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設定保育と自由保育の違い。保育理念や活動内容など異なるポイント

保育園や幼稚園では、各園の保育理念や保育環境にあわせて設定保育や自由保育を導入していることでしょう。そのなかで、設定保育と自由保育には、それぞれどのような違いがあるのか気になる方もいるかもしれません。今回は設定保育と自由保育、それぞれの特徴や保育士の役割を解説したあとに、2つの違いについて解説します。


設定保育と自由保育の違いとは。保育理念や活動内容など異なるポイント
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設定保育と自由保育にはどんな違いがある?

保育園や幼稚園では、大きく分けて設定保育と自由保育の2つが行われていることでしょう。
保育学生の中には、「設定保育と自由保育の違いがよく分からない」、「それぞれ何が違うの?」と気になっている方もいるかもしれません。


設定保育と自由保育には主に、


  • 保育理念
  • 活動内容
  • 保育士の役割
  • 保育士の人数

などの違いが挙げられるようです。


今回は、設定保育と自由保育の違いについて、それぞれの概要や保育士の役割、メリットとデメリットとともにくわしく解説します。



設定保育と自由保育の特徴や役割

設定保育と自由保育にはさまざまな違いがありますが、その違いを知るためには2つの保育がどのようなものなのか知ることが大切になります。


まずは、設定保育と自由保育の特徴や保育士の役割、メリットとデメリットについて見ていきましょう。



設定保育とは


設定保育とは、保育士が意図を持って定めた目標やねらいをもとにして、日々の活動を行う保育のことです。時間や内容を計画的に定め、クラス全体や園全体で一つのことに取り組むしくみとなっています。


設定保育は子どもたちが集団でいっしょに活動することから、「一斉保育」と呼ばれることもあり、設定保育と一斉保育は同じものとして捉えられているようです。


設定保育の特徴

設定保育では、保育士があらかじめ考えた計画をもとに、音遊びや手遊び、お絵かき、お散歩などをクラス全体で行うのが特徴です。クラス全体で行うこともあれば、少人数のグループに分かれたり、違う年齢同士でグループになったりして、一つのことに取り組むところもあるようです。


設定保育の場合は、保育士が活動内容を決めて子どもに提案するため、保育士中心の保育といわれることもあるようですが、保育士が考えたことを必ず子どもにやってもらうものではありません。設定保育は子どもたちの成長を見ながら次にできることを考え、一人ひとりの成長に合わせて行うことを理想としている保育といえるでしょう。


設定保育はクラス全体で同じ活動を行うことで、子どものできることとできないことの見極めがしやすくなることも特徴といえそうです。


設定保育における保育士の役割

設定保育における保育士の役割には、


  • 子どもの成長に応じて目標やねらいを考え、指導案を作成する
  • クラス全体に目を配るだけでなく、個人の対応にも配慮してサポートする
  • 子どもの人数やできることに応じて時間や場所を決め、適切な環境設定を行う

などが挙げられるでしょう。


設定保育の導入時には、子どもの成長に応じて目標やねらいを考え、保育士はそれをクラス全体でできるように指導していきます。


ただしクラス全体に目を配る際、一斉に活動することでつまづく子どもがいないか周囲を確認し、子ども一人ひとりの様子に配慮したうえで、サポートすることがとても重要となるでしょう。


子どもたちそれぞれができることを把握し、適切な環境設定をすることも設定保育における大切な役割といえそうですね。


メリットとデメリット

設定保育を導入することでさまざまなメリットとデメリットがあります。
設定保育のメリットとデメリットをそれぞれ簡単に紹介します。


<メリット>

  • 1日の保育時間を効率的に使うことができる
  • 保育士のねらいや目標に沿った活動がしやすくなる
  • 行事や製作などの事前準備がしやすくなる

設定保育では、保育士がねらいや目標を定めて計画的に子どもたちを指導するため、効率的な活動が行えそうですね。


また、子どもたちと何をするか決めておくことで、室内で製作するときや外で遊び回るとき、行事の前など事前の準備がしやすくなるかもしれません。


<デメリット>

  • クラス全体で楽しめる保育のアイデアを考えるのが難しい
  • 子どもが保育者の指示を待つことに慣れてしまう
  • 子ども自身の自主性や発想力が育ちにくい
  • 集団の中にいる子ども一人ひとりに配慮した声がけや対応が必要になる

設定保育の別名、一斉保育という名前にもあるようにクラス全体が一斉となって同じ活動を行うため、子どもたち全員が楽しめるようなアイデアを考えなくてはいけません。しかし、クラス全体が楽しめて、子どもたちが飽きないようなアイデアを日々考えるのは大変ですよね。


さらに、保育士から指示をすることが多い設定保育では、子どもたちが保育士から指示されることに慣れてしまい、行動する際に指示を仰いだり、自分で考えたりする力が育ちにくくなってしまうことが考えられるでしょう。


また、集団の中には設定保育が苦手という子どもがいるかもしれないため、保育士は一人ひとりの様子に気を配りながら、声掛けや対応をしていく必要がありそうです。


設定保育は保育士がねらいや目標といった計画を定めることによって、子どもたちは集団で同じ体験をすることができる保育です。それにより、子どもの得意、不得意が把握しやすくなるかもしれませんね。



自由保育とは


自由保育とは、子どもの自主性を尊重して自発的な活動を育む保育のことです。

設定保育のように遊びや運動などクラス全体で一つのことを行うのではなく、子ども一人ひとりが自由に遊べるような環境設定を行います。


何をするか子どもたち自身が決める自由保育では、お絵かきする場所、ブロックで遊ぶ場所、折り紙や粘土で製作をする場所、もしくは外遊びできる場所と遊びごとに環境設定を作っている保育施設もあるようです。


自由保育の特徴

自由保育は保育士が子どもたちに保育活動を提案するのではなく、子どもが自分自身でどんな活動をしたいかを考えて自発的に遊ぶことが特徴といえるでしょう。


遊びごとに室内外で場所が設定されているため、保育士はそれぞれの場所に配置され、子どもたちを時にフォローしたり、いっしょに遊んだりすることも自由保育の特徴といえそうです。


自由という言葉から、保育士が子どもがすることを見ているだけの放任保育と混同されがちですが、自由保育では子どもにトラブルが起きてないか常に気を配り、子どもの興味や好みに合わせてねらいや環境設定を考えて行われている保育といえるでしょう。


自由保育における保育士の役割

自由保育の特徴が分かったところで、次に保育士の役割について見ていきましょう。


自由保育での保育士の役割には、


  • 子どもの一人ひとりの興味に合わせて、楽しく遊べるような環境設定にする
  • 子どもの遊びの幅が広がるような提案を考える
  • 何をしていいか迷っている子どもにアドバイスする
  • 危険な遊びをしている子どもはいないか、トラブルが起きていないか常に気を配る

などが挙げられるでしょう。


自由保育は子どもの自主性を尊重しているため、保育士は子どもたち一人ひとりが興味を持って自由に遊べるような環境設定を行うことが重要になるでしょう。さらに、子どもたちの自由な発想をより活かせるような提案をしたり、遊ぶものが決まらない子どもにアドバイスしたりすることもあるようです。


子どもたちが自由に遊ぶことで、危険な遊びをしている子どもや子ども同士でおもちゃの取り合いなどのトラブルが発生することも考えられるため、保育士はすぐに対応できるように子どもの行動に気を配ることが大切といえそうですね。


メリットとデメリット

自由保育を導入するとさまざまなメリットとデメリットが発生するようです。
自由保育のメリットとデメリットについて簡単に紹介します。


<メリット>

  • 子どもたちの自主性や発想力を育むことができる
  • 柔軟な保育を実施できる
  • 子ども一人ひとりの好みや性格が把握しやすくなる

自由保育は子どもの自主性を尊重する保育ということもあり、子どもの自主性や発想力をより育むことができるかもしれません。


また、子ども一人ひとりに合わせたねらいや環境を柔軟に設定できるようです。

それにより、子どもの好みや性格が把握しやすくなるため、子ども一人ひとりに対する理解も深まりそうですね。


<デメリット>

  • 子どもに声をかけるタイミングが難しい
  • すべての子どもに目を配る必要がある
  • 子ども同士のトラブルにつながりやすくなる

自由保育では保育士の意図に反した遊びをしていても、自主性や発想力を尊重するため見守ることが必要になるようで。しかし、ずっと見守っているだけでは、子どもを放っているだけの放任保育になってしまうので注意するようにしましょう。


おもちゃの取り合いなど子ども同士のトラブルが起こることも考えられるため、子どもの自主性を大切にしながらも、必要なときは保育士がきちんと指導していくことが大切になります。


さらに、自由保育は子ども自身が決めた環境で自由に遊ぶため、保育士は一人ひとりに目を配る必要があり、子どもの現状況をきちんと把握する必要があるといえるでしょう。


ここまで、設定保育と自由保育の特徴や保育士の役割、メリットとデメリットを説明しました。設定保育と自由保育ではさまざまな部分で違いがありますが、改めて具体的な違いについて見ていきましょう。



設定保育と自由保育の違い①保育理念

設定保育と自由保育は保育理念に違いがあります。


まず、設定保育はあらかじめ保育士が目標やねらいを含む計画を定め、その計画に沿ってクラス全体など集団で一つの活動を行う保育となっています。


一方、自由保育は子どもの自主性や自発的な活動を尊重する保育です。そのため、子どもが興味や関心を持ちそうな環境設定が必要になる保育といえるでしょう。



設定保育と自由保育の違い②活動内容

設定保育と自由保育の違いとして、子どもたちの活動内容が挙げられるでしょう。


設定保育では、「今日は折り紙で製作をしてみましょう」、「みんなで歌を歌ってみよう」と保育士が計画した活動を子どもたちに提案します。そして、子どもたちは全員いっしょにその活動を行うことになります。


自由保育は最初に保育士から遊びを提案するのではなく、施設内の遊び場で子どもたちがしたいと思った遊びを自由に行います。そのため、絵をかく子もいれば、外で遊び回る子などもいるかもしれません。



設定保育と自由保育の違い③保育士の役割

設定保育と自由保育は、保育士の役割に違いがあるといえるでしょう。


設定保育は1つのクラスやグループで同じ活動を行うため、保育士は子どもたちを集団で指導することになります。活動の中で個々にできることとできないことを把握し、できるように指導や援助を行うこともあるようです。


一方、自由保育では子どもが自由に遊ぶため、一人ひとりに合った環境設定を考えることになるでしょう。どんな場所でどんな道具を使用して遊ぶのがいいのか、子どもたちの自主性を尊重するからこそ、個々に興味を持てるような環境設定を行い、様子を見ながら指導を行うことも必要となりそうですね。



設定保育と自由保育の違い④保育士の人数

設定保育と自由保育は、保育士の人数にも違いがあるといえそうです。


もちろん園の規模や施設によって規定がありますが、設定保育の場合は子どもたちを集団で指導するため、保育園の既定どおりに子どもが30人に対して保育士が1人を配置すれば対応できるかもしれません。


一方、自由保育は子どもたちが自由に遊ぶため、30人も子どもがいれば外で遊ぶ子と室内で遊ぶ子に分かれることも考えられます。さらに、室内で遊ぶ子どもはお絵描きをしたり、マット運動したりする子も出てくるかもしれません。


そうなると、保育士が1人だけではすべての子どもに対して常に目を配ることが難しくなりますよね。子どもたち一人ひとりに目を配れるように、自由保育のほうが設定保育よりも保育士の人数が多く必要になるといえるでしょう。


このように、設定保育と自由保育では保育理念、子どもたちの活動内容、保育士の役割や人数に違いがあります。そのため、子どもたちの日々の行動や保育士の仕事内容も異なるかもしれませんね。



設定保育と自由保育の特徴や違いをきちんと理解して、仕事に役立てよう

今回は、設定保育と自由保育の違いについて、特徴や保育士の役割、メリットとデメリットをもとに説明しました。


設定保育と自由保育では、保育理念、子どもたちの活動内容、保育士の役割や人数などに違いがあります。保育士の仕事や子どもへの指導方法が異なることで、自分がどちらの保育内容に向いているかなども明確になるかもしれません。


また、保育園や幼稚園では設定保育と自由保育の良いところを両方取り入れているところもあるようです。設定保育と自由保育の違いをきちんと理解することで、就職先を選ぶときや保育士として働く際に役立てられそうですね。

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