保育士の業務の一つとして保護者対応があります。そのなかで、「言ってはいけないNGワード」がいくつかあるようです。
保護者に信頼されるためにも、言葉選びには常に配慮したいですね。
今回は、保育士として保護者に言ってはいけない「10」のNGワードと言い換えの例、上手にカバーするための対策についてまとめました。
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■目次
保育士が保護者に言ってはいけないNGワードとは
保育士の仕事の一つとして、子どもだけでなく保護者との連携も大切になるでしょう。
保護者対応をするなかで、相手の不安や不満を増大してしまう要因の一つが「言葉の使い方」といわれています。
保育士さんが保護者に対して言ってはいけないNGワードには、子どもを侮辱する言葉やほかの子どもと比較する言葉などが挙げられるようです。
正しい言葉遣いができていなかったり、無意識に誤った表現をしてしまったりすると、保護者の信頼を損ねたり、逆上させたりしてしまったりすることも考えられます。
問題の根本的な解決をスムーズに行うだけでなく、保護者との関係を保つためにも、言葉の使い方には常に気を配りたいですね。
保育士が保護者に言ってはいけない「10」のNGワード
では、実際に保育士さんのどのような言葉に、保護者は不満を抱くのでしょうか。
保育士が言ってはいけない10個の言葉を、言い換え例とあわせて紹介します。
1.そんなはずはないのですが
言ってはいけない理由
保護者の発言に対して、嘘と捉えているような否定的なニュアンスを与えてしまうNGワードです。まずはしっかりと耳を傾けて、事実確認をしましょう。
言い換えの例
たとえ可能性が低い事柄でも、保護者にとってはそのように感じてしまった要因があるので、「そのようにお感じになったのですね」と発言を受け止めてから、事実確認をすることが大切です。
そして「早急に確認いたします。その後お返事させていただいてもよろしいでしょうか?」と伝え、すぐに対応するという姿勢を見せ、一旦保留にしてからほかの保育士さんと相談するなどしてから答えるようにしましょう。
2.しかし、ですが、でも
言ってはいけない理由
こちらも保護者が否定されたように感じる要注意ワードといえるでしょう。
「4D言葉」と呼ばれる「でも」「ですが」「だって」「どうせ」や、反対を示す「しかし」という言葉は、相手にネガティブな印象を与えかねません。
言い換えの例
相手の言い分と異なる事実を伝える際は、間に言葉を挟まずしっかりと聞き入れたあとに伝えることが大切です。
そのあとに「実は」を使って話し始めることで、相手に否定感を与えずに済むこともあるかもしれません。
3.それは違います
言ってはいけない理由
こちらも相手の言っていることを全否定する印象を与える言葉といえます。
このワードで相手の話を遮らないよう注意するようにしましょう。
言い換えの例
「そのように感じられたのですね」「それは心配に思われますね」というように共感を示すことが大切です。
保護者の言うことを最後まで聞き入れたあとに、「しかし」のときと同様「実は」という言葉で話し始めるとよいかもしれません。
4.絶対、普通は
言ってはいけない理由
「絶対に○○ですよ!」、「普通はこうなんですけどね」という言葉は、クレーム対応時や育児に関する相談の際には、相手にプレッシャーや不快感を与えてしまうことがあるかもしれません。
無意識のうちに使わないこと、根拠のない断言は極力避けることが重要なポイントです。
言い換えの例
相手から、同じようなケースはあるのかなど尋ねられた場合は、「○○なケースが多いです」といった、柔らかい表現で伝えることを意識しましょう。
特に、子どもの発達については保護者の誰もが心配し、ナイーブになる部分といえます。断定的に発達の遅れを示唆するような言葉は使わないようにすることが大切です。
5.なぜ、どうして
言ってはいけない理由
保育士さんからの「なぜできなかったのですか」、「どうしてこうなったのですか」という質問は、保護者が責められていると感じやすい言葉といえます。
保護者は「自分のやり方が悪かったのか」と自分が責められたように思い、落ち込んでしまうかもしれません。
言い換えの例
理由を尋ねる場合には、「なぜ○○できなかったのですか?」といった「保護者」に対する質問ではなく「○○できなかった原因は何だったのでしょう」と「事柄」に対する質問に置き換えるとよいでしょう。
そのうえで、「私たちも考えてみますね」と伝えると、保護者も一方的に責められているのではなく、保育士さん含め全体で原因を考えてくれている、と感じることができるかもしれませんね。
6.すみません
言ってはいけない理由
クレームや指摘を受けた場合に、「すみません」という謝罪の言葉はNGワードになります。
保護者に反省が不十分だと思わせてしまう原因にもなりかねません。
言い換えの例
保護者の表情に怒りが見えない場合でも「誠に申し訳ございませんでした」と丁寧な謝罪を心がけましょう。
心を込めて謝ることで、相手にも「非を認めている」という気持ちが伝わり、さらなるトラブルの発展を抑えることができそうです。
7.わかりません
言ってはいけない理由
何かを尋ねられたとき、すぐに「わかりません」と言うのも避けたほうがよいでしょう。
「わかりません」と言われた保護者は、突き放されたように感じるかもしれません。
「じゃあどうすればいいの?」「あなたがわからないなら、あなた以外の誰かに聞いてもらえないの?」と不満を抱えることもあるでしょう。
言い換えの例
わからない場合は、「わたくしの一存では判断いたしかねます」と丁寧な言葉で伝えましょう。
そのうえで、確認が必要な場合は「ほかの保育士とも相談したうえでお返事させていただいてもよろしいでしょうか」と伝えて保留にするとよさそうです。
8.できません
言ってはいけない理由
保護者からの要求に対して「できません」と答えるのも言ってはいけない言葉の一つといえるでしょう。
保育士さんにその場で否定されると、「なぜできないのか」「何か代替案はないのか」と感じるかもしれません。
言い換えの例
「誠に恐れ入りますが、○○のためご希望には添いかねます。お役に立てずに申し訳ございません」
このように、理由をしっかりと伝えたうえでできないことを丁寧に伝えましょう。
もしも代替案で要求を実現できそうな場合は、「○○でしたら可能かもしれませんので、一旦確認してまたお伝えしますね」といったように伝えるとよさそうです。
理由や代替案を示すことで、保護者も納得できるかもしれませんね。
9.○○してください
言ってはいけない理由
保護者に対して「○○してください」と言うのは、NGワードの一つでしょう。
これは「お願い」ではなく「命令」のように聞こえてしまう可能性があります。
言い換えの例
たとえば、「お迎えが遅くなるときは、事前に連絡してください」と言いたい場合、「お迎えが遅くなるときは、事前にご連絡いただけると助かります」と言い換えましょう。
このように、保育士さんから保護者へ何かお願いをするときは、「そうしてもらえるとこちらが助かる」というようにメリットとなる言葉を添えると、保護者も協力しやすくなるかもしれません。
10.愛情不足
言ってはいけない理由
保育士さんからの「愛情不足ではないですか」や「もっと愛情をかけてあげましょう」といった言葉もNGワードといえるでしょう。
それにより保護者が自信を失い、日々の育児の努力を否定された気持ちになってしまうかもしれません。
言い換えの例
たとえば、「おうちでも時間のあるときに、絵本の読み聞かせをしてふれあいを楽しむのもよいかもしれませんね」など、具体的な対処例を伝えるとよいでしょう。
それにより、「もっと愛情をかける」「愛情不足」というNGワードを使わなくとも、子どもにとって必要な時間や接し方などを伝えられるかもしれませんね。
保育士のNGワードを上手にカバーするための対策
保護者対応のなかで、保育士さんがNGワードを上手にカバーするためにできる対策はあるのでしょうか。例を紹介します。
相手に配慮した言葉遣いを意識する
「~~しなければならないですね」「~~するべきです」といった、相手に強い印象を与えるような断定的な言い方は避けるように意識しましょう。
保護者の価値観を尊重しながら、「〜~だと思います」「保育園では~~していますよ」「〜~をするのもよいかもしれませんね」など、相手の気持ちに配慮した言葉遣いを心がけることが大切です。
特に、成長や発達に関するデリケートな問題に関しては、保育士さんからは励ましのつもりでも、保護者を傷つけてしまうこともあるかもしれません。
言い換えの仕方などを把握しておき、不安を与えないような表現で伝えるようにするとよさそうです。
相手の立場に立って考える
保育士さんは、保育に関する知識において保護者よりも豊富な部分もあるかもしれません。
しかし「自分はこの子のことを保護者よりわかっている」というような姿勢は、保護者にとって大変不愉快な印象を与えてしまうでしょう。
また、いくら理想論を述べられても、仕事をしながらの子育てでは不可能なこともあるかもしれません。
保護者対応では、常に相手の立場を考慮し、気持ちに寄り添った発言することが信頼関係を築いていくために大切なポイントになるでしょう。
保育士のNGワードを知って、保護者対応に活かそう
今回は、保育士が保護者に対して言ってはいけない「10」のNGワードや、上手にカバーするための対策について紹介しました。
子どもを侮辱するような言葉や保護者に対して否定的な言葉などは、一歩間違えばクレームやトラブルにつながる可能性があります。
しかし、保護者の気持ちに寄り添った具体的な言葉に言い換えることができれば、信頼関係も築きやすくなるかもしれません。
保護者対応において言ってはいけない言葉や、その言い換え例を参考にしながら、安心感につながる言葉に変換していけるとよいですね。