社会福祉法人の保育園の特徴。新卒保育士の就活に役立つメリットやデメリット

私立の保育施設には社会福祉法人や株式会社などさまざまな運営形態があるようです。なかでも社会福祉法人の保育園とはどういった特徴があるのか、株式会社との違いはあるのか知りたい保育学生さんもいるのではないでしょうか。今回は、社会福祉法人の保育園の特徴や株式会社との違い、メリットやデメリットについて紹介します。

ペンを広げている子ども

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社会福祉法人の保育園とは

社会福祉法人とは、主に社会福祉のサービスを提供する団体のことです。保育の他にも、高齢者福祉や、障害者福祉に関する施設を運営している団体もあります。

株式会社とは異なり、利益を追求するのではなく社会福祉の向上を主な目的としており、団体で共通の理念に基づいて運営しています。こうした法人の運営する保育園では、系列園ごとに同様の保育理念に基づいた保育を行っているようです。

社会福祉法人には税制などの優遇措置などがあり、自治体からの補助金を中心に運営し、職員への給料を支給していることも特徴かもしれません。

社会福祉法人の種類

では、社会福祉法人にはどういった種類があるのでしょうか。

伝統的な小規模の社会福祉法人

従来から一般的だったのが、比較的小規模な社会福祉法人です。
地域の保育園といったイメージで、一つの法人が一つの保育園を運営する形態が多く、その運営主体も個人や親族のみだったり、お寺や教会が運営していたりする園などもあるでしょう。

保育内容も地域に根付いたものを取り入れていたり、宗教の理念に基づいた保育をしたりするなど園によってさまざまです。設立から長い期間に積み上げた経営のノウハウを活かし、運営は安定している保育園が多いかもしれません。

新しく登場した大規模の社会福祉法人

2000年から、株式会社が保育園を運営することが可能になりました。これをきっかけに、社会福祉法人の中にも、株式会社のように複数園を展開する園が増え、現在は20カ所以上の保育園運営をしている法人もあるようです。

展開の仕方も、一つの地域に集中して運営するものから、複数の県にまたがって運営するものまでさまざまなようです。運営している地域は異なりますが、統一の理念に基づいて同様の保育を実施しています。

系列園ごとにまとまって新人研修を行ったりするなど、同法人内の園とのつながりも強いのが特徴といえるでしょう。系列園が多ければ、自身の希望の勤務地を選ぶことができたり、系列園への配置換えがあったりするかもしれません。

社会福祉法人の保育園の特徴

では、社会福祉法人の保育園にはどういった特徴があるのでしょうか。2013年の厚生労働省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果」をもとに、株式会社との違いもあわせて紹介します。

給料

まずは社会福祉法人と株式会社の保育園に勤める保育士さんの平均給料を比較して見てみましょう。

これによると、社会福祉法人の給料が各項目で株式会社を上回っているのがわかります。もちろん、株式会社の中にも給料を高めに設定している施設もあるようですが、全体の傾向としては社会福祉法人の運営する保育所の方が給料が高めなようです。

社会福祉法人の保育園の給料を表した表

勤続年数やキャリアアップ

次に、社会福祉法人と株式会社の保育園に勤める保育士さんの勤続年数やキャリアアップについて紹介します。

社会福祉法人の保育園のキャリアアップを表した表

この表によると、社会福祉法人の保育士さんの方が、株式会社と比べて5年程度長く同じ園に務めているようです。

一方で、施設長の項目を見てみると、平均勤続年数が25.3年なのが社会福祉法人で、10.4年が株式会社となっています。

つまり、株式会社のほうが施設長へのキャリアアップという観点では、社会福祉法人よりしやすいといえるかもしれませんね。

出典:「幼稚園・保育所等の経営実態調査」/文部科学省・厚生労働省 2013年

社会福祉法人の保育園で働くには

次に、社会福祉法人の保育園で働くにはどのようなどういったことが必要なのか紹介します。

社会福祉法人の保育園の保育士採用試験は、各園の方針や保育理念によっても内容が大きく異なるようです。ここでは一般的なパターンを説明します。

必要な資格

社会福祉法人の保育園で正社員として働くには、基本的には保育士資格が必要です。

選考方法

私立保育園の一次試験は、多くが書類選考によって行なわれるようです。
履歴書や卒業見込み証明書、保育士資格の証明書など、求められる資料をもれなく揃えましょう。

二次選考では、面接試験や実技試験、論作文試験が実施されることがあるかもしれません。保育士としての実務能力と園への適性を試されますので、自己PRなどをしっかりと整理して準備しておくとよさそうです。

社会福祉法人の保育園で働くメリットとデメリット

おもちゃで遊ぶ男の子と女の子

MIA Studio/shutterstock.com

最後に、社会福祉法人の保育園で働くメリットとデメリットを紹介します。

メリット

まずはメリットから紹介します。

理念に沿った保育がされている

それぞれの法人による理念に基づいた保育を実践しているのが社会福祉法人が運営する保育園の特徴です。

社会福祉法人の多くが運営に関する理念を設定しています。そうした理念に基づき、子どもとのかかわり方や子どもがする遊びと体験、保育士としてのふるまい方などが決められているでしょう。

こうした理念がしっかりしている保育園で働くことは、新卒保育士さんの保育観を形成・発展させるよい経験になるかもしれません。

待遇や福利厚生が整っている

大規模な社会福祉法人が経営している保育施設では、待遇や福利厚生が整っている場合があるようです。

産休・育休の制度もしっかりとしている保育園も多いため、働き続けるなかで生活環境が変わることがあっても安心といえるでしょう。
福利厚生などがしっかりしている園は保育士さんの離職率も少ない傾向にあるようです。

ただ、すべての社会福祉法人の保育園でしっかりと整っているわけではないようなので、就職するときには情報をよく調べておきましょう。

指導体制・研修が充実している

指導体制や研修が充実しているというのもメリットの一つです。
小規模運営の保育園の場合、法人の代表との距離が近いこともあります。ベテランの先輩保育士さんや代表から直接アドバイスをもらうことができるため、とくに新卒保育士さんが働きやすい環境だといえるでしょう。

一方で、大規模な保育園では研修制度が充実していることが多いようです。
こうした法人では新人研修や主任研修などに関して、系列園で働く保育士が集まって研修をすることもあるため、理念に基づく保育を学ぶ機会も充実しているかもしれません。

デメリット

次に、デメリットを紹介します。

新しいことにチャレンジしづらいことも

運営の歴史が長い園に多いのが新しいことにチャレンジしづらいこともあるかもしれません。

こうした園では独自の長い伝統があるため、「今まで、こうやってきたことだから」となかなか新しいものを受け入れる雰囲気がない場合もあるでしょう。

自身がやりたいと思った新しい保育内容がある場合は、先輩保育士さんなどに相談してから主任や園長に提案してみるなどの工夫をするとよいかもしれませんね。

保育環境が変わりづらい

社会福祉法人は非営利団体なので、新しい環境の整備などがしづらいこともあるようです。

今までなかったおもちゃや知育道具や「これがあれば仕事も楽になるだろう」と思えるグッズ、環境整備のための備品の購入に消極的なこともあるかもしれません。

そのようなときは、なぜグッズや備品が必要なのか、保育にどう活かしたいのかを整理した上で先輩保育士さんや園長などに伝え、できる範囲で購入を検討してもらうのも一つの方法でしょう。

園の方針と自身の保育観が食い違うこともある

保育理念がしっかりしているというのは、ときにデメリットになることもあるかもしれません。

研修などを通して園の理想の保育を学ぶ一方で、それが必ずしも保育士さんの保育観と一致するとは限らない場合も考えられます。

社会福祉法人で働こうと考えている保育士さんは、保育園の保育と自身の保育観が一致するかどうか注意が必要です。就職前に積極的に見学や質問を行うなどして、本当に自分が実践してみたい保育と就職希望の保育園の理念があっているか、よく確認しておくとよいかもしれませんね。

就職先は運営団体ではなく保育観を重視して選ぼう

今回は、社会福祉法人の保育園とはどういった種類や特徴があるのかや働くときのメリット・デメリットなどについて紹介しました。

現在は、株式会社運営の園も増えている一方で、依然として社会福祉法人が運営する保育園は多いようです。それぞれの園で保育理念がしっかりしていることが多いため、自身の保育観と食い違いがないか確認しながら就活することも重要になります。

運営団体に関わらず、自身の保育観とあっているかを重視し、魅力的な保育園を探して選べるとよいですね。

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