幼稚園の預かり保育とはどのような仕事なのか、気になっている保育学生さんもいるのではないでしょうか。必要な資格や預かり保育の実態などがわかると、卒業後の就職先として考えることができそうですね。今回は、保育園などでの一時保育との違いや延長保育の内容、必要な資格や預かり保育に携わる際に意識することを紹介します。
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幼稚園の預かり保育とは?
幼稚園の預かり保育とは、「地域子ども・子育て支援事業」として位置づけられている「一時預かり事業、幼稚園型」を指しています。この事業は、幼稚園の教育時間の前後や長期休業日などに、在園している子どもを預かることを特徴としており、主に、幼稚園や認定こども園で実施されている取り組みです。
預かり保育には、急な用事や仕事などで保護者が不在になるときなどに一時的に子どもを預かる「一時預かり一般型」というサービスもあります。この事業は主に保育園などで行われており、「幼稚園型」と違って在園児でなくても一時的に預かることが可能です。なお、「一般型」は、幼稚園や認定こども園、地域子育て支援拠点などで行われることもあるようです。
文部科学省の調査によると、私立幼稚園のほとんどが「幼稚園型」の預かり保育を行っているという実態があります。公立幼稚園の実態を見ても、半数以上が行なっているようです。
出典:「一時預かり事業の実施について」の一部改正について/文部科学省・厚生労働省
出典:平成28年度 幼児教育実態調査/文部科学省初等中等教育局幼児教育課
預かり保育の内容
幼稚園の預かり保育はどのような内容になっているのでしょう。実際に幼稚園で行われている預かり保育の内容の一部を紹介します。
午前の預かり保育
0歳から3歳児の保護者を対象に、未就園児の親子登園や子育ての相談を実施している幼稚園があるようです。この活動により、保護者の子育てに関する不安が軽減されたという意見があります。他には、朝8時前から早朝保育として子どもを預かっている幼稚園もあるそうです。
延長保育
一時預かり事業として15時から19時まで、延長保育を行なっている幼稚園があるようです。延長保育では、スポーツや音楽を取り入れた遊びなどの活動をしているそうです。他には、紙芝居や折り紙などの親子参加型の活動を取り入れている幼稚園や、園庭開放をしている幼稚園もあるので、預かり保育の内容はさまざまといえるでしょう。
土曜日や長期休業中の保育
幼稚園には土曜日や長期休業中の預かり保育もあるようです。夏休み等の長期休業中は、全日預かりや午前のみ、午後のみなど、預かり方にいくつかのパターンを設けて対応している幼稚園もあり、保護者の方も助かっているという意見も聞かれています。他には、土曜広場として自然体験やワークラリーなどの親子参加型のスクールを実施している幼稚園もあるそうです。
預かり保育を行うための資格
幼稚園の預かり保育を行うためには、どのような資格が必要なのでしょう。文部科学省の資料をもとに、資格について紹介します。
幼稚園教諭の免許
幼稚園の預かり保育を行う資格の1つに、幼稚園教諭の普通免許状があります。幼稚園教諭の免許状を取得するには、大学の教育学部や幼稚園教諭の養成課程のある短大や専門学校などで履修することになります。他にも、保育士として3年以上の実務経験があると、認定試験を受けて資格を得ることができます。
保育士の資格
保育士の資格がある方も、幼稚園の預かり保育の職員になることができます。その場合、預かり保育の時間だけの勤務ということもあるかもしれません。幼稚園によっては預かり保育の一環として2歳児を受け入れていることもあるようですが、その場合は必ず保育士を配置することとなっており、保育士の資格をもっている方は就職先として考えてみるのもよさそうです。
幼稚園教諭と保育士資格の併有
幼稚園の預かり保育を担当している方には、幼稚園教諭と保育士の資格の両方を持っている方もいるようです。
文部科学省「教育課程に係る教育時間の終了後等に行う
教育活動(いわゆる預かり保育)及び
子育ての支援 関係資料p10」資料によると、2015年現在では6割を超える方が2つの資格を併有しているとなっています。例えば保育士として3年以上勤務をして幼稚園教諭の免許を取得すると、採用されやすくなるかもしれませんね。
市町村長が行う研修を終了した方など
幼稚園の預かり保育の職員の資格は、幼稚園教諭や保育士の資格がなくても、市町村長が行う研修を終了することで取得することができます。この研修の内容は、「一時預かり事業」または「地域型保育」の専門研修などのようです。他にも、小学校教諭や養護教諭の普通免許状所有者も職員となることができるそうです。
また、保育士養成課程を履修中で、教育・保育に関わる基礎的な知識を習得している学生も可能となっているので、就職を考えている保育学生さんは土曜日や長期休業中に働いてみてはいかがでしょう。
出典:「一時預かり事業の実施について」の一部改正について/文部科学省、厚生労働省
出典:教育課程に係る教育時間の終了後等に行う教育活動(いわゆる預かり保育)及び子育ての支援 関係資料/文部科学省
出典:一時預かり事業(幼稚園型)における担当職員の資格要件の緩和について /文部科学省
預かり保育に携わるときに意識すること
幼稚園の預かり保育には、子どもの健やかな成長を支援するという大切な役割があります。預かり保育に携わるときに意識することはさまざまあるようですが、そのなかから3つ紹介します。
子どもの気持ちに寄り添う
早朝から夕方の延長保育まで利用する子どもは、保護者と長時間離れて生活しているので、寂しさを感じているかもしれません。
一人ひとりの実態にあわせて生活や遊びなどの過ごし方を考えるなど、子どもの気持ちに寄り添った活動をすることが大切でしょう。特に入園当初や進級した頃は不安や緊張が大きい子どももいるので、子どもが安心してすごせる居場所作りが求められるようです。
家庭との連携を大切にする
幼稚園の預かり保育を長時間利用している家庭では、保護者の方が子どもの様子を捉えにくいこともあるようです。そのため、子どもの家庭での過ごし方や幼稚園での様子について保護者の方と情報交換をするなど、家庭と緊密な連携を図ることが大切かもしれません。保護者の方といっしょに子どもを育てるという意識をもって対応しましょう。
安全面での配慮をする
預かり保育に携わる際は、安全面に配慮することが特に大切です。延長保育で夕方遅くまで遊んでいると、子どもも疲れが出てケガをしやすくなるかもしれません。
遊びのルールなどを確認して安全にすごせるようにしましょう。子どもが使う遊具や園具の安全点検をこまめに行うことも意識できるとよさそうです。また、緊急時の安全確保については、幼稚園の職員の方と協力して行えるようにしておきましょう。
出典:幼稚園における子育て支援活動及び預かり保育の事例集/文部科学省
幼稚園の預かり保育について理解しよう
今回は、幼稚園の預かり保育とはどのようなものかについて紹介しました。
幼稚園の預かり保育は、子育て支援事業の一時預かり事業幼稚園型のことで、基本的に在園児を延長保育などで預かるという点が一般型の一時保育と異なっています。
預かり保育を担当するためには、幼稚園教諭や保育士の資格などが必要ですが、半数以上の職員が両方の資格を併有しているといった実態もあるようです。幼稚園の預かり保育に携わりたいと考える場合は、仕事の内容などについても理解しておきましょう。