9月の十五夜に向けてお月見の製作を予定している保育士さんの中には、指導案に悩む方もいるかもしれません。伝統行事の由来を伝え、親しみを感じてもらうにはどのような援助をするべきでしょうか。今回は、お月見製作の指導案の書き方を紹介します。0歳児から5歳児まで、年齢別にねらいや導入のポイントもまとめました。
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■目次
お月見製作の指導案を書こう!
毎年9月頃にある日本の伝統行事である「お月見」。保育園でもお月見に親しめるよう製作活動を取り入れたいと考える新卒保育士さんは多いのではないでしょうか。
そもそもお月見とは、1年で最も夜空が澄んで美しいと言われる”中秋の名月”を愛でる行事です。
平安時代に中国から伝わり、貴族の間で楽しまれていましたが、江戸時代に入って庶民に広まると収穫を祝う行事へと形を変えていきました。
稲穂ににているススキを飾り、月見団子をお供えするという風習は、作物のめぐみに感謝したり、今後の豊作を祈ったりする願いが込められているようです。
お月見の由来や風習についてわかりやすく伝えながら、保育園の子どもたちと製作を楽しめるよう指導案を計画していきましょう。
【0歳児・1歳児向け】お月見製作の指導案例
まずは、0歳児や1歳児クラス向けに、お月見製作の指導案の書き方を紹介します。
ねらい
- 製作を通してお月見の雰囲気を楽しむ。
0歳児や1歳児の子どもたちは、まだお月見がどんな意味を持つ行事なのかを理解するのは難しいかもしれません。
歌を聞いたり、絵本を見たりして、お月見の雰囲気を楽しみながら親しめるよう、ねらいを考えてみましょう。
導入
0歳児や1歳児は集中できる時間が長くないので、短い絵本や手遊びなどで簡単に導入するとよいでしょう。
お月見を連想するお月さまやうさぎをモチーフにしたものを選ぶとよいかもしれません。
製作当日だけでなく、日頃の保育中にもお月見の絵本や手遊びを取り入れて、0歳児や1歳児の子どもたちが徐々に親しみを深められるように計画しましょう。
製作アイデア例
0歳児・1歳児クラスのお月見製作に活用できるアイデアをまとめました。
たんぽで作るお月見団子
たんぽを使って、まんまるなお月見団子をスタンプしてみましょう。
<作り方>
1.夜空に見立てた黒い画用紙に、茶色い画用紙で作った三方(台)をのり付けします。
2.脱脂綿をガーゼでくるんで輪ゴムで縛り、たんぽを作ります。
3.白い絵の具を水で溶いて、たんぽにつけます。
4.(1)の画用紙の三方(台)の上に、たんぽを使ってお団子をスタンプします。
5.黄色い絵の具でお月さまをえがいて、できあがりです。
たんぽは0歳児や1歳児の子どもでも持ちやすいように、ガーゼの端をゴムで縛って持ち手を作るとよいでしょう。
一度に全員行うことはできないため、待っている子どもはどこにいるかや、移動するときの動線などをあらかじめ指導案で計画しておくとスムーズですね。
お月さまに浮かぶ足形うさぎ
0歳児・1歳児の子どもの足形を取って、うさぎに見立てた製作をしてみましょう。
<作り方>
1.紺色の画用紙に白い絵の具で両足の足形を取ります。
2.しっかりと乾かして、画用紙で作ったうさぎの耳を貼りつけて顔をかき込みます。
3.画用紙で作ったお月さまやお団子を貼りつけてできあがりです。
足形を製作に取り入れるのであれば「絵の具を足の裏に塗ってもらう感触を楽しむ」といったねらいを立てるのもよいかもしれません。
子どもの年齢に合わせて、顔をかいてもらったり、お団子などを貼りつける工程もやってもらったりとアレンジしてみてくださいね。
援助のポイント
指導案に活かせる援助のポイントをまとめました。
オノマトペを使って楽しい声かけを
0歳児や1歳児の子どもたちが楽しみながら製作を行えるよう、「ペッタン」「ぬりぬり」などの擬音を使った声かけを心がけてみましょう。
保育士さんが楽しそうに声をかけることで、子どもたちも意欲や関心が高まるかもしれません。
絵の具を使うときにはすぐに手を拭けるように
0歳児や1歳児の子どもたちは、手に絵の具がついていることに気づかずに、机や衣類をさわってしまうかもしれません。
絵の具を使った製作をするときには、お手拭きやタオルなどを用意しておき、すぐに汚れを拭けるようにしておくことがポイントです。
指導案ではそうした環境設定についても書いておくとよいですね。
【2歳児・3歳児向け】お月見製作の指導案例
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保育園の2歳児や3歳児向けのお月見製作の指導案の書き方を紹介します。
ねらい
- お月見の製作を楽しみ、月やお団子といった風物詩に興味を持つ。
さまざまな物に興味を持ち始める2歳児や3歳児の子どもたちには、お月見とはどんな行事であるかを話してみるとよさそうです。
製作を通してお月さまやお供えのお団子といった風物詩に親しみ、関心を持てるよう考えていきましょう。
導入
2~3歳児は、短い物語が理解できるようになる年齢なので、お月様が出てくる絵本やパネルシアターを見るとよさそうです。
「お月さまがお団子を食べちゃうかもしれないね」などと話せば、より製作に興味を持ってくれるかもしれませんね。
製作アイデア例
2歳児・3歳児クラスのお月見製作に活用できるアイデアをまとめました。
フラワーペーパーのお月見団子
フラワーペーパーをくしゃくしゃに丸めてお団子を作る製作です。
1.黒い画用紙に三方(台)とお月さまを画用紙でカットして貼ります。
2.白いフラワーペーパーをくしゃくしゃに丸めます。
3.(2)を新しいフラワーペーパーでくるんでセロテープで留めます。
4.(3)をいくつか用意して、(1)にのりで貼りつけます。
5.クレヨンでススキをかいたらできあがりです。
フラワーペーパーの感触を楽しめる製作です。
(1)の画用紙は保育士さんが用意しておき、「お月さまにお団子を作ってあげて」と導入するのもよさそうですね。
お月さまとお団子の貼り絵
丸くカットした画用紙をのり付けする工程が楽しめるお月見製作を取り入れてみましょう。
1.白と黄色の画用紙をそれぞれ丸くカットしてお団子とお月さまを作ります。
2.黒い画用紙に(1)をのりで貼りつけていきます。
3.クレヨンでススキをかいたらできあがりです。
この製作を取り入れるときは、指導案のねらいに「のりの使い方を知る(慣れる)」といった文言を入れ込むとよさそうです。
2歳児や3歳児でははさみで丸を切るのは難しいため、保育士さんがあらかじめ用意しておきましょう。
援助のポイント
指導案に活かせる援助のポイントをまとめました。
のりを使うときはしっかり使い方を説明する
2歳児・3歳児クラスでは、まだでんぷんのりの使い方に慣れていない子どもも多いでしょう。
製作をする前に、「お母さん指でのりを取るよ」「のりをつけ終わったら指をふきんでふくよ」など使い方を充分に説明しておくことが大切です。
指導案で説明の流れや伝え方を書くとともに、援助の仕方についても考えておいくとスムーズですね。
見本を用意しておき、見ながら作れるように
お団子の並べ方やお月さまの位置などを確認しながら製作できるように、子どもたちから見やすい場所に見本を用意するとよいでしょう。
もし、間違えた場所に貼ってしまっても否定することなく、楽しみながら製作ができるようあたたかく受け止めるようにしてくださいね。
【4歳児・5歳児向け】お月見
保育園の4歳児や5歳児向けのお月見製作の指導案の書き方を紹介します。
ねらい
- お月見の意味を知り、製作を通して伝統行事に親しみを感じる。
4歳児・5歳児クラスでは、伝統行事に理解を深めるためにも、製作を通じてお月見の由来や意味についてくわしく知ることができるとよいですね。
「昔の人の生活に興味を持つ」「お月見に込められた願いを知る」というねらいを使うのもよいかもしれません。
導入
4歳児や5歳児の子どもたちには、お月見行事の内容が具体的に伝わるよう、動物たちや昔の人がお月見をしている様子をえがいた絵本を読んでみましょう。
収穫を祝っていたことなど、昔の人たちがお月見に込めていた願いを知れるとよいですね。
製作アイデア例
4歳児・5歳児クラスのお月見製作に活用できるアイデアをまとめました。
紙粘土のお団子で立体的なお供えもの
紙粘土を丸めてお団子を作り、お供えものを作ってみましょう。
1.空き箱に茶色い折り紙を貼って三方(台)を作ります。
2.紙粘土をちぎって丸め、お団子を作ります。
3.(1)に敷紙を置いて、そのうえにお団子を飾ってできあがりです。
紙粘土を扱うときには、粘土板を用意したり、シートを敷いたりしておきましょう。
三方はお菓子の箱のふたや牛乳パックを利用して作ってみてもよいですね。
トイレットペーパーの芯で作るうさぎ
トイレットペーパーの芯をくっつけて、お月見うさぎを製作しましょう。
1.トイレットペーパーの芯を半分にカットして、白い折り紙を巻きつけて貼ります。
2.接着剤で(1)の側面を貼り合わせます。半分に切った芯をそれぞれ頭と胴体に見立てます。
3.(2)の片側の芯の側面に、画用紙で作ったウサギの耳を貼りつけて顔をかき込みます。
4.(3)の反対側の芯にコットンボールのしっぽをつけたらできあがりです。
トイレットペーパーの芯をカットする工程は保育士さんが行っておきます。
芯同士の貼り合わせや、コットンボールをつけるには接着剤が適しているため、子どもたちが使いやすいように準備しましょう。
援助のポイント
指導案に活かせる援助のポイントをまとめました。
さまざまな素材にふれる機会を
手先が器用になってくる4歳児や5歳児クラスでは、さまざまな素材を使って製作を楽しめるよう指導案を計画しましょう。
紙粘土のようにふれる機会が少ない材料はもちろん、トイレットペーパーの芯などの廃材も活用することで、子どもたちの創造力を養っていけそうです。
子ども自身が工夫して作れるように
4歳児や5歳児の子どもたちには、自分でアイデアを出しながらものづくりを楽しむ姿も見られる頃かもしれません。
複数の色・種類の素材を用意しておく、顔を自分でかき込めるようにするなど、子どもたちが個性を表せるようなアレンジを取り入れるとより製作の時間が楽しくなりそうですね。
年齢に合わせた指導案を書いてお月見製作を楽しもう
今回は、0歳児から5歳児までの年齢別に、お月見製作の指導案の書き方を紹介しました。
中秋の名月にお供えをして作物への感謝を伝えるお月見。製作に取り入れるときは、うさぎやお月さま、月見団子などのモチーフを取り入れて、風習に親しめるようにしてみましょう。
また、お月見とはどんな行事かわかるように絵本や紙芝居などで導入することもポイントです。
ねらいや導入・援助のポイントを参考に、保育園で行うお月見製作の指導案を計画してみてくださいね。