保育園や幼稚園で使われる言葉には、現場特有の言い回しや難しい専門用語がたくさんあります。保育士として働き始める前に、保育用語をマスターしておきましょう!今回は、あ行の用語を解説していきます。
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よく使う保育用語【あ】
RSウイルス感染症
RSウイルスの感染によって引き起こされる、呼吸器の感染症です。症状は発熱・鼻水が主ですが、重症になると「ゼーゼー」といった喘鳴をともなう呼吸困難に陥ることも。
何度も感染と発病を繰り返すのが特徴で、生後1歳までに全体の半数以上が、2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると言われています。感染力が強いため、保育施設での集団感染に注意が必要です。
ICT
情報を効率的に処理する技術のことで、「InformationandCommunicationTechnology(インフォメーションアンドコミュニケーションテクノロジー)」の頭文字からなる略語です。
保育現場においては、園児の登降園時間をタッチカードで自動的に記録するシステムや、職員シフトを作成してくれる管理システムなど、事務作業を簡単にするICTが開発されています。
昨今はこうした技術を活用して保育者の仕事量の削減が進んでいるようです。
愛着(アタッチメント)
特定の人と結ぶ情緒的な絆を指す言葉です。子どもの場合、保護者や特定の保育者が繰り返しお世話をしてもらい生理的欲求を満たすことによって、養育者に対して心理的な信頼関係が生まれます。
他者とのコミュニケーションの基盤となるものであり、成長の過程で他者と適切な愛着関係が結べないと、その後の社会性の発達に困難が生じる(愛着障がい)ケースも。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は古い呼称で、現在は自閉症スペクトラム障がい(ASD)に含まれます。
対人関係の難しさや興味の偏り、パターン行動といった特徴はあるものの、知的発達には遅れが見られないことが特徴です。
遊び食べ
食事の最中に食べ物で遊び始めることです。
具体的には、食材を握りつぶして混ぜる、食具を投げる、わざと落とすといった行動が挙げられます。
できることが増えたり、触覚や音、色などさまざまなことに興味を持ったりと成長の一環であるとも言われるようです。
暑さ指数(WBGT)
「湿度」「日射・輻射など周辺の熱環境」「気温」の3つの指標をもとに、熱中症の危険度を示す指数。1954年にアメリカで提唱されました。
指数が高いほど熱中症の危険性が高まるとされ、例えば日常生活においては25以上28未満が警戒、28以上31未満が厳重警戒、31以上は危険というように目安が示されています。
後追い
子どもが保護者や特定の保育者など、愛着のある人物の後を追う行動です。
対象の人物が視界からいなくなったり自分から離れて行ったりすると、その人を求めて泣くなどの反応が見られることがあります。
アトピー
かゆみのある発疹が慢性化する皮膚の病気です。
よくなったり悪化したりを繰り返すのが特徴で、かゆみがひどくなると眠れないこともあります。
アナフィラキシー
アレルギー反応によって複数の臓器や全身に症状が現れ、命に危機を及ぼす過敏反応を指し、アレルギー症状の中でも特に重篤な状態です。
血圧低下や意識障害をともなう状態をアナフィラキシーショックと呼び、早急に医療機関で治療しなければ死亡に至るおそれがあります。
アレルギー除去食
アレルギーの原因物質を摂取しないように取り除いた食事です。
本来は栄養バランスを考慮し、摂取しても問題ない量は食べる「必要最小限の除去」が推奨されていますが、集団の場である保育現場では安全のため「原因物質の完全除去」が適用されます。
よく使う保育用語【い】
以上児
満3歳以上となる、3歳児・4歳児・5歳児の総称です。
対義語は「未満児」となります。他に、「乳児/幼児」と呼称するケースもあるようです。
一語文
一つの単語からなる文。「ワンワン」「マンマ」「ブーブ」など、単語で自分の意思を伝えようとするものです。
乳児の言葉の発達は、クーイングから喃語、喃語から一語文、一語文から二語文へと段階的に進んでいくとされます。
一時保育
行政が推進する「地域子ども・子育て支援事業」によって実施される事業の一つ。一時的に家庭保育が困難になった子どもを、保育園や幼稚園などで預かり保育をすることを指します。
園に在籍していない子どもでも利用可能で、数時間~1日単位で預かるケースが多いようです。
一斉保育
あらかじめ設定したクラス共通の活動内容を、保育者主導のもとで行う保育の進め方。子どもたちは同じタイミングで一斉に同じ活動に参加することとなります。
「設定保育」と呼称されることもあり、対義語は 「自由保育」 です。
異年齢保育
異なる年齢の子どもが一緒に活動する保育の進め方。異年齢の子どもが関わることにより、相互によい影響があると言われています。
類義語に「縦割り保育」「混合保育」などがあります。
イヤイヤ期
自我の芽生えにより、激しく自己主張をするようになる時期を指します。一方で言語能力が未発達なため、「イヤイヤ」といった言葉で主張することが多いようです。
発達心理学の用語では「第一反抗期」と呼ばれます。
インクルーシブ保育
年齢や国籍、発達段階の違い・障がいの有無などによらず、すべての子どもを分け隔てなく包み込む保育。
多様なニーズを持つ子どもがともに育つ環境作りや、個々のニーズに応えるきめ細やかな支援が求められるとされます。
よく使う保育用語【う】
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うつぶせ寝
下を向いた姿勢で寝ることを指します。
子どもがうつぶせ寝をしている際、SIDS(乳幼児突然死症候群)の発症率が仰向け寝のときよりも高まることが調査によりわかっています。
そのため乳幼児は仰向けの姿勢で眠ることが推奨されています。ただ、仰向けで寝ている際も発症する可能性はあります。
よく使う保育用語【え】
ASD(自閉スペクトラム症)
言葉や表情から相手の気持ちを汲み取ったり、自分の考えを伝えたりといったコミュニケーションが不得意、特定のものへのこだわりや反復的行動といった症状が見られる、生まれつきの脳機能障がいです。
これまで自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などさまざまに呼称されてきた障がいをASDと表現することとなりました。
ADHD(注意欠如・多動症)
集中力が続かない、多動性がありじっとしていられない、衝動性が強く思いつきで行動してしまうといった症状が見られる脳機能障がいの一つです。
不注意の症状が優位に出る場合、衝動性や多動性が強く現れる場合、両方の症状がある場合など、個々によって症状の度合いは異なります。
HSC(ひといちばい敏感な子)
生まれつきとても敏感で、繊細な感覚・感受性を持つとされる子どものこと。
音や匂い、光といった刺激に一般的な人よりも敏感で、人が大勢いる場所で疲れやすいなどの傾向があります。
エピソード記録
保育中のある一場面に着目して、子どもの様子や汲み取れる心の動きを詳しく記述していく記録の手法です。
その場面を観察している保育者自身の心情や想いも同列に記載するのが特徴として挙げられます。
LD
知的発達には遅れがないものの「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」など特定の能力に困難が現れる学習障がいの一つです。
延長保育
何らかの理由で規定の時間を超えて子どもを預ける必要がある場合、保育時間を延長することができる制度です。
よく使う保育用語【お】
往還型研修
保育施設以外の外部で受けた研修の内容を保育現場に持ち帰って実践し、そこで得られたフィードバックを再び持ち寄って検討するといった往還型の取り組みです。
応答的環境
子どもからの働きかけに対し保育者が愛情を込めて応えたり、子どもに話しかけた際の返答を優しく受け止めたりするなど、相互作用のある環境。
子どもにとって周囲の大人からの応答的な反応は、愛着形成や自己肯定感の獲得に非常に大切になると言われます。
オウム返し
子どもが大人の言葉をそっくりそのまま真似して話す行動。
満1歳から2歳半頃によく見られ、子どもは発音を真似る過程で言語を獲得していく重要な時期と考えられています。
オノマトペ
ある物の様子を音で表現した言葉。
「ドタドタ」「ニャー」といった音を表す擬音語と、「キラキラ」「フワフワ」など状態を表す擬態語、「ニコニコ」「ビクビク」と感情を表す擬情語などが含まれます。
オペレッタ
対話と歌・踊りによって展開していく音楽劇の一種です。イタリア語で「小さいオペラ」という意味があるよう。
保育現場では、子どもたちが歌ったり踊ったりしながら物語を演じる表現活動を指します。