私立幼稚園を運営する学校法人とは?特徴や待遇、働くときのメリット

私立幼稚園の保育求人を探していると、学校法人が運営する園を見かけることもあるのではないでしょうか。今回は、学校法人とは何か、学校教育法をもとにした制度の概要と、公立園や株式会社の園との違いを解説します。また、学校法人が運営する幼稚園の特徴や、働くときのメリット・デメリットについてもまとめました。

幼稚園に行く子どもの写真

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学校法人とは

幼稚園の運営主体には、公立園を運営する地方公共団体、私立幼稚園を運営する学校法人や株式会社、社会福祉法人などが挙げられます。

ここでは、私立幼稚園の運営法人の中でも数が多い「学校法人」とはどのようなものなのか見ていきましょう。

学校法人制度の概要

学校法人とは、私立学校法にもとづいて私立の幼稚園・小中学校・高校・大学を設置し、運営する公益法人を指します。

法人ごとに工夫してより良い教育を行える自主性と、学校教育を実施して社会に貢献するという公共性を兼ね備えていることが特徴です。

文部科学省の管轄である幼稚園ですが、設置については、学校教育法において以下のように示されています。

  • 原則として公立及び学校法人立に限る。(学校教育法第2条)
  • 宗教法人等学校法人以外の主体による設置も例外的に可。(学校教育法附則第102条)
  • 構造改革特別区域では、一定の要件の下に株式会社及びNPO法人は、設置主体となることができる。

出典:幼稚園・保育所制度の比較/文部科学省より抜粋

このように、学校法人は公立(地方自治体による設置)以外に認められた、数少ない幼稚園の設置主体であることがわかります。

ただし、2002年に創設された構造改革特別区域法により、教育上又は研究上「特別なニーズ」があると地方公共団体が認める場合には、株式会社も設置できるようになっています。

準学校法人とは

準学校法人とは、私立の専修学校、または各種学校の設置のみを目的とした公益法人のことです。

専修学校は専門課程や高等課程を設けた学校のことを指し、美容学校、自動車学校、医療系やファッション系の専修学校などが当てはまります。

この準学校法人は学校法人とは区別されていますが、所轄庁の認可を受けた場合学校法人を名乗ることもできるようになっています。

出典:構造改革特別区域法における学校教育法の特例について/文部科学省

出典:幼稚園・保育所制度の比較/文部科学省

学校法人が運営する幼稚園の特徴

学校法人が運営する幼稚園にはどのような特徴があるでしょうか。

幼稚園の運営主体として最も多くを占める

2019年の文部科学省の資料では、幼稚園の設置数と在学者数において以下のような数字が出されています。

幼稚園を運営する法人の割合

このように、多くの幼稚園や認定こども園が、法人によって運営される私立園となっています。

次に、政令指定都市の設置者別学級数から私立幼稚園の設置者の割合を見てみましょう。

政令指定都市における幼稚園の設置者別学級数

※令和元年度学校基本調査より算出
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)

グラフを見てみると、政令指定都市に存在する私立幼稚園のおよそ87%を、学校法人が運営していることがわかります。

これらの数字から、幼稚園の運営主体は学校法人がほとんどであることがわかるでしょう。

しっかりとした教育目標や方針がある

学校法人が運営する幼稚園では、長年の運営経験に基づいた教育方針や理念があることが特徴です。

また、法人によってはモンテッソーリ教育への取り組み、自然環境重視、作法教室など独自の方針を打ち出す園も少なくありません。

認定こども園の運営に移行している法人もある

学校法人の幼稚園は、利用家庭のニーズに合わせて幼稚園型や幼保連携型認定こども園への移行を行っている園もあるようです。

文部科学省「私立学校・学校法人の現状について」によると、2015年には新たに497の法人が幼保連携型認定こども園の運営を開始し、2019年には参入法人数が1006となりました。

一方、幼稚園を運営する学校法人数は2015年時点で4805だったのに対し、2019年には4412に減少しています。

今後、学校法人の認定こども園への移行はますます進んでいくことが伺えるでしょう。

出典:私立学校・学校法人の現状についてp3、6/文部科学省

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)

学校法人と他の運営主体との違い

幼稚園の運営主体による違いとはどのようなものなのでしょうか。

法人制度による違い

幼稚園を運営できる法人には、学校法人に他にも社会福祉法人や株式会社などがあります。
これらの法人制度の違いを見ていきましょう。

学校法人、社会福祉法人、株式会社の違い

大きな違いとしては、学校法人・社会福祉法人は資金源が寄付金や補助金であるのに対し、株式会社は株式や債権の発行を行う必要があることです。

また、課税も対象外である学校法人や社会福祉法人は、比較的潤沢な資金があるといえそうです。

待遇面の違い

次に、厚生労働省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果」をもとに、運営主体ごとの先生たちの平均給与月額を比較してみましょう。

学校法人、社会福祉法人、公立の幼稚園の給料の違い

公立幼稚園の給与が最も高いですが、学校法人の給与は社会福祉法人などと比較するとよい傾向にあります。

また、園長などの管理職に就いた場合も昇給が期待できるため、頑張りやキャリアが給与に反映されやすいといえるでしょう。

出典:3 他の法人制度との比較表(組織、資産等)/厚生労働省

出典:幼稚園・保育所等の経営実態調査結果(収支状況等)p15/厚生労働省

学校法人の幼稚園に就職するメリット・デメリット

幼稚園で遊ぶ子どもの写真

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学校法人の特徴をもとに、保育学生さんが学校法人の幼稚園に就職する際のメリットやデメリットを紹介します。

メリット

自分に合った教育方針を探せる

幼稚園を運営する法人の中でも、最も数が多い学校法人では、多くの法人の中から自分に合った教育方針を掲げている園を探すことができるでしょう。

また、学校法人は長年の運営経験があるため、安定した教育方針のもとで保育を学ぶことができます。

新卒教諭として、まずはしっかりと保育観の基盤を作りたいと考えている人にとっては、よい職場となるかもしれません。

待遇がよい傾向にある

学校法人の平均給与は、公立園には及ばないものの、社会福祉法人などと比べると高くなっています。

また、園長などに就任した際の昇給額も大きく、幼稚園に長く勤めてキャリアを積みたいと考えている保育学生さんはやりがいを持って働けそうです。

さらに運営上の観点からで言うと、学校法人には税金の免除や充実した補助金などがあります。

つまり、学校法人の幼稚園は経営が安定していることが多く、安心して働き続けられることが多いと言えるでしょう。

保育士資格を持っていれば採用に有利な場合もある

現在、幼保連携型認定こども園へ移行している学校法人が増えてきています。

こども園では、幼稚園教諭免許と保育士資格の2つを持つ「保育教諭」の人材が求められるため、保育士資格を持っていれば採用されやすくなるかもしれません。

また、片方の資格しかもっていない場合でも、現在は特例制度のもと資格取得のための移行期間が設けられているため、働きながら資格を取る旨を伝えるのもよいですね。

デメリット

教育方針に偏りがある

法人ごとにそれぞれの教育方針を設定している学校法人ですが、独自性を出すあまり教育内容がアンバランスなものになってしまう園もあるようです。

そのため法人によっては、文部科学省が保育内容の基準として示した幼稚園教育要領とかけ離れた保育を行っている可能性もあり、学生さんは就職した際に戸惑うかもしれません。

入職前後のギャップを防ぐためにも、園のホームページや園見学でしっかりと保育の様子を見ておくことが大切となるでしょう。

今後認定こども園に移行する可能性もある

学校法人では認定こども園の運営数が増加しており、幼稚園から認定こども園へ移行する園も多いようです。
そのため当初は幼稚園を運営していても、入職後に認定こども園への移行が決定する可能性もあるでしょう。

幼稚園で働きたいというこだわりを持っている保育学生さんにとって、入職後にこのような転換があると仕事に対して不満が募るかもしれません。

このような可能性があることを理解したうえで、将来を見据えた園探しを行うことが大切となりそうです。

業務が多い園もある

法人が打ち出す教育方針によっては、書類の作成や行事の準備などで先生たちの負担が大きい園もあるかもしれません。

行事を大々的に行う園や、知育教材などの準備が大変な園では残業が増えてしまうこともありそうです。

園見学では保育士さんの様子をしっかり見ておくだけでなく、OB・OGの先輩が就職している場合は話を聞いてみるとよいですね。

関連記事:保育教諭になるためには。必要な資格や仕事内容、特例制度の利用方法

学校法人とは何かを知って、就活に活かそう

今回は、学校法人とは何か、制度や特徴について解説するとともに、他の運営主体との違いや働くときのメリット・デメリットを紹介しました。

学校法人とは、私立学校を設置することを目的とした公益法人のことで、教育機関にあたる幼稚園は地方公共団体または学校法人によって設置されることが基本となっています。

長い歴史や特有の教育方針が特徴の学校法人ですが、認定こども園への移行も始まっているため、保育教諭としての勤務も視野に入れている方にとってはよい施設かもしれません。

学校法人とは何かを知って、保育学生さんの就職活動に役立ててみてくださいね。

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