認可保育園と認可外保育園の違いとは、簡単に言えば国が定めた基準を満たして認可を得ている保育園とそれ以外の保育園という違いです。認可保育園だけでは保育のニーズに対応することは困難なため、現在では、多様化する保護者のニーズに対応した認可外の保育施設が数多くあります。認可と認可外の制度や環境の違い、また幼児教育・保育無償化による保育料の取り扱いなど、保育士として働くうえで知っておきたい違いについて調べてみました。
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■目次
認可保育園と認可外保育園の「認可」制度の違い
日本にあるすべての保育施設は現在、認可保育施設と認可外保育施設の2つに分けられています。2つの施設の違いは、認可保育施設が「国が定める一定基準を満たし、各都道府県知事から認可を受けている保育所」認可外保育施設が「それ以外の保育施設」という基準になっています。
認可保育園と認可外保育園の違い
出典:企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット/内閣府
認可保育園とは
認可保育園という呼び名が一般的ですが、法律上で認可保育園は「保育所」という名称になります。
保護者が働いている等のさまざな理由から、十分な保育が受けられない0歳から小学校入学前までの「保育の必要性の認定」を受けた未就学児を対象として、預かり保育をする厚生労働省管轄の「児童福祉施設」です。
国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士等の職員数、給食設備、防災管理、衛生管理等)をすべてクリアして、都道府県知事によって認可された施設です。園の設置費や運営費に国から補助金が受けられます。
認可外保育園とは
認可外保育園とは、法律上では「認可外保育施設」という名称になっています。他に無認可保育園と呼ばれることもあります。
国が定めた認可保育施設の認可基準に比べ、設置基準・運営基準・職員配置基準が比較的緩やかな「運営基準」が設けられている施設です。
都市部では、認可外保育施設が認可保育園の定員から漏れた3歳未満児の保育、延長保育や24時間保育など、認可保育施設ではまかないきれない保育の受け皿として、保護者のニーズにこたえています。また、それぞれの認可保育園でも目的や特色、目指す保育内容は異なり、例えば長時間や宿泊預かりもあるベビーホテル、企業で働く人のための企業内保育所などが挙げられます。
国や自治体からの補助金等の収入源は基本的にはありませんが、近年では自治体の基準を満たした保育施設(地方単独保育事業)や、一部の設置条件を満たした保育施設(企業主導型保育事業)には、自治体から補助金が出る制度もあります。
認可保育園と認可外保育園の配置設置基準・運営基準の違い
認可保育園
認可保育所は、児童福祉法によって「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」が定められています。
職員の配置基準
原則的に、全員が保育士資格を有している者の人数です。
施設形態によっては、自治体の研修を受けた「子育て支援員」の認定を受けた保育補助資格所有者が、配置基準に含まれる場合もあります。
※3歳児については、15:1で実施の場合加算あり
※ただし、保育士は最低2名以上配置
認可保育施設の設備基準
預かる子どもの年齢と人数によって、施設の設備と面積が規定されています。
保育の内容や給食
認可保育施設では、次のような基準があります。
【保育の内容】
社会福祉施設であるため、養護及び教育を一体的に行うことを特性とし、その内容については保育所保育指針に従うことになっています。
【給食】
給食については、以下の規定があります。
・児童の健全な発育に必要な栄養量を含有
・献立の作成
認可外保育園
認可外保育施設の設置と運営については、「認可外保育施設指導監督基準」によって規定されています。現在の認可外保育施設の運営は、自治体に設置の届出と運営の定期報告が義務付けらけています。
職員の配置基準
認可外保育施設の設置基準
預かる子どもの年齢と人数によっての設備基準が、認可保育施設とは異なっています。
全年齢共通
・ 保育室 1.65㎡以上/人
・ 調理室、便所の設置が必要
保育の内容や給食
認可外保育施設では、次のような基準があります。
【保育の内容】
認可外保育施設では、認可施設同様「保育所保育指針」に準じて行うよう基準が設けられています。
【給食】
給食面での認可施設との大きな違いは、栄養の含有量までは規定されていない部分です。
・年齢や発達、健康状態等に配慮した食事内容
・献立の作成
認可保育園と認可外保育園の保育料と補助金の違い
認可保育園
入所申し込みや保育料
認可保育園の入所申し込みや施設への割り当ては、すべて自治体が行います。国及び自治体から補助金が出るため、保育料や預かる子どもの割り振りの窓口も各自治体の市区町村になります。
なお、保護者が支払う保育料は、家庭の水準によって支払う保育料は異なっており、各家庭から自治体に直接払い込む形式です。
2019年10月より幼児教育・保育無償化が施行され、実質的には3~5歳の子どもに関しての保育料は国からの補助金によってまかなわれ、給食費などの一部実費を施設側が直接集める制度になっています。
(幼児教育・保育無償化に関してはこのページの別章で詳しく説明しています)
補助金の支給がある
認可保育園の運営や設備、保護者から徴収する保育料、保育士の給料には、国からの補助金が支給され、その補助金を含め運営費に充てることができます。
そのため、運営面では安定が見込まれますが、運営費には審査と上限があり、どのように補助金を使うかの用途は定められています。
出典:よくわかる「子ども・子育て支援新制度」・保育料について/内閣府
出典:「平成29年度保育対策関係予算概算要求の概要」/厚生労働省
出典:「子ども・子育て支援新制度ハンドブック(平成27年7月改訂版)」
認可外保育園
入所申し込みや保育料
各家庭がそれぞれの施設に、直接応募します。保育料は事業者が自由に設定し、保護者は事業者に直接払い込みます。
2019年10月より幼児教育・保育無償化が施行され、実質的には3~5歳の子どもに関しての保育料に補助が出ることになりました。
(幼児教育・保育無償化に関してはこのページの別章で詳しく説明しています)
国、自治体からの補助金の有無
認可外保育園には基本的に国からの補助金は出ないことから、園の収入は保護者からの保育料が大きな割合を占めると考えられます。
都市部では国の基準は満たしていないものの、自治体独自の基準を満たした施設に認証を与え、補助金を出す制度を設けている自治体もあり、そういった園での保育料は安くなるので、一部の園では認可保育園と変わらない水準の料金になることもあります。
また、認可外ではありながらも企業で働く社員向けの福利厚生として、事業所内に保育施設を設ける場合は、国や自治体から補助金が出る制度もあります。
関連記事:企業内保育所とは。大手企業も参入する企業内保育の求人や給料など
認可保育園と認可外保育園の幼児教育・保育無償化の対象範囲の違い
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認可保育園と認可外保育園では、2019年10月から開始した幼児教育・保育無償化の対象となる世帯や無償化の内容が異なっているため、注意が必要です。
出典:「幼児教育の無償化に関するFAQ(2019 年2月 18 日版)」
認可保育園の保育無償化
無償化の対象
・非課税世帯の0~2歳児の子どもも3~5歳児と同様に無償化の対象となります。
※非課税世帯とは、世帯収入が自治体の定めた一定以下である場合、住民税が非課税となっている世帯のことです。
保育料の取り扱い
また、利用料の支払い方法に関しては現物給付となるため、保護者は利用料を収める必要がありません。
ただし、保護者から実費で徴収する費用(通園送迎費、食材料費、行事費など)に関しては、無償化の対象にはならず、従来通り保育施設側が実費を保護者から徴収します。
認可外保育園の保育無償化
無償化の対象
・3~5歳の子どもは認可保育所における保育料の全国平均額(月額3.7万円)までの利用料を補助されます。
・住民税非課税世帯の0~2歳児の子どもたちについては、月額4.2万円までの利用料が補助されます。
保育料の取り扱い
支払い方法は、現物支給と償還払いにするかは、利用者の申請に基づき一括して清算することができる「償還払い」が基本となります。ただし、各自治体の実情に合わせ、補助額を差し引いた利用料のみを請求する「現物支給」になる地域もあるようです。
認可保育園と認可外保育園の設置環境の違い
認可保育園
認可保育園では、児童福祉法によって、預かる子どもの年齢と定員に対して、敷地面積や遊具施設などの設備基準が決められています。そのため、子どもを保育するためのある一定の水準が保たれているといえます。
施設の敷地面積は基準を満たす一定の広さが必要となるため、立地が駅から少し離れた場所であることも多いようです。
認可外保育園
認可外保育園は保護者のニーズをもとに運営されている園が多く、施設の大きさや環境は施設によってさまざまです。認可保育園のような預かる子どもの年齢による規定は特にありません。運営法人の方針によって、施設や環境の差が大きいといえます。
特に都市部では認可保育園に選考に漏れしてしまった家庭の子どもを預かることも多いため、駅から近い小規模な保育施設が多くあり、施設面積は狭い園も多く見られます。
逆に、ゆったりした保育方針を掲げている認可外保育施設では、認可以上の面積や設備を備えている園も見られます。
認可保育園と認可外保育園の保育方針の違い
認可保育園
公立保育園
各自治体で決められた保育計画に沿って、公立園間で差が出ないように運営しています。月案・週案などは、各自治体によって決められたカリキュラムに沿って提出するため、各園で差がない、ほぼ同じ方針になります。
私立保育園
以前は認可保育園は社会福祉法人か公的法人のみでしたが、平成12年の規制緩和によって、NPO法人、学校法人、財団法人、株式会社など、さまざまな民間団体が参入できるようになりました。
保育指針は各運営母体が独自に定め、それぞれの方針に沿ったカリキュラムを運営しています。月案・週案などは、会議によって決定するため、各園ごとの個性が出ます。
認可外保育園
さまざまな法人によって運営されていて、運営母体や園長によって保育理念や運営方針が大きく異なることも多いため、個性が豊かと言えます。リトミック教育を取り入れたり、プリスクールのように英語教育を力を入れるなど、認可保育園にはない独自の教育を行う保育園も多くあります。
認可保育園と認可外保育園の就職活動や求人の違い
認可保育園
公立・私立共に、認可保育園は国と自治体からの補助や、運営基盤や基準の安定が見込めるため、就職活動における求人状況では、全体的に人気がある傾向です。
公立保育園
公立は離職率が低く、勤務する保育士は勤続年数が長いため、求人自体なかなか出ていない状況です。一般的には各自治体のホームページに求人状況が上がりますが、臨時職員等での募集が増加しています。
近年では公立保育園民営化に伴い、公立でも民間(主に社会福祉法人など)が運営する保育園の求人は一般的な求人情報で出ていることもあります。
私立保育園
私立の認可保育園は民間団体や個人が運営しているため、常に一般的な求人サイト等で求人を探すことが可能です。現在では認可保育施設の規模が広がっているため、求人募集は通年を通して行われています。
認可外保育園
認可外保育園は開設時間の長さやさまざまな形態の園に合わせ、さまざまな働き方が選べる選択肢の広さに特徴があります。
開設時間の長さから、さまざまな時間帯でシフトを用意している園も多い傾向です。
また、無資格や未経験での募集も認可保育園に比べると多く募集しているため、未経験から実務経験を積みたい人や学生アルバイトなどを探している人にとってのチャンスも多いでしょう。
認可保育園に認可外保育園は保育ニーズの受け皿が違う
認可保育園は、地域に根ざし安定したイメージがあります。一方で認可外保育園は、認可保育園では満たせない保護者の保育ニーズを満たしたり、待機児童問題解消ための受け皿になっているという側面があります。
公立園が減り、新規参入の民間経営の保育園が増加しているため、認可保育園も認可外保育園も、運営法人によって園の個性や特色が大きく違う場合が多いようです。
就職活動前には、それぞれの園の特徴を、よく調べて必要があるでしょう。