そして3年目からは、「キャリアアップ研修を視野に入れて本を〇冊読む」や「育児セラピストの資格を取得する」など、スキルアップを取り入れたより具体的な目標設定にしてみると、保育士としてのモチベーションアップや今後のキャリアパスが明確になりそうですね。
目標を達成する期限を決める
保育士のスキルアップにおける目標設定を行うポイントとして、目標を達成する期限を決めるのもよいでしょう。
たとえば、「〇〇までに資格取得をする!」と決めておかないと、資格取得に必要な勉強をしないまま受験日を過ぎてしまうことがあるかもしれません。
そのため、「1年後の〇月には絵本専門士の資格を取得できるようにする」と期限を定めて目標設定をします。そうすることにより、具体的にいつまでに何をして、どうすれば決めた期限までに取得できるのか計画を立てることができるでしょう。
反対に、「1カ月で資格を資格する!」など短い時間の中で期限を設定してしまうと、ゆっくり休みを取れず、体調不良につながってしまう事も考えられるため、達成につながりにくくなるもしれません。
目標設定はあくまで、こういう風になりたいという理想の姿でもあるので、無理のない範囲で期限を決めて進めていくといいでしょう。
もしも、結果として設定した目標を達成できなかったとしても、落ち込む必要はありません。勉強したことで得た知識は無駄にはならないため、以前の自分より成長できている、スキルアップに役立っているとポジティブに捉えるようにすると次回への糧になってよいでしょう。
目標設定を行うことは、自分自身の現状を振り返ることにもつながります。自分の強みや足りない部分を知ることで、保育士としてのスキルアップ生かすことができそうですね。
資格取得や研修などを行い、保育士のスキルアップに活用しよう
今回は、保育士のスキルアップの方法として資格や研修、目標設定の方法を紹介しました。
資格取得やキャリアアップ研修を活用する、保育や教育に関する本を読むなどの方法は、多様化する保育ニーズへの対応や、保育現場で役立つ専門的な知識を得ることができるため、保育士のスキルアップにつながるでしょう。
ただし、やみくもに資格を取得したり、研修を受けたりするだけでは、スキルアップにつながりにくいので、無理のない範囲で取り入れてみるとよさそうです。
そして、保育士のスキルアップでは、目標設定を行うこともとても大切になります。新卒1年目から目標設定を行って自分の強みや弱い部分を自覚することで、保育・教育に生かせるスキルアップに役立てみてくださいね。