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【大豆生田先生インタビュー】子どもの人生に影響を与える「保育士」の魅力とは。保育士を志す学生にいま伝えたいこと

保育所保育指針の改定や幼保無償化など、保育・子育てにおいて取り巻く環境が変わるいま。保育士として未来に羽ばたく『保育学生さんにいま伝えたいこと』について、玉川大学教育学部 乳幼児発達学科教授 大豆生田先生にインタビュー。学生時代のエピソードから、変化する保育の在り方、就職活動においての園選びのコツなどを保育士の仕事の魅力とともに追っていく。

大豆生田先生冒頭写真



先生嫌いの僕が幼児教育を目指したわけ

Q 「あんまり学校に行かなかった」「先生が苦手だった」という大豆生田先生。
幼稚園教諭を目指したきっかけを教えていただけますか?


幼稚園教諭を目指したきっかけは、大学でのある授業との出会いでした。


実はもともと学校が嫌いであんまり学校に行かず・・・。
その理由を考えたとき「先生」という人が苦手と気づいて、そんなふうに思わないような先生が増えれば世の中変わるのではないか、自分がそんなお仕事できないかって思ったんですよね。


はじめは小学校の先生になろうと考えていたので、普通のお仕事をしながら夜間の教育学部に通っていたんですけど、どうも大学が好きになれませんでした。


そんな僕が、大学3年生のときに幼児教育の授業に出会いました。


授業を担当していた先生が子どものビデオを見せてくれて、
「みんなから見たらただ遊んでいるだけに見えるでしょう?ここにどれだけ大事な学びがあるかわかる?」「この幼稚園の先生、何もしていないように見えるけれど、いろいろなことをしているのがわかる?」と説明してくれたんです。


このとき、僕の中で教育のイメージがガラッと変わりましたね。


これは面白い。子どもがこうやって夢中になって遊ぶことが最大の教育なんだ
と感じた瞬間でした。


その授業を境に僕の人生は変わり始め、より専門的に幼児教育を学ぶために大学院へ通い、その後幼稚園教諭になりました。


実際に現場にいたのは3年ほどでしたが、すごく面白くて僕にとって有意義な3年間でしたね。



Q.現場で働いていた3年間のなかで、一番印象に残っていることはありますか?


二人の男の子

siro46/shutterstock.com


たかちゃん(仮名)という男の子が印象に残っていますね。


たかちゃんは人づきあいが苦手な子だったんですが、
ある日、あこがれの男の子といっしょにいられたのがうれしくて、その気持ちを表すような絵本をリクエストしてくれたときがあったんです。


読み終わったあと、たかちゃんはうれしそうな顔をしていたんだけれど、実はその絵本、男女の恋愛のお話で(笑) 他の子どもたちに、「たかちゃんが◯◯くんと二人でずっといっしょにいれたことがうれしくて、この絵本をリクエストしてくれたんだよ」って言ったら、ある女の子が「それ男の子と女の子の話だよ」って。


わかっているけれどそれは言っちゃダメって思いましたね(笑)


こんなふうに、何度もうまくいかない経験をしたり、不器用なところがあったりしたたかちゃんなんですけど、幼稚園のイベントで劇をやることになったとき音楽を担当したんです。


実はたかちゃん音楽に詳しい子で、家から自分が好きなジャズやクラシックのCDを持ってきて、それらを劇での演出曲に使ったらみんなから拍手喝采だったんですよ。
そのイベントをきっかけに彼はガラッと変わって、卒園式の日も僕に「まめせんせい、あのときはありがとう」って言って卒園していきました。


そして彼が卒園してから15年経ったあるとき、渋谷のまちなかで偶然「まめせんせいですよね」って声をかけてきた男の子がいました。


はじめは誰かわからなかったんですけど、その子は20歳になったたかちゃんで
「いまどうしてる?」って聞くと「いま、音大に通っていて、ジャズドラムを専攻しています」と答えてくれました。


幼い頃の記憶って忘れてしまっているように思えますけど、小さい頃にジャズが好きって言っていた子が20歳になって大学でジャズを専攻していると話してくれて。
そして僕に言ってくれたんです、「あのとき楽しかった」って。


そのとき、小さな頃にどんな先生に出会って、どんな保育に出会ったかということが、少なからずその子の人生に影響を与える可能性がある、この仕事って大事だなとすごく実感しました。


僕自身も、先生が苦手という反面的な影響を受けてから幼児教育の授業に出会って人生が変わったので、たかちゃんの出来事はすごく印象的でしたね。



時代によって変化する保育園・幼稚園の役割

保育園の役割を語る大豆生田先生

「させる保育」から「子ども主体」の保育へ

Q.保育所保育指針の改定や幼保無償化など、時代によって保育の流れも変わりつつあると感じています。大豆生田先生はどのような点で保育が変わったと捉えていますか?


これまでの保育や教育は、大人が子どもに対して一斉画一的に「させる」場面が多かったと感じています。


しかし、21世紀の社会は単純な仕事はAIが行なう時代になったり、環境問題などのさまざまな社会問題を解決したりすることが求められるでしょう。そうなると、人間は自分で考え、他者と協力して自ら動かなければなりません。


「させる保育」ではなくなり、子どもの「主体性」や「コニュニケーション力」が求められるようになります。だから保育者は、子どもの声を聴き、多様性を尊重していくことが大切になるでしょう。


3つの役割を保証してくれる保育園の存在

また、昔の子育ては親だけがそんなに頑張らなくても、身の回りにいる大人や地域の人たちのなかで自然に育てられていました。それに比べていまは、核家族が増えて密室、子どもだけでは外にも出せないですよね。


そんな狭い環境のなかで、親だけが頑張らなきゃいけなくなって、とても無理があると感じています。だからこそ、昔以上に保育園や幼稚園の役割が大きくなっているのです。


具体的には、


1.同年代の多様な子どもたちの群れと出会える

2.「保育者」という親以外の温かい存在に出会える

3.家庭ではできない多様な遊びや経験ができる


このような3つの役割があります。
そして、この3つすべてを保証しているのが保育園や幼稚園なんです。


つまり、現代の狭い子育て環境に対して、このようなことができる保育園や幼稚園の存在は非常に大きいものと言えるでしょう。



Q.家庭との関係のなかで、保育園や保育士さんが担うものが大きく変わってきていることが伺えますが、普遍的にやることと調整しなくてはならないことがあると思います。
現場との接点のなかで、なにか感じていることはありますか?


パソコンを見ている母親と子ども

takayuki/shutterstock.com


昨今の新型コロナウィルスの影響で、保育園が自粛せざるを得ない期間もありましたよね。
その期間のなかで、園によって随分差があったと感じています。


具体的には、どんな状況でも子どもや保護者に発信し続けた園とほとんど何もしていなかった園。つまり、どんな対応をしたかによってその園が大事にしていることが見えてきたと思っています。


たとえば、オンラインでのつながり。


保育業界が苦手としてきたICTの活用にどうやって進むかというのも、大きなカギとなるでしょう。園の在り方として、保護者が園に来られなくてもオンラインでつながったり、あるいは何かの形で配信ができたりと、手法としてはこのようなことが大事になると思います。


だけど一番大切なのは、手法よりもちゃんと家庭とつながりながら保育をしていくこと


いまの時代ってつながりが切れてしまうこともあるから、人と人とのつながりがすごく大切なんです。だから、子どもの姿を保護者に発信したり、気軽に相談に乗ったりするなど、
子どもや保護者にとって心の居場所になれるかが重要になってくるでしょう。


あともうひとつ、行事の見直しも必要になります。


たとえば運動会。
いままでは練習が多く、先生の負担も大きかったものを運動会まではいかないけれど、日常的な身体を動かす遊びやリレー等で盛り上がったり、遊びの中で充実させたりしようとか。


他にもお誕生日会であれば、毎月先生が出し物の練習をして行なっていたものを各クラスの小さい単位にして、そのクラスの子たちで声をかけ合ったり、歌を歌ったり、仲のいい子どもであればプレゼントを渡したりして。


規模は小さいけれど、それぞれ動画に撮って保護者に見えるようにすれば、温かみも伝わり、むしろ好評だったりするんです。


つまり、行事が子ども主体の保育を邪魔していた


だからこの機会に、子どもに無理があったようなことをちゃんと変えていけるか、この時期をチャンスだと思ってうまく見直せるかということが、子ども主体の保育にするにあたって大切と言えますね。



いまの保育・働く保育士に求められる大切なこと

10の手をしている子ども

MIA Studio/shutterstock.com


1つ目は、「子ども一人ひとりの個性がリスペクトされること」。
これは、非常に大切と言えます。


子どもたちは遊びのなかで、うまくいかないこともありますよね。
うまくいかないことを自分なりに乗り越えようとする子もいるけれど、そこでやめてしまったり、嫌な気持ちになったりする子もいる。


人間って、横に寄り添ってくれる人がいるかどうかで変わることっていっぱいありますよね。


だから子どもも、


「◯◯ちゃん素敵!」

「そこよかったよ!」

「それだとうまくいくかも…!」

「すごい!そこまでできたね!」


のように、ちゃんと自分がやっていることを肯定してくれる人がいたときに、そこで終わってしまうのではなくて、もう一歩乗り越えられるような、次への希望が生まれてくるんです。


つまり、ちゃんと自分のことを理解してくれる、受け止めてくれる大人がいることが子どもにとって大きな力になり、大事なことと言えるでしょう。


2つ目は、「『遊び込む』ことが保証されている環境があること」。


たくさんの子どもたちの群れや地域の大人など温かい保育者に出会えたり、外で思い切りどろんこ遊びをしたりと、家庭ではできない多様な経験が保証できる場所や環境があることが重要になります。


『遊び』は、自分にとっていまやりたいなと思うことに没頭して夢中になって、ワクワクする経験ですよね。自分がやりたいことに夢中になれるほど、幸せなことはない


だから人生のスタート期に遊び込めるような環境があると、自分が生まれてきたこの世界っていうものが幸せだと実感することができるんです。


そしてそれは、保育の質を高めることにもつながっていくでしょう。



Q.「子ども一人ひとりがリスペクトされること」と「遊び込むことが保証されている環境があること」の2つがいまの保育にとって大切なことなのですね。では、そのなかで保育士さんに一番求められていることはどんなことでしょうか。


保育士さんに求められていることとして、3つ挙げられます。


1つ目は「温かく子どもを受け止めること」。
これは日本が大事にしてきたことでもあり、とても重要なものと言えるでしょう。


質のいい保育園や幼稚園ほど子どものことを怒ることが少ない。
子どものことをまるごと受け止めようとしています。


もともと、小さな頃から自分のことを認めてくれたり、受け止めてくれたりする保育者と関わることが多かった子どもは発達がいいと言われています。
そのため、一生懸命しつけをするというよりは、その子のことをしっかり理解することが大切になるでしょう。


また、温かく子どもを受け止めている園ほど、子どもだけでなく、先生一人ひとりのことも受け止めていて温かい雰囲気になるんです。


だから、これから保育園選びをする保育学生さんたちは、子どもや先生たちが温かく受け止められている園かどうかをきちんと見てほしいですね。


どろんこ遊びをする子ども

Purino/shutterstock.com


2つ目は「人や自然との関わりをたくさん持たせること」。


昔と違って、家庭では子ども同士がたくさん関わって、外で思い切りどろんこになるというのがなかなかできないですよね。


安全管理だけで言うと、「リスクのあることは何もさせないほうがいい」ということになりますが、むしろ自然のなかで遊んだり、外遊びをさせたりすることが重要であるというのはさまざまな研究からわかっています。


つまり、人との関わりをたくさん持たせることと、自然のなかでの遊びや外遊びをたっぷりさせることが子どもの発達にもいいということが言えるでしょう。


3つ目は「家庭や地域との関わりを大事にすること」。


保護者のことを否定するのではなく、保護者とも手を組んで、いい関係を築くことが大切になります。だから、子どもの姿を保護者に発信することなどが重要なのです。
そうすることで、保護者が園に対しても協力的になっていくでしょう。


特にいまって、保護者自身も仕事と子育ての両立が大変だったり、自分でもっとしつけなきゃいけなかったりとストレスが大きくなりやすい時代です。
だからこそ、保護者の気持ちをちゃんと理解して、それを受け止めながら信頼感を築いていくことが大切と言えますね。



就活では「自分ひとりで抱えない園選び」が重要

Q.保育学生さんにとって自分で就職先の園を選ぶことには、心理的なハードルがあったり、学校によっては実習後にそのまま決まるパターンがあったりすると思います。
そうした状況をふまえて、保育学生さんの就職の特性と課題感をどのように捉えていますか?


まず、一般企業と比べると就職活動の時期が違うので、焦らざるを得ないと言えるでしょう。
だからこそ、大学や短大、養成校で学んだような保育の在り方、望ましい方向の園がどんな園なのかをちゃんと日々考えることが、自分が理想とする園と結びつけやすくするポイントになります。


つまり「学校で学んできたことがこの園につながるんだ」というような視点を持てるかが、就職活動をするうえで大切になるでしょう。


もう一つは、実際学生さんが出会っている園が少ないので、就職先の選択肢が狭くなるという点ではないでしょうか。


そこで僕が思うのは、いろいろな園のホームページなどの情報を見るということです。
「自分の就職しようとしている地域にはどんな園があるのだろう」と園が公開しているホームページを見るのもいいですし、地域や自治体ごとに行なっている就職説明会に参加するのでもいい。


いろいろな園の情報を集めることで、違いが見えてくるでしょう。


そのときに重要なのは「自分がこういう保育の場所で働きたい」ということをちゃんと持っていることです。それをしっかり持ったうえで、インターネットで調べてみたり、実際に話を聞きに行ったり、あるいは園を見せてもらったりすることが大切になります。


そしてできればそれを養成校などの先生に話すといいですね。
そうすることで、自分だけでなく他の学生さんにも情報が広がっていくでしょう。


ただし、先生に質問をするときにただ「教えてください」と言うのではなく、情報収集をしたうえで「自分なりに考えてみたけれど先生どう思いますか」と伝えることが大切です。
そうすれば、「自分ひとりだけで抱えない園選び」ができるのではないでしょうか。



いま伝えたい、保育士の仕事の魅力

笑顔の大豆生田先生


Q.保育士や幼稚園教諭を目指す保育学生さんにいま伝えたいことはなんでしょうか?


保育の仕事は、みなさんが関わった子どもが大事な影響を受けるという重要なお仕事です。
だからこそ、その道を志してほしい。


特にいま、時代が大きく変わってきていて、いろいろな園がもっと「子どもの主体性を大事にしよう」「子どもや先生一人ひとりを大事にしよう」という方向へと動き出しています。


もちろん園によって格差はあると思います。
そこはみなさんがどのように捉えて、どう選ぶかというところになりますが、保育の道を志すには、いますごくいい時代と言えます。


学生のみなさんがそんな園と出会えて、この仕事をやってよかったと思えることを心から祈っています。



Q.最後に。「保育士」の仕事を一言で表すとどんなものでしょうか?


まさに『希望』です。


保育者でもある自分自身が幸せになっていくための『希望』でもあり、
子どもたちが幸せになっていくための『希望』でもあり、
この国や社会が幸せになっていくための『希望』でもある。


保育の仕事は、みんなが幸せになるための「希望」のお仕事だと思っています。



大豆生田啓友先生・プロフィール

大豆生田先生プロフィール写真


 大豆生田啓友(オオマメウダヒロトモ) 先生



 青山学院大学大学院修了後、幼稚園教諭等を経て、現在、玉川大学教育学部 乳幼児発達学科の教授(学科主任)を務める。

 保育学・幼児教育学・子育て支援を専門。
 幼児教育・保育および子育て家庭の支援にかかわる仕事を目指す学生さんに向けてワークショップ(体験型・協同型・デザイン型)による育成を行う。

 現在、日本保育学会副会長のほか、日本乳幼児教育学会理事、こども環境学会理事を務める。2018年5月から現在では、厚生労働省の保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会の座長代理を務め、保育の質向上に向けた取り組みを行う。

 「日本が誇る!ていねいな保育」(小学館)「語り合いで保育が変わる」(学研教育みらい)などの書籍執筆のほか、講演会やNHKのEテレ「すくすく子育て」に出演するなどコメンテーターとしても幅広く活動している。

<取材・執筆・撮影>保育士バンク!編集部