【5領域】人間関係とは。ねらいや保育に活用できる遊びの実践例

5領域の人間関係について、くわしく知りたい保育学生さんもいるかもしれません。人間関係は、保育園・幼稚園で友だちや保育士さんとのかかわりのなかで育まれる領域ですが、子どもが今後の社会生活を送るうえで重要な力になります。今回は、5領域の「人間関係」のねらいと内容、遊びの実践例についてくわしく説明します。

顔を寄せ合う子どもの写真

milatas/shutterstock.com

5領域における「人間関係」とは?

保育所保育指針で定められた5領域とは、保育の内容をふまえて子どもたちに身につけてほしい姿を具体化したもので、下記の5つの領域から構成されています。

  • 健康
  • 人間関係
  • 環境
  • 言葉
  • 表現

そのなかでも「人間関係」とは、周囲の人々と親しみながら支え合って生活するために、人とかかわる力や自立心を養うことにかかわる領域です。

つまり、友だちや保育士さんと共に過ごすことのよろこびを味わい、人とのかかわりを大切にするなど、他者と生きるための素地を養うために必要なことが記載されていると言えるでしょう。

ここで注意したいことが、5領域のそれぞれの領域は相互に重なり合いながら一体的に養われていくものであり、個別に取り出されて指導されるものではないという点です。

保育園の遊びや生活のなかで、それぞれの領域が総合的に育まれるよう、幅広い視野と長期的な見通しを持ってかかわっていきましょう。

5領域「人間関係」のねらいと内容

5領域の「人間関係」のねらいと内容は、以下のように定められています。

5領域「人間関係」のねらい

①保育所の生活を楽しみ、自分の力で行動することの充実感を味わう。

②身近な人と親しみ、関わりを深め、工夫したり、協力したりして一緒に活動する楽しさを味わい、愛情や信頼感をもつ。

③社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。

出典:保育所保育指針解説/厚生労働省から抜粋

そもそもねらいとは、保育を通して子どもに身につけてほしい能力や態度の方向性を表したものです。

人間関係においては、自発的に行動する態度や、身の回りの人とかかわりを深めながら、社会で生きていくための力を身につけてほしいということが記されているようですね。

5領域「人間関係」の内容

先述の”ねらい”をもとに、保育指針に示された人間関係の領域における”内容”を「自立心」「人とのかかわり」「社会生活」にそれぞれ分類して紹介します。

5領域「人間関係」の内容
自立心に関する内容
  • 自分で考え、自分で行動する。
  • 自分でできることは自分でする。
  • いろいろな遊びを楽しみながら物事をやり遂げようとする気持ちをもつ。
人とのかかわりに関する内容
  • 保育者や友だちと共に過ごすことの喜びを味わう。
  • 友だちと積極的にかかわりながら喜びや悲しみを共感し合う。
  • 自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気づく。
  • 友だちのよさに気づき、一緒に活動する楽しさを味わう。
  • 友だちと楽しく活動するなかで、共通の目的を見いだし、工夫したり、協力したりなどする。
  • 友だちとの関わりを深め、思いやりをもつ。
  • 高齢者をはじめ地域の人々などの自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しみをもつ。
社会生活に関する内容
  • よいことや悪いことがあることに気付き、考えながら行動する。
  • 友だちと楽しく生活する中できまりの大切さに気づき、守ろうとする。
  • 共同の遊具や用具を大切にし、みんなで使う。

保育指針で上記のように分類されているわけではないものの、このように考えるとわかりやすいかもしれません。

内容とはねらいをさらに細分化し、具体的な子どもの姿や活動内容に落とし込んだものとされています。

人間関係を育むには、上記のように友だちと思いを分かち合える活動を取り入れたり、決まりの大切さなどに気がつけるようなきっかけを作ったりすることが大切になりそうです。

5領域「人間関係」を育む遊びの実践例

友だちと遊ぶ子どもの写真

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5領域の「人間関係」のねらいと内容を踏まえて、保育園でできる遊びの実践例を紹介します。

ふれあい遊び:0歳児~1歳児

0歳児や1歳児クラスでは、簡単なわらべうたや手遊びを使ったふれあい遊びを取り入れてみましょう。

遊びのねらいやかかわり方のポイントを紹介します。

ねらい

  • 保育者とのふれあいを楽しみ、信頼関係を深める。

活動のポイント

ふれあい遊びを楽しむ際は、子どもたちとしっかり目線を合わせて行うようにしましょう。

「楽しいね」「○○だね」など思いを代弁するような言葉をかけることで、より子どもたちと信頼関係を強めることができるかもしれません。

引っ越しゲーム:2歳児~3歳児

引っ越しゲームとは、安全地帯となるゾーンをいくつか決めて、保育士さんの合図でそれぞれの地帯を移動する集団遊びです。

ルールのある遊びを楽しめるようになる2歳児~3歳児クラスで取り入れてみましょう。

ねらい

  • 友だちといっしょに簡単なルールを守りながら遊ぶ楽しさを味わう。

活動のポイント

ルールを守って遊べるよう、最初にわかりやすく説明するとともに、約束を破ったらどうなるかも子どもたちに問いかけてみるとよいかもしれません。

また、友だちとかかわりながら同じ遊びをする楽しさを感じられることも大切なポイントです。一体となって移動したりふれ合ったりできるよう、楽しい雰囲気で遊びを主導していきましょう。

お店屋さんごっこ:4歳児~5歳児

役割を決めてやり取りを楽しみながら遊べるごっこ遊びも、人間関係の領域を育むのにぴったりと言えそうです。

具体的なねらいや活動のポイントを見ていきましょう。

ねらい

  • 店員や客といった役割になりきり、友だちとやり取りをしながらお店を再現して遊ぶことを楽しむ。

活動のポイント

やり取りを楽しめるようにお金や財布などを作ったり、協力してイメージを形にできるように材料を用意したりと援助しましょう。

また、イメージを共有して遊べるようになる年齢ですが、子ども同士でなりたい役が被ったり、やりたいことの相違からぶつかったりすることもあるかもしれません。

子ども同士で解決できそうであれば見守り、トラブルがエスカレートしそうであれば仲介に入るなど臨機応変にかかわることが大切と言えそうです。

地域の方との交流会:3歳児~5歳児

近年は核家族化が進んでいる影響もあり、子どもたちは身近にいる家族以外とのふれ合いが少なくなっているようです。

そこで、地域の高齢者の方々や学生さんなどとふれ合える機会を作ってみるのもよいでしょう。

ねらい

  • 地域の方とふれ合い、さまざまな年代・立場の人との接し方を身につける。

活動のポイント

活動の前には、地域の方への挨拶のしかたを練習したり、どんな遊びをしたいか話し合ったりしておくと、子どもたちもかかわりに期待感を持てるかもしれません。

また、遊んでくれたお礼として歌や製作物のプレゼントなどを用意しておけば、子どもたちが感謝の気持ちを持って接することにもつながりそうですね。

5領域「人間関係」を育むための援助のポイント

保育士さんと見つめ合う子どもの写真

yamasan0708/shutterstock.com

最後に、保育園の遊びや生活のなかで5領域の「人間関係」を育むために、保育士さんが心がけたいポイントをまとめました。

子どもの気持ちを汲み取ってかかわる

子どもたちが他者とかかわろうという気持ちを持つためには、まずは身近な大人である保育士さんとの愛着関係(アタッチメント)がしっかり形成されていることが大切なようです。

保育士さんは子どもの気持ちを汲み取って、思いを代弁したり、スキンシップをとったりとあたたかくかかわっていきましょう。

子どもは気持ちをわかってもらうことで、安心感を味わったり、他の友だちの気持ちを知ろうとしたりすることにつながるかもしれません。

友だち同士のかかわりを保育士さんが仲立ちする

5領域の人間関係においては、保育士さんだけでなく、友だちとのかかわりも重要といえそうです。

保育園で過ごすなかで、友だちといっしょに遊ぶ楽しさを味わったり相手の思いに気づいたりする経験を重ね、友だちの大切さを実感するようになるかもしれません。

また、「◯◯ちゃんはこんなことをしていたよ」などと子どもの様子をクラス全体に共有することで、友だちのよさに気づくきっかけになりそうです。

子どもの自立心を育むためにときには見守る

保育園での遊びや生活を通して、子どもが試行錯誤しながら自分なりに達成しようとする姿が見られるかもしれません。

自分の力でやり遂げた達成感を味わってもらうことは、子どもの主体性や自立心を育むことにもつながるようです。どうしても一人でできないときは代わりにやるのではなく、子どもが自力でできるようなヒントを与えたり、励ましたりするとよいでしょう。

子どもたちが自分一人でじっくりと考えて行動できるような環境を整えることも、保育士さんの大切な役割と言えそうですね。

5領域の「人間関係」について理解を深めて保育に活かそう

今回は、5領域の人間関係について、ねらいや内容、保育園でできる遊びの実践例を紹介しました。

乳幼児期の子どもたちは、保育士さんや友だちと信頼関係を形成していくなかで、社会性や相手を大切に思う気持ちが育まれていくと言われています。

保育士さんは子どもにとって最も身近な人的環境でもあるため、5領域の人間関係について理解を深め、入職後の保育活動に活かせるとよいですね。

出典:保育所保育指針解説/厚生労働省

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