社会人になれば、友達同士の会話と違い、公の場に出て話す機会も増えます。
また、社外の人と接する機会は日常的となり、しっかりとした日本語を身につけていないと、見下されたり信用されなかったりします。
今回は、社会人としての正しい言葉遣いを身につけて、立派な社会人になるために、言葉遣いについて学んでいきましょう。
◆知っていますか?「ら」抜き言葉とは?
「見られる」「食べられる」「来られる」などを使う際、「見れる」「食べれる」「来れる」などと「ら」を抜いた表現を「ら」抜き言葉と言います。
〇「ら」抜き言葉が発生した経緯は?
言葉というものは、人々が使うことによって進化し、変わっていくものです。
変化には必然性があり、「ら」抜き言葉も、使用上の都合が良かったため発展したという説があります。
例えば「来られる」という言葉は、「来る」という動詞に「れる」という受け身・可能・自発・尊敬を表す助動詞がくっついた形になります。
「来られる」という言葉だけでは、その四つのうちどの意味を表しているのか分からず、文脈を見て判断しなければならないのです。
しかし、ここで「ら」抜き言葉を使って「来れる」とした場合、意味は一気に狭まり、可能の意味だけとなります。
文脈を読まず、相手にダイレクトに伝えることができるという便利さから、「ら」抜き言葉が発生したのかもしれません。
(※「ら」抜き言葉発生の経緯は諸説あり、地方の方言から発達したという説もあります。)
〇「ら」抜き言葉=公式な場ではNG
「ら」抜き言葉に関しては、現在のところ転換期にあると言っていいかもしれません。
「ら」抜き言葉は、日本語の乱れではなく、揺れだとする見解もあります。
しかし、いまだに多くの正式な出版物では、「ら」抜き言葉はNGとされています。
また、「ら」抜き言葉を「日本語の乱れだ」と憤る人が存在するのも事実です。
やはり、「ら」抜き言葉を公式な場で使うのは控えたほうが良さそうです。
報告書などの文章に起こす場合はもちろんのこと、会議などのプレゼンなどの場でも「ら」抜き言葉を使うことは控えましょう。
〇「ら」抜き言葉を使わないために
言葉というのは、日常的な習慣から自然と発生するものであるがゆえに、自分が「ら」抜き言葉を使っているのかいないのか、というのは意識しないとなかなか分別がつかないものだと思います。
「ら」抜き言葉かどうか心配になったときに見分ける方法を以下に掲載します。
1、「れる」の前に「ら」を入れて意味が通じるかどうか試す
例:「来れる」→「来られる」○「ら」抜き言葉
「置かれる」→「置かられる」×「ら」抜き言葉ではない
2、最後の「る」を除く→命令形になれば「ら」抜き言葉ではない
例:「来れる」→「来れ」×「ら」抜き言葉
「走れる」→「走れ」○「ら」抜き言葉ではない
それでも、瞬間的につい使ってしまうという人には、究極の対処法があります。
それは、可能の意味で使うときには「~できる」という表現に置き換えてしまうことです。
「来れる」なら「来ることができる」、「見れる」なら「見ることができる」のように置き換えます。
多少面倒くささは感じますが、提出書類などに記載するなら、このほうがかえって好印象です。
◆「さ」入れ言葉とは?
「さ」入れ言葉とは、「歌わさせて頂きます」「やらさせて頂きます」「行かさせてもらいます」など、本来ならば「さ」を入れるべきではない部分に「さ」を入れた表現のことを指します。
より丁寧に言おうとして、「○○せていただく」というところを「○○させて頂く」としてしまうようですが、これは文法的に完全なる誤用となります。
〇「○○させて頂く」でOKな場合もある?
「○○させて頂く」という言い方でOKな場合もあります。
例えば、「食べさせて頂きます」や「受けさせて頂きます」といった場合です。
「さ」を入れてもOKな場合とNGな場合があるとは、混乱してきますね。
〇「さ」入れ言葉の見分け方
「さ」入れ言葉としてNGとなる場合は、動詞の部分が五段活用の場合です。
つまり、五段活用動詞に「せていただく」という意味を付け加えたいときには、「さ」を入れたらダメなのです。
中学時代に学習した五段活用動詞を覚えていますか?
五段活用動詞とは、活用語尾がア・イ・ウ・エ・オの5段にわたって変化する動詞のことです。
他の活用との見分け方は、語尾に「ない」をつけてみることです。
「ない」の直前の母音が「ア」になれば、五段活用動詞です。
例:「歌う」→歌わない・・・「わ」の母音=アなので、五段活用。
「受ける」→受けない・・・「け」の母音=エなので、五段活用ではない。
〇知らないうちに使っている「さ」入れ言葉
「つい知らないうちに「さ」入れ言葉を使っていたという人も多いのではないでしょうか。
言語は習慣の上に成り立ちます。
もし、間違って使っていたなら、今日から直していきましょう。
「読ませて頂く」「歌わせて頂く」「やらせて頂く」「行かせて頂く」が正しい使い方です。
覚えておきましょう。
◆尊敬語と謙譲語とは?
敬語と言えば、一般的には尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つに分けられていましたが、 2007年に文化審議会が答申した「敬語の指針」で、尊敬語、謙譲語、丁重語、美化語、丁寧語の5種類に分類されるようになりました。
相手との関係、状況によって適切な敬語とは異なるものです。
5種類に別れる敬語は、その適切な使い分けに苦労します。
とりわけ使い方が難しいのが尊敬語と謙譲語です。
この二つの敬語は、行動されることが少なくありません。
〇尊敬語
話題中の動作や状態の主体が書き手・話し手よりも上位である場合に使われるのが尊敬語です。
動詞では「お・ご…なさる」(考える→ご高察なさる)「お・ご…になる」(行く→おいでになる)「…れる・られる」(帰る→帰られる)「語彙自体が変わる」(食べる→召し上がる)などのパターンがあります。
〇謙譲語
話題中の動作の客体が話題中の動作の主体よりも上位である場合に使われるのが謙譲語です。
動作の主体をへりくだすことで、動作の客体を相対的に上位に位置づけることができます。
動詞では「お・ご…する」(会う→お目にかかる)「お・ご…頂く」(考える→お考え頂く)「語彙自体が変わる」(行く→伺う)などのパターンがあります。
〇尊敬語と謙譲語を混同するパターン
明確に異なるように見える「尊敬語」と「謙譲語」ですが、実際には使い分けが難しいシーンがあります。
(例)
・「そちらで伺って下さい」という表現→これは尊敬語を使うべきところで謙譲語を使っているパターンです。
正しくは「そちらでお聞きになって下さい」が正解。
・「この書類を部長にお渡し頂けますか」という表現→「お渡し」という尊敬語と「頂けますか」という謙譲語を混同して用いています。
「この書類を部長にお渡し下さいませ」が正解。
・「どちらにいたしますか」という表現→「いたす」は当然のことながら、「する」の謙譲語。
「どちらになさいますか」が正解。
・「書類を送付して頂きますようお願いします」という表現→「頂きます」という言葉はしばしば相手に用いられてしまう謙譲語です。
ここは「書類を送付して下さいますようお願いします」が正解。
以上のように、尊敬語を使うべきシーンで謙譲語を用いてしまう…という形で両者は混同されるケースが多いようです。
◆社会人として正しい言葉遣いを身につけましょう
言葉遣いについては、いかがでしたか。
これまでも間違った言葉遣いをしていたならば良い機会です。
この機会に自分の言葉遣いについて、見直してみることをオススメします。
社会人として恥ずかしくない言葉遣いを身につけることができるよう、努力を怠らないようにしましょう。