実習日誌や実習記録の書き方に悩む保育学生さんも多いのではないでしょうか。これらは指導担当の先生と学びを共有し、評価をいただくためのものですが、修正や直しを減らすためにも、ポイントを押さえることが大切です。今回は、実習日誌の記録の書き方と、気づきやまとめなどの例文、作成見本をまとめました。
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■目次
保育実習を記録する「実習日誌」とは?
保育実習で書く「実習日誌」や「実習記録」とは、その日の様子とともに保育者や子どもたちの動き、実習生さんの気づきなどをまとめた記録です。
記録する内容などフォーマットは学校によって異なりますが、主に、時間と子どもたち、保育者、実習生の動き、環境構成から成り立っているようです。
実習担当の先生から記録の内容に直しや助言をもらうことで、保育者としての指導をしてもらえる機会でもあります。
保育の現場に出ると、活動のねらいや内容、進め方を自分で決めていくことになるため、記録をしておくことで自分自身の振り返りや今後の保育に役立てられるでしょう。
また、就職の軸を考えるときのヒントになるかもしれません。
今後も役立つよう、実習日誌は具体的に記録することが大切になりそうですね。
実習日誌・実習記録の見本
実習日誌には「子どもの活動」や「実習生の気づき」などさまざまな項目がありますが、どんなことを記録すべきかわからない方もいるでしょう。
ここでは、実習日誌の見本をもとに、記録する内容を具体的にまとめてみました。
<実習日誌の見本>
保育実習記録には、大きく分けて上記のような「時系列型」と、エピソードを文章で記録する「エピソード型」があります。
主に書く項目は変わりませんが、一日の活動を時系列で記録するか、エピソード形式で記録するかといった違いがあるようです。
日付や天気、クラスなどの基本事項
園によって記録内容は異なりますが、日づけや天気、入ったクラス名、担任名などを記入する欄が設けられています。
男女別に出欠人数を書く場合もあるため、実習中に忘れずメモを取るようにしましょう。
実習生の目標とクラスのねらい
次に、一日の目標やねらいを記録する欄があり、実習に参加するクラスの当日のねらいを書きます。
前日のうちに、翌日のクラスのねらいを担任の保育士さんに確認しておくとよいですね。
実習生の目標欄には、本日の実習に対する自分自身の目標を立てておきましょう。
目標やねらいによって、一日の意識の仕方が大きく変わるようです。実りのある実習にするためにも、具体的な目標やねらいを考えてみましょう。
一日の活動の流れ
時系列形式では、大きな活動の区分でまとめて、時間とともに記録をしていきます。
また、時間毎に一日の流れ、子どもの活動や保育者の援助をエピソード形式での記録、その事実に対する考察を記録するエピソード型の実習記録もあります。
今回は、主に時系列型で記録する例を挙げていますが、エピソード形式の場合は、「一日の活動」の内容をまとめて文章にして記入していきましょう。
時間
ここには、活動が切り替わる時間を記入するようにしましょう。
保育実習の初日では、一日の生活の流れを知ることから始まるのではないでしょうか。
例えば、給食を12時には食べ始められるようにするには何時から片付け始めるとよいかなど、保育者は時間を逆算して声をかけているはずです。
片付けの声かけをしてから給食が始まる時間を記録しておくと、時間の把握にもつながるでしょう。
子どもの活動
子どもの活動は、クラス全体の活動と、子ども一人ひとりの動きや言葉などを記録していきます。
時間にあわせて子どもたちはどのような活動をしたのかを記入しましょう。
◯登園
保護者と登園をする。
・元気に挨拶を交わす。
・保育者に呼ばれ、検温をしてもらう。
以上のように「◯」や「・」などの記号を使って、子どもたち全体の動きと、細かな動きや一人ひとりの動きを分けてみると、わかりやすいかもしれません。
保育者の援助や配慮
子どもたちに対して、保育者がどのような働きかけや声かけをしているのかを記録していきましょう。
また実習中には、保育者の援助や配慮に対する「実習生の気づき」が大切になります。
何気ない関わりにも保育者の意図や配慮があるため、見逃さないようにメモに残しておくと日誌をスムーズに書けるかもしれません。
例えば製作をしたときの保育者の援助や配慮であれば、以下のように保育者の援助を振り返りながら意図を考えてみましょう。
<例>
- 子どもたちがイメージしやすいように見本を用意しておく。
- 進め方が伝わりやすいよう大きな声でゆっくりと説明する。
実習記録では、保育士さんたちの動きをよく観察し、自分なりに意図やねらいを考えてまとめることが大切です。
実習生の気づきや動き
実習生の気づきや動きを書く欄には、実習生自身が気づいた点やどのように行動したのかを記録していきます。
<例>
- 目のパーツの配置がわからなくなった子に対して、先生が「◯◯の目ってどこにあったっけ」と声をかけていた。教えるのではなく自分で考える機会を作っていることに気づいた。
- 手に取るのりの量の調整が難しい子には、「お米1粒くらいの」とイメージしやすい大きさを伝えた。
このように、具体的な気づきや、実際の実習生さんの動きを記録することで、実習担当の先生より評価や助言をしてもらえるでしょう。
環境構成
環境構成の欄には、保育者と子どもたちの位置や机やおもちゃの配置など、図を使って書いていくとよさそうです。
<環境構成図の例>
保育者は部屋の全体を見渡すことができる位置にいたり、子どもが遊びやすいようおもちゃの出す位置をコーナー毎に分けていたりと、さまざまな環境作りをしているでしょう。
実習記録には環境構成図をかくよう意識していると、指導案の作成にも役立つかもしれませんね。
反省や感想などまとめ
最後に、一日の反省や感想をまとめていきます。
はじめに書いた目標やねらいに対する自分自身の評価をもとに、一日を通して感じたことや気づいたこと、疑問に思ったことなどを記録していくとよいでしょう。
また、反省点を踏まえて次の日の実習ではどのようなことに取り組んでいきたいかなどを具体的に書くと、より翌日の実習が濃いものになるかもしれませんね。
全てを書き終えたところで一度誤字脱字や文章がおかしくないかを見直してみるとよいでしょう。
保育実習の日誌は記録する欄が多く、慣れないうちは時間がかかってしまうこともあるかもしれませんが、実習中の保育者や子どもたちをよく観察しておけば、書きやすくなるでしょう。
また、返ってきた日誌を見て、直しが多いと落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
実習担当の先生は、実習生が一人前の保育者になれるよう指導してくれているため、吸収できる機会だと受け止められるとよいですね。
実習日誌や記録をスムーズに書くためには
実習日誌た実習記録を作成するにあたり、実習中にはどのようなことを意識するとよいのでしょうか。
保育者の意図を観察・質問する
保育者の行動や発言には必ず意図があり、「友だちと協力することの楽しさを知ってほしい」など、園生活を通してさまざまな力を身につけてほしいと思いからきているようです。
その活動を選んだ意味や声かけの内容を意識して観察するようにしましょう。
保育者の意図がわからない場合や解釈があっているか気になる場合は、その都度質問してみることで疑問が解消されるかもしれませんね。
また、保育所保育指針をあらかじめ読んでおくのも、実習日誌の記録内容や、保育者の意図を理解するための助けになるでしょう。
クラス全体に目を配る
実習日誌を書きやすくするために、保育者や子どもの動きなどを全体的に観察することを意識してみましょう。その際、メモを取ることも忘れずに行うのがポイントです。
実習中は子どもの動きや用具の片付けなど、つい一つのことに集中してしまいがちです。
保育者の話に対して子どもたちはどのような表情や言動をしたか、環境構成にはどのようなことが配慮されているかなど、全体も観察するようにしましょう。
しっかりとメモを取る
観察したことや先生の話を忘れないために、空いた時間にはメモを取るよう心がけるとよいでしょう。
なかには、ペンなど先の尖ったもので子どもを傷つけないよう、活動中のメモが禁止されている園もあるようです。
休憩時間にすぐ書けるよう、あらかじめ日誌と同じようにクラスの人数、時間、環境構成、本日のねらいなど、メモのテンプレートを作っておくとスムーズですね。
実習日誌や実習記録を書くときのポイント
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担当の先生は忙しいなか実習生さんのため指導してくださっているため、余計な直しが発生しないよう気をつけることが大切です。
ここでは実習日誌の基本の書き方を見ていきましょう。
字を丁寧に書く
実習日誌を記録するときは、文字の大きさや斜めになっていないか、雑な字になっていないかなどを見ながら書きましょう。
また、できる限り誤字脱字などの訂正がないよう気をつけることが大切です。
学校や園の決まりで、誤字の訂正に修正テープを使ってもよい場合や、二重線を引いて訂正印を押す場合など分かれるようなので、実習担当の先生に確認してみるとよいですね。
表記に気をつける
実習日誌た実習記録では、間違えやすい言葉や表現があるようです。
語尾の統一
日誌に記録するときは、「ですます調」か「である調」に統一しましょう。学校で指定される場合もありますが、書いている途中で揺れないように意識しながら書きましょう。
正しい言葉遣い
語尾だけでなく、言葉遣いにも気をつけるとよいでしょう。
「食べれる」「食べてます」のように「ら」や「い」が抜けていないか、確認してみるとよいかもしれません。
また、保育者が指示・指導するような「~させる」「~してあげた」といった言葉は、保育現場ではあまり使われていません。
子どもが主体となるよう「~ように促す」「~と声をかける」など、子どもの自発性を尊重した表現を意識してみましょう。
文法
実習日誌で間違えやすいのが、主語と述語の対応ができてない、接続詞の使い方などです。
<例文>
- 「Aくんが私に『遊ぼう』と声をかけられた」
- 「今日は集会でホールに行ったが、皆座って話を聞けていた」
→「Aくんが私に『遊ぼう』と声をかけた」
→「今日は集会でホールに行った。皆座って話を聞けていた」
主語と述語の関係や、接続詞の使い方には気をつけるとよいかもしれませんね。
また、「~たり」は「走ったり、ジャンプしたり」と2回重ねて使うなどもありがちな間違いの一つです。
実習日誌や実習記録では、正しい文法を使うように意識しましょう。
見たことだけでなく、自分なりの気づきを書く
子どもたちの動きを見て「~だった」「~と思った」ではなく、「保育者の~には○○な意図があると感じた」「~と思ったから自分(実習生)はどうしたのか」など「気づき」を書いてみましょう。
気づきや発見が得られない、よくわからないときには、実習担当の先生に「なぜあのときこうしたのか」を質問してみると、指導やアドバイスをもらえそうですね。
このように、指導上で直しが減るように書き方を意識することが大切です。
実習日誌や実習記録は、実習生さんの評価につながるものなので、丁寧な記入を心がけましょう。
実習日誌・実習記録の例文
保育実習の日誌を書くとき、書き出しがわからなかったり、周りの保育学生さんの書き方が気になったりする方もいるかもしれません。
時系列形式とエピソード形式で記入する一日の内容と、反省や感想などのまとめを日誌に記録するときの例文をまとめてみました。
一日の活動記録の例文
一日の内容には、この5つについて記録していきます。
- 時間
- 子どもたちの動き
- 保育者の援助や配慮
- 実習生の気づきや動き
- 環境構成
具体的に、どのように記録していくとよいのでしょうか。
時系列形式の例文
時系列形式の実習日誌では、以下の例文のように記録するとよいでしょう。
見本のように、子どもの姿と保育者の援助や実習生の気づきが一致するように、箇条書き形式で記録するとよさそうです。
エピソード形式の例文
<0歳児クラス 自由遊び おもちゃを取りあう場面>
Aさんとボールを転がして遊んでいると、Bくんは転がるボールが気になったようでAさんのボールを取っていきました。Aさんは泣いてしまいます。
保育者は、Aさんの隣で「ボールがなくなっちゃって悲しかったね。Bくんもこのボールで遊びたくなったみたいだよ」と声をかけました。
Bくんには「きっとAさんが遊んでいたボールが気になったんだよね。」と声をかけると、Bくんはうなずいています。
次にBくんに「Aさんが遊んでいたボールだから、Aさんに「貸して」って言ってみようか」と声をかけ、いっしょに「貸して」と伝えに行きました。
Aさんは「いいよ」と言ってくれたため、保育者は「じゃあ、いっしょに遊ぼうか」と声をかけ2人の遊びを仲立ちしていました。
このことから、保育者はお互いの気持ちを受け止めながら、0歳児の子どもに友だちとの関わり方を伝えていることを実感できました。
また、0歳児や1歳児クラスでは一人ひとりが好きな遊びに夢中になることで自己が満たされるように配慮しているそうです。
おもちゃは子どもの人数分用意したり、コーナーを設けたりといった援助の大切さに気づきました。
例文のように流れや記録形式によって書き方が異なりますが、5つの項目を踏まえながらまとめましょう。
見本を参考に、保育者の配慮や実習生の気づきを細かく書いてみるとよいかもしれません。
まとめ・感想・反省の例文
一日の総合的な感想や反省となるまとめの記録は、翌日や今後の課題が明確になるよう具体的に書くとよさそうです。例文を見ていきましょう。
例文1
今日は「0歳児と1歳児の子どもたちが興味のあるものを知る」ことを目標に設定していました。
自由遊びの時間では、一人ひとりが何に興味があるのかを意識しながら観察できたと思います。
Aくんは音が鳴るおもちゃが気になるようで、おもちゃを振ったり叩いたりしています。
一方おままごとをするBさんは、ぬいぐるみをおんぶする姿が印象的でした。
「最近下の子が誕生したためお母さんの姿を真似ているのかもしれない」と先生に聞き、Bさんはお母さんに関心があるのかもと感じました。
0歳児や1歳児でも、一人ひとり興味や関心が異なり、保育者はそれに合った環境設定をしていることを知りました。
子どもたちの力を伸ばしていくためにも、個々の興味を知ることが大切なのだと感じました。
本日の気づきを活かして、明日は「興味に対してさらにどのような遊びを展開していけるか」を考えていきたいと思います。
例文2
今日は散歩での保育者の援助や配慮を学ぶため、散歩中の保育者の動きを意識して観察しました。
散歩に行く前は、横断歩道の渡り方や、つないだ手を離さないことなど、約束事を確認していました。出発前に確認することで、子どもたちがより意識できていると感じました。
散歩中は最前列と最後列に保育者がいて、安全とペースが保てるような配慮がされていると気づきました。
また、狭い道で車とすれ違うときは、保育者が笛を鳴らし危険を知らせていました。
前列と後列では見える範囲が異なり、車に気づけないこともあるため、全員に危険箇所を共有するための配慮だと気づきました。
今回の散歩を通して、保育者は子どもたちの安全面を常に意識していることがわかりました。
ケガや危険がないよう配慮することで、子どもたちは楽しく散歩に行けるのだと思います。
今後、散歩に行くときには、今回の◯◯先生の配慮を見本に、子どもの安全を守るために必要な工夫を考えていきたいと思いました。
以上の例文のように、目標やねらいに対する反省や気づきを書くことで、具体的な明日や今後の課題が見えてくるでしょう。
また、実習日誌を記録するなかで生じた疑問も書いておくと、担当の先生に指導やアドバイスをもらえるかもしれません。
実習日誌をしっかり記録して、学びを形に残そう
今回は、実習日誌や実習記録のポイントや内容について紹介しました。
記録に残せるよう、実習中には保育者や子どもの動きだけでなく全体を見るなど、視野を広げて観察していくことが大切です。
学校や園によって日誌の形式は異なるようですが、気づきがあった場面や学んだことに焦点をあてて書いてみると、進めやすいかもしれません。
助言や指導を受けて一日の自分自身の評価をまとめながら、実りある実習日誌が書けるとよいですね。
見本や例文を参考に、実習日誌や実習記録の書き方に活かしていきましょう。