室内でものびのびと身体を動かせるマット遊び。子どもが多様な動きを経験できるため、保育に取り入れたいと考える保育学生さんや新卒保育士さんも多いでしょう。
今回は、保育に役立つマット遊びのアイデアを1歳児から5歳児の年齢別に紹介します。ねらいや注意点など、指導案に活かせるポイントも具体的にまとめました。
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保育でマット遊びを行うねらい
転がったり這ったりするなど子どもの多様な動きを促せるマット遊びは、保育園でも気軽に取り入れられる運動遊びと言えるでしょう。
室内で行えるため、雨の日でものびのびと身体を動かして遊べそうですよね。
ここでは、指導案の作成に活かせるように、マット遊びのねらいについて紹介します。
マット遊びを楽しみながら、のびのびと身体を動かす心地よさを味わう
マット遊びを行えば室内でものびのびと運動できます。
「こうやって転がってごらん」「いっぱい動けて楽しいね!」など保育士さんが声かけをすることで、身体を動かす楽しさを知ったり、開放感を味わったりすることにもつながるかもしれません。
転がったり跳んだりし、さまざまな身体の動きを経験する
マットはやわらかい生地でできているので、転がったり跳んだりするなど、子どもが普段できないような動きを楽しむことができます。
前転のように身体のさまざまな部分を動かしたり、子どもの筋力や体力を養ったりできるため、サーキット遊びにも取り入れやすいでしょう。
友だちとかかわり合いながら、いっしょに遊ぶことを楽しむ
ゆりかごや手押し車など複数人で楽しめるマット遊びを行うことで、友だちといっしょに遊ぶ楽しさを味わえるでしょう。
また、友だちと喜びや楽しさなどの感情を共有することで、コミュニケーション力を育むきっかけにもなるかもしれません。
【年齢別】保育で活かせるマット遊びのアイデア
ここからは、マット遊びのアイデアを1歳児~5歳児の年齢別にまとめました。
1歳児
まずは、1歳児のマット遊びを見ていきましょう。
子どもの月齢に合わせて保育士さんがいっしょに遊んだり、遊び方を工夫したりしてサポートすることが大切です。
いもむしコロコロ
<遊び方>
1.保育士さんはマットの端に立ちます。
2.子どもは保育士さんの反対側から、いもむしになりきって転がります。
3.保育士さんの立っている(1)の場所までたどり着いたらゴールです!
<ポイント>
子どもがしっかりゴールできるように、保育士さんは大きく手を振ったり、「もう少しでゴールだよ」と声かけしたりしましょう。
コロコロと全身を使って転がる遊びのため、体幹をきたえることにもつながるかもしれません。
でこぼこマット
<遊び方>
マットの下にタオルや薄いマットなどを入れてでこぼことしたマットを作ります。
歩いたり這ったりするなど、子どもに自由に遊んでもらいましょう。
<ポイント>
足場が不安定なので、子どもがいきなり転倒することも考えられます。
保育士さんは子どもの後方で支えたり、手をつないでいっしょに歩いたりするなど、子どもの様子を見ながら援助していきましょう。
2歳児
次は、2歳児のマット遊びをくわしく紹介します。2歳児は走ったりジャンプをしたりなど、少しずつ運動能力が育まれる時期のようです。
「やってみたい」と意欲を持って積極的に挑戦するものの、まだまだ身体能力が追いつかず、思わぬケガにつながるかもしれません。そのため、保育士さんは必ず子どもの近くで見守るように心がけましょう。
ゆりかご
<遊び方>
マットの上で体育座りを行い、前後左右に身体を大きく揺らして楽しむ遊びです。
<ポイント>
子どもがうまくできないときは保育士さんが揺らしたり、歌を歌いながら揺らしたりすると盛り上がるかもしれません。
マットの端で行うと倒れたときに硬い床で頭を打つ危険性があるので、マットの中央で子ども同士の間隔を取りながら遊ぶとよいですね。
風船マット
<遊び方>
1.布団圧縮袋にふくらませた風船を入れます。
2.風船をいっぱいまで入れたら、掃除機で空気を抜きます。
3.布団圧縮袋の口を閉めてできあがりです!
圧力が均等にかかっているので風船の上に乗っても割れず、トランポリンのようにジャンプしたり転がったりできるでしょう。
<ポイント>
数日後には風船の空気が抜けてしまったり、圧縮袋に空気が入ったりしてしまうので、再度遊びたいときは風船を取り替えて、掃除機で空気を吸ってから使います。
また、遊んでいる途中でマットから落ちてしまうことも考えられるため、保育士さんは近くで見守るよう心掛けておきましょう。
3歳児
3歳児は鉄棒にぶら下がったり片足で跳んだりするなど、運動能力がより高まるようになる時期と言われています。
保育士さんは子どもの様子に合わせて、意欲を育むようなマット遊びを取り入れるとよさそうです。
前転
<遊び方>
1.お尻を浮かせて座り、両手をしっかりマットに付けます。
2.顎を引いて足で少し蹴り、後頭部がマットに付くように転がります。
<ポイント>
保育士さんは最初に前転の見本を見せ、「おでこをマットに付けるのではなく、頭の後ろをマットへ付けて転がりましょう」など、転がり方の説明を丁寧に行いましょう。
実際に子どもが前転をするときは、首をひねったり倒れたりしないように手で支え、ケガに気をつけながら練習することが大切です。
跳び箱山
<遊び方>
1.1~3段の跳び箱を用意します。
2.跳び箱の上にマットをかぶせてできあがりです!
跳び箱山を登ったりジャンプしたりして自由に遊びましょう。
<ポイント>
保育士さんは子どもの様子に合わせて段数を調整したり、1~3段の跳び箱山をひとつずつ準備したりすると、子どもが遊びやすくなるかもしれません。
子どもが落ちないように、保育士さんは跳び箱山の近くでしっかり見守りましょう。
4歳児
4歳児は3歳児よりバランス力が身につき、スキップや平均台などを一人で行える子どもも出てくるかもしれません。
また鉄棒や跳び箱など、器具を使った難易度の高い運動に憧れを持って取り組む姿も見られるようです。
4歳児の運動能力の成長をしっかりサポートできるマット遊びを紹介します。
手押し車
<遊び方>
1.子どもがマットの上で四つん這いになります。
2.保育士さんが子どもの両足を抱えます。
3.子どもは手を使ってマットの上を進みます。
<ポイント>
子ども同士でペアを組んで手押し車を楽しめるようになったら、チームを作ってリレー形式で競争してみても盛り上がるでしょう。子どもの腕の筋力を養うことにもつながるかもしれません。
しかし遊びに夢中になって転倒したり、ぶつかったりする可能性も考えられます。
「足を持つ人は無理に押さないようにしましょう」「前をよく見て進みましょう」など、事前に約束事を決めておくとよいですね。
タオル引き
<遊び方>
1.マットの上で子ども同士が対面で立ちます。
2.それぞれがタオルの端を持って引っ張ります。
3.引っ張り合って足がマットの外に出たり、倒れたりした方の負けです。
<ポイント>
引っ張り合っているときにいきなり手を離したり、他の子どもがゲームを妨げたりしてしまうと、相手が後方に倒れる可能性があるので注意が必要です。
どのような危険があるのかを事前に説明する、必ずマットの上で行うようにするなど、子どもが安全に遊べるよう配慮しましょう。
5歳児
5歳児は4歳児より運動機能がさらに高まるため、走りながら縄跳びをしたり一輪車に乗ったりするなど、複雑な運動にも挑戦できるようになるかもしれません。
ここでは、5歳児にぴったりのマット遊びを解説します。
逆立ち
<遊び方>
1.両手をマットの上に、逆ハの字に付けます。
2.頭をしっかり上げます。
3.手に体重が乗るように足を片方ずつ振り上げ、壁に付くようにします。
4.逆立ちを止めるときは、足から下ろすようにします。
<ポイント>
保育士さんは子どもがうまく逆立ちできるように、横から腰を支えたり足を壁側に寄せたりしましょう。
途中で腕の力が抜けてしまうことも考えられるため、逆立ちができてからも保育士さんは子どもをしっかり支えることが大切です。
また、順番待ちをしている子どもが退屈しないように、別のスペースを設けてカエル跳びを行うのもよいです。
手を床に付け、カエルのように足を広げながら跳ねる動きを練習することで、子どもが逆立ちに挑戦しやすくなるかもしれません。
手押し相撲
<遊び方>
1.マットの上で子ども同士が対面で立ちます。
2.それぞれが手のひらを付けて押し合います。
3.足がよろけ、その場から動いてしまった方の負けです。
<ポイント>
友だちといっしょに楽しむことでかかわり合いを深めたり、いっしょに身体を動かす楽しさを味わったりできる遊びです。
しかしお互いに押し合っているうちに、相手をつき飛ばすなどのトラブルが起きてしまうことも考えられます。
「手以外の場所は押さないようにしよう」「たたいたり引っ掻いたりしないようにしよう」と事前に声かけをしておきましょう。
保育でマット遊びをするときの援助や配慮
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最後は、指導案の作成に活かせるように、保育にマット遊びを取り入れるときの援助や配慮の方法をまとめました。
マット遊びを行う前の配慮
まずは、マット遊びを行う前に配慮すべきことを紹介します。
広い場所を用意する
マットの周りには備品などを置かないようにし、前転や手押し車など、子どもがのびのびと身体を動かせる広い場所を準備しましょう。
保育室でマット遊びを行うときは机や椅子なども片付け、安全な環境を揃えることが大切です。
準備運動の時間を取り入れる
いきなり激しい運動をすると足がつったり、もつれて転んだりするなどトラブルが起きてしまう可能性があるので、遊ぶ前に準備運動を取り入れるようにしましょう。
手足を回す、膝を曲げるなどの動きを行い、身体をやわらかくしてからマット遊びを始めるとよさそうです。
マット遊びをするなかでの援助のポイント
次に子どもがマット遊びをするときに、保育士さんが心掛ける援助方法を見ていきましょう。
転倒しやすい場面では後方で支える
マットを登るなど転倒の恐れがある遊びを行うときは、子どもがケガをしないように保育士さんは後ろ側でサポートしましょう。
子どもが落ちないように手を添えたり、抱きかかえたりすることで、大きなケガが起きるリスクを減らせるかもしれません。
子ども同士で解決できないトラブルには仲裁に入る
友だちといっしょに遊んでいるうちにマットの取り合いになったり、手足が当たってケンカになったりするなど、トラブルが起こることも考えられます。
様子を見て子どもだけで解決できなそうであれば、保育士さんは間に入って話を聞いたり、「いっしょに遊びたいときは入れてって言おうね」など声かけをしたりしましょう。
しかし、1歳児や2歳児のように子どもだけで折り合いがつけられない年齢の場合は、すぐに仲裁に入ったほうがよさそうです。
体調や気温に合わせて休憩を取る
子どもは遊びに夢中になっているうちに体力を消耗してしまうこともあるので、水分を取ったり休憩したりする時間を適宜設けるようにしましょう。
また、保育士さんは子どもの様子を観察し、ぐったりしている、顔色が悪いなどの異常が見られたときはすぐに休ませ、適切な処置を行うことが大切です。
マット遊びのアイデアを保育に活かそう
今回はマット遊びのアイデアや、指導案に活かせるねらいを紹介しました。
マット遊びはのびのびとした運動を促進したり、友だちとのかかわり合いを深めたりできる遊びです。
意欲やバランス力なども育まれるため、1歳児から5歳児までの遊びのアイデアを参考にし、保育へ取り入れてみてくださいね。