進級から1カ月が経ち、子どもそれぞれの特徴も見えてくる5月。新しく5歳児を担任した保育士さんには、月案作成に悩む方もいるかもしれません。今回は、5歳児クラスで使える5月の月案の文例を紹介します。養護・教育のねらいや活動に加え、安全や健康に関する配慮と月反省の書き方などもまとめました。
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■目次
5月の5歳児クラスの特徴とは?
5月には、子ども同士のかかわりも深まり、それぞれの性格や好きな遊びを保育士さんが把握できるようになる頃かもしれません。
また、5月の5歳児クラスには以下のような特徴が見られるのではないでしょうか。
- 年長になることに消極的だった子も、自覚や意欲が少しずつ芽生える
- 連休明けには、期待感を持って登園したり、寂しさを感じたりする様子がある
- 遠足やこどもの日の集い、母の日といった行事を楽しみにする
新しい環境に慣れ、遠足やこどもの日など行事も増えてくるこの時期には、子どもたちの期待感や意欲を育む保育を意識するとよいかもしれません。
月案でしっかりと計画立てて、5月の保育をスムーズに進めていきましょう。
【5月】5歳児の月案の文例:前月の子どもの様子
4月末の5歳児クラスに見られる子どもの姿の文例を紹介します。
- 新しい環境に慣れて、少しずつ落ち着いて過ごすようになる。
- 気の合う友だちができて、誘い合いながら集団で遊んでいる。
- 年長児としての自覚を持ち、係の活動や年下の子どものお世話をしている。一方、やることがわからなかったり、やり方が合っているか不安になったりする姿もある。
- 自信を持って身の回りのことを行い、褒められることをよろこんでいる。
文例のように、年長になったことから意欲的に過ごしている姿や、一方で戸惑いを感じている姿などを汲み取れるとよさそうです。
子どもの姿をしっかりと確認し、5月の月案作成のたたき台にしましょう。
【5月】5歳児の月案の文例:今月のねらい・活動内容
ここでは、5月の5歳児クラスにぴったりなねらいと活動内容の文例を見ていきます。
今月のねらい
ねらいは、養護と教育の2項目から文例をまとめました。
養護のねらい
- 手洗いやうがいの大切さに気づき、丁寧に行おうとする。
- 身の回りのことに意欲を持ち、進んで行う。
教育のねらい
- 園外での集団行動を楽しみ、春の自然に気づいたり、社会でのマナーを知ったりする。
- 友だちとのかかわりをよろこび、いっしょにのびのびと遊ぶ。
5月には園外保育や遠足を予定している園も多いでしょう。
行事に向けて経験してほしいことを、ねらいに盛り込んでいくとよいですね。
活動内容
月案のねらいをもとに、5歳児の子どもが経験する具体的な活動内容の文例を紹介します。
養護
<生命>
- 手洗い、うがいを自発的に行い、健康に必要な習慣を身につける。
- 戸外でのびのびと遊ぶ心地よさを感じる。
<情緒>
- 連休明けの不安定さに寄り添ってもらい、落ち着いて過ごす。
- 保育者に見守られながら安心できる空間のなかで過ごす。
教育
<健康>
- 正しい箸の持ち方や食事のマナーを意識しながら食べようとする。
- 手洗いの大切さを知り、友だち同士で声をかけ合いながら清潔を保とうという意識を持つ。
<人間関係>
- 遠足のグループを作り、グループ名ややりたい遊びを考えて期待を感じる。
- 生活のなかで必要な決まりに気づき、約束を守ろうとする気持ちを持つ。
<環境>
- 散歩を通して交通マナーや信号や道路の決まりについて知り、友だち同士で声をかけ合いながら守ろうとする。
- こいのぼりの由来について知り、こどもの日に込められた願いに親しみやうれしさを感じる。
<言葉>
- 保育者の言葉に耳を傾け、内容を理解しようとする。
- 友だち同士で思いを伝え合い、いっしょに過ごす心地よさを味わう。
<表現>
- 春のあたたかな気候や風の心地よさを感じ、保育者や友だちと共有して過ごす。
- 音楽や体操を通して、友だちとともに身体を動かして表現することを楽しむ。
5歳児の子どもたちは、自分の思いや考えをもとに、未来を予測して行動する力が身につく頃と言えます。
「~だから○○しよう」と子どもの内発的動機づけを促せるよう、5月の月案で考えてみましょう。
【5月】5歳児の月案の文例:環境構成と保育者の援助・配慮
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次に、ねらいや活動内容をもとにした、保育士さんの援助や環境構成の文例を見ていきましょう。
養護
生命
- 手洗いに関するペープサートを通して、石鹸を使って指の間まで洗うことの大切さを伝えていく。
- 気候のよい日には戸外で身体を動かして遊べるよう、個別に誘っていく。
情緒
- 連休明けにはゆったりと過ごせるよう、室内でじっくり取り組める遊びを増やす。
- ゆったりと好きな遊びに集中できる時間を確保し、情緒の安定を図る。
教育
健康
- 食事のマナーを守って食べられるよう、繰り返し伝えるとともに、上手に食べられている子どもの名前を挙げて褒めていく。
- しっぽ取りやドッジボールなど、友だちとかかわりながら身体を動かせる遊びができるよう道具やコートの準備を行う。
人間関係
- 遠足を通してレクリエーションや集団遊びを行い、友だちと過ごすことの楽しさを伝える。
- 話を聞くときには、姿勢を正して話す人の顔を見るよう声をかける。
環境
- 子どもが戸外で見つけた草花の名前を調べられるよう、図鑑を置いておく。
- こどもの日や母の日といった行事に親しみと関心が持てるよう、素話やペープサートで由来を伝えていく。
言葉
- しりとりやなぞなぞといった言葉遊びを取り入れ、文字や言葉の持つ面白さに気づけるようにしていく。
- 思いがぶつかったときには、落ち着いて話せる環境を作り、子ども同士の伝え合いを支えていく。
表現
- 春の歌を取り入れ、歌詞の意味や音の持つ響きの美しさを伝えていく。
- 自由遊びの時間には好きな音楽を楽しめるよう、CDプレイヤーを用意して使い方を伝える。
ねらいをもとに、5月の5歳児クラスの子どもたちに適した援助を考えていきましょう。
文例のように、月案では保育士さんの言葉がけだけでなく、保育環境についても検討していけるとよいですね。
【5月】5歳児の月案の文例:家庭連絡・安全・食育
5月の月案に記入する家庭連絡、安全、食育に関する配慮事項の文例をまとめました。
家庭連絡
- 懇談会に向けて子どもの様子を丁寧に汲み取り、保護者に伝えていく。
- 遠足の行き先や準備物などを連絡し、早めに準備してもらえるようお願いする。
健康・安全・衛生
- 園庭の遊具で遊ぶ前には、危険な箇所や壊れている部分がないか事前に確認を行う。
- 日中はあたたかくなることが多いため、汗をかいたら肌着を着替えられるよう声をかける。
食育
- しっかり噛むことの役割と大切さを繰り返し伝える。
- 園庭で栽培しているトマトのお世話を通して、食べ物を大切に思う気持ちを育んでいく。
懇談会や遠足など行事がたくさんある5月。
しっかりと保護者の方と連携できるよう月案で計画しておきましょう。
【5月】5歳児の月案の文例:反省・自己評価
月案の振り返りに活用できる、反省や自己評価の文例を紹介します。
養護
- 手洗いの正しいやり方を繰り返し伝えることで、きちんと洗えるようになった。また、他児に対しても洗い方を教える姿も増えてきた。
- トマトの栽培を取り入れることで、食に対する興味を育んでいけた。当番活動に不慣れで不安感を持ったり、当番を忘れたりする姿もあるので、引き続き注意して見守っていく。
教育
- 言葉遊びや植物遊びなど、子どもたちの興味を広げる取り組みをしていけた。今後も日常のなかで適宜取り入れていく。
- こどもの日の製作を通して、伝統行事への関心を育むことができた。
5月に取り入れた活動や行事について振り返りや反省を行いましょう。
月案で計画したねらいが達成できたかという視点で確認していくとスムーズですね。
月案に活用できる5月の5歳児保育のポイント
最後に、月案の計画にも落とし込める、5月の5歳児クラスの保育におけるポイントをまとめました。
連休明けにはゆったり落ち着ける保育を
5月の連休明けには、突然の生活リズムの変化から疲れが出やすくなることが考えられます。
気持ちが落ち着かなくなり、ちょっとしたことからトラブルにつながる可能性もあるため、なるべくゆったりと過ごせるよう活動内容を整えましょう。
静かに絵本を読む時間を増やしたり、粘土や工作など手先の動きに集中する遊びをしたりと、5歳児の子どもたちの気持ちが落ち着くよう配慮できるとよいですね。
遠足や交流行事では行事を楽しめる声かけが大切
5月の5歳児クラスでは、遠足や交流行事、食育活動などさまざまな行事を予定している保育園も多いでしょう。
子どもたちに多くのことを吸収してもらうためにも、ただ行事を行うだけでなく、前もって話をしたり、行事にまつわる絵本を読んだりと導入していくことが大切です。
5歳児には自分の思いを言葉で伝えられる力もついてくるため、集まりの時間に楽しみなことや行事について知っていることなどを話し合ってみてもよいかもしれません。
こいのぼりや母の日には、由来や意味を伝えて関心につなげる
こどもの日や母の日といった記念日のある5月。5歳児クラスでは、行事の由来や意味を説明する機会を設けるのもよさそうです。
子どもたちが興味を持てるよう、絵本を読み聞かせたり、簡単な言葉にして言い換えて伝えたりと工夫してみましょう。
少し難しいお話も興味を持って聞くことができる頃なので、こいのぼりの由来やカーネーションの花言葉などを伝えるのもよいかもしれません。
文例を知って5月の5歳児クラスの月案を作成しよう
今回は、5月の5歳児クラスで活用できる、ねらいや反省など月案の文例を紹介しました。
この時期の年長クラスでは、新しい環境に慣れて友だちとかかわりながら意欲的に過ごしている姿が増える頃かもしれません。
保育士さんは、子どもの興味や意欲を拾い上げて、「やってみたい」「なんだろう」と興味を持てるような活動や援助を月案で考えていきましょう。
また、遠足やこどもの日などの行事についても同じように、丁寧に伝えて子どもの関心を広げることが大切です。
コラムの文例を参考に、5歳児クラスの5月の月案に活かしてみてくださいね。