乳児院とは。働くために職員として必要な資格や施設の目的や役割

乳児院とは、児童福祉法が定める「児童福祉施設」の1つです。乳児院で職員として働くには、保育士や看護師の国家資格を生かすことができます。ただ、それ以外に乳児院が福祉施設として果たす目的や役割、実態を知っておくことで、働き方や働くやりがいをイメージすることができるでしょう。今回は乳児院で働くために必要な資格や求人情報なども併せてご紹介します。

乳児院とは乳児院で働くには
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乳児院とは。児童福祉施設としての目的と役割

乳児院とは、児童福祉法が定める「児童福祉施設」のうちの1つです。「乳児院」というと「保護者が養育ができない乳児を預かる施設」ということは知られていますが、乳児院にはそれ以外にもさまざまな役割があります。

乳児院とは。目的と役割

乳児院の運営

乳児院とは、さまざまな事情から保護者との生活が困難な1歳未満の子どもを保護し、養育する施設です。運営は地方自治体、社会福祉法人などが行っています。
乳児院で預かる子どもたちは、1日24時間すべて乳児院で過ごします。親が働いているなどの時間のみの一時的な預かりをする保育園とは、その点が大きく異なる部分です。
乳児院では2016年現在で、全国136か所、2901人/定員3877人が入所しています。

乳児院の目的と役割

乳児院に短期間の入所の場合は、子育て支援が目的とされています。
長期間入所している子どもたちについては養育の他に、保護者支援や子どもの退所後のアフターケアなどまで、重要な役割を担っています。
2歳ぐらいまで乳児院で過ごした子どもたちは、その後親もとへ戻ったり、里親に引き取られたり、児童養護施設へ入所したりします。

出典:「児童養護施設等について・H29」/厚生労働省

乳児院と児童養護施設の違い

乳児院は原則的には1歳未満の乳児は乳児院への入所となり、1歳以上18歳未満の子どもは児童養護施設への入所となります。
ただし、平成16年の児童福祉法改正によって、安定した生活環境を確保するために必要がある場合は、乳児院に1歳以上の幼児を入所させることができ、同様に児童養護施設に1歳未満の乳児を入所させることも可能になりました。
乳児院と児童養護施設では子どもたちの年齢層が異なるため、それぞれの支援内容にも違いがあります。主に1歳未満の乳児を養育する乳児院では、乳児の養育意外に、問題を抱える保護者などへの支援も多く行われています。一方で児童養護施設は、18歳までの子どもたちがいることもあり、子どもたちが施設から出たあとの自立支援も視野に入れて活動しています。

出典:「乳児院運営指針 」/厚生労働省

乳児院の職員

乳児院では、医師又は嘱託医、看護師、個別対応員、家庭支援専門相談員、栄養士及び調理員、心理療法担当職員、保育士を置かなければならないと児童福祉法で決まっており、さまざまな職種の職員がチームとなって子どもたちを養育しています。
乳児院は新生児から乳児期の子どもを主に預かり保護しているため、健康状態や栄養状態、精神面などさまざまな方向からサポートし、ケアしていく必要があります。

乳児院の施設数と小規模化

乳児院は近年、小規模化の流れが進んでいる児童福祉施設の一つです。
乳児院では、より子どもそれぞれの対応が求められるため、保育士や看護師の職員配置基準が厳しい一方で、定員40人以上の大規模な施設もあります。こうした大規模施設を小規模に改修する傾向が進んでいます。
入所している子どもを5人程度のグループに分け、より家庭に近い環境で、落ち着いて安定した生活リズムで過ごせるようにしています。また、保育士や看護師を始めとする職員が、一人ひとりの子どもと関わる時間が多くなり、子どもたちが養育担当者と個別的な愛着関係を築きやすいというメリットがあります。
乳児院の小規模化に伴い、乳児院で働く人材がより多く必要になるため、乳児院での勤務に興味のある有資格者向けの求人が増えることも期待できそうです。

出典:「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進のために(概要)」/厚生労働省

乳児院の実態と現状

平成25年2月に厚生労働省が公表した「児童養護施設入所児童等調査結果」から、乳児院の子どもたちの年齢や入所理由など、さまざまな実態がわかってきます。

出典:児童養護施設入所児童等調査の結果(平成25年2月1日現在)/厚生労働省

乳児院の入所年齢

乳児院が保護し養育する対象年齢は、基本的には乳児(1歳未満)です。
しかし現在、実際には2歳~3歳まで入所していることも多くあります。平成16年の児童福祉法改正により「保健上、安定した生活環境の確保その他の理由による特に必要のある場合」は就学前までの入所が可能になりました。そのため、現在では5~6歳の子どもの保護・養育も行っているようです。
乳児院で保護する子どもの半数は在所期間6か月未満と短期保護が中心ですが、長期在籍となる3歳以上の子どもの多くは重い障害を抱えていたり、兄弟姉妹が同じ施設にいるなど、保育や看護の環境が必要であることが多い状況です。

乳児院の子どもの入所理由

厚生労働省が公表した「児童養護施設入所児童等調査結果(平成25年2月公表)」によれば、乳児院に入所している子どもの入所理由として、次のような理由が挙げられています。

【乳児院の子どもの入所理由例】

・両親の精神疾患を含む病気
・保護者の入院、療養、出産、離婚、別居、家出、死亡
・両親の未婚
・両親がいるものの養育の能力がない
・虐待、ネグレクト、遺棄児     など

乳児院には、さまざまな理由と家庭の背景によって子どもたちは入所しています。

乳児院で働くには職員に必要な資格
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乳児院で働くには。職員に必要な資格

乳児院の職員として働くには、国家資格または任用資格が必要な場合があります。

乳児院の職員に必要な資格

国家資格が必要な職種

乳児院の職員として代表的な職種は
・医師
・看護師
・保育士
・栄養士
になり、働くためには国家資格が必要です。

任用資格が必要な資格

また、職員になるために必要な任用資格として、次の資格が挙げられます。

・施設長
小児保健の学識経験を有する医師の資格を持つ人や、社会保険福祉士の資格を持つ人、乳児院など社会福祉施設の職員として3年以上勤務した人、そのほか都道府県知事が認めた特定の経験期間・講習を経た人が施設長になっています。

出典:「社会福祉主事について」/厚生労働省

・児童指導員
社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を持つ人や、養成学校や大学で専門的に学んだ人、教諭の資格を持つ人などが多いです。

出典:「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(省令)」/厚生労働省

・家庭支援専門相談員
主に社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を持つ人が多いです。

出典:「社会的養護における職種別任用要件等」厚生労働省

・里親支援専門相談員
主に社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格を持つ人が多いです。

・心理療法担当職員
大学で心理学を学び、心理療法の技術を有する人です。

無資格でも働ける職種

多くの施設では、事務員や用務員は特に資格は必要ありません。ですが、採用に向け事務やオフィスワークでの実務経験やPCスキルの民間資格などがあるといいかもしれません。

乳児院の職員配置基準

乳児院はその施設の役割から、保育所に比べ職員配置基準が厳しくなっています。
乳児院(定員10人未満の乳児院を除く)には、看護師・保育士・児童指導員の合計数が、2歳未満児1.7人につき1人以上、満2歳以上児2人につき1人以上、満3歳以上児4人につき1人以上(これらの合計数が7人未満の時は7人以上)おくように定められています。
また、看護師は定員10人の場合は2人以上、10人を超える場合は10人増すごとに1人以上看護師をおくことが必須条件となっています。
また、定員20人以下の施設の場合、この数のほか保育士1人以上おく必要があるということも定められています。
なお、乳幼児定員10人未満の乳児院の場合は看護師・保育士・児童指導員の合計数が、7人以上と定められており、そのうち1人は必ず看護師であることが定められています。

出典:「最低基準等及び措置費における職員配置基準について 」/厚生労働省

乳児院の仕事内容とやりがい

保育士・児童指導員・看護師が乳児院で働く場合は、どのような仕事と役割を果たすのでしょうか。基本的には保育園での乳児保育に近い仕事内容といえそうですが、24時間体制で子どもたちを見守るため、異なる点もあります。また、乳児院の多くは、夜勤のあるシフト制が基本の働き方になります。

乳児院の仕事内容

乳児院の仕事は、さまざまな資格を有する職員がチームワークで子どもたちの成長を見守ります。

子どもへの援助

乳児院で預かる子どもの養育を行います。乳児保育同様におむつ替えや食事、入浴などの世話を行います。子どもの年齢が上がると、トイレトレーニングを行ったり、絵本を読むなど学びの面でもサポートしていきます。

子どもと保護者への援助

保護者への支援も仕事内容の1つです。保健師などと協力して子どもたちをできるだけ親許へ戻すため、保護者と話し合いながら子どもと面会を行い、保護者が育児を再開できる環境を作れるよう指導していきます。保護者が子どもを引き取った後も、相談やアドバイスを行うケアも含みます。

乳児院で働く職員の1日の流れとスケジュール例

乳児院の1日の流れとスケジュール例です。
さまざまな職種の職員と連携して、24時間体制で子どもたちを見守っています。

時間 スケジュール 仕事内容
7:30 子ども起床 ・夜勤担当から引き継ぎ
・子どもの健康チェック
8:00 朝食やおむつ替え ・乳児は適宜おむつ替えやミルクをあげる
・離乳が進んでいる1~2歳児は朝食
9:00 遊び ・自由保育や集団保育。うたや手遊びなどで遊ぶ
11:00 ミルク・昼食 ・乳児は適宜おむつ替えやミルクをあげる
・離乳が進んでいる1~2歳児は昼食
12:00 入浴 ・順番に入浴
12:30 午睡 ・寝かしつけ
15:00 おやつ、ミルク ・適宜おむつ替えやミルクをあげる
・おやつが必要な年齢の子どもにはおやつを。
16:00 遊び、入浴 ・自由保育、集団保育
・交代で入浴介助
18:00 夕食 ・夕食の準備
・夜勤スタッフへの引継ぎ
19:00 就寝 ・夜勤担当が巡回と見守り

乳児院で働くやりがいと大変さ

乳児院で働く上でのやりがい

一般の保育園以上に、保育士含む職員一人ひとりが接する子どもの数が少なく設定され、手厚い保育をしているのが乳児院の特徴です。乳児によっては、その背景から個別に配慮しなければならない事情を抱えている場合もあり、保育園に比べその責任は大きくなります。また、困っている子どもや保護者を助ける仕事でもあるので、その分やりがいは大きくなり、社会福祉に貢献しているという実感もより得られるでしょう。

乳児院で働く上での大変さ

やりがいと比例して、責任の重さで仕事により慎重さや大変さが生まれる場合があります。
24時間体制で子どもたちを見守るため、業務量や責任は大きく、夜勤シフトや休日シフトもあるため、一般的な保育士とは異なる独自の勤務体系で仕事をすることが多いようです。
また、何らかの事情がある子どもを養育するので、どこまで子どもに寄り添うかの精神的負担を感じることも多い仕事といえます。

乳児院の職員の求人募集と給料

乳児院の求人募集

乳児院の施設数が少ない状況に伴い、求人数も少ないのが現状です。
乳児院の保育士の待遇は正職員(正社員)、契約社員、派遣社員、パートなどさまざまな待遇の募集がありますが、基本的に正職員が求められています。子どもと家庭的な関係性を築く役割が求められるため、長期にわたり安定して働けることが重視されるといえそうです。
乳児院の施設数は増加傾向にあり、乳児院のニーズは増えていることからも、今後も求人数は増加するという見方もあります。
公立の乳児院と違って、民間経営(私立)の乳児院はその施設ハローワークやWEBの求人サイトに募集が出ることもありますが、施設それぞれの公式ホームページをまめにチェックする必要もあります。

乳児院の職員の給料

一般的に資格職は、それぞれの職種によって給料は変わってきます。
保育士であれば一般的な保施設の給与とさほど変わらないと考えていいでしょう。夜勤がある分、夜勤手当がつく場合もあります。また施設によっては、賞与4カ月分以上や、年間休日120日以上、家賃補助ありなど、手厚い待遇もあるようです。
国や自治体、社会福祉法人などが施設を運営することが多く、賞与や福利厚生については比較的安定して支給される傾向にあるようです。

乳児院に応募するための志望動機

乳児院に応募するための志望動機は、子どもに対する思いや考え方、またどうしてこの仕事をしたいと思ったのかの動機を事前に明確にしましょう。
大学や専門学校の授業で学んだ内容から興味を持った、ボランティアや施設実習を体験したことで働くことが目標になったなど、強い気持ちが伝わる体験や動機が説得力を生みます。

志望動機の考え方についての詳しい説明はこちらから

乳児院での実習やボランティア

乳児院での施設実習

保育実習の一環である施設実習で、乳児院を選ぶことができます。学校からの紹介施設を探して申し込みを行いましょう。自分で施設を探すこともできますが、学校からの申し込みを優先させている施設が多いようです。

乳児院でのボランティア募集

乳児院でのボランティアの役割として、子どもたちの遊び相手や食事の世話などの保育補助、ベビーマッサージ、施設の掃除、衣類の縫製、ガーデニングなど庭の整備、行事のお手伝いなど、施設運営に直結するさまざまな仕事があります。
乳児院のボランティアに参加したい場合は、施設探しが必要です。WEBで検索すると、施設の運営法人のWEBページやNPO法人が窓口となり、ボランティアをを募集している場合があります。
また、大学や専門学校を通じての募集がある場合もありますので、学生課に問い合わせてみることも可能です。

乳児院で働くには役割と目的を理解しよう

乳児院で働くことは一般的な保育の仕事に加えて、児童福祉施設としての福祉の役割が強い施設です。家庭のように24時間すべてを子どもたちは乳児院の施設内で過ごすので、職員の責任と役割は大きいといえます。この機会にぜひ乳児院について理解を深めてみてはいかがでしょうか。乳児院で働くためには基本的には保育士の資格があれば応募することが可能ですし、幼い子どもたちを支えるプロとして保育士の需要は高いといえるでしょう。

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