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苦しい保護者の味方「公立保育園」の運営主体や、保育料について解説

区立保育園や市立保育園である、公立の認可保育所。その運営主体や保育料についてご存知ですか?
認可保育所である以上、保育料は私立・公立であろうと基本的には同じです。
ここでは、私立と公立の間に、保育の内容や特徴での違いがあるのか、見ていきましょう。
苦しい保護者の味方「公立保育園」の運営主体や、保育料について解説
収入の家庭では保育料が高くなり、低収入の家庭では保育料が安くなるため、公立保育園は苦しい保護者の味方です。
今回は運営主体や保育料についてご紹介します。

「公立保育園」の運営主体は?

運営主体について

公立保育園は市区町村の自治体が運営主体となっています。
自治体が運営主体なので、公立保育園で働く職員は「公務員」になります。
私立保育園は、社会福祉法人が運営主体となっていることが多かったのですが、近年ではNPO法人や学校法人、企業(株式会社)など様々な団体が運営主体となってきています。

公立保育園の特色

各市区町村の自治体が運営主体となっていることから、経営破綻することは滅多になく安心して働くことができます。
また、公務員として、保育士という専門職に対する研修の機会も多く、スキルアップが望める職場です。
自治体の運営主体により、公立保育園の職員には「転勤」があります。
定期的に職員の移動があることから一定の「保育の質」を保持できるのが難しい場合もありますが、入れ替えがあることで新鮮味のある保育を行えるとも言えます。
また、市区町村単位で業務に対する細かな基準が統一されているため保育状況が比較的均一化されています。
そのため、保育士にとって同じ市区町村内の公立保育園への転勤であっても基本的な保育業務は統一されているため働きやすいとも言えます。

保護者側からの意見

働く側にとってもメリットも見方を変えるとデメリットになることもあります。
保護者側の立場で見た場合、公立保育園に対してどんなイメージがあるのかを見てみましょう。
保育士になるためには、目線を変えて考えることも必要です。

<<保護者が感じている公立保育園のイメージ>>
・園長も移動があるため、園長が変わったことで園のイメージが変わってしまう気がする。
・子どもが保育士に慣れてきたところで移動になってしまい、また最初から保育士との信頼関係を築かなければならない。
・「この先生がいいよ」とすすめられて入園を決めたのに、いざ入園したらその先生がいなかった。
・公立保育園の運営主体が各自治体であるため、なんだか対応がお役所仕事の用に感じてしまう。
・行事などに園の個性がなく、毎年同じことを続けている気がする。

一部の声ではありますが、上記の内容を見て、どのように感じますか? 自治体が運営主体はとなっている公立保育園だからこそ抱かれてしまうイメージなのかもしれません。
この意見が全ての公立保育園に当てはまるわけではありませんが、保護者の中にはそういった気持ちを持っている人がいることを忘れてはいけません。
保護者側に立ったものの見方ができればきっとどんな園に行っても良い保育士になれるはずです。


苦しい保護者の味方「公立保育園」の存在意義

見守り

公立保育園に通っている子ども達の中には保護者が病気のために生活保護を受けていたり、育児放棄ぎみで児童相談所が相談を受けている子どももいます。
そうした、特に困難な事情を持つ子ども達を見守っていくという存在意義があります。
例えば、入園のときに個人の持ち物(ハサミ、のり、粘土など)を保護者に購入してもらわず、全て園の備品である園が多いです。
それは、保護者の金銭面での負担をできる限り抑えるためです。
また、保育士も、緊急の場合ですが、家まで子どもを迎えに行くこともあります。
家で、ご飯を食べさせてもらえない子どもや、親が保育園に連れてこない子どももいるからです。

支援のあり方

公立保育園は、保育が必要な子どもの養護と教育という本来的機能はもとより、家庭での養育支援や保護者支援などに取り組んでいて、地域における子育て支援の第一義的な機能を担うという存在意義があります。
しかし、上記のような地域性や支援の度合いによっては、最低基準により配置される保育士だけで対応することが難しいため、家庭支援推進保育(子育て支援交付金事業)を積極的に推進している地域があります。
これは、家庭環境などにより配慮が必要な児童が一定割合以上入所している保育園に保育士を加配し、対象児童に対する個別の支援計画や家庭訪問などを通して養育支援を行うものです。

地域の実情に見合った支援の仕組みづくり

これまで公立保育園では、誰かを排除することのない統合保育の理念のもと、家庭支援推進保育や障害児保育などに力を入れてきた経過があり、その技術の蓄積や専門性は私立保育園をリードしています。
また、児童相談所、子ども家庭支援センター、保健所などの関係機関との横の連携が取りやすいという利点もあります。
このような公立保育園のノウハウや強みを活かし、私立保育園や認可外保育施設に対し、研修だけでなく、より実践の場に近い位置で専門的な技術支援やケース対応への連携を行っていき、障害児を含め配慮が必要な子ども・子育て家庭に対する支援について全市的な水準を維持・向上させていくことも公立保育園の存在意義となっていくことでしょう。

公立保育園の保育料

運営元が公立か民間(私立)を問わず、認可保育所については保育料は変わりません。

世帯収入

世帯年収とは同居する全員の年収です。
認可保育園は専業主婦では入園できない現状があるため、基本的には夫婦2人分の収入を合算したり、シングルマザーであれば1人分の収入が対象になる場合が多いです。
自治体ではこの世帯年収から算出される「市区町村の所得割額」で、保育料を決めています。
所得割額とは収入に応じて払う住民税の一種です。
市区町村の所得割額は役所で取得できる「課税証明書」に記載されており、世帯全員の課税証明書にある市区町村の所得割を合算することで、その市区町村における保育料が大きく変動します。
例えば、2016年時点では埼玉県さいたま市における1歳児の保育料は、世帯年収300万円で所得割額が年92,000円の人は月19,500円ですが、世帯年収1,000万円で所得割額が年445,000円の人は月72,800円になります。
また、「夫が年収400万円、妻が年収273万円、子ども1人」とすると、この世帯の市区町村の所得割額は2016年時点の計算では年217,800円となります。
この所得割額を基準に保育料が決定します。

児童の年齢

基本的に保育士が付きっきりで世話をすることになる0歳児の保育料が最も高く、次に1、2歳児も同じくらいの料金になります。
これは法律により、保育士1人で乳児3人までしか保育できないためです。
1、2歳児になると許容量が増え、児童6人に保育士1人が配置できるようになります。
3歳児はコミュニケーション能力の成長に伴い、児童20人に対して保育士1人を配置できます。
4、5歳児は主体的に行動ができるようになるので、児童30人に対して保育士1人を配置できます。
つまり、子どもの年齢が小さいほど、本人だけでできることが少ないので、保育士が必要になり、人件費がかかります。
例えば、市区町村の所得割額が60万円の人が東京都葛飾区の公立保育園に預ける場合、2016年時点では1、2歳児で月48,900円になりますが、3歳以上になると月22,600円になります。

園児の人数

多くの自治体では兄弟や姉妹で2人以上が認可保育園に入所した場合、保育料が半額になるなど、減額されます。
3人目以降は無料となる自治体も多くあります。
例えば、2016年時点では奈良県大和高田市は1人目が通常の保育料ですが、2人目は保育料が半額に減額され、3人目は無料になります。

認可保育園の保育料の計算ベース

2015年4月から始まった子ども・子育て支援新制度で認可保育園の保育料の算定方法が変更されました。
これまで「世帯の所得税額」を基準に認可保育園の保育料は決定されてきましたが、2015年4月からは「世帯の区民税の所得割額」を基礎にして決定されるようになりました。
この「世帯の区民税の所得割額」は、給与所得者の場合、「給与所得等に係る特別区民税・都民税 特別徴収税額の決定・変更通知書」にある「特別区民税の税額控除前所得割額」から「調整控除額」を引いた金額となります。
また、自営業者の場合は「特別区民税・都民税課税明細」にある「特別区民税の算出税額」から「調整控除額」を引いた金額となります。

認可保育園の保育料の決定と「区分」について

毎年、4月分~8月分は、前年度の区民税をベースに保育料が算定されます。
9月分~3月分は、その年度の区民税で保育料を算定します。
なお、4月は年齢が変わることによる決定、9月は税の年度が変わることによる決定です。
また、保育の必要量の認定に応じて保育料は2つに区分されます。
保育標準時間認定(1日最長11時間まで)と保育短時間認定(1日最長8時間まで)です。
保育短時間の保育料は、保育標準時間の保育料の98.3%に設定されています。
保育短時間認定を受けた場合、公立保育園が定める保育短時間の保育時間を超えて保育園等を利用する場合、「開所時間内延長保育料」が発生します。
例えば板橋区の場合、公立保育園の開所時間は7:15~18:15で、保育短時間の保育時間は8:45~16:45であるため、短時間の保育時間を超えて預ける場合は1時間400円の延長保育料が発生します。

板橋区の場合

例えば板橋区の場合、3歳未満児・3歳児・4歳児以上の3つのカテゴリーで保育料が設定されています。
3歳未満児(保育標準時間、第1子、以下同様)の場合は0~71,300円(第2子・保育標準時間の場合は0~42,780円、以下同様)、3歳児の場合は0~34,500円(0~20,700円)、4歳児以上の場合は0~28,100円(0~16,860円)です。
なお、「保育短時間」の保育料は保育標準時間の保育料の98.3%に設定されています。
また板橋区の場合は「兄弟姉妹割引」があります。
生計を同一にする世帯から認可保育園に同時に2 人以上が入所している場合、2人目の子どもは割安の保育料(上記の括弧内の第2子の保育料)で預けることができ、3人目以降は保育料については無料になります。

安心して働ける

いかがでしたでしょうか。
自治体が運営主体となって行う「公立保育園」は、保育士にとっては安心して働ける職場です。
転勤が多いという点はありますが、安心して働けるというのが1番のメリットです。
どの職場に関しても、働く上でメリットとデメリットがあるものです。
メリット、デメリットを知った上で、自分の望む働き方にあった施設を探してみましょう。
また、保育料については年齢が低くなるほど保育士が必要となるので、保育料は高くなります。
保育料についても保護者に質問されたとき、答えられるように把握しておくと良いでしょう。

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