毎日の保育の様子を記録する保育日誌。新卒保育士さんのなかには、何をどうやって書けばよいのか悩むうちに、残業になってしまう方も多いようです。スムーズに書くコツや例文を知れたら、効率的に作成できますよね。今回は、保育日誌の書き方を紹介します。ねらいや考察の考え方に加えて、0歳児や1歳児など、年齢別の例文もまとめました。
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「保育日誌」とは?
そもそも保育日誌とは、保育園での活動内容や保育者の援助、その日の状況などを記録した書類のことです。
これから行うことを計画する月案や週案とは違い、その日の保育で行ったこと、あったことを記入する役割であることを認識しておきましょう。
保育日誌を書く目的
保育日誌には、毎日記録を取り、それをもとに振り返りを行い、よりよい保育を行うための資料にするという目的があります。
記録や振り返りの大切さについては、厚生労働省「保育所保育指針解説」のなかでも以下のように示されています。
保育士等は、子どもの実態や子どもを取り巻く状況の変化などに即して保育の過程を記録するとともに、これらを踏まえ、指導計画に基づく保育の内容の見直しを行い、改善を図ること。
つまり、日々の記録をもとに、子どもの姿を多面的に捉えることで、月案や週案といった指導計画に反映させていくことが大切になります。
このようなことから、保育士さんは毎日の様子を保育日誌や個人記録で残しておく必要があると言えるでしょう。
保育日誌に書く内容
保育日誌を書く必要性がわかったところで、どのような項目を記録するとよいのか紹介します。
クラスの様子やその日の状況を記す保育日誌には、以下の内容を書くケースが多いでしょう。
- 日付、気温、天気
- 出席人数・欠席理由
- 子どもの健康状態
- 保護者への連絡事項
- 保育のねらい
- 1日の活動内容
- 子どもの様子
- 反省、考察
日付や出欠など基本的な情報だけでなく、活動内容をふまえた子どもの様子や、保育に対する反省や考察など、保育士さん自身が考えて書く必要があるようです。
保育日誌の効率的な書き方のポイント
さまざまなことを記録する保育日誌ですが、ポイントをおさえることで効率的に作成することができそうです。
子どもの様子をメモしておく
1日中忙しく動き回る保育士さんは、せっかくよい発見や気づきがあっても、1日が終わって保育日誌を書くころには内容を忘れてしまうかもしれません。
保育日誌を素早く書くには、印象的な子どもの姿や気づきをあらかじめメモしておくことが大切です。
ただし、保育中のメモを禁止している場合があるので、先輩などに確認し手から行うようにしましょう。
業務に慣れない新卒保育士さんでも、昼休憩の間に覚え書きをしておいたり、一言二言でさっと記録したりと工夫すると、保育日誌が書きやすくなりそうですね。
先輩保育士さんの日誌や例文を参考にする
保育日誌の形式は園や自治体ごとに設定されるうえ、園の方針によってよしとされる書き方が異なるようです。
そのため、園の書き方に慣れるためには、先輩保育士さんの作成した保育日誌を例文にするのがスムーズかもしれません。
昨年度の書類を見せてもらったり、他のクラスの保育日誌を見せてもらったりと対策できるとよいですね。
ねらいに対する振り返りをする
1日の保育を記録して振り返る保育日誌では、前もって立てておいた「本日のねらい」に対する反省を書くとよいですね。
そうすることで、ねらいに対する達成度を把握して、次の日の計画に役立つうえ、一貫性のある保育日誌を書くことができるでしょう。
また、「子どもの様子」や「個人記録」の欄には、具体的なエピソードも記入することで、第三者にも伝わりやすい保育日誌となりそうです。
今後の保育で意識することを書く
保育日誌の「考察」や「まとめ」の欄には、本日の活動を改めて振り返るとともに、今後に活かせるポイントや気づきを書けるとよいでしょう。
1日をきちんと振り返って、次の日の保育に活かす点を見つけることで、記録や計画を作成する効果も高まると言えそうです。
「明日は個別の声かけを増やす」「着脱を自分で行えるよう励ましてみる」など、小さなことでもよいので、次の日の目標を探す気持ちで書くとよいかもしれません。
【年齢別】保育日誌の例文
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ここでは、保育日誌に使えるねらいや活動内容、考察などの例文を紹介します。
0歳児
0歳児の保育日誌の例文を紹介します。
【ねらい】
- おむつや肌着を交換してもらい、清潔に心地よく過ごす
- 保育者に見守られながら、探索活動をしたり興味のある玩具を手に取ったりして遊ぶ
- 手遊びやふれあい遊びを通して保育者とスキンシップを取って楽しむ
【活動内容】
- 「おむつ替えようね」と声をかけると保育者の方へハイハイで移動する姿が見られた。
- Aちゃんはペットボトルのマラカスが気になるようで、左右に振ったりなめたりと繰り返し遊んでいた。
- ○○の手遊びをすると、保育者の真似をして顔を触ったり、声を出したりして楽しんでいた。
【考察】
- 今後も着脱や排泄など身の回りの世話をする際には、優しい言葉をかけたり、「すっきりしたね」と代弁したりしていきたい。
- 音の鳴る玩具を気に入って遊ぶ子が多かったので、タンバリンや鈴入りの人形など、興味に合わせて取り入れていく。
- 手遊びを通して繰り返し働きかけるとともに、真似しやすいように、口を開けて明瞭に発音し、しっかりと手の動きを示していこうと考えた。
0歳児の保育日誌では、表情やしぐさから子どもの気持ちを汲み取って記録することが大切になるでしょう。
1歳児
1歳児の保育日誌に使える例文を見ていきましょう。
【ねらい】
- 室温や衣類を調整してもらいながら、心地よく過ごす
- 春の陽気を感じながら、のびのびと身体を動かして遊ぶ
- 小麦粘土遊びを通して、不思議な感触を味わったり、指先を使って形を作ったりして楽しむ
【活動内容】
- 気温の上がる日中は、薄手のシャツや半袖に着替えて過ごした。
- 園庭に出てかけっこやボール遊びを行った。保育者とともにボールを追いかけたり、園庭の植物を見つけたりして楽しんでいた。
- 初めて見る小麦粘土に、興味を示したり、怖がったり、自由にこねて楽しんだりと反応はさまざまだった。
【考察】
- 来週はさらに気温が上がることが予想されるため、汗拭きができるようタオルや着替えの準備を保護者にお願いする。
- たくさん身体を動かして遊び、気持ちを発散できた。今後も気候のよい日には積極的に戸外に行く機会を設けたい。
- 遊べる子どもと、怖がる子どもに分かれてしまった。次回は粘土に色を付けるなど、1歳児が親しみをもてるように準備しておきたい。
1歳児の保育日誌では、遊びのなかでの個別の反応や行動を詳らかに記しておくとよさそうです。
2歳児
2歳児の保育日誌の例文をまとめました。
【ねらい】
- 個々の排泄のタイミングで声をかけてもらい、トイレでの排泄に挑戦しようとする。
- どんぐりを使った製作を通して、秋の自然に親しみをもつ。
- ろくぼくや平均台遊びを行い、手指や足裏の感覚を豊かにする。
【活動内容】
- 活動の合間で個別に声をかけると、意欲をもってトイレに行く姿があった。成功するときと出ないときがあるものの、自分でおむつを脱いだり、手洗いをしたりと排泄の習慣は身についてきている。
- 昨日園庭で拾ったどんぐりをカップの中に入れてマラカスを作った。好きな飾りを選んで貼ることを楽しんでいた。
- 初めてろくぼくに挑戦したところ、最初は保育者に支えられて怖々乗っていたものの、慣れると手足を上手に使って渡っていた。一方怖くて挑戦できない子どももいたため、楽しく活動できるよう、今日のところは慣れている平均台遊びに誘った。
【考察】
- 今後も職員同士声を掛け合いながらトイレに誘っていく。また、トレーニングの進みについてさらに家庭と情報交換し、連携していく必要があると感じた。
- 活動前にどんぐりの絵本や手遊びを行い、秋の自然への親しみを育んでいけた。
- 安全に配慮したうえで、子どもの身体能力を伸ばせる活動を取り入れられた。一方ろくぼくでは怖くて挑戦できない子どももいたため、何度も繰り返し行い、少しずつ慣れていけるようにする。
2歳児の保育日誌では、子どもたちの言葉や行動を具体的にすると、わかりやすく書けそうですね。
3歳児
3歳児の保育日誌の例文を紹介します。
【ねらい】
- 身の回りの支度を自分でやろうとする
- はさみの使い方を知り、1回切りをして製作をすることを楽しむ
- 「いれて」「どうぞ」など簡単な言葉を使いながら友だちとかかわって遊ぶ
【活動内容】
- 着替えでは、ボタンや服の畳み方など難しい部分にも自分の力でやろうとする姿が見られた。わからなくて困っている子どもに声をかけると、保育者に支えられながらも自分でできたことをうれしそうにしていた。
- はさみを使うのは2度目だが、最初に個別に持ち方を確認すると上手に指を動かして切ることができた。ただ、はさみのしまい方や渡し方など、扱いに注意が必要な子どももいた。
- 気の合う子ども同士で遊ぶ様子が見られたが、なかなか「いれて」や「かして」を言えない子どももいる。保育者がいっしょに言おうと提案すると勇気を出して声をかけることができた。
【考察】
- 「全部自分でやりたい」という子、「どうしてよいかわからない」という子など、ケースに合わせて個別に援助していく必要がある。
- 今後もはさみを使う前には、持ち方や扱い方を最初に丁寧に確認してから活動する。はさみは便利であると同時に危険性もあることを話していく。
- 子ども同士、お互いに興味をもっているものの、誘い方や仲間に入る方法がわからず戸惑っていることが多い。注意して仲立ちするとともに、絵本やお話を通して、遊びに必要な言葉を伝えていく。
3歳児の保育日誌では、全体の動きとともに、個々の行動や気持ちにも目を向けるとよいでしょう。
4歳児
4歳児の保育日誌の例文をまとめました。
【ねらい】
- 芋ほりを行い、秋の食材に親しみ、食べ物に感謝する気持ちをもつ
- 友だちと考えを出し合いながらルールや遊び方を工夫して遊ぶ
- フルーツバスケットを通して、ルールのある遊びの楽しさを味わう
【活動内容】
- しっかりと芋のほり方の説明を聞き、楽しく活動することができた。芋を見つけると、「僕のものが一番大きい」と競ったり、「○○の形みたい」と形に興味を示したりする姿があった。給食で芋が出ると、「僕の芋だ」とよろこんで食べていた。
- 気の合う友だちとごっこ遊びをするなかで、状況に応じて役割を交代したり、遊びに必要な道具や基地を作ったりと工夫する姿が見られた。
- 最初は椅子を移動できなかったり、なかなか座れなかったりする姿があったが、慣れてくると友だち同士で教え合いながら楽しんでいた。
【考察】
- 「自分で水をやった芋をほって食べる」という経験を通じて、食材を育てることの大変さやありがたみを伝えられた。今後も食材に興味がもてるよう、旬の食べ物などを知らせていく。
- 友だちとイメージを共有して遊び、そのなかでさらに遊びを発展させることができている。遊びの様子を見守り、必要な道具や材料を揃えておきたい。
- 初めて遊ぶ子、何回か遊んだことのある子と理解度が異なるぶん、教え合いながら遊ぶことができた。今後は「なるべくオニにならないようにする」という共通の目標を掲げ、勝ててうれしいという気持ちを育んでいきたい。
4歳児の保育日誌では、友だちとのかかわりや言葉から、子どもの内面を汲み取るような日誌を書けるとよいでしょう。
5歳児
5歳児の保育日誌に使える例文を紹介します。
【ねらい】
- 縦割り保育を通して、年下の子どもに対する声のかけ方や振る舞い方を知る
- リレー遊びを行い、思い切り身体を動かして遊ぶとともに運動会への意欲を養う
- クリスマス会に使用する飾りの製作を通して、クリスマスに親しみをもち、期待感を高める
【活動内容】
- 年長児としての自覚をもち、玩具の使い方や遊び方を教える姿があった。優しく接する一方で、その子が自分でできることまで、代わりにやってあげようとする場面も見られた。
- バトンは使わずに、タッチ形式でリレーを楽しんだ。自分のチームを応援したり、転んだ子どもを励ましたりと声をかけあうことで、チームで協力する雰囲気ができていった。
- クリスマス会に使用する折り紙飾りを製作した。好きな色を選んでもらい、見本を見ながら集中して製作することができた。得意な子どもに先生役を頼むと、張り切って教える姿があった。
【考察】
- 年下のきょうだいがいる子どもも多いためか、率先してお世話をしていた。今回の姿をしっかり褒めて認めるとともに、年少児の気持ちを想像できるよう話をしていく。
- 保育者が並び順や立ち位置を整理することで、リレーをスムーズに進行できた。負けるとひどく悔しがって遊びを外れてしまう子どももいるため、気持ちを立て直せるよう励ましていきたい。
- 手先を使った製作が苦手な子どもが多いなか、クリスマス会への導入となる話をしっかり伝えることで、意欲をもって活動できた。
5歳児の保育日誌は、友だちと協力しあう姿や年長児としての役割にスポットを当てて書くとよさそうです。
保育日誌の個人記録やねらいの書き方を知ろう
今回は、保育日誌の書き方や、0歳児、1歳児など年齢別の例文を紹介しました。
毎日の保育の様子を記録する保育日誌や個人記録には、日々を振り返り、よりよい保育を行うための資料にするという目的があります。
先輩保育士さんの保育日誌や例文を見ておいたり、気づいたことや子どもの姿をメモしたりと工夫することで、新卒保育士さんでも素早く書くことができるでしょう。
ねらいや考察の例文を参考に、保育日誌の作成に活かしてみてくださいね。