病児保育について興味がある保育学生さんや就活生さんもいることでしょう。病児保育は急な病気になった子どもを対象に、病院や保育園などで一時的に保育を行うことを言いますが、施設には種類がありそれぞれ目的も異なるようです。今回は、病児保育の概要と働くうえで役立てられる資格、病後児保育との違いを説明します。
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■目次
病児保育とは
病児保育とは、子どもが風邪や発熱などで急に体調を崩し、保護者の方が看護を行えない場合に、病院や保育園などで一時的に保育を行うことです。また、保育中に体調を崩した子どもへ緊急対応を行うこともあります。
保護者が共働きの場合、急遽休みを取得できない場合も考えられるため、一般的な保育園でも病児保育が求められているようです。
では、病児保育にはどんな目的があり、どのような現状にあるのでしょうか。
病児保育の目的
厚生労働省「病児保育事業の実施について」の資料によると、病児保育とは病気になった子どもを病院や保育所などで一時的に保育を行う以外に、子どもの自宅に訪問することで、保護者が安心して子育てができる環境を整備し、福祉の向上を図ることを目的としています。
病児保育が設立された背景には、子どもが風邪や発熱など軽度な病気になった際、保育施設で子どもを預かってもらえない場合があるため、共働きの保護者に代わって子どもを看護する施設が必要とされていることなどが挙げられます。
病児保育の現状
厚生労働省「保育環境改善等事業」の資料では、病児保育を実施する施設は2015年から2017年にかけて増加傾向にあると説明しています。
その理由として、保護者が仕事を休まなくとも保育施設で預かってもらえるように、病児保育のニーズが高まっていることが挙げられます。利用児童数は2014年度と2019年度を比較すると、利用者数は約5倍となっており、病児保育を行う施設は今後さらに増えていくことが予想されるでしょう。
出典:2-2 補足説明資料:保育環境改善等事業【事前勉強後】/厚生労働省
病児保育における事業の違い
病児保育は病児対応型・病後児対応型、体調不良児対応型、訪問型といった3つの事業に分かれています。
3つの事業とも、病気の子どもを預かって保護者の子育てと仕事の両立を支援する、という事業目的は同じです。では、それぞれどのようなところが異なるのか、厚生労働省の資料をもとに具体的に説明します。
病児対応型・病後児対応型
病児対応型・病後児対応型は、病院や保育園に設置された専用スペースにおいて、看護師などの職員が病児や病後児を一時的に保育する事業になります。
病児対応型
病児対応型は、病児(おおむね10歳未満)を一時的に預かります。
具体的には回復期(容態が危機的な状態から脱し、身体機能の回復を図る時期)に至らない、かつ病気の急変が認められない場合の子どもを対象に保育を行っています。
病児後保育型
病児後保育型は、病後児(おおむね10歳未満)を一時的に預かっています。
病後児とは、病気やけがなどが治りかけている子どものことです。
病児後保育型は病気が回復期に入っているものの、集団保育が難しい子どもを対象に保育をしています。
つまり、病児対応型は現在病気の子どもを保育し、病児後保育型は病気が回復中の子どもを保育するという違いがあります。
体調不良児対応型
体調不良児対応型は、保育園に通う子どもを一時的に預かっています。
保育中に微熱を出すなど体調不良となった子どもが対象となります。体調不良児対応型では、通所している子どもの保健的な対応だけでなく、妊産婦などに対する相談支援も行なっているようです。
訪問型
地域の病児や病後児がいる保護者の自宅に、看護師などの職員が訪問して一時的に保育を行います。
訪問型は2013年から実施された事業のため、実施しているところが少ない自治体もあるかもしれません。
訪問型は、病気が回復期に至らない病児や、回復期にあるけれど集団保育が難しい病後児を対象としています。
病児保育を行う施設の種類
病児保育を行う施設で保育士さんとして働きたい場合、どのような施設で働けるのでしょうか。
病児保育を行っている施設の種類を紹介します。
医療機関型
医療機関型は、医療機関併設型と呼ばれることもあります。
病院内に設置された専用スペースで病児保育を実施しているので、子どもの体調に異変があった際は医師や看護師に相談したり、処置をお願いしたりできるでしょう。
保育所型
保育所型は、オープン型と自園型に分かれています。
オープン型はその地域に住む子どもを対象に、病気は回復に向かっているけれど集団保育が難しい場合など、保育園に併設された専用スペースで実施しているのが特徴です。
一方、自園型は子どもが通う保育園にある医務室において、急に熱が出たなどの体調不良時に対応しています。
単独型
単独型は、NPO法人などが運営している病児保育を専門的に行う施設のことです。
医療機関型や保育所型とは違って、病院や保育園などに併設されていない単独の病児保育室が該当します。
病児保育で活かせる資格やスキル
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病児保育で働く保育士のことを別名「病児保育士」と呼ぶようです。
病児保育士とは、病気になった子どもを保育したり、ケアを行ったりする保育士さんを指します。病院や保育所などで保育を行う場合と、自宅に訪問して保育を行う場合がありますが、病児保育のニーズが高まっているという現状から、病児保育士の需要は高まっているといえるでしょう。
では、病児保育士になるためにはどんな資格やスキルが必要なのでしょうか。
保育士資格
そもそも病児保育士という国家資格はありません。
そのため特別な資格は必要ないようです。
しかし、保育士資格があれば子どもたちと関わるうえで、役立てることができるでしょう。実際、病児保育士の求人では保育士資格があることを応募条件に挙げている施設もあるようです。
ほかにも、看護師や保健師などの資格を取得していると、子どもが急に体調を崩したときも冷静に対処できるかもしれませんね。
民間の資格
保育士資格以外にも、民間の資格を取得することで病児保育に役立てることができるようです。
具体的には、病児保育に関するスペシャリストや医療の専門士などの資格が挙げられます。取得要件や内容が気になる方は詳細を確認してみるといいかもしれません。
病児保育士の仕事内容
病児保育士さんの仕事内容は、一般的な保育園や幼稚園で働く保育士さんとあまり変わらないようです。
病気を患う子ども一人ひとりに対して適した援助を行う必要がありますが、子どもと遊んだり、連絡帳に記載したり、食事や排泄のお手伝いをしたりすることになるでしょう。
子どもたちとの過ごし方の面では、製作をしたり、絵本を読んだりと静かに過ごせる活動がメインのようです。
病児保育士の給料は施設によって異なるものの、一般的に17万~20万円前後となっています。しかし、病気の子どもたちを預かるという観点から、給与を高めに設定している施設も多いため、平均の数字を目安に比較してみるといいかもしれません。
病児保育士として働くメリット
病児保育に携わることで、以下のようなメリットが得られるかもしれません。
- 子どもたち一人ひとりと向き合える
- 体力的な負担が少ない
- 行事やイベントが少ないため業務負担が軽減される
それぞれどのようなメリットなのかくわしく説明します。
子どもたち一人ひとりと向き合える
病児保育を行う施設は、病気の子どもたちを預かるので一人ひとりにきちんと目が届くように、少人数保育を行うところが多いようです。
そのため、子どもたちとしっかり向き合う保育がしたい方にとっては、病児保育は魅力的な事業といえるでしょう。
体力的な負担が少ない
病児保育では子どもたちへの療養がメインとなり、病状を悪化させないように製作をしたり、絵本を読んだりと静かに楽しめる活動がメインになるでしょう。
屋内外で激しい運動をすることがないため、保育園や幼稚園で働く保育士さんに比べると体力的な負担は少ないかもしれません。
病児保育の目的や施設の種類を知って就職活動に活かそう
今回は、病児保育の目的や事業内容、実施している施設の種類、病児保育士について説明しました。
病児保育の事業内容は、病児対応型・病後児対応型、体調不良児対応型などさまざまですが、病気の子どもたちを一時的に預かってもらえるため、共働きの保護者からのニーズは高まっているようです。
また病児保育の現状として、施設の利用者数が増加傾向にあるので、病気の子どもに対応できる病児保育士の需要もさらに高まっていくでしょう。
病児保育を実施している施設の種類や病児保育士の仕事内容などをきちんと理解し、就職先として検討してみてくださいね。