「幼保特例制度」についてご存じでしょうか。保育士資格と幼稚園教諭免許のどちらか一方しかもっていない場合でも、保育教諭として働ける一定の期間を設け、実務経験を評価して資格取得の負担を軽減するという制度です。今回は、幼保特例制度とは何かや経過措置期間中の資格取得方法、活用するメリットについて紹介します。
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幼保特例制度とは
幼保特例制度とは、資格の併有を促進することを目的に、保育施設等における実務経験を評価して、もう一方の資格取得に必要な単位数などを軽減する制度のことです。
2015年に施行された「認定こども園法」により、幼保連携型認定こども園で働くためには、保育士資格・幼稚園教諭免許状の両方を持つ保育教諭となることが必須条件となりました。
そのため政府は、保育士や幼稚園教諭の方がスムーズに保育教諭に移行できるよう、認定こども園法の施行から一定の期間は、どちらかの資格・免許を持っていれば働くことができる「経過措置」を設けました。
経過措置期間中は一定の条件を満たせば、大学などの養成校における必須科目のなかの8単位のみで資格や免許状を取得できるため、通常ルートに比べて大幅に時間や費用をカットすることができるとされています。
そのためこの制度を活用すれば、入職時はどちらかの資格や免許しか持っていない場合でも、働きながらもう一方の取得を目指しやすくなるといえそうです。
出典:認定こども園法改正に伴う幼稚園免許状授与の所要資格の特例について(概要資料)/文部科学省
幼保特例制度の概要
まずは、幼保特例制度の概要をくわしく解説します。
対象
幼保特例制度の対象になるのは、下記のいずれかに該当する人です。
①保育士資格のみ持っている方
②幼稚園教諭免許のみ持っている方
実務経験
いずれかの資格・免許における実務経験が、「3年以上かつ4,320時間以上」あることが条件となります。
実務経験として認められる対象となる施設は以下の通りです。
- 認定こども園(幼保連携型、幼稚園型、保育所型、地方裁量型)
- 幼稚園(特別支援学校の幼稚部も含まれる)
- 保育所(認可保育所、小規模保育所、事業所内保育所)
- 指導監督基準を満たした認可外保育所
- へき地保育所
- 幼稚園併設型認可外保育所
- 公立の保育施設
いずれの施設でも、子どもの保育・教育に従事したことが「実務」となり、勤務先の証明が必要になります。
ただし、認可外保育所のうち以下の施設での実務経験は対象外となります。
- 施設を利用する児童の半数以上が一時預かり(入所児童の保護者と日単位または時間単位で不定期に契約し、保育サービスを提供するもの)による施設
- 当該施設を利用する児童の半数以上が22時から翌日7時までの全部または一部の利用による施設
以上のような施設では実務経験が認められないため、入職する園がどういった施設なのかにも注意しましょう。
制度の期限
幼保特例制度は、認定こども園法の改正により5年間に限られた措置でしたが、受け皿の拡大や保育人材の確保などのため2025年度末まで延長されました。
全国保育士養成協議会のHPによると、保育士試験の受験免除申請期間は、2025年の試験までとしています。 ただし2025年3月(2024年度)までに「実務経験」と「学習」を終えていることが条件になるようです。
また、幼稚園教諭になるために必要な教員免許申請については2025年3月末までとなっているようなので、それまでに学習を終え、なおかつ必要書類を揃えておく必要があります。
いつまでに学習を始めればよいかや申請をすればよいかなどを逆算し、余裕をもったスケジュールを立てることが重要になるでしょう。
出典:認定こども園法改正に伴う幼稚園免許状授与の所要資格の特例について(概要資料)/文部科学省
幼保特例制度を利用して資格や免許を取得する方法
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次に、幼保特例制度を利用して資格や免許を取得する方法を、流れとともに紹介します。
幼稚園教諭免許を取得したい方
保育士資格を持っていて、幼稚園教諭免許を取得したい場合の方法と流れをまとめました。
1.大学で単位を取得する
大学で以下の8単位を修得することで、都道府県の教育委員会に免許状の授与申請ができるようになります。
①「教職の意義および教員の役割、教員の職務内容」2単位
②「教育に関する社会的、制度的または経営的事項」2単位
③「保育内容の指導法、教育の方法および技術」2単位
④「教職課程の意義および編成の方法」1単位
⑤「幼児理解の理論および方法」1単位
2.「教育職員検定」を受ける
幼稚園教諭の免許授与申請を行うと、都道府県の教育委員会では「教育職員検定」が行われます。
検定では「人物・学力・実務・身体に関する証明書」を提出し、書類審査によって合否が決定します。
保育士資格を取得したい方
幼稚園教諭免許状を持っていて、保育士資格を取得したい場合の方法と流れをまとめました。
1.保育士養成校で単位を取得する
4年制大学、短期大学、専門学校のいずれかの保育士養成校において、以下の特例教科目を学び、8単位を修得すると保育士試験は「全科目免除」されます。
①「福祉と養護」2単位
②「子ども家庭支援論」2単位
③「保健と食と栄養」2単位
④「乳児保育」2単位
2.「全国保育士養成協議会」に受験免除を申請する
全国保育士養成協議会とは、保育士試験の運営を行っている団体です。
指定保育士養成施設が発行する「幼教専修証明書」を全国保育士養成協議会に提出することで、保育士試験の受験免除が認められます。
出典:認定こども園法改正に伴う幼稚園免許状授与の所要資格の特例について(概要資料)/文部科学省
出典:幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例/厚生労働省
幼保特例制度を活用するメリット
最後に、幼保特例制度を活用するメリットを紹介します。
取得までの時間を短縮できる
特例制度を利用すれば、資格や免許の取得にかかる時間は「最短6カ月~1年」となります。通学期間や受験勉強にかかる時間を、特例制度によって短縮できるのがメリットの一つといえるでしょう。
短期間で資格取得を目指せることは、家事や仕事と両立しながら必要な科目を受講したいという人にとってもチャレンジのきっかけになりそうですね。
費用を少なく抑えることができる
幼保特例制度によって、資格取得のために履修する科目が最小限になるので、受講にかかる費用を抑えることができるといわれています。
多くの大学または保育士養成校では、8単位で「6~10万円」程度が受講料の相場となっているようです。 全科目を通信教育などで履修する場合、10万円~25万円ほどかかる場合もあるかもしれません。
通常より経済的負担が少なく済むのは、受講者にとってメリットとなるでしょう。
働きながら取得が目指せる
大学や保育士養成施設での学習は、働いている人にとっても受講しやすいスケジュールとなっているところもあるので、入職後に仕事をしながら通うことも可能でしょう。
通信制の大学ではテキストやインターネットで学ぶことができるので、自宅で好きな時間に学習することができるかもしれません。
たとえば延長された経過措置期間中に、保育士資格のみで保育教諭として認定こども園に就職し、幼稚園教諭免許のための通信講座を受けるなど、働きながら取得を目指せるのもメリットの一つといえそうですね。
幼保特例制度を活用して、資格や免許の取得を目指そう
今回は、幼保特例制度の概要や資格・免許の取得方法、制度を活用するメリットを紹介しました。
幼保特例制度は、保育士資格と幼稚園教諭免許のいずれかを持っている人の実務経験を評価することで、履修科目やコストなどの負担を最小限に抑えながら、もう一方の資格・免許の取得を促すためのものです。
政府は、さらなる保育人材の確保のため、経過措置期間を2025年3月末まで延長しました。いつまでに学習を終えればよいかなどスケジュールを立てて、制度を活用した資格・免許の取得を目指せるとよいですね。