保育実習後に出すお礼状には、一般的なマナーとして時候の挨拶が必要となります。季節にあわせた挨拶に、どのようなことを書けばよいのか知りたい学生さんもいるかもしれません。今回は、保育実習のお礼状における、12カ月分の時候の挨拶を紹介します。また、結語や頭語、締めの言葉などを含む例文もまとめました。
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■目次
保育実習のお礼状における時候の挨拶とは
一般的な手紙における時候の挨拶とは、季節を表す言葉を用いた挨拶文のことです。普段の会話のなかでも、挨拶をした後に「ここのところ、暑い日が続きますね」「毎日雨が降って大変ですね」など言葉を続けることがあるでしょう。それと同じものと考えてよいかもしれません。
手紙のマナーにおいては、「拝啓」といった頭語のあとに続く「○○の候」や「○○のみぎり」などがその部分にあたり、時季により文章が変化します。保育実習のお礼状のなかで時候の挨拶を活用するには、基本的な構成を理解したうえで適切な文章を書くことが大切になるでしょう。
今回は、保育実習後に書くお礼状に使える時候の挨拶の例や、基本構成に沿った例文を紹介します。
時候の挨拶を含む保育実習のお礼状の基本構成
お礼状の基本構成は、以下になります。
- 前文
- 主文
- 末文
- 後付け
それぞれどのようなことを書くのか、くわしく見ていきましょう。
前文
前文とは、お礼状を書くときの初めの挨拶にあたるものです。「頭語」「時候の挨拶」「相手への安否や感謝、お詫びの挨拶」で構成されています。
頭語
頭語とは、お礼状の一番初めにくる「こんにちは」といった挨拶にあたる部分です。一般的に、「拝啓」や「謹啓」を用います。
時候の挨拶
時候の挨拶とは、頭語に続いて書く季節を表す言葉を用いた文章で、二十四節気ごとに使い分けるのが一般的とされています。お礼状では、自分なりの表現で季節感のある言葉を伝えるとよいかもしれません。
安否や感謝、お詫びの挨拶
安否や感謝、お詫びの挨拶として相手を気遣う言葉を書きます。
一般的に、お世話になった場合にはお礼を、ご無沙汰している場合にはお詫びなどと使い分けます。お礼状では、以下のような安否の挨拶を用いるのが一般的でしょう。
- 皆様いかがお過ごしでしょうか。
- 皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
- 貴園、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
主文
主文とは、最も重要な手紙の本題を書くところです。起語と本文で構成します。
起語
主文の冒頭には起語を置きます。「さて」「この度は」といった言葉を用いて、主文が唐突な書き出しにならないよう、本文に入るためのつなぎとします。
本文
お礼状で伝えたい主となる文節です。実習中の具体的なエピソードを交えながら、学んだことや感謝の言葉を書くとよいでしょう。
末文
末文とは、手紙の全体を締めくくる部分です。結びの挨拶と結語で構成します。
結びの挨拶
結びの挨拶は、相手への気遣いを添えた締めの挨拶です。お礼状では、再度感謝の気持ちを伝えるとともに、書面での挨拶となることへのお詫びの言葉を加えます。
結語
結語は、手紙の最後に書く「さようなら」にあたる、締めの挨拶の言葉です。
以下のように、必ず頭語と対になっているものを使用しましょう。
- 「拝啓」であれば「敬具」
- 「謹啓」であれば「謹白」または「敬白」
後付け
後付けとは、日付・署名・宛名・脇付から成り、「いつ」「誰が」「誰に」宛てた手紙なのかを末文のあとに書き記すものです。保育園に出す内定のお礼状には、以下の項目を書きます。
- お礼状を書いた日付
- 自身の氏名
- 在学中の学校名
- 採用担当者の氏名
採用担当者の名前がわかる場合はその方の名前、不明な場合は「採用ご担当者様」と明記しましょう。
お礼状の基本構成を押さえたところで、次に、時候の挨拶の例を月ごとに紹介します。
保育実習のお礼状に書く12カ月分の時候の挨拶
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時候の挨拶は、季語を使って表現します。季語は月ごとに異なるため、以下を参考にしながらお礼状を送る時期に合ったものを選ぶとよいでしょう。
1月
- 寒風の候
- 厳寒のみぎり
- 寒気厳しき折柄
- 例年にない寒さ
- 新たな年を迎え
寒さが厳しいなかでの、相手への気遣いの言葉を書くとよいでしょう。また、1月は1年の始まりの月でもあるため、相手の幸せを願う文章を選ぶのも望ましいかもしれません。
2月
- 梅鴬の候
- 春寒の候
- 春まだ浅く
- 梅のつぼみもそろそろ膨らみ
- 陽気も春めいて
2月は1年で最も寒い時期と言われています。時候の挨拶に続ける文章には、相手の体を気遣う一文を添えるとよいかもしれません。
3月
- 早春の候
- 春暖の候
- 春寒しだいに緩み
- 桜のつぼみも膨らむころ
- 日増しに暖かくなり
3月は寒さが和らぎ、徐々に暖かい春を感じる日が多くなる季節です。暖かい陽気や桜の開花などの情景が浮かぶような挨拶文がよいでしょう。
4月
- 陽春の候
- うららかな好季節を迎え
- 葉桜の季節となり
- 春も半ばを過ぎ
- 若草萌える季節
4月は多くの企業や園にとって新しい年度となる月です。スタートの時期にふさわしい、明るい挨拶にすると印象がよいかもしれません。
5月
- 軽暑の候
- 新緑の候
- 風薫るこのごろ
- 吹く風も夏めいて
- 初夏の風もさわやかな頃となり
5月は外でも過ごしやすい陽気の季節です。新緑などさわやかさをイメージさせるような挨拶がよいでしょう。
6月
- 向暑の候
- 入梅の候
- 梅雨明けの待たれるこの頃
- 樹々の緑深くなり
- 暑さ日増しに厳しく
6月は梅雨に入り雨が続く季節です。ネガティブなイメージにならないよう、山々の緑の美しさを書いたり、夏に向かう陽気を表したりするとよいかもしれません。
7月
- 盛夏の候
- 夏祭の候
- 炎暑のみぎり
- 日々暑さ厳しき折から
- 近年にない暑さが続き
7月は梅雨が明け、暑い夏がやってくる季節です。相手の体調を気遣う言葉や、夏ならではの情景が浮かぶ言葉を挨拶として選ぶとよいでしょう。
8月
- 晩夏の候
- 秋暑の候
- 残暑なお厳しい折柄
- 秋立つとはいえ
- まだまだ暑い日が続いておりますが
8月は次第に夏から秋へと変わっていく時期です。季節の移り変わりを感じさせるよう
な挨拶にするとよいかもしれません。
9月
- 初秋の候
- 秋桜の候
- 爽秋の気配が感じられる頃
- 朝夕日毎に涼しくなり
- 秋色次第に濃く
9月は暑い夏が終わり秋を感じさせる時期です。朝晩に感じる心地よい風や秋桜など、季節感のある言葉を用いた挨拶がよいでしょう。
10月
- 秋冷の候
- 紅葉の候
- さわやかな秋晴れの続く
- 実りの秋となり
- いよいよ秋も深まり
10月は陽気も涼しくなり、本格的な秋を感じさせる季節です。紅葉や実りなど秋らしい語句を入れるとよさそうです。
11月
- 落葉の候
- 向寒の候
- 朝夕一際冷え込むころ
- 吐く息も白くなり
- 追々寒さ向かいますが
11月は秋から冬へと移り変わる季節です。木枯らしや落葉など冬の訪れを感じさせるような文章がふさわしいかもしれません。
12月
- 初冬の候
- 冬至の候
- 師走に入って一段と寒く
- 年の瀬もいよいよ押し詰まり
- 年末ご多忙の折から
12月は1年を締めくくる月で、園でも大掃除や新年に向けた準備などで忙しいでしょう。相手の健康を気遣う言葉や、冬ならではの情景が浮かぶような挨拶がよさそうです。
以上のほか、季節を問わず使える時候の挨拶として、「このところ」「今現在」の意味を表す「時下」を用いる場合もあります。「時下ますます~」は一般的によく使われるので、書き方に悩んだ際は活用してみてもよいですね。
【季節別】時候の挨拶を用いた保育実習のお礼状の例文
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最後に、時候の挨拶を用いた保育実習のお礼状の例文を、季節別に紹介します。
春
拝啓 うららかな好季節を迎え、貴園ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度は、〇日間に渡る保育実習を受け入れてくださり、ありがとうございました。
短い期間ではありましたが、子どもたちの姿や先生方が保育士として関わる様子を見て、学校での勉強だけでは得られない大切なことをたくさん学びました。
実習初日、子どもにうまく声をかけられずにいたところ、担任の〇〇先生が「わざと小さな声で語りかけると注目してくれることもあるよ」と教えてくださり、実践してみると本当に子どもたちがこちらを向いてくれました。そのことから、場面によって効果的な声かけの仕方があることを学びました。
私も〇〇先生のように、周囲の状況によってさまざまな工夫ができる保育士になれるよう、今後も勉学に励みたいと考えております。
取り急ぎご指導いただきましたことにお礼を申し上げたく、お便りを差し上げました。
末筆ながら園長先生はじめ、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。 敬具
令和〇〇年〇月〇日
(在学中の学校名)(自身の氏名)
社会福祉法人〇〇 〇〇保育園 園長 〇〇様
3月~5月の時候の挨拶には、春の心地よい情景が思い浮かぶ言葉を選ぶとよいでしょう。実習中印象に残ったエピソードや学んだことを加えると、より感謝の気持ちが伝わりやすくなるかもしれませんね。
夏
拝啓 残暑厳しい折、皆様いかがお過ごしでしょうか。私は大学に戻り日々の生活を元気に過ごしております。
この度は〇日間にわたり、お忙しいなか実習の機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
(実習で感じたことや抱負などを記入)
取り急ぎお礼を申し上げたくお便りを差し上げました。
まだまだ暑い日が続きますので、どうぞお身体に気をつけてお過ごしください。 敬具
令和〇〇年〇月〇日
(在学中の学校名)(自身の氏名)
〇〇株式会社 〇〇保育園 人事採用担当 〇〇様
6月~8月の夏の時候の挨拶は、お礼状を出す時期によって「暑中」と「残暑」など言葉を使い分けるとよいかもしれません。また、文末にも相手の健康を気遣う一言を入れると好印象ですね。
秋
拝啓 秋涼の候、皆様におかれましてはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
この度は、お忙しいなか〇日間の保育実習を受け入れてくださり、ありがとうございました。
(実習で感じたことや抱負などを記入)
取り急ぎお礼を申し上げたくお便りを差し上げました。
これから寒い時期になりますので、お身体にお気をつけください。 敬具
令和〇〇年〇月〇日
(在学中の学校名)(自身の氏名)
認定こども園〇〇 園長 〇〇様
9月~11月の秋に出すお礼状の時候の挨拶には、その時期ならではの情景が浮かぶ言葉を用いましょう。天候・気温・植物の実り・色彩・虫の音色など季節の変化を感じられるような挨拶ができるとよいですね。
冬
拝啓 寒冷の候、お健やかにお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
この度は、お忙しいなか保育実習の機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
(実習で感じたことや抱負などを記入)
このような実習の機会を与えていただきましたことにお礼を申し上げたく、お便りを差し上げました。
末筆ながら、皆様のご健康とご発展をお祈り申し上げます。 敬具
令和〇〇年〇月〇日
(在学中の学校名)(自身の氏名)
社会福祉法人〇〇 〇〇保育園 園長 〇〇様
12月~2月の冬の時候の挨拶には、寒中見舞いの言葉を用いるとよいかもしれません。また、年末であれば忙しさを気にかけたり、年明けであれば1年の多幸を祈ったりと、時期によって挨拶の仕方を変えるとよいでしょう。
保育実習のお礼状に、季節に合った時候の挨拶を書こう
今回は、保育実習後に送るお礼状に活用できる、季語を用いた時候の挨拶の例を紹介しました。
お礼状に適切な時候の挨拶を書くことで、受け取り手に丁寧で礼儀正しい印象を与えられるかもしれません。送る時期によって内容を変えれば、季節に合った情景が浮かぶ文章になるでしょう。
時候の挨拶の書き方を知り、季節を感じられる文章を添えたお礼状を作成できるとよいですね。