保育実習や就職後、保育士として子どもたちへどのような言葉かけをすればよいのか知りたい保育学生さんもいるかもしれません。言葉かけは、日々の保育活動において信頼関係を育む大切なものといえるため、上手な言葉選びをしたいものですよね。今回は、子どもへの言葉かけについて、保育士さんが意識しているポイントを【前編】【後編】にわけて紹介します。
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■目次
保育士さんから子どもへの「言葉かけ」とは
保育活動をする中で大切な「言葉かけ」。
登園や自由保育のときなど、さまざまなシーンでを行うことがあるでしょう。
日々子どもと接する保育士さんにとって、言葉を通してコミュニケーションを図ることは、子どもとの関係性を育むうえでとても大切なものになります。
これから実習をする予定のある保育学生さんや保育園へ就職予定のある新卒保育士さんの中には、子どもたちに対してどのように言葉かけをすればよいのか戸惑うこともあるかもしれません。
そこで就活バンク!では、保育士による子どもへの言葉かけについて【前編】【後編】にわけて紹介します。前編では、元保育士の筆者と現役保育士さんの事例ともに、「子どもを伸ばす言葉かけ」に焦点をあてているので、参考にしてみてくださいね。
子どもを伸ばす、3つのポイント
子どもを伸ばす言葉かけのポイントとは、どういったものなのでしょうか。
ポイント1:子どもの自己肯定感を育むような言葉かけをする
自己肯定感とは、「自分は生きる価値のある存在なんだ」、と自分の存在価値を認めることによって自分自身を肯定できる感情のことです。
例として、以下のようなことをいいます。
- 自分自身を受け入れ、信じることができる
- 「愛されている、大事にされている存在」だと感じられる
- 壁にぶつかっても乗り越えていける
- 何事にも意欲的にチャレンジできる
- よい人間関係を築くことができる
つまり、自己肯定感は、社会性や人間性の土台となるものといえます。自分に自信をもって前向きに生きていくために、自己肯定感を伸ばしてあげることが、子どもの成長にとって重要でしょう。
ポイント2:子どもの気持ちを受け止めて言葉かけをする
保育士さんに対して、子どもたちはさまざまな場面で自分の気持ちを伝えることがあるでしょう。子どもたちが自分の考えや意思を保育士さんに伝えられるということは、保育士さんを信頼しているからこそでもあります。
まずは「この子はどんなことに興味があるのか」「どんなことを楽しいと思い、悲しいと思うのか」など言葉や表情などを汲みとりつつ、子どもの話を受け止める時間をもつことが大切かもしれません。
子どもの話を受け止めたうえで、褒めたり、自発性を認めたりして、保育士さんと話す安心感が芽生えるような言葉かけをしていきましょう。
ポイント3:子どもを励ます言葉かけをする
伝えることで子どもたちのやる気や可能性を引き出してくれる言葉もあります。子どもの心の発育に好影響を与えるといわれている3つの言葉を紹介します。
【子どもを励ます3つの言葉】
- 何があってもあなたの味方だよ
- 失敗してもいいんだよ
- 違っていていいんだよ
間違うことを恐れて前へ進めず、新しい挑戦ができなくなってしまう子どももいるかもしれません。言ってはいけない言葉を避けるだけでなく、不安や戸惑いを言葉によってできるだけ取り去ってあげ、子どもたちの可能性を引き出せるとよいでしょう。
励ますことで子どもが挑戦し、達成できたときは思い切り褒めていっしょに喜びを分かち合えるとよいですよね。
では、褒めるときにはどういった言葉かけが効果的なのでしょうか。
【保育士さんに聞いた】子どもを褒めるときに意識していた5つのこと
褒める言葉かけが大切なのはわかっていても、実際にはどのような場面で、どのような言葉選びをして褒めればよいのかわからないかもしれません。
ここからは、褒め方の基本となる5つのポイントを紹介します。元保育士の筆者と現役保育士さんの体験談も交えているので、実習などの際に参考にしてみてくださいね。
(1)子どもの目を見て笑顔で褒める
子どもを褒めるときは、子どもの目を見て褒めるようにしましょう。
元
保育士
きちんと子どもの目線まで下がって、笑顔で褒めるよう意識していましたね。
現役
保育士
目を見て褒めることで、「あなたのことをしっかり見ているから安心してね」というメッセージも伝えています。
相手の目を見て話すことは、会話の基本ですよね。目を見て褒めることで、子どもは「自分のことを褒めてもらえてるんだ」と認識できるでしょう。
(2)その場ですぐに褒める
子どものよいところを見つけたら、その場ですぐに褒めるようにしましょう。
元
保育士
子どもの褒めるポイントを見つけたときは、どんなに小さなことでも後回しにせず、言葉にしてすぐに褒めていました。
現役
保育士
少し離れたところからでも、子どものよいところを見つけたらその場で「〇〇くん!今のかっこよかったよ!」と声をかけることを意識しています。
時間が経ってから褒めても、「いったい何のことを褒められているのだろう?」と子どもが混乱してしまう場合があり、褒める効果が減ってしまうかもしれません。
褒めるにもタイミングが重要です。子どもの褒めるポイントを見つけたときは、どんなに小さなことでも後回しにせず、言葉にしてすぐに褒めましょう。
(3)具体的に褒める
子どものよいところを具体的に褒めることも意識するとよさそうです。
元
保育士
ただ「すごいね!」「えらいね!」と褒めるのではなく、具体的に褒めることを大切にしていました。
現役
保育士
「逆上がりができるようになったんだね。すごくかっこよかったよ。毎日一生懸命練習を頑張っていたもんね」と、どのような点がすごいのか、よかったのかをしっかり伝えるようにしています。
具体的に褒められると自分ができた喜びをより感じることができ、自己肯定感が高まることにつながるのではないでしょうか。
(4)結果ではなく過程を褒める
子どもを褒めるときは、結果だけではなく頑張った過程を褒めるようにしましょう。
元
保育士
努力してきた過程やチャレンジしようと思った気持ちをしっかり認めて褒めることを意識していました。
現役
保育士
たとえ目標を達成できなかったとしても、結果を責めずに「頑張った気持ち」を褒めるようにしています。
かけっこで1位になった、逆上がりができるようになったなど、つい結果を重視してしまいがちですが、大事なのは頑張ってきた過程です。
子どもたちの努力した過程を見ずに、結果や成果ばかりを褒めてしまうと、「よい結果をださなくちゃ」と子どもにプレッシャーを与えてしまうこともあるかもしれません。
子どもたちが「結果がすべてではない」と学ぶことができ、たとえ失敗しても「次も頑張ろう!」と前向きに捉えられるような言葉かけが効果的でしょう。
(5)子どもに感謝の気持ちを伝える
子どもが保育士さんを手伝ってくれたときなどは、感謝の気持ちを伝えて褒めることも大切です。
元
保育士
子どもたちが自発的に行動して助けてくれたときは「ありがとう」「嬉しいよ」など感謝の気持ちを必ず伝えるようにしています。
現役
保育士
感謝して褒めるときは、「〇〇ちゃんが手伝ってくれたおかげで、先生とっても助かったよ!ありがとう」と自分が感じた気持ちも言葉にして伝えています。
子どもたち同士で自然にお礼の気持ちを言い合えるように、まずは保育士さんが率先して子どもに感謝の気持ちを伝えることは大切なことかもしれませんね。
子どもを伸ばす言葉かけのポイントをおさえて、保育に役立てよう
前編では、子どもを励ましたり褒めたりするなど大切にしたい言葉かけの仕方を紹介しました。
子育てなどの本やハンドブックの中でも「褒める」ということは基本としてとても大切なものだといわれています。保育士さんも自分自身が子どもの頃にどんな風に褒められると嬉しかったのかと考えつつ、言葉かけをする際は、具体的に褒めることを意識するとよいかもしれません。
【後編】では、保育士さんが気をつけるべき言葉かけについて解説します。前編に続き、元保育士の筆者に加え、現役保育士さんが実際に意識していたことも交えているので、参考にしてみてくださいね。
元保育士イラスト:icon Stocker/shutterstock.com
現役保育士イラスト:Kongpop/shutterstock.com