退職金が出る保育園で、保育士として働きたい保育学生さんも多いでしょう。退職金があれば定年後の暮らしや、リフレッシュのための旅費などに活かすことができますよね。今回は、公立保育園と私立保育園の場合に分けて、平均金額や計算方法を紹介します。退職金がいつ支払われるのかについても具体的にまとめました。
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■目次
保育士は退職金をもらえる?
退職金とは、保育園を退職したときに、園から保育士さんへ一定金額が支払われる制度のことです。
2018年の厚生労働省の調査によると、約8割の企業で退職金制度を導入されていることが示されています。
長く勤めてもらいたかったり保育士さんを確保したりするため、保育園でも退職金制度を取り入れているところは多く、支給される可能性は高いでしょう。
しかし、いつ退職金をもらえるのかは、公立保育園に勤める場合と私立保育園に勤める場合で異なります。
公立保育園では国家公務員退職手当法により、退職後1カ月以内と定められているようです。
一方、私立保育園は雇用元により違いがありますが、独立行政法人福祉医療機構の「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」に加入している園では、申請書を提出してから平均で2カ月程度は必要になるとみておきましょう。
4~8月は3月末に退職した保育士さんの手続きが増える時期なので、少し時間がかかるかもしれません。具体的にいつ支給されるのか知りたい方は、園長先生などに確認してみるとよさそうですね。
続いて、保育士さんが退職金をもらうための条件について解説します。
出典:国家公務員退職手当法(昭和二十八年法律第百八十二号)/総務省
出典:別添4/厚生労働省
保育士が退職金をもらうための条件
保育士さんは退職金をもらえる可能性がある旨を紹介しましたが、支給されるにはいくつかの条件を満たす必要があるようです。
公立保育園と私立保育園の場合に分けてくわしくまとめました。
公立保育園の場合
公立保育園で働く保育士さんは地方公務員と同様の待遇なので、自治体の条例に基づき、退職金をもらうことができます。
しかし、退職金が支給されるのは正社員のみで、基本的にパートには支給されず、加えて1年以上働く必要があるようです。
退職理由や勤務年数によって金額は異なるため、計算方法はのちにくわしく説明します。
私立保育園の場合
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私立保育園の場合、退職金の支給は園の就業規則によるため、すべての園で退職金をもらえるとは限りません。
そのため、事前に求人などをしっかり確認しておくことが大切です。
支給条件も園によって異なりますが、「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」を利用している園であれば、1年以上働けばもらえるでしょう。
しかし、公立保育園の場合と同様に、基本的にパートは対象とならず、正社員のみ退職金が支給されるようです。
公立保育園に勤める保育士の退職金の相場
総務省の資料によると、公務員保育士さんを含む一般職員の退職金の相場は、平均で1260万3000円です。
ここでは、具体的な退職金の計算方法と、計算の例を解説します。
退職金の計算方法
- 退職手当額=基本額+調整額
- 基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率
- 調整額=調整月額のうちその額が多いものから60月分の額を合計した額
以下は退職理由や勤務年数に基づく、退職金の基本額の表です。
出典:地方公務員の退職手当制度について/総務省から抜粋
本来は上記で算出した基本額に、調整額が加算されます。しかし、以下の場合は調整額が支給されないため注意しましょう。
- 退職手当の基本額が零である者(勤続期間が6カ月未満で退職した者)
- 自己都合退職者で、勤続期間が9年未満の者
- 違法行為を行って退職し、退職日から3カ月前までにそれを理由として処分を受けた者
公立保育園で働く保育士さんは、できるだけ長く勤めたほうが退職金の金額が上がるようですね。
計算の例
では、基本給20万円で退職した場合の退職金について、それぞれ計算してみましょう。
勤続年数5年で自己都合退職の場合
勤続年数が5年で自己都合退職をしたときは、調整額は出ないこととなっています。
そのため、「20万円×3.0=60万円」が支給されるでしょう。
勤続年数15年で整理退職(園が人員削減として解雇すること)の場合
勤続年数が15年で整理退職となった場合、支給率は23.25です。
そのため、「20万円×23.25=465万円」に、調整額が加わった金額を退職金としてもらえるでしょう。
勤続年数45年で定年退職の場合
勤続年数45年で定年退職をした保育士さんは、「20万円×59.28=1185万6000円」に、調整額を加えた金額が支給されるようです。
このことから、公立保育園で働く保育士さんは、1000万円以上の退職金をもらえる可能性があることが分かります。
出典:第9表の1団体区分別,職員区分別,退職事由別,年齢別退職者数及び退職手当額/総務省
私立保育園に勤める保育士の退職金の相場
ここでは、私立保育園に勤める保育士さんの退職金の計算方法と、計算例についてまとめました。
退職金の計算方法
私立保育園に勤める保育士さんの退職金は、園や勤続年数によって大きく変わることから、相場や平均金額を一概に示すことはできません。
しかし、私立保育園の多くが社会福祉法人によって運営されているため、独立行政法人福祉医療機構による「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」に入っていることもあるようです。
その場合、退職手当金計算シミュレーションを利用すれば大まかな金額を知ることができるので、気になる方は試してみるとよいでしょう。
また、転職する保育士さんの場合、次に勤める園も社会福祉施設職員等退職手当共済制度を利用していれば、合算して計算できる可能性があります。合算したほうが最終的にもらえる退職金の金額が増えるかもしれないため、事前に園へ相談し、必要書類を揃えましょう。
計算の例
社会福祉施設職員等退職手当共済制度に加入している私立保育園を、基本給20万円で退職した場合の退職金はいくらなのか、退職手当金計算シミュレーションでそれぞれ計算してみました。
ただし、実際にもらえる金額は変わる可能性があるため注意しましょう。
勤続年数5年で自己都合退職の場合
- 加入年月:2016年7月(仮)
- 退職年月:2021年7月(仮)
- 計算基礎額:190,000円~204,999円を選択
- 退職理由:普通退職
勤続年数5年で自己都合退職をした場合、シミュレーション結果によると約49万円が支給されるようです。
勤続年数15年で整理退職の場合
- 加入年月:2006年7月(仮)
- 退職年月:2021年7月(仮)
- 計算基礎額:190,000円~204,999円を選択
- 退職理由:普通退職
勤続年数15年で整理退職すると、約204万円が退職金として支給されます。
整理退職となった場合も、基本的に普通退職と同じ扱いになるので、自己都合退職と金額に差はないようですね。
勤続年数45年で定年退職の場合
- 加入年月:1976年7月(仮)
- 退職年月:2021年7月(仮)
- 計算基礎額:190,000円~204,999円を選択
- 退職理由:普通退職
シミュレーションによると、勤続年数45年で定年退職した保育士さんには約942万円が支給されるようです。
私立保育園の保育士さんも、長く勤めれば約1000万円の退職金を受け取れることが分かるでしょう。
保育士が退職金をもらえる保育園を探す方法
最後は、退職金が支給される保育園を探す方法について紹介します。
求人をしっかり確認する
私立保育園で働く場合は、園によって退職金の金額も条件も異なるでしょう。
具体的な金額について知ることは難しいかもしれませんが、退職金が支給されるかどうかは求人票やホームページから分かる可能性があります。
福利厚生の欄に「退職金制度あり」などと書かれているか、しっかり確認しましょう。
就活サービスを利用する
就活サービスに登録し、担当のアドバイザーに確認すれば、希望の園に退職金制度があるかを確かめてもらえます。
具体的な金額や条件についても把握できる可能性が高いので、退職金のある保育園で働きたい保育学生さんは利用してみるとよいかもしれませんね。
保育士の退職金がいくら支払われるのかを知り、自分に合った園を探そう
今回は、保育士は退職金をいくらもらえるのか、いつもらえるのかなどについて紹介しました。
退職金とは、保育園の退職時に、園から保育士さんへ一定金額が支給される仕組みです。
基本的にパートには支給されませんが、正社員の保育士さんは退職金をもらうことができるでしょう。
しかし、私立保育園の場合は園によって退職金がない可能性もあるため、事前に求人などをしっかり確認しておくことが大切です。
保育士の退職金制度について知り、保育学生さんは自分に合った園を見つけてみてくださいね。