保育園や幼稚園で使われる言葉には、現場特有の言い回しや難しい専門用語がたくさんあります。保育士として働き始める前に、保育用語をマスターしておきましょう!今回は、た行の用語を解説していきます。
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よく使う保育用語【た】
待機児童
保育を必要としているにも関わらず、保育施設に入所できずに順番待ちをしている子どもの総称です。
施設数の拡大による保育の受け皿確保・感染症の影響による利用控えといった要因から、待機児童数は減少傾向にあり、2022年4月の時点での待機児童数は2944人となっています。
一方、入園希望が叶っていないものの「特定の園を希望している」「育児休業を延長している」などとみなされ待機児童にカウントされていない「隠れ待機児童」の存在といった問題もあります。
出典:保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)及び「新子育て安心プラン」集計結果を公表/厚生労働省
退行現象
急激な環境変化などがきっかけとなり、子どもが赤ちゃんのように振る舞う状態のことで、自分を守る防衛機制の一つです。「赤ちゃん返り」とも呼ばれています。
下の兄弟の誕生や引っ越し、保育施設への入園などきっかけは人によって異なります。
情緒が安定することで徐々に消失していくと言われるため、保育現場ではスキンシップを取ったり保護者をフォローしたりすることが大切になります。
高ばい
ひじとひざを伸ばした状態でハイハイをすることを指します。
足の筋力がついてくる生後7カ月~9カ月頃から見られるようになるそうです。
縦割り保育
異なる年齢の子どもがいっしょに活動する保育の進め方を指します。異年齢の子どもが相互に交流することで、互いによい影響があると言われています。
類義語として「異年齢保育」「混合保育」などがあります。
探索活動
子どもが知らない物事に興味を持ち、どんなものなのかを確かめ、知ろうとする行動のことを指します。
生後6カ月頃から活発化すると言われ、対象の物をじっと見つめる、指差しをする、さわったりなめたりするといった行動で現れます。
試し行動
子どもが大人をわざと困らせるような行動をして、周囲の様子を伺うことです。
激しく泣いたり、おもちゃを投げるなど叱られることを繰り返したりといった行動が見られます。
試し行動をする子どもに対しては、いけないことはしっかり伝えつつ、行動の裏にある思いを汲み取って愛情深く関わることが大切と言われています。
よく使う保育用語【ち】
チーム保育
一人の保育者が一つのクラスを担当するのではなく、複数クラスを何人かの保育者で担当するという考え方です。
クラスの隔たりを作らないため、保育者の業務負担を軽くする、子どもたちを多角的な視点で見守ることができる、連携が取りやすくなるといったメリットがあります。
地域限定保育士
受験した地域に限定して活用できる保育士の資格です。
保育士不足の解消を目的として、通常の保育士試験に追加で実施する形で特定の自治体で導入されています。受験資格や試験内容は通常の保育士試験と変わりありません。
資格取得から3年間は特定の地域のみで保育士として働くことができ、4年目以降は全国で働くことができることとなっています。
チック
本人の意思とは関係なく、特定の素早い動きや発声を繰り返してしまう病気です。
代表的なものとして、過剰なまばたき、首を振る、咳払いをする、地団太を踏むといった動作が挙げられます。
根本的な原因は不明なものの、不安や緊張、疲れといったストレスによって悪化する傾向があると言われています。
チック症状が見られる子どもに対しては、本人に指摘したり無理に辞めさせたりすることは避け、ストレス要因を取り除きながら見守ることが大切とされます。
注目獲得行動
相手からの注目や関わりを獲得するために起こす行動のことを指し、おもちゃを投げたり自分の頭をわざと壁にぶつけたりといった行動に現れることがあります。
過度に叱ると、「注目してもらえた」とより注目獲得行動が強化されてしまうことが懸念されます。
強く反応しない・行動が出る前に声をかける・正しい声のかけ方を伝えるといった対処が大切なようです。
注意欠如・多動症(ADHD)
生まれつきの脳の働き方の違いによる発達障がいの一つです。集中力が続かない、多動性がありじっとしていられない、衝動性が強く思いつきで行動してしまうといった症状が見られます。
不注意の症状が優位に出る場合、衝動性や多動性が強く現れる場合、両方の症状がある場合など、一人ひとり症状の度合いは異なります。
調製粉乳
乳幼児に必要な栄養素を強化し粉末状に加工したものです。牛乳を主原料して加工・調製しています。
保育施設では母乳の代わりに調製粉乳を使うことが多いようです。
調乳室
ミルクを調乳するために、調理室とは別に設けられた設備です。
哺乳瓶やシンク・給湯ポットなど必要な設備が設置されていることが多く、手を洗ってから入室する、汚染物は持ち込まないなど適切な衛生管理が求められます。
よく使う保育用語【つ】
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つかまり立ち
赤ちゃんが、手すりやテーブル、柵などにつかまって立つ動作のことです。
生後6カ月~8カ月頃から見られるようになり、伝い歩きや一人歩きといった動作への準備と言えます。
伝い歩き
赤ちゃんが、壁やテーブル、柵などにつかまりながら、横に移動する動きのことです。およそ生後9カ月~1歳頃から見られ始めるようです。
赤ちゃんの移動距離や手が届く範囲が広くなることから、興味・関心が拡大します。一方、保育者は危険がないようより注意して見守る必要があります。
よく使う保育用語【て】
手足口病
ウイルスの感染によって引き起こされる、口の中や手足などに水疱性の発疹が出る感染症です。感染した人の3分の1ほどに発熱が見られますが、高熱には至らない傾向にあります。
乳幼児に発症しやすく、飛沫感染・接触感染などにより集団感染のおそれがあるので、保育施設では手洗いを徹底する、排泄物は適切に処理をするといった対策が求められます。
デイリープログラム
1日の園生活の流れを、時系列に沿って一覧化したものです。
デイリープログラムを明示することで、クラスに入る保育者が変更しても一貫性のある保育を実現しやすくなるというメリットがあります。
手遊び
短い童謡の歌詞やリズムにあわせて手指や体を動かす遊びのことです。
特別な道具を必要とせず、集団で一体感を味わいながら楽しめるため、活動の導入やスキンシップなどを目的に保育現場でよく取り入れられる遊びの一つです。
デカルコマニー
紙の反面に絵の具を塗り、半分に折って転写させた模様を楽しむ絵画技法の一つです。
絵の具の混ざり合いや、折り目で反転した模様の面白さを味わえるというよさがあります。
よく使う保育用語【と】
トイレトレーニング
トイレで排泄ができるように練習することです。
一般的に2歳後半から3歳頃に開始することが多く、排泄の感覚を掴んだり、おまるを使って練習したりといったことから始めます。
排泄の自立時期には個人差があるため、保護者と連携しながら個々の様子に合わせて進めることが大切になります。
登園許可証
子どもが特定の感染症にかかった場合、完治後に保育施設に提出する書類のことです。園や自治体によって異なるものの、一般的に医療機関を受診して医師に記載してもらう必要があります。
主に、インフルエンザや水ぼうそう、流行性角結膜炎といった感染力の強い病気にかかった際に提出を求めるケースが多いようです。
ドキュメンテーション
子どもの活動を写真や動画、音声、文字などで視覚的に記録し、子どもや保護者・他の保育者に見える形で掲示する記録方法のことです。
子どもの思考や探究活動を具体的に記録することで、振り返りと今後の計画を行いやすくなり、保育の質向上につながることが期待されます。
とびひ
細菌による皮膚感染症の一つです。
ひっかき傷や擦り傷、掻き壊した箇所から細菌が入り込み、水ぶくれやかさぶたのような症状が現れます。
感染した周辺から全身に飛び火するように広がっていくことからとびひと呼ばれています。正式な名称は伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)です。