【調査】保育士の平均の給料。厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別、今後の処遇改善について

保育士の平均の給料がいくらなのか、気になる方も多いのではないでしょうか。今回は、厚生労働省のデータをもとに、保育士の平均の給料について解説します。月の平均給与のほかにも、平均年収、全国の都道府県別の平均給与や今後の処遇改善についてもくわしく紹介するので、参考にしてみてくださいね。

【調査】保育士の平均の給料はいくら?厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別の給料、今後の処遇改善について
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保育士の給料事情について

保育士の給料事情について、「保育士の平均の給料はいくら?」「平均年収が知りたい」など保育士の給料について気になる方も多いことでしょう。保育士と聞くと、「給料が低い」「仕事量と給料が見合っていない」などといったイメージも少なくありません。

そもそも保育士の給与は、子ども1人当たりの単価によって設定されている「公定価格」によって決められています。

この公定価格とは、

  • 子どもの区分
  • 園の定員数
  • 年齢
  • 施設の所在地(地域区分)
  • 人件費、事業費

などの費用を考慮して割り出された「基本分単価」と、「各種加算額」(処遇改善や役職など)に応じて計算されます。そのため、保育士の給料は労働生産性という観点では判定しづらく、変動することが少ないことから「給料が低い」などといったイメージにつながっているのかもしれません。

しかし近年では、待機児童問題の解消や保育士の人材確保に向けた対策がより重視されており、政府は保育士の処遇を改善する取り組みなどを実施しています。そのため、保育士の給与は年々増加傾向にあるようです。

今回は厚生労働省のデータをもとに、保育士の平均の給料についてくわしく解説します。月の平均の給料や年収、全国別の平均の給料などもくわしく紹介するので、参考にしてみてくださいね。

出典:公定価格の仕組みについてp5/内閣府

出典:保育士等の処遇改善の推移(平成24年度との比較)p3/厚生労働省

保育士の平均の給料は施設・役職別によって異なる

保育士の平均の給料は、保育施設の種類や役職によって異なります。

2019年11月に発表された内閣府「令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の
経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】」
の資料をもとに、それぞれ保育施設と役職でどれぐらい給与に差があるのか見ていきましょう。

保育所

以下の表は、保育所(私立・公立)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)になります。役職、私立・公立の施設ごとにそれぞれ紹介します。

<常勤保育士(施設で定めた勤務時間で勤務する者)の賞与を含めた平均給与額>

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公立保育園は、1948施設を集計した場合の平均給与となっており、常勤保育士は賞与込みで、月額の給与が30万3113円となっています。一方、私立保育園の場合は、2447施設の平均給与を算出したもので、賞与込みで月額の給与が30万1823円となっています。

公立と私立の平均の給料を比較すると、役職に就いていない保育士の場合はほぼ同じ数字となっていますが主任保育士や施設長といった役職がつくと、施設によっては給料に差があるのが分かります。

このように、保育士の給料は保育施設や役職によっても変わってくるといえるでしょう。

幼稚園

以下の表は、幼稚園(私立・公立)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)です。

私立・公立それぞれの施設と役職別に紹介します。

<常勤教諭の賞与を含めた平均給与額>

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公立幼稚園の場合は、981施設を集計した平均給与になり、常勤教諭は賞与込みで月額の給与が37万8356円となります。一方、私立幼稚園の場合は、408施設を集計して賞与込みで月額の給与が28万7492円となっています。

上の表のとおり、幼稚園の場合は、教諭の段階で私立と公立では給料に10万円ほどの差があることがわかります。役職があるとさらに20万ほど、給料に差がでてくるようです。

認定こども園

以下の表は、認定こども園(私立・公立)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)になります。

私立・公立の施設と役職別に見ていきましょう。

<常勤保育教諭の賞与を含めた平均給与額>

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公立認定こども園の場合は、641施設の平均給与として、常勤保育教諭は賞与込みで月額の給与が28万7181円です。私立認定こども園の場合は、943施設の平均給与を集計して、賞与込みで月額の給与が27万9954円となっています。

認定こども園は、保育教諭の場合は私立、公立ともにほとんど給料に差はありません。しかし、役職が上がっていくにつれて、公立の施設の方が給料は高くなっていく傾向にあるようです。

小規模保育事業(A型、B型)

以下の表は、小規模保育事業(A型・B型)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)になります。

それぞれの施設と役職別に紹介します。

<常勤保育士の賞与を含めた平均給与額>

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小規模保育事業はA型、B型、C型に分かれています。A型、B型、C型はそれぞれ保育士の人数や設備の面積、子どもの定員数などに違いがあります。

小規模保育事業A型の場合、373事業所を集計した平均給与となっています。常勤保育士は賞与込みで月額の給与が26万8755円です。一方、小規模保育事業B型の場合は、161事業所の平均給与となり、賞与込みで月額の給与が26万9617円となります。

小規模保育事業C型の場合は、役職名がA型とB型で異なっているので分けて紹介します。

小規模保育事業(C型)

以下の表は、小規模保育事業(C型)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)です。

小規模保育事業(C型)は家庭的保育事業と国の基準が同等のため、小規模保育事業(A型)、小規模保育事業(B型)とは役職が異なり、家庭的保育者や管理者となっています。

<家庭的保育者の賞与を含めた平均給与額>

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小規模保育事業C型の場合、30事業所を集計した平均給与となり、常勤の家庭的保育者は賞与込みで月額の給与が29万1775円です。

小規模保育事業A型、B型と比較すると、国の基準が異なることもありC型のほうが給与は低いという結果になっています。

家庭的保育業

以下の表は、家庭的保育事業で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)です。

施設の役職別に紹介します。

<家庭的保育者の賞与を含めた平均給与額>

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家庭的保育所の場合は、147事業所を集計した平均給与となり、常勤の家庭的保育者は賞与込みで月額の給与が35万8988円です。

子どもの定員が1人から5人までという家庭的保育事業は、一人ひとりに対してきめ細やかな対応を行えることが特徴ですので、他の施設の役職がない保育士と給与を比較すると、家庭的保育者の給与は高く設定されているようです。

事業所内保育事業

以下の表は、事業所内保育士事業(A型・B型、定員20人以上)で働く職員の1人あたりの給与金額(賞与込み)です。

事業所内保育事業は、同じ私立であっても子どもの定員人数によって施設が異なっており、子どもの定員数が20人以上のところと、19人以下のところに分けられます。19人以下の施設は小規模保育保育事業のA型、B型と同じ認可基準が適用され、20人以上の施設は保育所の認可基準が適用されます。

それぞれの施設と役職別に見ていきましょう。

<常勤保育士の賞与を含めた平均給与額>

【調査】保育士の平均の給料はいくら?厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別の給料、今後の処遇改善について

事業所内保育事業A型の場合、78事業所を集計した平均給与となっています。常勤保育士は賞与込みで月額の給与が23万8168円です。また、事業所内保育事業B型の場合は、22事業所の平均給料となっており、賞与込みで月額の給与が26万4238円です。

事業所内保育事業で定員数が20人以上の場合、59事業所の平均給与を集計し、常勤保育士は賞与込みで月額の給与が26万9782円となっています。

上記の表を見ると、事業所内保育事業は、他の保育施設と比較すると施設や役職による差が少なく、子どもの定員が20人以上の施設がやや給料が高いことが分かります。

このように、保育士の平均の給料は保育施設の種類や保育士の役職などにより、大きく差があるといえるでしょう。

保育士の平均の給料は都道府県によって異なる

保育士の平均の給料は施設や役職によって異なることを説明しましたが、都道府県によっても平均給与には差があるようです。
全国の都道府県別にどれくらい給与に差があるのか見ていきましょう。

全国の平均の給料はいくら?

都道府県別の保育士の給料が気になる方も多いのではないでしょうか。

以下の表は、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに割り出した、2018年度時点の全国での保育士の平均月額給与と年間の賞与額です。

【調査】保育士の平均の給料。厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別の給料、今後の処遇改善について

出典:賃金構造基本統計調査/厚生労働省

2018年度のデータでは、全国の保育士の平均給与は男女合計して、月額の現金給料額は23万9300円となっています。

現金給料額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、家族手当が含まれるほか、時間外勤務、休日出動など超過労働給料も含まれていますが、ボーナス等の賞与は含まれていません。

また、所得税、健康保険料、社会保険料などを控除する前の金額となります。

全国で平均の給料が高い都道府県は?

全国の平均の給料をお伝えしましたが、保育士の平均の給料が高い都道府県はどこなのでしょうか。
2018年度の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに解説します。

<厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」>

【調査】保育士の平均の給料。厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別、今後の処遇改善について

上記の表は保育士(保母・保父)の平均の給料を合計し、現金給料額の高い順に並べたものです。

1位は東京都の29万3600円という結果になり、3位から5位までは25万台でほとんど差がない状態です。表に載っていない6位の岡山県、7位の広島県も、平均の給料は25万円台とその差は僅差となっています。

全国別で見たときの上位の都市には、人口が多いという特徴が挙げられるでしょう。
人口の多さは子どもの数に比例し、保育施設が多く開設されていることが予想されるため、各都道府県や自治体によって雇用状況や経済力に伴う処遇改善が進められているかもしれません。

全国で平均年収が高い都道府県は?

同じように保育士の平均年収が高い都道府県について見ていきましょう。

平均の給料と同じように、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに、保育士(保母・保父)の平均の給料である、現金給料額の12か月分と年間賞与を合算して計算したデータを紹介します。

<厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」>

【調査】保育士の平均の給料。厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別、今後の処遇改善について

上記の表のとおり、全国の平均年収は全国の平均の給料が高い順とほぼ変わらない結果となりました。やはり人口の多い都市が上位に入っているため、人口や保育施設が多いエリアの場合、安定した収入が期待できるかもしれません。

このように、保育士の平均の給料は保育施設の種類や役職だけでなく、全国の都道府県によって人口や保育施設数、取れ入れている補助制度などが異なるため大きく差があるようです。

今後、保育士の平均の給料は上がるの?

保育士の給与は、国や自治体による処遇改善などの施策によって、年々増加している傾向にあります。
ここでは、どうすれば保育士の給料アップにつながるのかについて紹介します。

資格取得で給料アップを目指すことができる

保育士の資格を取得することで給料アップにつながるといえるでしょう。

そもそも保育士資格は国家資格の一つです。

資格があることで、保育の知識や技術を生かすことができるだけでなく、出産や育児などで一度保育の現場から離れた場合でも、保育現場に復職しやすくなります。

さらに、保育士の資格と幼稚園教諭免許の両方の資格があれば、認定こども園で働くことができるなど、活躍できる仕事の幅がより広がるでしょう。

活躍できる保育の場が増えると、就職する際の選択肢も多くなり、自分が求める給料や自分に合う条件の施設を見つけることができるかもしれません。

資格取得は、専門学校や短大、4年制大学などの学校で取得することができます。また、通信制の教材や保育施設で働きながら実績を積んで資格取得するケースもあるため、自分にあった資格取得の方法で検討してみるといいでしょう。

キャリアアップ研修を利用すれば給料アップにつながる

2015年度から政府は保育士確保を目的として、処遇改善制度を実施しています。

その中の一つに、保育士のためのキャリアアップ研修があります。この制度は全国の都道府県や自治体で取り入れられており、保育士の処遇改善が期待できるものといえるでしょう。

厚生労働省「保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ」の資料によると、キャリアアップ研修とは、目指す役職や勤続年数に応じて専門的な分野を学ぶことで、最大月額4万円の処遇改善を受けることができるというものです。

キャリアアップ研修は、保育施設での経験年数がおおむね3年以上の場合に、利用することができます。目指す役職ごとに対象となる要件はあるものの、研修を修了すれば処遇改善にもつながるでしょう。

また、他県に引っ越して別の保育施設に就職した場合や一度離職して再就職した場合でも、研修時の知識や技能をそのまま認められる仕組みとなっています。

処遇改善として給与に加算されるだけでなく、専門性の向上にもつながるため、要件を満たしている場合は利用してみるといいかもしれませんね。

長く働き続ければ給料アップを実現できる

保育士の給料は勤務年数が長くなるごとに上がっていく傾向にあるといえるでしょう。

2018年度の厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータによると、勤務年数が上がるごとに保育士の平均給与が年々上がっていることがわかります。

以下の表は、20歳から24歳、25歳から29歳の勤務年数による平均の給料を比較したデータになります。

<厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」>

【調査】保育士の平均の給料。厚生労働省のデータに基づく平均年収や全国別、今後の処遇改善について

男性保育士の場合、20~24歳の勤務初年度は月額の平均給与が19万5200円となり、1年から4年目は21万600円ですので、平均給与はやや高くなっています。また、25歳から29歳の勤務初年度は月額の平均給与は18万7300円となっていますが、1年から4年目は21万3100円と同じく平均給与は高くなっているといえるでしょう。

女性保育士の場合は、20~24歳の平均給与が勤務初年度は19万3500円に対して、1年から4年目になると20万3000円に上がっています。25歳から29歳でも19万4000円から21万5500円となっています。

このように男女ともに長く保育士の仕事を続けていくことで、平均の給料は上がっていくようです。さらに、年間の賞与も勤務年数に応じて上がっていくかもしれませんね。

保育士の平均の給料を参考にして、自分にあう保育施設で働こう

今回は、厚生労働省の資料をもとに、保育士の平均の給料について紹介しました。

保育士の平均の給料は、保育施設の種類や役職によって異なり、全国の都道府県別に見てみると、人口数や雇用状況などさまざまな理由から差があるようです。

しかしながら、保育士の平均の給料は年々増加傾向にあります。政府が実施している処遇改善制度をもとに、キャリアアップを活用して処遇改善を目指すこともできますし、長く働くことで保育士の平均給与が上がることにつながるでしょう。

厚生労働省のデータをもとにした、保育士の平均の給料を参考にして、自分にあう保育施設を選ぶといいかもしれませんね。

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