シュタイナー教育とは、どんな教育法なのでしょうか。幼稚園以外にもさまざまな保育施設で取り入れられているため、くわしく知りたい保育学生さんもいるかもしれません。今回はシュタイナー教育について特徴やメリットを紹介するだけでなく、混同されやすいモンテッソーリ教育との違いについてもくわしく説明します。
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■目次
シュタイナー教育とは
シュタイナー教育とは、哲学者・思想家でもあるオーストリア出身のルドルフ・シュタイナー氏が提唱した教育思想の総称です。
1919年、ドイツにてシュタイナー学校を設立されて以来、日本でも少しずつ社会的に認知されていき、取り入れる園が増えてきています。
シュタイナー教育は、幼稚園で実施されているイメージがあるかもしれませんが、保育園や認定こども園でも行っているところがあるようです。
まずは、シュタイナー教育が掲げる教育理念や目的について見ていきましょう。
シュタイナー教育の教育理念
シュタイナー教育の教育理念は、「人智学(アントロポゾフィー)」だといわれています。
シュタイナーは文化的、知的に自由な人生を送るためには、自由な人間を育てる場所が必要だと考えました。
そのため、シュタイナー教育では「子どもの気持ちや考え方を揺さぶる総合芸術としての教育」として、子どもたち一人ひとりの個性を尊重することで自由な人間を育んでいるようです。
つまり、シュタイナー教育の教育理念は、子どもたち一人ひとりの個性を尊重して、個人の持つ能力を引き出させる芸術教育といえるでしょう。
シュタイナー教育の目的
シュタイナー教育は自由な人間を育てることを目的としています。
自由な人間というのは、自分の思うままに生きる人ではなく、何事にも囚われない自由な精神を持った人という意味のようです。
そして、子どもたちの個性を社会の中で活かせるように支え、育てていくことが保育者の役目といわれています。
シュタイナー教育の特徴
シュタイナー教育では、「からだ」「こころ」「あたま」のバランスがとれた人間を育成することを目標としているようです。
そのため、他の教育にはないさまざまな特徴があります。
シュタイナー教育の特徴についてくわしく説明します。
子どもを4つの構成に分類して考える
そもそもシュタイナー教育では、人は4つの構成体でできていると考えられており、以下のように分けられるようです。
- 物質体…重力に従って落下する物体としての特性があり、人の体そのものを指す
- 生命体…成長や繁殖の力が育まれていき、重力に逆らって上に伸びようとすること
- 感情体…欲望や感情を表す喜怒哀楽といった心の動きのこと
- 自我…「私」という意識を持って、自分で考えたり、言葉を話したりする要素のこと
4つの構成体は、0歳児の物質体から始まり、7歳の生命体、14歳の感情体、21歳の自我に分かれています。
年齢に合わせてそれぞれ適した力を身につけて成長していくというのが、シュタイナー教育の根本的な考え方といえるかもしれません。
7年周期で学ぶことが変わる
シュタイナー教育では、人間は7年ごとに成長の節目があるとしており、7年周期で学ぶことや意識することが変わっていきます。
0歳から7歳「第一・七年期」
0歳~7歳の時期は、遊びなどさまざまな動きを通して、身体をしっかり働かせるようにすることが目標となっています。
子どもたちは自由に遊ぶことによって、創造性や行動力が育まれていくようです。
さらに、規則正しい生活も身体をつくるうえで重要になるため、子どもの周囲にいる大人は模倣的な存在でいることを掲げています。
7歳から14歳「第二・七年期」
シュタイナー教育では、7歳から14歳ごろに子どもたちは学びに関心を持つと考えられています。
そのため勉強することに重点を置き、芸術体験をしたり、先生の言葉から豊かなイメージを広げたりすることにより、感情の土台を作ってから思考力を育むことを目標としています。
14歳から21歳「第三・七年期」
14歳から21歳では、思考力を働かせて知力や判断力を培うことが目標となっているようです。
これまでは学びからただ知識を得るだけでしたが、この時期から論理的に思考を展開していき、自分の中で複数の考えを結びつけていくことで思考力の基礎が育まれていくと考えられています。
最終的に21歳を迎えて、真の自立した大人として巣立っていくことがシュタイナー教育の目的といえるでしょう。
シュタイナー教育の具体的な内容
シュタイナー教育は芸術教育でもあるため、クリエイティブな想像力や芸術的な力などを養えるカリキュラムを行っているようです。
シュタイナー教育で行われている教育内容の一部を紹介します。
オイリュトミー
オイリュトミーは自分の体を使って表現することです。
ダンスのように体の動きを通してさまざまなことを表現します。
心と体の動きの一致することを知るというねらいがあり、1人ではなく集団で円をつくるなどして人に合わせることや責任感を養っているようです。
フォルメン線描
フォルメン線描では下敷きや定規などを使わずに直線や曲線をかきます。
ただ線をかくだけでなく四角や楕円といった形を描くことで、集中力を高めたりバランス感覚を育んだりします。
また、文字を勉強する前に線の動きを知ることで、芸術性を高めるねらいがあるといわれています。
このように、シュタイナー教育の幼児教育では、芸術性を高めるようなカリキュラムを行うところが多いようです。
シュタイナー教育のメリットとデメリット
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シュタイナー教育にはメリットとデメリットがあるといわれています。
それぞれくわしく見ていきましょう。
メリット
音楽や芸術に触れられる
シュタイナー教育では音楽や芸術に触れる機会が多いので、一般的な保育園や幼稚園に比べると想像力や芸術性をより高められる環境にあるといえるでしょう。
園によっては、心の成長に影響を及ぼすため、極力テレビなどのメディアには触れないようにするところもあるようです。
できるだけ外的な刺激が少ない環境にすることで、子どもたちに豊かな感受性が身につくのかもしれません。
自立心が育まれる
自由を重んじるシュタイナー教育では、幼児期に自分で決断する機会があるそうです。
子どもが自分で選んで決めることによって決断力や自立心が養われていき、社会に出たときに自分で考えて行動できる大人になっていくことが期待されています。
個人の才能を伸ばせる
シュタイナー教育は子どもたち一人ひとりの個性を重視するため、才能を伸ばす機会が多いといえるでしょう。
詩を読んだり、自己表現を楽しんだりと芸術的な感覚を養う活動をすることで、子どもの才能が育まれていくかもしれません。
デメリット
教育方針が独特なため、一般的な学校に比べて学習に遅れが出る場合も
シュタイナー教育では、幼児期に「からだ」をつくることに重点を置いているため、独自のカリキュラムで指導を行っている園もあるようです。
そのため、卒園してシュタイナー教育を行う小中高の一貫校に通うではなく、一般的な小学校に通う場合は学習面で遅れが出てしまうかもしれません。
子どもたちの生活に制約がある
シュタイナー教育では、テレビや絵本、映画などを見せない幼稚園や保育園もあるでしょう。
そのため保育者は絵本を使わずに素話で話したり、家庭での生活について保護者と相談したりすることもあるかもしれません。
このように、シュタイナー教育はメリットとデメリットがある教育といえるでしょう。
そのため、取り入れている保育施設で働きたい保育学生さんや就活生さんは、教育理念や教育内容をしっかり理解しておくことが大切です。
シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の違い
モンテッソーリ教育も有名な教育法で、子どもたちの自由な思想を尊重しているところはシュタイナー教育と同じといえるでしょう。
しかし、教育方針や教育法にそれぞれ違いがあるようです。
違いについて具体的に説明します。
教育方針
シュタイナー教育は、総合芸術としての教育なので、子どもの感受性や創造力を伸ばすようなオイリュトミーやフォルメンなどを行っています。
一方、モンテッソーリ教育は知能を伸ばす教育方針のため、さまざまな教具を活用して知育教育を行います。
幼児期は「からだ」の発育に重点を置くシュタイナー教育と比べると、大きな違いといえるでしょう。
日々の教育法
シュタイナー教育を実施している園では、子どもたちの感性を刺激するような芸術や自然に関する活動を行っているようです。
また、遊びで使用する素材は自然素材にしていたり、縦割り保育で指導をしていたりするところもあります。
モンテッソーリ教育は子どもが手に取れるところに、言語教育や五感を養えるような知的教育につながる教具を置き、子どもたちはそれを使用して自由に遊びます。
保育者は基本見守るのみで、特に指示を出すことはないようです。
シュタイナー教育について知り、就職先の視野を広げよう
今回はシュタイナー教育の特徴や目的、教育によるメリットとデメリット、モンテッソーリ教育との違いについて説明しました。
シュタイナー教育は7年周期で人の成長を分けているため、一般的な幼稚園や保育園とカリキュラムが大きく異なるでしょう。
しかし、芸術性を高めたり、感受性を高めたりする活動を行うことが多いため、子どもの個性を伸ばすことにつながるようです。
またシュタイナー教育はメリットとデメリットがあるため、教育理念や特徴をしっかり理解することが大切になります。
シュタイナー教育について知ることで、就職先の選択肢が広がるかもしれませんね。