保育園や幼稚園では、園外保育として近所の公園や動物園など遠足へ行くことがあるでしょう。その際、新卒保育士の方も指導案を書いたりマニュアルを作成したりするかもしれません。今回は、園外保育のねらいや流れ、配慮するポイントを紹介します。指導案の書き方や、3歳児・4歳児・5歳児の年齢別のねらいについてもまとめました。
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■目次
園外保育とは
園外保育とは、園の周りを散歩したり、遠足に行ったりと園の外に出て行う活動です。
園では見られない景色を間近で感じることができるため、楽しみにしている子どもも多いでしょう。
主に3歳児、4歳児、5歳児クラスで行うことが多いですが、乳児クラス(0歳、1歳、2歳)でも取り入れることがあるようです。
まずは、園外保育を行うねらいや意味について具体的に見ていきましょう。
園外保育のねらい・目的
興味・関心を育む
園外保育を行うことで子どもたちの関心を引き出し、豊かな心を育むというねらいがあります。
電車やバスを利用する場合、いつもとは違う景色を見られるうえ、初めて見る動植物に出会ったり、絵本に出てくる建物や車を見つけたりといった発見があるかもしれません。
そうした豊かな体験を通して、子どもの興味や関心が高まるきっかけを作るという意味があるでしょう。
外の刺激を受けて子どもの五感を養う
園外保育では、外の刺激を受けて子どもの五感を育むというねらいがあります。
季節を身体で感じたり、植物や動物などに触れたりと、園内では体験できない外の様子を実感することができます。
普段とは違う場所で過ごすことによって、子どもの五感が刺激され、心をくすぐるきっかけを作ることにもつながるでしょう。
友だちや保育士さんなどと思いを共有する
園外保育を行うねらいには、周りの人と気持ちを共有することで、コミュニケーション力を養うということが挙げられます。
動物園や水族館に初めて行った子どもたちは、園外保育を終えてさまざまな感想を友だちや保育士さん、家族に伝えるでしょう。
自分の言葉で経験したことやそのときの思いを伝えることで、気持ちを人に伝える力や思いを分かち合うよろこびを育むことができそうです。
社会のルールを身につける
園外保育は社会の決まりや意味を学ぶというねらいもあります。
公共の乗り物を使用するときは、他の利用者に配慮した振る舞いや交通のルールを覚えることができるでしょう。
公共交通を利用せずに近所の公園に移動する際も、歩道の歩き方や信号の決まりなど、基本的な交通ルールやその意味を知ることができるかもしれませんね。
園外保育の活動内容
園外保育は、普段は行けない場所へ出かける遠足と、園の周囲を散歩するといった日々の活動の2つに分けられるようです。
園の近くを散歩する
園外保育の一つは、近所の公園に行って遊んだり、散歩をしたりすることです。
広い公園であれば、子どもたちは思い切り走り回ったり、遊具を楽しんだりできるでしょう。
遊び慣れない遊具に戸惑いながらも興味を持つなど、園内では味わえない体験ができるかもしれません。
さらに、公園や道中に草花があれば、季節による変化を観察したり、虫とふれ合ったりすることもできそうです。
遠足へ行く
園外保育では公共の交通を利用して、動物園や水族館へ遠足に行くこともあるでしょう。
日頃出会えない生き物が見られるため、子どもたちも好奇心を持って観察してくれるかもしれません。
ふれ合い体験ができる施設では、その場で感想を共有できるだけでなく、命の尊さを知るきっかけになりそうです。
他にも園によっては、5歳児クラスで近所の小学校を訪問することもあるようです。
校内を見学したり在校生と話したりすることで、卒業後に通う小学校をより身近に感じられそうですね。
園外保育を行うときの流れ
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園外保育は園の外に出て活動するため、さまざまなことに配慮しなくてはいけません。園外保育を行うときの流れに沿ってくわしく説明します。
1.事前準備
園外保育では、スムーズな進行と安全配慮のためにも、事前準備が大きなポイントとなるでしょう。
マニュアルを確認する
自治体や園によっては、園外保育で必要な持ち物や配慮事項を示したマニュアルが作成されていることがあるようです。
事前に内容をきちんと把握・理解し、保育士さんの持ち物や安全面のチェックリストを参考にするとよいでしょう。
園外保育マニュアルがない場合は、当日までの流れや必要なものを洗い出し、独自の資料を作成することが大切です。
新卒保育士さんは、どんなマニュアルにするとよいのか、先輩保育士さんと相談しながら作ってみてくださいね。
目的地の下見をする
園外保育では、目的地の下見をしておくことが大切です。
一度自分で目的地を訪れてみると、園外保育当日に子どもが待機できそうな場所や、歩きやすい場所などに気づけるかもしれません。
また、近所の公園であっても、工事で道幅が狭くなっていたり、道が封鎖されていたりすることも考えられます。
危険な場所がないかを確認し、同行する職員に共有しておくとよいでしょう。
子どもたちに目的地や注意事項を伝える
目的地や注意事項は、前もって子どもたちに伝えておくといいでしょう。
遠足の目的地を伝えれば、遠足先の水族館や動物園で見たい生き物の話で盛り上がり、子どもたちの期待感が高まるかもしれません。
また、園外保育でのルールや意味を子どもたちに共有しておくことも大切です。
移動方法によって配慮することが異なるため、適した内容を話していきましょう。
<例>
- 電車やバス:車内でのマナー、運転手さんへの挨拶
- 徒歩:横断歩道のルール、信号の意味、安全な歩き方
ルールや注意点は、視覚的な表現で伝えるとよいかもしれません。
例えば、信号機や横断歩道の絵を見せて、「信号が赤のときは車が通るから横断歩道の手前で止まるんだよ」「ふざけて歩いていると転んじゃうから前を見て歩こうね」など、分かりやすく伝えましょう。
職員の引率体制を整える
園外保育を実施するうえで、職員の引率体制を整えることも大事な準備の一つです。
子どもの人数や年齢に応じた職員数が同行するのはもちろんのこと、引率する職員同士で打ち合わせを行い、きちんと情報共有をして連携体制を整えるようにすることが重要です。
緊急時の対応を確認する
普段と違う場所へ行く園外保育では、予想しなかったトラブルが起きるかもしれません。
いざという事態に配慮して、目的地近くの病院や交番、AEDが設置されている場所のチェックリストを作成しておくと焦らずに行動できそうですね。
緊急時の連絡先を携帯電話にあらかじめ登録しておけば、迅速に連絡をとることができるでしょう。
2.園を出発する前
園を出発する前に配慮することを見ていきましょう。
当日の天候を確認する
天気予報を確認していても、当日の天候は変わることが考えられます。
当日の状況によっては、園外保育が中止になるかもしれません。
中止の場合の活動内容や、雨天でも利用できる目的地などを考える必要があるでしょう。
梅雨の季節などは突然の雨に配慮して、持ち物のチェックリストに雨具を追加しておくとよさそうですね。
必要な持ち物のチェックをする
園外保育では園を離れることになるため、保育士さんは必ず持ち物を確認します。
以下のように、行き先に合わせてチェックリストを作成しておくと安心ですね。
- 携帯電話
- 救護用品
- 筆記用具
- カメラ
- 名簿
- 着替え
- ティッシュ
- タオル
乳児と散歩に行くときは、おむつやおんぶひもの用意、散歩カートの動作確認も大切です。
特に遠足など持ち物が多い場合は、チェックリストを作成して子どもたちのリュックの中身を確認しておくと、目的地に着いてから慌てずに済むでしょう。
子どもたちの健康状態を確認する
園を出発する前に、子どもの人数や当日の健康状態を確認しておくことも大切です。
子どもの名前や体調を記したリストを作成しておくと、確認しやすくなるでしょう。
さらに、当日具合が悪い子どもがいないか視診することで、トラブルを防ぐことができそうです。
目的地までに時間がかかるときは、出発前に子どもたちのトイレを済ませておくと、スムーズに移動できそうですね。
3.目的地に移動中
目的地に移動する際は、園の近所にある公園であっても、さまざまなことに気を配らなくてはいけません。
周囲の安全確認を行う
園外保育では車道の歩行はできるだけ避け、歩道を歩くようにします。
歩道では白線やガードレールの内側を歩き、保育士さんを車道側に配置して子どもの様子を確認しながら移動できるといいですね。
また、他の利用者のことを配慮して端に寄ったり、広がらないように列を作ったりしましょう。
公共の場でのマナーを伝える
駅の構内や駐車場などで待機するときは、邪魔にならない場所で子どもたちを整列させます。
電車ではドアの戸袋に手を引き込まれたり、ホームに落ちたりしないよう注意しましょう。
エレベーターやエスカレーターなどは本当に必要とする方が利用できるように、子どもの年齢に応じて階段を使用するとよいかもしれません。
また、博物館や動物園などを見学する遠足では、一箇所に固まってしまうと他の利用者の通行や鑑賞を妨げることが考えられます。
保育士さんは、マナーの意味を伝えながら、譲り合って見学することを心がけましょう。
4.帰園時~帰園後
園外保育では園に帰るときや帰園してからも確認することがあります。
子どもたちの人数を確認する
帰園する前に、子どもの人数を確認することが大切です。出発時と同じくチェックリストがあると数えやすくなりそうですね。
さらに、具合が悪くなった子どもがいないか声をかけ、できれば一人ひとり顔色や様子を見るといいでしょう。
普段とは違った環境で疲労が溜まっていることも配慮し、行くとき以上に安全に気を配ることが大切です。
帰園後に園長先生に報告する
帰園後は再度子どもの人数を数えて、園長先生や責任者に報告することも重要です。
園によっては、園外保育の帰園時間をチェックリストで管理するところもあるため、帰園後に行うことや報告する職員を確認しておきましょう。
園外保育の気づきを共有する
他の機会にも園外保育で同じ場所に行く可能性があるため、気づいたことはできるだけ共有しましょう。
危険な場所やヒヤリ・ハット事例を共有することで、園外保育をより安全に楽しく実施できるようになるかもしれません。
子どもたちの行動や様子を伝えれば、移動経路や実施時間を考えるときの参考になりそうですね。
園外保育は以上のように、それぞれの場面で配慮することがたくさんあります。
流れを理解できたら、最後に園外保育の指導案の書き方をみていきましょう。
園外保育における指導案の書き方
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園外保育の指導案は、園内の保育と同様に、ねらいを決めて、配慮する点などを考えることになります。
ねらい
園外保育を通して、子どもに経験してほしいことや感じ取ってほしいことをねらいに定めます。
水族館への遠足を例とした場合、「海の生き物への関心を高める」「他のお客さんに配慮した見学のルールを知る」などが挙げられるでしょう。
また、以下の例のように、年齢に合わせたねらいを立てることも大切です。
- 3歳児向けのねらい:期待感を持って遠足に参加し、感じたことを保育士や友だちと共有する
- 4歳児向けのねらい:普段見ることができない景色を味わい、保育士や友だちと特別な場所で過ごすうれしさを分かち合う
- 5歳児向けのねらい:公共のマナーの大切さがわかり、友だち同士で教え合いながら行動する
子どもにどんなねらいを持って取り組んでもらいたいか、という点に視点をおいて指導案を書くとよいかもしれません。
環境構成
指導案における環境構成では、持ち物や援助の工夫などについて書くことになります。
保育士さんや子ども自身の持ち物はもちろん、援助に必要な声かけや保育士の配置についても考えておきましょう。
さらに、歩道の歩き方や整列のしかた、子どもに話をする場所についても指導案に書いておくとスムーズですね。
配慮
先述したように、園見学での配慮事項は「安全管理」と「ねらいの達成」がポイントとなりそうです。
園生活での子どもの姿をもとに、予想されるトラブルや興味を示しそうなポイントを考えると考えやすいかもしれません。
園外保育は園から離れた場所に行くこともあるため、配慮することが多くなりますが、安全に実施するためにもきちんと指導案に書いておくことが大切ですね。
指導案に記入する配慮事項について、くわしくみていきましょう。
園外保育で配慮すべきポイント
普段と違う場所で過ごす園外保育では、周囲の安全や緊急時の対応に配慮しておく必要があります。最後に注意すべき点をまとめました。
事前準備をきちんと整える
園外保育では、近所の公園に出かける場合でも、事前に道のりや持ち物を確認しておくことが大切になります。
道のりに工事中の場所や車の交通量が多い場所があるときは、誘導のしかたを工夫し、子どもたちに危険が及ばないよう配慮しましょう。
また、けがや迷子といった最悪の事態も想定し、緊急時の対応や連絡先も確認が必要です。
保育士さんは、いつでも連絡できるよう携帯電話を持ち歩き、危険を知らせる笛や救急箱を常備するなどの事前準備をきちんと行いましょう。
安全の確保をする
公園で遊ぶときは、子どもたちが不用意に道路へ飛び出さないように行動範囲を決めたり、遊具の正しい使い方を教えたりと、安全に配慮することが大切になります。
公共の交通機関や、博物館、動物園などの施設を利用する園外保育では、他の利用者の迷惑にならないように行動する必要があるでしょう。
前もって子どもたちにマナーの意味や安全のための決まりを話し、約束しておくことが重要です。
ねらいを達成できるよう意識する
園外保育においても、ねらいを意識した声かけや援助をしていくことが大切になるでしょう。
3歳児では保育士さんが言葉にして繰り返し伝え、4歳児や5歳児では、「~するときはどうするんだったかな」など気づきを促す声かけや友だち同士で教え合える雰囲気づくりができるとよいかもしれません。
園外保育は事前準備をしっかり行ってから実施しよう
今回は、園外保育のねらいや意味、全体の流れと配慮するポイントを紹介しました。
近所の公園で遊んだり、遠足で動物園に行ったりする園外保育では、子どもたちの好奇心が育まれるだけでなく、さまざまな感情を経験することで気持ちをコントロールすることにつながっていくかもしれません。
一方で、園外保育は園内とは違った環境で行われるため、安全や子どもたちの様子に配慮する必要があります。
園外保育のマニュアルやチェックリストをしっかりと読み込み、子どもの安全に配慮した指導案を作成することで、円滑に進められそうですね。