音楽に合わせて身体を動かしたり楽器にふれたりするリトミック活動。新卒保育士さんのなかには指導案の書き方に悩む方も多いかもしれません。年齢やクラスの実態に合わせたねらいや活動内容を考えられるとよいですよね。今回は、保育園で行うリトミックの指導案について、3歳・4歳・5歳の年齢別の書き方や例文を紹介します。
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■目次
リトミックの指導案を書いてみよう
保育園や幼稚園で取り入れられるリトミックとは、音楽を聞き取りリズムや音階に合わせて身体を使って表現することを楽しむ指導法です。
リトミックの活動内容は、主に以下のような遊びから成り立つと言われています。
- 音に対する即時反応
- 音の高低の聞き分け
- リズムの理解と聞き分け
- 長調・短調の聞き分け
- 楽器の演奏
音楽を聞いて、音程やリズム、調などを判断し、身体を動かして表現することを楽しめるとよいですね。
今回のコラムでは、リトミック活動のポイントをふまえ、指導案の書き方や例文を紹介していきます!
リトミックの指導案作成におけるポイント
それでは、リトミックの指導案を作るうえで知っておきたいポイントを見ていきましょう。
始まりの歌、終わりの歌などルーティンを作る
リトミック活動の最初と最後には、それぞれ「始まりの歌」「終わりの歌」を設定して毎回必ず歌うようにするとよいでしょう。
そうすることで、子どもたちは「この曲を歌ったらリトミックの時間だ」など活動の見通しが立ち、気持ちの切り替えができるようです。
また、リトミックが苦手な子どもでも、繰り返し同じ曲を聞くことで、この曲なら自信をもって歌えるという安心感につながるかもしれません。
スモールステップを意識して活動を構成する
リトミックで必要になる「音を聞く」という活動は、慣れていない子どもには難しく、集中力も必要です。
活動の導入では、手拍子を使って遊んでみたり、保育士さんの動きを真似してもらったりと簡単な活動を取り入れてみましょう。
音の聞き分けや自由な身体表現といった難しい活動は後半に設定し、段階的に取り組めるように進め方を工夫するとよいですね。
子どもが集中できる時間で区切りをつける
リトミック活動では注意して音楽を聞く必要があるため、子どもたちが集中できるよう、時間の長さを考えることが大切です。
そのため、リトミックの時間のなかでも、子どもたちが飽きることがないように、小活動をいくつか用意しておくとよいでしょう。5~10分間隔など区切りをつけて新しい遊びに移るとよいですね。
また、指導案で設定した活動や時間にこだわりすぎず、実践中の子どもの様子を見ながら臨機応変に対応していきましょう。
楽器や道具を使うときは出し方を工夫する
リトミック活動では、身体を動かす場面が多いため、子どもたちの気持ちが散漫になることも考えられます。
特に楽器や道具を渡すときには子どもの気持ちが盛り上がりやすいため、提示のしかたを工夫することが大切です。
園児に楽器や道具を箱からとっていってもらうのか、保育者が配るのかなど、渡し方を指導案に記載しておきましょう。また、子どもたちの注目を集めたいときは、クイズ形式など興味を引き出すように工夫するのも面白そうですよ。
リトミックの指導案の書き方・例文【3歳児】
ここからは、リトミック活動の具体的な指導案の書き方を紹介します。
まずは3歳児向けの例文をまとめました。
ねらい
<例>
- スカーフを使ってダイナミックに表現する楽しさや開放感を味わう。
3歳児クラスでは、スカーフを使った表現をねらいに据えて、リトミックを行ってみましょう。
手に持って動かせる道具があることで、イメージが広がっていきそうですね。
活動の流れ
<例>
1.ホールに入ってきた子どもから順番に、保育者からスカーフを受け取る。
2.スカーフを持って、保育者の真似をしてひらひらさせたり、いないいないばあをしたりすることを楽しむ。
3.音楽に合わせて、スカーフで風が吹いた様子を表現したり、ちょうちょに見立てて動かしたりする。
スカーフを持った子どもから、保育者の前に集まるようにするとスムーズに活動が進むでしょう。
子どもが全員揃うまでに、スカーフを使って遊んで待っておくのもよいですね。
(2)で一通り遊んだあとは、前に立ってみんなの見本となる先生役をしてくれる子どもを募集するのも楽しそうです。
予想される子どもの姿
<例>
- スカーフの透け感のきれいさや動きを楽しみながら、ひらひらと動かして遊ぶ。
- 保育士さんの話を聞いているときにスカーフをいじって遊んでしまう。
- 見本としてみんなの前に立つものの、緊張して動きが小さくなる姿もある。
それぞれの工程で、どのような子どもの姿が見られるか予想して指導案に書いておきましょう。
保育士さんが説明をするときにスカーフが気になってしまう子には、床に置いて手から離すように伝えるとよいかもしれません。
環境構成・保育者の援助
<例>
- ダイナミックな動きや一体感を味わうよろこびに共感していく。
- スカーフを渡すときには、首に結びつけないことや、無理に引っ張ったりしないことを伝える。
- (3)では、音楽の速さや調子に合わせてスカーフの動かし方を変えて、音を聞いて表現する楽しさを味わえるようにする。
クラスの子どもの様子に合わせて、スカーフの渡し方や説明をするタイミングは調整しましょう。
3歳児ではリトミックを初めて経験する子どもも多いかもしれないので、保育士さんが楽しむ姿を見せたり、共感したりと、しっかりかかわれるとよいですね。
リトミックの指導案の書き方・例文【4歳児】
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次は、4歳児の子どもに向けたリトミック指導案の書き方を紹介します。
ねらい
<例>
- ピアノの音を聞いて、動く・止まるなどの動きをすることを楽しむ。
4歳児クラスの例では、音を聞いて判断して動く「即時反応」をテーマにした活動を設定しました。
子どもによってリズムや音階の違いなどを聞き分けるのは難しい場合もあるかもしれません。ピアノが停止することに合わせて緊張と開放を楽しめるようなねらいを立てています。
活動の流れ
<例>
1.円形になって座り、保育士さんの手拍子を真似して子どもも叩きます。保育士さんが手拍子を辞めたら、子どもも辞めるという流れを繰り返します。
2.立ち上がって、隣同士の間隔をとります。保育士さんのピアノに合わせて、部屋の中を回って散歩します。ピアノが止まったら、子どもたちも立ち止まります。
3.ピアノを速く弾いたり、遅く弾いたりするのに合わせて、子どもたちも走ったりゆっくり歩いたりとアレンジを加えていきます。
(2)の活動に移るときには、「○○に出かけよう!」など声をかけて、子どもたちの興味を引き出しましょう。
また、低い音を弾いて「雷だ!」と言ったら座って頭を隠したり、高い音を弾きながら「小鳥さんが来たよ」と声をかけて羽ばたく真似を促したりなど、ストーリー性を意識するとより楽しいかもしれません。
予想される子どもの姿
<例>
- (1)の活動では、なかなか感覚がつかめず手拍子を続けてしまう子もいるが、徐々に慣れてくるとタイミングが合うようになる。
- (3)において、ゆっくり、速く、突然止まるなどの動きを楽しみ、自信を持って活動している。
- 最初はピアノを聞いて行動しているものの、楽しくなってくると音を聞かずに走り回ってしまう。
まだ活動に慣れきっていない4歳児の子どもたちだと、つい音を聞くのを忘れたり、タイミングを捉えるまでに時間がかかったりするでしょう。
指導案の作成時にあらかじめ予想して援助方法を考えておくとよいですね。
環境構成・保育者の援助
<例>
- 導入となる手拍子の活動では、先に見本を見せてから真似してもらうようにして、安心感につなげる。
- ピアノの速度を変化させるタイミングで「ゆっくりだよ」など声をかけ、子どもが気づけるようにする。
- (3)の活動に移る前に、走らない、友だちを押さないなどの約束をしたうえで、ルールを忘れている子には個別に声をかける。
子どもが徐々に活動に慣れていけるように、導入や見本などをしっかりと設定しておきましょう。
また、身体を動かす活動の前には、子どもたちに約束を伝えておくことも大切です。
リトミックの指導案の書き方・例文【5歳児】
最後に、年長児である5歳児向けのリトミック指導案の書き方や例文をまとめました。
ねらい
<例>
- 音のテンポやメロディからイメージを膨らませて、自分なりに表現することを楽しむ。
5歳児の指導案例では、自主性を高めらるように自分で考えたことや感じたことを身体の動きで表現することに着目したねらいを立てています。
ねらいについては、5歳児の子どもたちの様子や経験に合わせて調整してみましょう。
活動の流れ
<例>
1.保育者の前に集まり、動物のかかれた絵カードを見て、動物の名前や特徴を言ってイメージを膨らませる。
2.立ち上がって広がり、ピアノのメロディに合わせて、うさぎ、ぞう、小鳥などの動物になりきって動く。
3.「森を探検しながら動物になりきる」というテーマで身体表現を行う。最初は森を散歩するイメージで部屋の中を歩き回り、(2)で行ったピアノのメロディに変化したら、それぞれの動物の動きをする。
うさぎはジャンプしたくなるような跳ねたリズム、ぞうはゆったりとしたメロディなど、動物に合わせてピアノの音色を変えていきましょう。
保育士さんが複数いる場合、ピアノを弾く人、子どもといっしょに表現をする人というように役割分担をするとよさそうですね。
予想される子どもの姿
<例>
- (2)では自分なりに動物になりきった動きをすることを楽しむ。
- (3)の活動では、最初は戸惑っていたものの、保育士さんの声かけに促されたり、ピアノの音色の変化に気づいたりして表現しようとする。
- 自由な表現活動に気分がのらず、他児の様子をじっと見ている子どももいる。
リトミックの表現活動では参加をしぶったり、離れたところから見ていたりする子どももいるかもしれません。
そのような子どもへの対応方法も考えておくとよいでしょう。
環境構成・保育者の援助
<例>
- それぞれの動物のメロディの違いがわかるように、(2)の工程を十分に繰り返して行う。
- のびのびと身体表現を楽しむ姿を認め、他の子どもにも知らせていく。
- 参加に消極的な子どもには、自分のタイミングで活動に入れるよう見守る。
活動に入るのが難しい子どもでも、ほかの子の様子を見ているうちにやりたくなったり、活動の雰囲気がわかったら意欲が出たりすることもあるようです。
無理に誘うことはせず、優しく誘ったり、「来たくなったらおいでね」とあたたかく見守ったりすることが大切かもしれません。
指導案をしっかり立てて、保育園でリトミックを楽しもう
今回は、保育園や幼稚園で行うリトミックの指導案の書き方や例文を紹介しました。
リトミックを実践するうえで、子どもがゆっくりと音の聞き方に慣れていけるようスモールステップで活動を構成したり、楽器やスカーフといった道具の出し方を工夫したりすることが大切になるでしょう。
指導案を立てるときは、子どもの年齢や活動経験に合わせて柔軟に遊びの内容を考えてみてくださいね。
指導案の書き方を参考に、3歳児・4歳児・5歳児クラスでリトミックを実践してみましょう。