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公立の保育園に就職するには。給料、求人と採用試験、民営化ついてなど

就職活動を行う学生に例年人気の高い公務員ですが、保育士や幼稚園教諭も公立保育園や公立幼稚園に正社員として採用された場合は「地方公務員」として就職できます。公立園の保育士や幼稚園教諭の人気が高いのは、民間経営の私立園に比べると高い給与、安定した雇用形態が大きな理由です。そのぶん採用試験の難易度も倍率も非常に高く、就職を考える場合には早めに準備しておく必要があります。 今回は、公立保育園へ就職するために、押さえておきたいポイントをご紹介します。


公立の保育園に就職するには給料求人と採用試験民営化 iStock.com/kokouu

公立保育園とは。公立保育園の特徴と私立保育園との違い

公立保育園とは、各市区町村などの地方自治体が運営する保育園のことです。
民間の株式会社や社会福祉法人が運営する私立保育園の場合は、認可園以外にも、認可外保育園から小規模園、企業型保育園などさまざまな施設形態がありますが、公立保育園は基本的にすべて「保育所(認可保育園)」になります。


公立保育園の仕事と業務内容

保育士としての仕事や業務内容、保育方針は、ほぼ変わりません。 しかし、運営方針に関しては、公立と私立で大きく異なります。
私立保育園では、その園ごとに特色のある保育方針やカリキュラムを打ち出すなど、ある程度運営の自由度が高い傾向にあります。
一方で公立保育園の場合は、市区町村で統一した保育方針のもと、決められたルールを厳守して保育を行うことになります。


それぞれの園の特徴
公立保育園 各自治体で決められた保育計画に沿って、公立園間で差が出ないように運営。月案・週案などは、各自治体によって決められたカリキュラムに沿って提出。
私立保育園 保育指針を各私立保育園独自に定め、それぞれの方針に沿ったカリキュラムを運営。月案・週案などは、会議によって決定する。


公立保育園の給料や待遇

給料と収入

公立の保育士は地方公務員の給与形態に応じた待遇となる為、景気などに左右されることが少なく、収入面では安定しているといえます。 また、毎年キャリアに応じた昇給がある、賞与が保障されているなどの面から、公立保育園で勤務した場合の年収は、一般的な私立と比較して150~200万円程高い傾向にあるようです。


公立保育園と私立保育園の職種別職員1人当たり給与月額

公立保育園 私立保育園
保育士 279,797円 262,158円
主任保育士 518,548円 397,212円
施設長 594,465円 528,826円


出典:平成29年度 幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果について/内閣府


保育士の数が多い

公立保育園では、国が定める職員配置基準から、小数点以下を切り上げた数に従って保育士を確保します。 また、欠員が出た場合に備え、公務員試験に合格し登録を待つ待機職員を確保する自治体も多い為、一概には言えませんが、私立保育園よりも保育士の人数が多くなる傾向にあります。


転勤がある

公立保育園で勤務する場合、公務員として働くため、人事異動によって2~4年以内を目安に「転勤」があります。 同じ自治体内での転勤となりますが、転勤先は保育園とは限りません。公立の児童館や子育て支援センター、市役所など行政施設の保育課などに配属になる可能性もあります。


保育士の非正規率が高い

東京都福祉保健局 より発表された「東京都保育士実態調査報告書(平成30年度)」によると、東京都内の公立保育園(公設公営)で公務員として働く正規職員の割合は18.9%、一方で私立保育園(社会福祉法人)で働く正規職員の割合は39.6%と大きな差があります。
一方フルタイムで働く有期契約社員の割合を見てみると、公立保育園では35.3%、私立保育園では34.2%となっており、公立保育園では働き手の多くを契約社員でまかなっていることが伺えます。 地方自治体の多くは財務状況に応じて正規雇用の保育士では給与をまかなえないため、私立と比較して非正規率が高くなっている現状です。


出典:平成30年度東京都保育士実態調査結果/東京都福祉保健局


公立保育園への就職活動と採用試験

続いて、就職活動の流れとポイントをご紹介します。


公立保育園の就職活動の流れ

公立園の採用枠は自治体と年度で異なる

公立保育園の募集は、毎年多くあるとは限りません。 基本的には公立の保育士は途中退職が少ないため、既存の保育園で欠員が出た場合にのみ募集が開始されることになります。 そのため、自治体によっては募集が無い年度もあります。
一方で待機児童の多い大都市では基本的に毎年採用試験が実施されていることが多く、 まずは希望する自治体の公式ウェブサイトをチェックしたり、電話で担当者に問い合わせるなどして、募集があるかを確認する必要があるでしょう。


公立園の採用試験時期

募集がある場合は、自治体が開催する保育士採用選考試験を受けて、採用候補者になる必要があります。試験の時期の目安としては、5~8月頃に募集が開始され、9~11月にかけて採用試験を行うのが一般的です。


採用試験の受験資格

保育士資格を保有している、もしくは次年度4月までに取得見込みが必要です。
その他、年齢制限(多くの場合30歳前後)や、その自治体に住んでいることなど、自治体ごとに条件が異なりますので、事前に確認しておきましょう。 また、現在の受験資格は公立保育園では「保育士資格のみ」公立幼稚園では「幼稚園教諭免許のみ」ですが、公立でも幼保一体化が進んで公立の認定こども園も増加していることから「保育士資格」「幼稚園教諭免許」の両方を取得しておくほうが良いでしょう。


公立保育園の採用試験

採用試験は、一次、二次があります。


一次試験

市区町村によって多少の差はありますが、教養試験・専門試験の2つで構成される、選択式の筆記試験になります。自治体によっては作文・小論文が出されることもあります。

・教養試験
高校卒業程度の各科目(国語・数学・英語・政治・経済など)や、一般教養が問われます。

・専門試験
保育養成学校で学ぶ、保育の専門分野から出題されます。


二次試験

一次試験に合格した場合のみ、二次試験に進むことができます。 面接がメインとなりますが、ピアノ、造形などの実技や、適性試験が実施されることもあります。


採用までの流れ

配属先の希望はできない

私立園を目指す場合とは異なり、自分で希望の施設を選ぶことはできません。 採用試験に合格すると「採用候補者名簿」に登録され、保育園や児童福祉施設などの配属先が内定するのを待つことになります。


配属先がすぐに決まらない場合もある

公立園の職員枠に空きがなく、年内の退職者を見込んだ「待機職員」としての登録の場合、配属先がなかなか決まらないという可能性もあります。採用候補者名簿の登録有効期限は1年ですので、期限内に配属先が決まらない場合は、新たに採用試験を受ける必要があります。


公立保育園の民営化

公立保育園の民営化 iStock.com/real444

民営化が進む公立保育園

保育園の「民営化」とは、今まで公立(市立)で行っていたものを民間事業者が行うことをいいます。近年公立保育園の民営化の動きが活発化しており、園の数は減少傾向にあります。 就職後に自治体の保育園が民営化の対象になり、保育業務以外の部署に異動になることもあり得ますので、希望する自治体が発表している民営化の方針を確認してみましょう。


民営化の「委託」と「移管」

公立保育園の民営化には、にはいくつかの方法がありますが、大きく分けると「委託」と「移管」の2種類に分けられます。


委託

委託とは、保育園は公立のまま、保育業務を民間事業者に委託して行わせることをいいます。この委託には、更に次の2種類の委託方法があります。

・業務委託型
保育業務の一部分のみを民間事業者に委託し、自治体が作成する保育業務(保育・給食など)に関する仕様書に基づいて、民間事業者が保育事業をおこないます。一方で施設の管理は、自治体が引き続き責任もって行います。名称も「公立保育園」のまま変更はありません。


・指定管理者型
保育業務全般と施設管理業務の全般を民間事業者にお願いする制度です。 指定管理者制度では、業務を請け負う民間事業者の自由度の高さを活かした運営を行うため、保育方針や保育内容については市の方針をもとに協議・指導を行い、民間事業者が事業設計をして実施することになります。また施設の管理も、指定管理者の責任で行います。 業務委託に比べると、事業者に一定の運営権限が付与されることになりますが、保育の実施決定や保育料の決定などは自治体の権限で、自治体が実施します。


移管

対象となる公立保育園を廃止して、民間事業者が新たに私立保育園(認可保育園)として設置して保育事業を引き継いでいくことをいいます。つまり移管後は公立保育園ではなくなり、新たな私立保育園として運営されていくことになります。 移管後は、市と民間事業者の間で移管協定をおこない、以前の公立保育園で行っていた保育サービスの水準を確保して運営を行っていきます。


公立保育園の数は減少傾向にあり狭き門

公立保育園の特徴や就職活動の流れは、私立保育園とは大きく異なります。 就職先として魅力的な公立保育園ですが、その数は民営化が進んでいるため、現象傾向にあり、公立という名称でも実質の経営は民間事業者である場合も増加しています。また、異動によって保育区園以外の業務につ就くことも考えられます。
公立保育園での保育士を目指す歳には、自治体の情報のまめなチェックや、早めの採用試験対策、公務員としての業務への理解などが必要になるでしょう。

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