求人票には月給や賞与、昇給、休日などさまざまな情報が記載されているため、見方に迷う就活生の方もいるのではないでしょうか。正しい求人票の見方を知ることによって、自分の希望に合った就職先を見つけられるかもしれません。今回は、就活中に目にする機会が多い求人票について、失敗しないための見方を紹介します。
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■目次
求人票とは?
求人票とは、法律よって定められた労働条件や募集要項などが記載された書類のことです。自分の希望に合う就職先かどうか判断するための材料の一つになるため、就活をするうえで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
新卒として働く就職先を決める際、求人票に記載されている給与や休日の日数に目がいってしまうかもしれませんが、ほかにも確認しなくてはいけない項目はたくさんあります。具体的に、求人票には以下のような情報が記載されています。
- 賃金
- 賞与
- 労働時間
- 休日、休暇
- 福利厚生
上記に挙げた情報のほかにも、勤務場所や仕事内容、雇用形態などが記されています。
保育施設の求人票は、厚生労働省「職業安定法の改正」によると、募集要項を分かりやすく掲載するだけでなく、虚偽または誇張してはいけないと定められています。
しかし、園によっては項目の言い回しが異なることがあるようです。たとえば、「給与」と「給料」では意味が異なることにより、賃金の金額が違ってしまうので、正しい意味を知って求人票を見れるとよいですね。
今回は、就活で失敗しないための求人票の見方についてくわしく説明します。
求人票で見るべきポイント①賃金
求人票に記載されている労働条件や募集要項をきちんと確認することで、より自分に合った就職先を選ぶことにつながるでしょう。
まずは求人票における賃金について見て解説します。
「賃金」の意味
求人票では基本給、もしくは月給で記載されることが多いようですが、中には給与や給料と記載されているものがあるかもしれません。
一見すべて同じ意味の言葉に捉えそうですが、手当や賞与を含むものと含まないものがあるため、それぞれどんな意味なのか見ていきましょう。
給与
給与とは事業主から勤務する者に支払われる報酬や対価のことです。
所得税法では、給与について以下のように說明しています。
第二十八条 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与(以下この条において「給与等」という。)に係る所得をいう。
出典:「行政手続のオンライン利用の推進」/総務省から抜粋
つまり、給与は与えられるすべての対価ですので、毎月の給料と残業代や交通費といった手当、賞与以外に、園から支給されるエプロンなども含まれるでしょう。
給料
給料とは、社会保険料や所得税、残業代などの手当から差引かれたものを指します。そのため、労働時間のみの報酬が給料といえるでしょう。
給与から手当を引いたものですので、手取り給料といわれることもあるようです。
基本給
基本給はさまざまな手当を含まないため、一般的に給料と同じものとして考えられているようです。求人票に「基本給20万」と記載されていた場合は手当が上乗せされますが、中には基本給のみというところもあるため、必ず内容を確認しましょう。
また、基本給は年齢やスキルなどを考慮して決められることが多く、入園した時期が同じでも人によって支給される賃金が異なるかもしれません。
月給
月給とは一カ月単位で支払われる、基本給と諸々の手当を合わせた賃金のことです。手当には住宅手当のように毎月固定で支払われるものだけが該当し、残業代のように月ごとに金額が異なるものは含まれません。
また、似たような言葉で月収というものがありますが、月収は年収を12か月で割ったものですので、賞与やそのほかの手当も含んだ金額となります。
昇給の有無
昇給とは、年齢や勤続年数、その人の能力などを考慮して基本給を引き上げることです。勤務年数に応じて自動的に昇給するところあれば、毎年時期を決めて能力などを審査して決めるところもあるようです。
ただし、昇給はどこの保育施設でも必ず行っているものではありません。昇給がないケースも考えられるため、求人票の記載されていない場合は担当の方に有無を確認することが大切です。
求人票で見るべきポイント②賞与
賞与とは基本給(給料)とは別に支給されるもので、ボーナスと考えると分かりやすいでしょう。
求人票で見るべき賞与のポイントについて説明します。
賞与のしくみ
そもそも賞与はどのように支給されるのでしょうか。
賞与は法律で義務化されていないため、一般的な企業では、夏と冬にボーナスとして賞与を支給するところが多いようです。保育施設でも年に1回というところもあれば、年に2回支給するところ、もしくは賞与なしというところもあるかもしれません。
支給される賞与の金額も法律で明言されていないので、基本給×2カ月分というところもあれば、基本給×1カ月分など施設によってさまざまあります。
雇用形態による賞与の有無
賞与は正社員だけでなく、アルバイトや契約社員など雇用形態に関係なく支給されることがあります。しかし、正社員と比較するとアルバイトやパートに支給する保育施設は少ない傾向にあるようです。
求人票を見るときは賞与の有無だけでなく、賞与年〇回などくわしい内容が記載されているかも確認しておくといいでしょう。
求人票で見るべきポイント③労働時間
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労働時間は就職先を選ぶうえでも重要視している方が多いのではないでしょうか。
求人票を見るときは、自分がどの時間帯でどれくらい働けるかを考えて、時間外労働についてもきちんと確認しておきましょう。
求人票で労働時間を見るときのポイントを紹介します。
勤務形態
保育施設によって勤務形態が異なるため、求人票ではその保育施設がどのような働き方なのか確認することが大切です。
総務省「行政手続のオンライン利用の推進」/総務省」によると、労働基準法では1週間につき40時間、休憩時間を除いて1日で8時間を超えてはいけないと定められています。
固定時間制
固定労働制とは、1日の労働時間があらかじめ決められた形式のことです。
一般的な企業でも取れ入れられている形式であり、月~金の〇時~〇時までのように始まりと終わりの時間が決まっています。
1日の労働時間が決まっているため、始まる時間より遅れた場合は遅刻、終わり時間より早く退勤した場合は早退というのがより明確に分かる勤務形態です。
変形労働時間制
変形労働時間制は繁忙期と閑散期で労働時間を変えるという方法です。保育施設でも発表会や行事といった忙しい時期と、時間内に仕事を終えてスムーズに帰れる時期があるでしょう。
変形労働時間制では労働時間を月単位や年単位でみるため、1日8時間の労働時間を1時間過ぎてしまった場合でも、ほかの週で1時間早く帰る日を作ることで時間外労働が発生しない、ということになります。
月によって労働時間が変わることになりますので、帰宅時間を変更したくないという方は変形労働時間制かどうかを確認しておくといいでしょう。
シフト制
シフト制は施設の状況やほかの職員の状況に合わせて、勤務時間が異なる形式となっています。月ごと、もしくは週ごとに出勤する日と出勤時間が異なるため、先週の水曜日は8時出勤だったけれど、今週の水曜日は10時出勤というような形になります。
保育施設によっては、早番と遅番で勤務時間が分かれているところもあるようです。24時間保育を行っているところであれば、出勤時間によって深夜手当がつくところもあるでしょう。
フレックス制
フレックス制は、働く職員それぞれが仕事の開始時間と終了時間を決めて働く形式のことを指します。ライフスタイルに合わせた働き方ができるので、効率的に働けることにつながるでしょう。
フレックスタイム制では月曜日と火曜日は9時~16時まで、それ以外は8時~15時といったように自分で出勤時間を決めることが可能です。そうはいっても、施設によっては必ず出勤しなければいけない時間を定めているところもあるため、導入している保育施設へ事前に確認しておくと安心ですね。
残業時間の有無
求人票を見ると、「残業なし」や「残業少なめ」と記載されていることがあります。しかし、残業時間は〇時間とはっきり明記されていないため、想像していたより多かったということもあるかもしれません。残業時間が気になる方は、就職する前に面接などで担当者の方に確認しておくといいでしょう。
残業代について求人票に記載がなかった場合も、毎月支給されるのか確認しておくことで、新卒として入職した際に払われなかったということがなくなるかもしれません。
求人表で見るべきポイント④休日・休暇
求人票には年間休日や週休について記載されていることがあるでしょう。
見るべきポイントをくわしく説明します。
週休制の違い
労働基準法では、少なくとも毎週1回は休日がなければいけないと定められているため、求人票には休日について記載されています。
週休2日制
週休制は労働基準法にのっとり、毎週1回以上は休みがある形になります。1週目は2日休みがあったけれど、2週目と3週目は1日しかお休みがないといった風に、週によって休む回数が変わります。
2日休める週が1週でもあれば法律的には問題ないため、月に1回しか2日休めないということもあるでしょう。しかし、労働時間は週40時間と労働基準法で定められているため、週休2日の場合は休みが少ない分、日々の勤務時間が短くなるケースがあるようです。
完全週休2日制
完全週休2日制とは、1年を通して毎週2日は必ず休日が取得できるということです。週によって休日の日数が異なる場合は、完全週休2日制とはいえないので注意しましょう。
しかし、曜日までは法律で定められていないため、土日がお休みというところもあれば、月曜日と金曜日がお休みなど、施設の運営状況によって休む日は異なります。
希望する就職先が、どのような休日のしくみなのかを新卒として働く前に確認しておくとよさそうですね。
年間休日
年間休日とは1年間の休日を合計した日数です。日本の暦では土日と祝日を合わせると、休日は115日前後となります。そのため、年間休日115日と提示している保育施設もあるかもしれませんが、労働基準法では年間休日の最低ラインは105日となっています。
保育施設によっては、最低ラインの年間休日105日と求人票に記載しているところもあるでしょう。その理由として、夏季休暇など長期で休める時期がない、もしくは週休2日制ということが挙げられそうです。
一方、年間休日120日以上と記載されているところでは、夏季休暇やお盆、年末年始などにのお休みが設けられていると考えていいかもしれません。
有給休暇の有無
有給休暇とは賃金が発生する休暇のことです。6ヶ月間継続して勤務できていて、かつ全労働日の8割以上出勤している方であれば、有給休暇の取得対象になります。
アルバイトや正社員など雇用形態に関係なく付与されるものですが、有給休暇の日数は雇用形態や勤務年数によって異なるところが多いようです。有給休暇は、保育施設を休むことになりますが年間休日の中には含まれません。
園によって有給休暇の詳細は異なりますし、勤務条件によっては付与されないこともあるので、きちんと確認しておきましょう。
求人票で見るべきポイント➄福利厚生・待遇など
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福利厚生とは給料以外に支払われる報酬のことで、通勤費や住宅手当、社会保険などが挙げられます。求人票における福利厚生や待遇の見方を説明します。
社会保険
福利厚生というと、社会保険を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。社会保険は健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5つを指します。
社保完備と求人票に記載があった場合は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つに加入できるという意味です。園で働いている最中にけがをする可能性もありますし、再就職するときの保障としても社会保険があると安心ですね。
交通費支給
交通費は自宅から自分が働く保育施設までの通勤にかかった費用のことです。電車やバスを利用するときに支払われることが多く、自家用車やバイク、自転車を利用して通勤する場合は交通費が支払われないかもしれません。
車やバイクで就職先の保育施設に通おうと考えている方で、求人票で特に記載がなかったときは、担当者の方に交通費について確認しておくといいでしょう。
休暇制度の有無
休暇制度とは、労働基準法で定められているものと事業主が自由に決められるものの2つに分けられます。産休休暇や育休休暇は法律で付与するよう定められている休暇です。一方、リフレッシュ休暇制度や慶弔休暇は事業主が自由に有無を決められる休暇に含まれます。
休暇制度の有無や内容は保育施設によって異なるので、自分のライフスタイルに合わせて確認しておきましょう。
退職金の有無
退職金の有無は保育施設によって異なるようです。公立保育園に勤めると地域公務員になるため退職金が出ることもありますが、私立保育園の場合は法律で定められているわけではないため、退職金が出ないところもあるでしょう。
また、退職金がある施設でも対象者となるには条件が定められていることが多いため、事前に確認しておくといいかもしれません。
求人票の見方をきちんと理解して、より良い就職先を見つけよう
今回は、求人票に記載されている給与や月給、昇給を含む賃金の見方や労働時間、休日や休暇などの見方のポイントについてくわしく紹介しました。
保育士を目指す就活生さんは、求人票を見る機会も多いでしょう。その際、生活するうえで重要になる給与や休日を重点的に見てしまうかもしれませんが、長く働き続けることを考えると労働時間や福利厚生も重要になってきます。
就活で失敗しないように、今回紹介した求人票の見方を意識してより自分の条件に合った保育施設を見つけましょう。