絵の具遊びには、フィンガーペインティングや吹き絵といったさまざまな技法があるようです。
保育学生さんのなかには、実習において絵の具遊びの技法を子どもと実践してみたいと考える方もいるかもしれません。
今回は、乳児と幼児別の絵の具遊びの技法について、やり方やポイントを紹介します。
Yaoinlove/shutterstock.com
絵の具遊びの技法とは
絵の具遊びの技法とは、絵の具を使った技術的な手法や方法のことです。
保育園での絵の具遊びでは、指に絵の具をつけてお絵かきを楽しんだり、色と色を混ぜて変化を観察したりとさまざまな技法を取り入れて製作を楽しむことがあるでしょう。
では、絵の具遊びの技法には、どのような種類ややり方があるのでしょうか。
今回は、保育園の子どもといっしょに楽しめる技法を紹介します。
【乳児クラス向け】絵の具遊びの技法
保育園の乳児クラスから取り入れられる、絵の具遊びの技法を5つ紹介します。
フィンガーペインティング
絵筆などを使わず、子どもの指に直接絵の具をつけてお絵かきする、フィンガーペインティングという技法です。
用意するもの
- 画用紙
- パレット
- 絵の具
- 手拭き
やり方
1.パレットに絵の具を出し、子どもの手や指につけます。
2.画用紙に自由にかきます。
保育学生さんが援助するときは、子どもがスタンプをしたり、指で線をかいたり、紙のうえで混ぜ合わせてみたりと、自由に楽しめるように援助しましょう。
スポンジスタンプ
スポンジに絵の具をつけて、子どもといっしょにスタンプを楽しむ技法です。
用意するもの
- 画用紙
- 絵の具
- パレット
- スポンジ
- 手拭き
やり方
1.絵の具をパレットに出し、スポンジにつけます。
2.画用紙にスタンプします。
スポンジに絵の具をつけてポンポンとスタンプしていくと、素材ならではのふんわりとした印象の色のつき方を楽しめるでしょう。押さえる力の強さによって質感が変わるので、保育学生さんが援助しながら行うとよさそうです。
ステンシルのように型抜きした紙のうえからスタンプしたり、子どもが好きなようにスタンプしてから保育学生さんが何かの形に切り取ったりすることで製作物に活かせるかもしれません。
スポンジのほかにもタンポや束にした綿棒、野菜の切り口などを使ってもスタンプのお絵かきが楽しめそうです。
参考動画:スポンジスタンプでかくコスモスの製作/保育士バンク!
はじき絵
はじき絵とは、油が水をはじくという性質を利用して、クレヨンと水で溶かした絵の具を使ってお絵かきを楽しむ技法です。
用意するもの
- 画用紙
- 絵の具
- 水
- パレット
- 筆
- クレヨン
やり方
1.画用紙にクレヨンで絵をかきます。
2.絵をかいた画用紙に水で溶かした絵の具を塗るとクレヨンの線が浮き上がります。
子どものかいたクレヨンの線が弱く絵の具をはじきにくい場合は、絵の具をさらに水で薄めると浮き上がりやすくなるでしょう。
白い画用紙に白いクレヨンでお絵かきしてから絵の具で塗ると、線が突然浮き出てくるような演出もできるので、子どもといっしょに楽しめるかもしれません。
参考動画:はじき絵でかく花火/保育士バンク!
油性クレヨンのほか、ミツロウクレヨンやろうそくでもはじき絵が楽しめます。
参考動画:ろうそくのはじき絵/保育士バンク!
デカルコマニー
デカルコマニーとは、紙の半分に絵の具をつけてから折り、左右対称の模様を作る技法のことをいいます。フランス語で「転写する」という言葉に由来しています。
用意するもの
- 画用紙
- 絵の具
- パレット
- 筆
やり方
1.画用紙を半分に折ってから開き、折り目がついたことを確認します。
2.真ん中の線を基準にして、半分の面の好きな位置に絵の具をつけます。
3.折り目に沿って画用紙を半分に折り、反対側の面にも色がつくよう押さえます。
4.画用紙を開くと、左右対称の模様のできあがりです。
子どもの好きな位置につけた絵の具が、紙を開くとどのような模様になるのか、子どもといっしょに楽しむとよさそうです。絵の具はあまり水で薄めず原液に近い状態で行なうと、にじみにくく綺麗な模様ができ
るでしょう。
できあがったら、ちょうちょやこいのぼりなどの形に切り取ってアレンジすると季節の壁面飾りとしても活かせるかもしれません。
参考動画:デカルコマニーのやり方/保育士バンク!
吹き絵
吹き絵とは、画用紙のうえに絵の具を垂らし、ストローで吹いて広げていく技法です。
用意するもの
- 絵の具
- 水
- 筆
- ストロー
- 画用紙
- 新聞紙
やり方
1.水で薄めた絵の具を画用紙のうえに垂らします。
2.水滴をストローで吹き、絵の具を好きな方向へ伸ばしていきます。
子どもが吹くのが難しそうな場合は、ストローを太くしたり、絵の具に混ぜる水の量を増やしたりすればやりやすくなるかもしれません。いろいろな方向から吹くことで、線の伸び方やほかの色との混ざり方を楽しめるでしょう。
できあがった形を活かして、植物や海の中のサンゴなどさまざまなものに見立てて製作物に活かすとおもしろそうです。
参考動画:吹き絵のやり方/保育士バンク!
【幼児クラス向け】絵の具遊びの技法
Yaoinlove/shutterstock.com
次に、幼児クラス向けの絵の具遊びの技法を5つ紹介します。
バブルアート
バブルアートとは、シャボン玉液に絵の具を混ぜて吹き、できた泡を利用してお絵かきする技法のことです。
用意するもの
- シャボン玉液
- シャボン玉液を入れるお皿
- 水彩絵の具
- 液体を混ぜる棒
- ストロー
- 画用紙
やり方
1.シャボン玉液に好きな色の絵の具を溶かします。
2.シャボン玉液にストローを差し、吹いて泡を立てます。
3.泡のうえに画用紙をのせると、泡の模様がつきます。
色や泡の立て方によってさまざまな模様を楽しむことができるでしょう。
製作物の背景として使ったり、生きものや人形の洋服の模様として活用したりと、アレンジの幅も広いかもしれません。
マーブリング
マーブリングとは水よりも比重の軽い絵の具を水面にたらし、水面にできた模様を紙などに写しとる技法のことをいいます。
用意するもの
- マーブリング専用インク
- マーブリング用水溶液(洗濯のりでも可)100ml
- 水 100ml
- 洗面器など水を張れる容器
- 竹串
- 画用紙
- 新聞紙
やり方
1.マーブリング水溶液と水を洗面器に入れて混ぜます。
2.マーブリング専用インクをよく振ってから洗面器に垂らします。
3.3~4色程度垂らしたら、竹串でゆっくり水面をなでるように模様を作ります。
4.模様が完成したら、空気が入らないように画用紙などを浮かべます。
5.5秒ほど浸してから、画用紙の手前を持ってゆっくり引き上げ、新聞紙の上に置いて乾かします。
マーブリング専用インクは、文具店や百均などで簡単に入手することができるでしょう。一般の絵の具では水と混ざってしまい、模様が浮かび上がらないことがあるので注意が必要です。
水面に模様をつくるときは、激しく竹串を動かすと気泡ができたり、絵の具が混ざりすぎて綺麗な模様にならなくなったりすることがあります。そのため、保育学生さんは子どもにゆっくりと丁寧に行うよう声をかけましょう。
紙がしっかりと乾いたら、魚の形に切り取るなどしてアレンジを楽しむとよさそうです。
参考動画:マーブリングのやり方/保育士バンク!
スパッタリング
スパッタリングとは、絵の具を塗った「目の細かい網」をブラシでこすって、画用紙に細かな絵の具のしぶきを飛ばす技法のことをいいます。
霧のような模様になることから、霧吹きとも呼ばれているようです。
用意するもの
- 茶こし
- 歯ブラシ
- 絵の具
- 画用紙(台紙用と切り抜き型用)
やり方
1.台紙となる画用紙のうえに、好きなモチーフの形に切り取った紙を置きます。
2.歯ブラシに絵の具をつけてから茶こしの網をこすり、モチーフの周りにしぶきを飛ばします。
3.モチーフの型紙をとるとその形が浮かび上がります。
絵の具の色やモチーフの形、位置を変えていくと、細かい絵の具の粒がグラデーションのようになり、より幻想的な作品に仕上がるでしょう。製作物の模様やメッセージカードの背景などにアレンジしてみてもきれいにできあがりそうですね。
茶こしがない場合は、ブラシ部分を直接指ではじいてもしぶきを飛ばしてもよさそうです。
参考動画:スパッタリングのやり方/保育士バンク!
ビー玉アート
ビー玉アートとは、絵の具をつけたビー玉を紙のうえで転がして線をかく技法のことをいいます。
用意するもの
- ティッシュなどの空き箱
- ハガキサイズの画用紙(10cm×14.8cm) 1枚
- 絵の具(好きな色を3色ほど)
- 紙コップ
- ビー玉 3~4個
- ハサミ
- ゴム手袋
やり方
1.空き箱の上部分を切り取り、箱のなかに画用紙を置きます。
2.絵の具を入れた紙コップにビー玉を入れて転がし、色をつけます。
3.ゴム手袋をしてからビー玉を取り出し、箱のなかに入れます。
4.箱を傾けてビー玉を転がし、画用紙に模様をつけます。
ビー玉を転がしすぎると、色同士が混ざりすぎて黒っぽくなってしまうことがあるでしょう。そのため、「ビー玉をティッシュ箱に入れたら10回転がしてみよう!」など、ルールを決めるときれいな模様に仕上がるかもしれません。
できあがったら友だち同士の模様を見比べることができそうです。
また、そのままメッセージカードの背景にしたり、写真フレームにアレンジしたりすると華やかに仕上がるでしょう。
参考動画:ビー玉アートのやり方/保育士バンク!
版画
版画とは、彫刻や細工を施した版にインクをつけ、紙に転写することによって複数枚の絵画を製作する技法のことをいいます。
本格的な版画では木の板や彫刻刀を使いますが、ここでは、食品トレーなどの身近な材料を使った簡単な版画のやり方を紹介します。
用意するもの
- 食品トレー 1個
- 段ボール(新聞紙でも可) 1枚
- 画用紙 1枚
- 好きな色の絵の具 適量
- ハサミ
- 鉛筆
- 割りばし
- ペン
やり方
1.洗って乾かした食品トレーの平らな部分のみを切り取ります。
2.食品トレーに、鉛筆で好きな絵をかきます。
3.鉛筆でかいた線を割りばしでなぞり、溝を深くします。
4.ダンボールのうえに、食品トレーより一回り大きなサイズでカットした画用紙を置き、周りをなぞって位置の目印をつくります。
5.目印の中央に食品トレーを置いて、絵の具を塗ります。
6.目印にあわせて画用紙を置き、ずれないように注意しながらこすって転写させます。
食品トレーにつける溝を深くすることで、よりくっきりとした線が浮かび上がるでしょう。また、転写させるときは紙をしっかりと押さえながら行うことがポイントになります。
子どもだけでは難しい場合は、保育学生さんが適宜援助するとよいかもしれません。
1枚の版画版から何枚も同じ絵を転写できるので、何枚も作って友だちと交換しあったり、複数の家族に贈ったりするのもよいかもしれませんね。
さまざまな絵の具遊びの技法を使って、子どもといっしょに楽しもう
今回は、保育園の子どもと楽しめる、絵の具を使った技法のやり方やアイデアを紹介しました。
紹介した技法に沿った製作では、全て保育学生さんが指導するのではなく、子どもにやり方の工夫やアレンジ方法を聞く時間も作ってみると、製作に対する意欲も高まるかもしれません。
フィンガーペインティングやはじき絵、デカルコマニーなどさまざまな技法を取り入れながら、子どもといっしょに絵の具遊びを楽しんでみてくださいね。