新卒保育士さんは、就職先でお泊り保育を行うことがあるかもしれません。お泊り保育は園内、もしくは園外の宿泊施設に泊まることになるため、活動内容や配慮する点などを知っておくと実施する際に役立てられるでしょう。今回はお泊り保育について、ねらいや1日のスケジュール、配慮するポイントなどを具体的に解説します。
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■目次
お泊り保育とは
お泊り保育とは、子どもたちが保護者のもとを離れて、保育士さんや友だちといっしょに園内や園外の施設に宿泊することです。1泊2日の日程で行うのが一般的のようですが、2泊3日というところもあるでしょう。
まずは、お泊り保育が行われる時期や対象となる年齢などをくわしく説明します。
お泊り保育を行う時期
お泊り保育は6月から8月にかけてを行う園が多いようです。
ただし、お泊り保育の時期は園によって異なるようなので、実施時期に関しては園に確認するといいでしょう。
お泊り保育を行う場所
お泊り保育は園内で行われることもありますが、園外の宿泊施設に泊まったり、屋外にテントを張ったりするところもあるようです。
園外の場合は、子どもたちに園内では味わえない体験してもらうため、自然豊かな場所に行くことがあるようです。しかし、天候によっては中止になる可能性があるため、延期したときの予備の日程や園内での実施に切り替えた場合のスケジュールを考えておくといいかもしれません。
お泊り保育の対象年齢
一般的にお泊り保育は、5歳児や年長クラスの子どもたちを対象としているところが多いようです。
食事や入浴、トイレなど、日頃は保護者にフォローしてもらっていることを子どもたちが一人で行う場面があるため、それらが自分でできるようになった頃が対象といえるでしょう。
ただし、年中クラスでお泊り保育を行うところもあるそうなので、対象となる年齢は園によって異なるかもしれません。
このように、お泊り保育を行う子どもの年齢や時期、場所は園によって異なるため、実施する際は先輩や責任者にあらかじめ確認しておくといいでしょう。
お泊り保育のねらい
保育園や幼稚園ではお泊り保育を行うことがありますが、そこにはきちんとねらいが定められています。
お泊り保育のねらいについて見ていきましょう。
子どもの自立心を育む
お泊り保育のねらいとして、子どもの自立心を育むということが挙げられます。
お泊り保育ではもちろん保育士さんもフォローしますが、子どもたちは自分一人でやることが多くなるでしょう。食事の準備や入浴、トイレなど日常生活の中で行っていることを自分で行うことで、子どもの自立心が育むことにつながりそうです。
そして、一人でできたことが達成感や自信になり、お泊り保育から帰っても自分でやってみようという意欲が表れるかもしれません。
協調性を身につける
お泊り保育では協調性を身につけるといったねらいもあります。
自分の家ではある程度自由にできることが、お泊り保育では思うようにできないこともあるかもしれません。しかし、お泊り保育のなかでクラスの友だちと長い時間いっしょに過ごし、順番を守ったり、協力したりという場面を体験できれば、協調性を養うことにもつながるでしょう。
生活習慣を学ぶ
お泊り保育では1日のスケジュールが決まっているため、生活習慣を学ぶというねらいもあります。
子どもたちは、園を卒業して小学校に入学すると、〇時から〇時は朝の会、〇時から〇時までは△△の勉強といったように時間を意識して行動することになります。お泊り保育で決まったスケジュールどおりに行動することにより、小学校につながる生活習慣を体験できるかもしれません。
楽しい思い出づくり
お泊り保育のねらいとして、楽しい思い出づくりが挙げられます。
子どもたちは、普段の生活よりも保育士さんやクラスの友だちと長い時間いっしょに過ごすことで、いい思い出として残ることでしょう。
また、保護者のもとを離れて、園や宿泊施設に泊まることは貴重な経験になりそうです。
お泊り保育を行う前に準備すること
お泊り保育では、子どもたちを1泊2日、もしくは2泊3日まで預かることもあるため、同行する保育士さんは事前に準備しておくことが大切になります。
では、実際どのような準備が必要なのか見ていきましょう。
お泊り保育のスケジュールを決める
1日目と2日目、もしくは3日目以降の日程といった、お泊り保育のスケジュールを決める必要があります。
スケジュールを決めておくことで、お泊り保育にかかわる職員同士で役割を分担しやすくなり、連携もとりやすくなるでしょう。
また、決められた時間を守って行動することは、子どもたちが小学校に入学したあとも役に立ちますし、規則正しく生活することにつながるかもしれません。
宿泊先を決めて、日程調整をする(園外の場合)
お泊り保育を園外で行うときは宿泊先を早めに決めて、日程の調整をしておきましょう。
夏頃に行う場合は一般の方も宿泊施設を利用する機会が多くなりますし、予定していたところが予約がいっぱいで取れなかった、ということもあるかもしれません。
毎年お泊り保育で利用している宿泊施設があったとしても、確保できなかったときのことも考えて、宿泊施設は複数候補を出しておくといいでしょう。
宿泊施設が決まったあとは、経路やキャンプ場でテントを張る場所など、周囲に危険なものはないか、事前に保育士さんが下見をして確認しておくと安心ですね。
お泊り保育のテーマを決める
お泊り保育では、子どもたちが知っている絵本や流行っているものなどをテーマとして取り入れ、題材にしたイベントを行うことがあるようです。
お泊り保育でテーマを決める場合のポイントについて紹介します。
子どもたちが入りやすい世界観にする
お泊り保育のテーマは、子どもたちが入り込みやすい世界観のものにするといいでしょう。
冒険やファンタジーなど、子どもたちが興味や関心を抱いてくれそうなテーマにすることで、お泊り保育を楽しみにしてくれるかもしれません。
お泊り保育のねらいに合ったテーマにする
お泊り保育のテーマはねらいに合ったものにするといいでしょう。
たとえば、テーマを冒険にしたときは、子どもたちが友だちと協力して行うイベントを行うことで、お泊り保育のねらいの一つである協調性が養われるかもしれません。
子どもたちが興味を持って取り組めるテーマにすることが前提ではありますが、お泊り保育のねらいを含むものが望ましいため、考慮したうえで決めるようにしましょう。
職員同士で情報を共有する
お泊り保育は職員同士で情報をきちんと共有することが大切になります。
普段の保育よりも長い時間子どもたちといっしょに過ごすため、保育士さんはさまざまなことに配慮することになるでしょう。前もって準備しておくものや当日必要になるもの、注意する点などを洗い出して共有しておくで、お泊り保育がスムーズに進行できるかもしれません。
保護者へ向けて共有する
お泊り保育を行うときは保護者の方への情報共有も重要です。
お泊り保育は子どもたちが保護者のもとを離れて宿泊するため、保育士さんがきちんと見守っている状況でも、不安に思う方がいるかもしれません。
以下は保護者の方に連絡する際に必要になる項目です。
- 実施日時
- 場所
- 持ち物
- 活動内容
- 費用
上記のほかにも、保護者に相談されやすいおねしょや体調不良時の対応などを記載し、保護者の方にお便りとして配布することも大切といえるでしょう。
また、紙で情報共有するときは「不安に思ったことはお気軽にご相談ください」といった文言を添えることで、保護者の方も保育士さんに声がかけやすくなりそうです。
お泊り保育の具体的な活動内容とスケジュール例
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お泊り保育では1日のスケジュールを立てることなりますが、そもそもどのような活動が行われているのでしょうか。
お泊り保育の具体的な活動内容と1日のスケジュール例を紹介します。
お泊り保育の活動内容
お泊り保育では、友だちといっしょに夕飯を作ったり、お風呂に入ったりと日常生活に近い活動が行う園が多いかもしれません。
また、夕飯を食べた後にキャンプファイヤーや肝試しなどのイベントを行うことがあるようです。
普段園で行わないような特別なイベントを行うことで、子どもたちもお泊り保育が楽しいものだと感じてくれそうですね。
お泊り保育の1日のスケジュール例
お泊り保育を園内で行う場合の1日のスケジュールを紹介します。
〈1日目〉
- 15:00 登園した子どもたちの受け入れ、健康チェック
- 15:30 開会式
- 16:00 イベント
- 17:00 夕ご飯づくり
- 18:00 夕飯
- 19:00 イベント
- 20:00 お風呂、歯磨き
- 21:00 就寝
〈2日目〉
- 6:00 起床
- 6:30 ラジオ体操
- 7:00 朝ご飯
- 8:00 帰る準備
- 8:30 閉会式
- 9:00 解散
お泊り保育では子どもたちが自分で自分のことをする場面も多いので、時間に余裕を持って計画を立てるといいかもしれません。
ほかにも、保育士さんは子どもたちが就寝した後のスケジュールも考えておく必要があります。徹夜して子どもたちを見ているのは大変ですので、仮眠できる時間を設けて交代で子どもたちを見ている園が多いようです。
お泊り保育を行う際の導入のアイデア
お泊り保育では子どもたちが保護者のもとを離れて一夜を過ごすため、不安になってしまう子も出てくるかもしれません。子どもたちが楽しめるような導入を行うことができれば、お泊り保育への期待感を高め、不安の解消にもつながるでしょう。
お泊り保育を行う際に活用できる導入のアイデアを紹介します。
お泊り保育に関する絵本を読む
お泊り保育を行う前の導入方法として絵本を読むのも一つの方法です。
子どもがお泊りすることを題材にした絵本はさまざまありますが、自分たちと同じ年くらいの子どもが主人公として活躍するお話であれば、より感情移入して聞いてくれるかもしれません。
絵本に出てくる子どもがお泊りをする姿を見て、お泊り保育が楽しみになる子どもも出てきそうですね。
お泊り保育のテーマと関係がある保育活動を行う
お泊り保育でテーマを決めている園では、テーマと関連性がある保育活動を行うようです。
たとえば、お泊り保育のテーマが「動物」だった場合、動物に関する製作を行ったり、ぬいぐるみを教室に置いておいたり、動物が出でくる絵本を読んだりと、子どもたちがテーマを身近に感じてもらえるような工夫をするといいでしょう。
自分が知っているものがお泊り保育のテーマなので、子どもたちも興味を持って参加してくれるかもしれません。
お泊り保育を行うときの注意点や配慮するポイント
お泊り保育を楽しい思い出にするため、子どもと保護者それぞれに配慮することや注意する点について説明します。
子どもたちへの配慮や注意点
お泊り保育では、子どもたちの安全面や健康面に配慮するだけでなく、精神的に不安になっている子どもへのフォローも必要になるでしょう。
不安に感じている子どものフォロー
お泊り保育は保護者がいないという環境で寝泊まりするため、不安や寂しさから急に泣き出してしまう子どももいるでしょう。
フォローの仕方は保育士さんによって異なるかもしれませんが、気持ちが落ち着くまで子どもの傍にいたり、積極的に声掛けを行ったりすると、安心できるかもしれません。
子どもたちの安全管理
お泊り保育では子どもたちの安全管理が重要になります。
いつもと違う環境に気持ちが高まることも考えられるため、スケジュールごとに子どもたちの行動範囲などをきちんと把握しましょう。保育士さんを配置するときは一人ひとりの動きが把握できる人数にすると、事故を未然に防ぐことにつながりそうです。
子どもたちの健康管理
子どもたちを1泊、もしくはそれ以上預かることもあるお泊り保育では、子どもの健康に気を配ることが大切です。
当園したときに視診をし、具合が悪そうな子どもがいないか確認します。登園時だけでなく、イベントで遊んでるときや就寝後に体調を崩す子もいるかもしれないので、きちんと目を配るようにしましょう。
保育士さんは子どもたちの様子が気になるかもしれませんが、徹夜をして集中力が疎かになってしまっては意味がありません。子どもたちの些細な変化にきちんと気づけるように、適度に休憩を取ることも大切です。
保護者の方に配慮することや注意点
お泊り保育では子どもたちだけでなく、保護者の方も不安に思っている方がいるかもしれないため、配慮や注意する点について説明します。
子どもが普段飲んでいる薬はないか確認
子どもが普段飲んでいる薬がないか確認することは、保護者の方への配慮といえるでしょう。
持病がある子どもは薬を飲み忘れたことで病状が悪化するかもしれません。保護者の方に確認することで、急な体調不良を防ぐことができそうです。
また、万が一子どもが体調を崩したときのことも考えて、保護者の方に夜中でも連絡が取れる連絡先を聞いておくことも大切です。
必要になる持ち物を伝える
お泊り保育では普段の保育と違って、歯ブラシやパジャマなどが必要なるため、保護者の方に当日必要となる持ち物をきちんと伝えておきましょう。
お泊り保育の持ち物としては以下のものが挙げられます。
- タオル
- バスタオル
- ハンカチ
- ティッシュ
- 歯磨きセット
- パジャマ
- 下着
- 2日目の着替え
上記の持ち物のほかに、お泊り保育の場所によっては帽子や水筒、洗面用具が必要になるかもしれません。また、お泊り保育では自然豊かな場所で遊ぶ場合もあるので、予備の着替えを用意してもらうと、服が汚れても困ることがなくなりそうですね。
持ち物リストの入ったおたよりを作成して配布すれば、保護者の方も確認しながら忘れずに用意できるでしょう。
お泊り保育のねらいや活動内容、配慮する点をきちんと理解して行おう
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今回は、お泊り保育を行うねらいや意味、活動内容、導入のアイデアなどを紹介しました。
お泊り保育の意味を意識して活動することで、協調性や自立心が育まれていくことでしょう。また、お泊り保育を意識した製作や絵本を読むなどの導入を行うことにより、子どもたちの期待感を高めることができそうです。
子どもの安全や健康に配慮して行うことはもちろん大切ですが、保育士さんが徹夜で見守るということがないように、1日のスケジュール以外にも休憩時間、仮眠時間をきちんと決めて、無理せず行えるといいですね。