2歳児担任は、保育士として専門的なかかわりが求められる場面が多くあるといえるでしょう。トイレトレーニングやイヤイヤ期など、2歳児ならではの姿があり、保護者との連携やかかわり方も大切になってきます。紹介する発達目安やかかわり方を参考に、子どもの遊びや活動を広げ、発達著しい2歳児の保育を楽しんでくださいね。
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■目次
2歳児担任を受け持った保育士さんが感じることとは?
「魔の2歳児」といわれるこの年齢の子どもたち。
一見大変そうなイメージがあり、担任になったら不安に思う新卒保育士さんもいるかもしれません。
「自分でやりたい!でもできない」というもどかしさを抱える年齢でもあるので、信頼関係ができていない実習生さんなども、かかわり方に悩むことが出てくるかもしれませんね。
しかし2歳児は、好奇心が増してできることが増え、遊びも広がるため、保育士としてのやりがいを多く感じることができる学年ともいえるでしょう。
今回は、2歳児の姿や保育するポイントを紹介します。
2歳児担任として知っておくべき人数の配置基準
保育園は、児童福祉施設最低基準が国から定められています。
子ども何人に対して保育士何人を配置する、といった内容でこの人数は学年によって異なります。
あくまで「最低基準」のため、この人数よりも多く配置される場合もあるでしょう。
2歳児の職員配置基準は?
1、2歳児は、子ども6人に対して保育士1人を配置することが定められています。
子どもの人数が12人ならば保育士は2人、13人ならば保育士は3人が最低でも必要となります。
実際の現場の状況は?
保育園は、乳幼児が1日の生活時間の大半をすごすところであり、保育の質を確保する観点から定められた配置基準ですが、実際の現場ではどうでしょうか。
イヤイヤ期、トイレトレーニング、身の回りのことを身につける援助など、一対一でのかかわりも多くなる2歳児担任の仕事。
最低基準の職員配置だと、十分な保育ができない、大変だと感じている保育士さんが多くいるかもしれません。
担任が知っておくべき2歳児の発達目安
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子どもの発達を知ることは、遊びやかかわり方を考える上で大切です。
発達目安を知り、子どもを観察していくことが、質の良い保育、成長を促すかかわりにつながるでしょう。
基本的な発達
2歳児は、子ども自身でできること、やりたいことが増えてくる年齢です。
個人差はありますが、基本的な発達を理解して、成長を促すために適切なかかわりはなにかを考えていきましょう。
健康
- 走る、階段を登り降りする、ジャンプするなどの動きができる
- 手先指先の使い方がうまくなる
(ボタンをとめる、スプーンを下持ちして食べ進めるなど)
人間関係
- 友だちと同じ遊びを共有することをよろこぶ。一方で、まだまだ自分中心である
- 自立心が芽生える一方で、まだまだ保育者に甘えたい
言葉
- 二語文「おもちゃ、ある」(または三語文「おもちゃ、ここに、ある」)が盛んになる
- 会話が成立する。身近な人の口調を真似する
環境
- 文字や数字に興味を持ち、生活に取り入れることができる
- 写真やイラストを見ながら活動することができる
表現
- 歌詞を覚えて歌うことを楽しむ
- 円や顔を描く
基本的生活習慣が身についてくる
- 着脱を完了させることができる
- 食べ進めることができる
- 生活リズムにあった睡眠がとれる
このように、生活に必要なことを保育者の援助なしでできるようになるでしょう。
脱いだ服をたたもうとしたり、皿に残ったごはんをスプーンで集めて綺麗に食べたりと、生活マナーを身に着けていく姿も見られるかもしれません。
イヤイヤ期が始まる
いわれたことに対してすべて「イヤだ」と返したり、泣いたり激しく暴れたりして抵抗したりするイヤイヤ期。
自立心が芽生え、成長のひとつといえますが、保育者が滅入ってしまうことも多いでしょう。
イヤイヤ期がない子もいれば、保護者が悩むほど大変な子もいるようです。
なぜなぜ期がある
2歳児は、言葉の発達も著しく、保育者との会話が成立する子も多くいるでしょう。
「これなに?」と物の名前を尋ねることから始まります。
例えば「さんぽにいこう」と声をかけると「なんで?」と返ってくるなど、身近なあらゆるものに対して「なぜ?」「なんで?」を繰り返すのがなぜなぜ期です。
2歳児の課題!トイレトレーニング
おむつからパンツに切り替えるためのトレーニングです。
パンツでおもらししたときの片付けや、トイレに連れていく手間、子どものやる気をあげるための工夫など、大変なことも多くあるでしょう。
保育者が頑張りすぎると、子どもが精神不安定になることもあるため、慎重に進める必要がありますね。
2歳児担任として意識すること
2歳児は、発達の個人差が見て取れる年齢といえるでしょう。
トイレトレーニングなど、目標を持って取り組む家庭もあります。
子どもと保護者、両者のケアが担任として重要な役割のひとつとなってきますので、かかわり方のポイントを紹介します。
子どもとのかかわり
2歳児は、「自分でやりたい、でもできない」「自我があるのにうまく伝えられない」といったもどかしさをかかえている場合もあります。
そのような思いを、うまく汲み取ったかかわりが大切といえるでしょう。
発達の個人差を捉えたかかわりをする
目標を持つことはよいことかもしれません。
しかし、保育士が考える目標を子どもや保護者に押し付けることは、大きな負担となるでしょう。
個人差があることは当たり前のことであるため、一人ひとりに合った援助を心がけましょう。
クラスで集団遊びをする際も、置いてきぼりになる子がいないよう、工夫する必要がありますね。
基本的生活習慣を身につけていく援助をする
発達には個人差があるとお伝えしていますが、「個人差だからできなくてもいい」といった考えではなく、「この子の次の成長段階や必要な援助はなにか」をしっかり考えていきましょう。
基本的生活習慣を身につけていくためのかかわりは、常に意識し、保育士さんが子どもを導いてあげることが大切ですね。
気持ちを受け止めたかかわりを心がける
言葉の発達はあるものの、気持ちを適格な言葉にして表現することはまだ難しい年齢といえるでしょう。
反発する姿にも、もどかしい気持ちが隠れているのではないでしょうか。
子どもの気持ちを言葉で代弁したり、理解を示したりするかかわりをしていきましょう。
大きな怪我に注意する
発達に伴い、活動や遊びもよりダイナミックになってくるでしょう。
子どもの好奇心もあり、遊びの勢いが増したり、友だちと喧嘩をしてしまったりすることが予想されます。
力加減もまだ分からないので、大きな怪我につながらないように、保育環境やかかわりを工夫する必要があるでしょう。
保護者とのかかわり
保育士は、家庭と連携して子どもの生活を保持していく役割が求められます。
そのためには、保護者の思いを受け止めながら子どもの育ちを共に喜び合い、信頼関係を築くことが大切になってきます。
「つい他の子と比べてしまう…」そんな保護者の気持ちに寄り添う
発達の個人差が明確に分かる場合、不安に思う保護者もいるでしょう。
「うちの子はまだしゃべれない」「パンツの子がいるのにまだおむつで大丈夫なのか」という保護者の気持ちに寄り添う姿勢を見せましょう。
そして、個人差を不安に思わなくていい、その子に合った援助はなにか、などを伝えていく必要があるでしょう。
タイミングや話し方も大切です。
保育園と家庭が協力し合って子どもの成長を促す
保育士は、保護者支援も重要な役割となるでしょう。
しかし、家庭との連携は子どもの成長を促す上で大切になってきます。
保護者の負担を伺いつつも、保育園での様子を伝えながら、連携して子どもの成長を促していけるようにしましょう。
そのためには、保護者と保育士の信頼関係が大切といえますね。
2歳児担任に必要な心構え
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「魔の2歳児」といわれるほど、難しい時期を迎える2歳児の子どもたち。
しかし、担任としてきちんと成長を理解し、心構えをしておけば、やりがいを感じられる場面も多くあるでしょう。
担任として大切な考えを紹介します。
大変な場面も多い2歳児担任!でも冷静に、落ち着いた対応を心がける
イヤイヤ期など対応が難しいことも多く、保育士さんが疲弊してしまう…。
そのような場合は、一旦その場を離れたり、他の保育士さんに対応をお願いしたりと、冷静でいられる対応をとっていきましょう。
複数担任の保育士さんで支え合って保育することが大切ですね。
子どもの成長を楽しむ!保育の幅を広げるチャンス
できることが増えてくる2歳児。子どもの成長とともに、保育のアイデアも広がっていきますよ!
「こんな保育や活動をやってみたい」と、保育士さん自身も自分の保育を楽しんでいきましょう。
保育士さんのかかわりが子どもの姿をかえる!子どもを観察し専門的視点を養う
信頼関係を築き、根気強く、適格なかかわりを続けることで、子どもの姿は変わっていくでしょう。
昨日できなかったことが今日できるようになったなど、2歳児の目に見て取れる成長は、保育士として大きな励みとなりますね。
2歳児担任が考えるクラスの目標
「子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う」ことと、「入所する子どもの保護者に対し、その援助に当たる」がすべての保育者に共通する保育目標です。
それをふまえて、クラスとして目指すべき保育、どのように育っていくかを考え目標設定していきましょう。
保育者に見守られながら身の回りのことに取り組む意欲を深める
意欲を育むためには、遊びを通して、できたよろこびを感じられることがさまざまなことに取り組む意欲につながるでしょう。
また指先の器用さや、身体の動かし方を身につけられる遊びやおもちゃを取り入れることも大切です。
保育者に気持ちを受け止めてもらいながら、思いを言葉で表現しようとする
気持ちや考えていることがうまく言葉に出せない子もいるでしょう。
それが結果として、反発したり泣いたりする姿につながっている場合もあります。
スキンシップをとって落ち着いたのちに、気持ちを言葉で代弁するなどして、思いを言葉で表現することを促していきましょう。
遊びを通して他者への興味関心を持ち、ともにすごす喜びを感じる
少しずつ友だちとのかかわりも増やしていきたいですね。
まだ、自分中心な姿が目立つことも多い2歳児ですが、遊びを通して友だちとかかわるよろこびを感じることは、思いやりや他者を気にかける心を育てる、第一歩となるでしょう。
出典:保育所保育指針解説書/厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課
2歳児担任の保育士さんが取り入れられる遊び
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クラス目標は、子どもたちが頑張るものではなく、保育士さんが導いていくものになります。
目標を意識したかかわりはもちろんですが、発達を促す工夫を遊びに取り入れることも大切です。
2歳児だからこそ楽しめる遊びを紹介します。
達成感を感じ、意欲を育む遊び
遊びの中で達成感を味わうことが、生活習慣を身につけたり、身の回りのことをやってみる意欲につながったりするでしょう。
かけっこ
トラック半周、もしくは一周のかけっこができるようになるでしょう。
コーンなど分かりやすい目印を置いて「これより中には入らない」「ぶつからないように走ってね」など、ルールを伝えてみてくださいね。
サーキット遊び
マットやトンネル、平均台などを順番に並べて周回しながら運動する遊びです。
順番などのルールの理解、待つ力などが育まれているからこそできる遊びですね。
しっぽとり
スズランテープなどをしっぽに見立ててズボンにはさみます。
それを走って追いかけて、しっぽを取った人が勝ちです。
表現する喜びを感じられる遊び
表現する遊びを通して、発信することの楽しさやよろこび、心地よさを感じられるような活動にしましょう。
劇遊び
日頃から、親しみあるお話を用いるのがよいでしょう。
「おおきなかぶ」は同じ言葉や動きの繰り返しのため、取り入れやすいのではないでしょうか。
楽器遊び
鈴やタンバリンなど、簡単に音が鳴る楽器を用いて楽しみましょう。
言葉のリズムに合わせて楽器を叩いたり、歌をうたいながら音を鳴らしたりしてみてくださいね。
製作
2歳児になると保育士さんといっしょにはさみを使ってみるなど、取り入れられる手法も広がってくる時期です。
なにかにじっくり取り組むことは、情緒の安定につながり、気持ちが満たされる時間となるでしょう。
「人とのかかわり」を感じられる遊び
2歳児では、友だちといっしょに楽しむ集団遊びの活動も取り入れてみましょう。
ルールのある遊びを楽しめるのも、2歳児ならではですね。
あわぶくたった
友だちと円になり手をつなぎます。わらべうたに合わせて動いて楽しみ、最後は追いかけ走って逃げます。
わらべうたは、言葉の心地よさも感じることができるでしょう。
椅子取りゲーム
最後の一人まで椅子を取り合う椅子取りゲーム。
「2歳児には難しいのでは?」と思われるかもしれませんが、保育士が見本を見せることでルールを理解し楽しむことができるでしょう。
フルーツバスケット
内容は、フルーツではなく、色など、子どもの興味があるものを取り入れましょう。
目で見えるように服に絵を貼ったり、リストバンドをつけたりすることで自分のグループを認識することができます。
子どもとともに保育士さんも成長できる2歳児担任!
2歳児の発達や遊びのアイデアを紹介しました。
2歳児担任は、やりがいを感じられることや新卒保育士さんの学びとなる場面が多くあるでしょう
紹介した内容を参考に、実習の際の目標や担任として保育するイメージをもってみてください。
子どもの成長は保育士さんの自信やスキルアップにもつながりますね!