新卒保育士を目指す保育学生さんの中には、履歴書などへの自己PRの書き方が知りたい方もいるのではないでしょうか。
履歴書において、自分の仕事に対する意欲や長所をできるだけくわしく伝えたいですよね。
今回は、新卒保育士を目指す学生さん向けの、履歴書の自己PRの書き方や具体的な例文などを紹介します。
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■目次
保育士になるために重要な自己PRとは?
転職では前職で働いた園の職歴や保育経験のスキルがありますが、新卒や未経験の場合にはアピールできる保育経験やスキルがないことが多いでしょう。
そのなかで、採用担当者が新卒や未経験者のどこを見るかというと、志望者の性格や仕事に対する意欲、モチベーションの高さに注目しています。
そういったことをアピールするためにも、自己PRと長所をしっかりと定めておくことが重要になります。採用担当者がどんなことを知りたいか、その意図を知って対策をとることが大切です。
まずは、自己PRと長所とはどのようなものなのか見ていきましょう。
自己PR
自己PRとは、履歴書や職務経歴書などの応募書類に記載するもので、自分がどんな人物であるのか、どういった魅力のある人物なのかを採用者側にアピールするための文章のことを言います。
書類選考は採用試験の最初のステップになるため、この段階で提出する自己PRを含めた情報で採用担当者から会ってみたいと思われなければ、次のステップに進むことはできません。
そのため、ここで仕事での実績をアピールしたり、志望する園で働く場合にどのように活躍できるかなどをしっかりとイメージさせることが大切でしょう。
長所(短所)
自分の長所や短所を理解していることは、仕事をしていくうえで大切でしょう。
長所を理解していれば、仕事の中で自分の能力を生かして活躍のフィールドを広げることができ、また短所を理解していれば克服に向け努力し、場合によってはほかの人とカバーし合うなど対策を立てることができるからです。
長所・短所を聞くことで、保育の仕事や園の保育理念などに合っているかを判断します。応募者が自社の求める人材と合っていないと、入社後に思うように活躍できなかったり、周りの人とうまくいかなかったりして、早期退職につながってしまうことも考えられるでしょう。
自己PRと長所がどのようなものか押さえたところで、次に、新卒保育士の就活で自己PRや長所について用意が必要な場面について紹介します。
就活において自己PRや長所の用意が必要な場面
新卒保育士の就活において、自己PRや長所について用意が必要なのは、どのような場面があるのでしょうか。
自己PRや長所の用意が求められる場面には、以下のようなものがあるとされています。
- 履歴書
- 職務経歴書(エントリーシート)
- 面接での質問
履歴書と職務経歴書にそれぞれ重複して自己PR欄が設けられていることも多く、その記入内容をもとに、面接でも同様の質問がされることが想定されます。そのため、面接用に向けてより深い内容を考えておく必要があるでしょう。
では、それぞれの場面においての用意のポイントについて紹介していきます。
履歴書
履歴書の自己PR欄に書ける文字数はそこまで多くないかもしれません。
そのため、自己分析を行った上で、アピールしたい部分を簡潔に書き記す必要があります。
職務経歴書やエントリーシート
履歴書に比べ、記入欄は大きくとってあることが多いため、自己PRや長所についてより詳しく書きこむことができます。
履歴書では簡潔に書いた自分のアピールポイントや長所について、仕事でどのように役立てていきたいかなどについて、より具体的に記載することが大切といえるでしょう。
面接での質問
面接では、採用担当者が事前に記入した応募書類(履歴書・職務経歴書)に目を通した上での質問になります。
事前に書いた内容をそのままなぞって答えるのではなく、よりアピールしたい部分に絞った内容や、採用担当者の心に残るように、具体的なエピソードを交えた内容にする対策が求められるでしょう。
自己PRや長所は、場面に応じて記入や想定の仕方が異なるようです。
それぞれにふさわしい内容を事前に考え、整理しておけるとよさそうですね。
新卒保育士の自己PRに生かせる長所
新卒保育士の自己PRに生かせる長所として、以下のようなことが挙げられます。
- 責任感がある
- コミュニケーション能力がある
- 明るい
- 体力がある
- 趣味や特技がある
- 短所や失敗も前向きに捉えられる
これらについて、1つずつくわしく紹介していきます。
責任感がある
責任感の強さをアピールすることで、多少のつらいことがあっても簡単には辞めない人だ、責任の大きな仕事を任せても大丈夫だ、と判断される要素になりそうです。
たとえば、サークルの企画や進行を任されたり、実習で担任のクラスを持ったりしたときのエピソードや気持ちを書くことで、責任感のアピールにつながります。
子どもや保護者にとって、仕事に責任感があり安心できる人材の確保は、園側にとって大きなメリットと言えますね。
コミュニケーション能力がある
子どもに対してはもちろんのこと、保護者・職員同士の関わりについてもコミュニケーション能力の高さは大いに活かせるポイントと言えるでしょう。
コミュニケーション能力に長けていることを長所としてアピールできれば、採用側に円滑な人間関係を築いてくれそうな人材であるという印象付けができ、「この人となら一緒に働きたい」と思ってくれるかもしれません。
自分はどのような点においてコミュニケーションを円滑に取ることができるのか、具体的に伝えることを意識してみるといいでしょう。
明るい性格
明るく常に笑顔でいられることは、長所として大きなアピールポイントになります。
保育士さんは、子どもの保育だけでなく、保護者対応や園で働く職員同士のコミュニケーションを円滑にし、前向きに仕事に取り組む環境作りをすることも大切です。
学生時代の友人や先生からの評価や、接客業のバイトで笑顔を大切にしてきたなどといったエピソードを交えることで、より長所としての説得力を増して伝えられるとよいですね。
体力がある
体力があることも、保育士さんにとっては大きなアピールポイントになります。
園庭で走り回ったりできる年齢になると、大人の体力ではついていけないほど、子どもたちはとにかく元気いっぱいです。そこで子どもたちといっしょになって遊べたりすると、子どもたちの人気も高まりますよね。体力がある保育士さんは園にとっても大きな魅力です。
また体調管理という観点での体力も、保育士には重要なポイントです。
免疫力が弱く風邪を引きやすい子どもが多い保育園では、子どもから風邪やインフルエンザなどをもらってしまう保育士さんもしばしば見受けられます。
もともと体調を崩しにくいタイプであったり、健康管理に気を遣う方であれば、その点も自己PRとして書いてもよいでしょう。
アピールする場合は、「短大時代の2年間で病欠は0日でした」など具体的なエピソードも加えるとよさそうです。
趣味や特技がある
スポーツ、絵画、ピアノや楽器、工作、手芸…などといった趣味や特技も、大きなアピール材料になるでしょう。
ピアノを代表する楽器演奏や絵画、スポーツなどは、子どもとの遊びやコミュニケーションをとることに役立ちそうですし、手芸や工作のスキルは壁面工作や手作りおもちゃ製作などにも役立ちます。
保育とは一見つながりのなさそうな趣味や特技でも、「1つのことに真摯に打ち込んできた」という面をアピールすることができるかもしれませんね。
短所や失敗も前向きに捉えられる
失敗した経験から原因を探り、その後の成長に活かしたというエピソードも長所として伝えられるかもしれません。
たとえば、失敗したことから学んだことや失敗したことにより継続するようになった習慣、自分の性格の短所を克服したエピソードなどが挙げられるでしょう。
企業や園は、失敗をしても成長できる人材を求めています。
新卒や未経験で保育士になる場合、保育の仕事をする中でさまざまな失敗や困難も考えられるでしょう。
就職する時点では未完成であっても、学ぶ姿勢と意欲があり、失敗してもそれを自分で考え、克服したり乗り越えたエピソードは、採用担当者にとってはプラスの印象になるかもしれませんね。
新卒保育士の自己PRや長所の書き方
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ここからは、新卒保育士さんの就活のための、自己PRや長所の書き方についてくわしく紹介していきます。
自己PRや長所を伝える際の書き方は、次のような構成で書くと採用担当者に伝わりやすくなるとされています。
〈自己PRや長所の構成例〉
(1)結論、自己アピールのポイント
(2)結論を補強する具体的なエピソード
(3)今後や仕事にどう生かすか
この構成例に沿って、1つずつ説明します。
(1)結論、自己アピールのポイント
はじめに、結論と自己ピールのポイントです。
【例文】
「私の長所は〇〇です」
「私は〇〇することが得意です」
「私は〇〇に取り組んできました」
まずはアピールしたいポイントを端的に、結論として冒頭に伝えましょう。
結論から伝えることで、テーマや内容が相手に明確に伝わります。
(2)結論を補強する具体的なエピソード
次に、結論を補強する具体的なエピソードを加えます。
【例文】
「〇〇を生かして、(具体的な活動内容など)に取り組んでこのような実績(数値や客観的な評価など)を挙げました」
自己アピールは、ただ述べるだけでは自分の中だけでの私的な評価で終わってしまい、説得力が足りないかもしれません。
結論に説得力をもたせるために、具体的なエピソードや他の人の客観的な評価、数値などを挙げてみましょう。
(3)今後や仕事にどう生かすか
最後に、今後や仕事にどう生かすかを述べます。
【例文】
「〇〇を生かして、貴社(貴園)ではこのような内容について取り組みたい(働きたい)と思っています」
自己PRでは、自分のスキルや経験、長所をどのように仕事に生かすかや取り組みたい仕事が見えていることが大切です。
採用担当者は仕事に対する適性や意欲を見ていますので、前向きに取り組んでいく姿勢が表現できるとよいでしょう。
自己PRをまとめるときのポイント
次に、保育士未経験での就職活動や新卒での就活に際して、魅力的な自己PR文をまとめるときに気をつけたいポイントを紹介します。
志望する園の保育方針や理念に関すること
入職したい企業や園の種類や教育理念、特徴などを調べられる範囲で把握しておきましょう。
園によって方針や取り組んでいるものが異なります。採用情報や園のHPをじっくり読んで、その園の特色を捉えることがポイントと言えるでしょう。
園の方針や雰囲気は、後々、自分自身が長くその園に勤めることを想像し、自分にとって居心地のよい園かどうかを選ぶときに大切になります。
また企業や園側が採用面接を行う際に、志望者が自園の保育方針や保育理念に合うかどうかを気にすることも多いようです。
本格的な就活に入る前に、各保育施設の特徴や、園の雰囲気などについて調べてみましょう。自分に合う園を見つけるのは大変な作業かもしれませんが、その研究自体が上手な自己PR作成へとつながります。
園にあった自分自身の能力や長所を書く
園の方針に合った自分の長所を考えることも大切です。
園の特徴を掴んだうえで、その方針や雰囲気に自分の長所や性格のどんな部分があっているのかをピックアップします。
たとえば、子どもを多く遊ばせる園であればとことん遊びに付き合える体力やアイデア力、地域とのかかわりや行事などを重視する園であれば、製作物への取り組みや大学時代のサークルなどで培った企画力などが挙げられるでしょう。
その園の方針や理念に合いそうな経験や能力、長所などを書き出してみるのも、上手な自己PR作成につながりそうですね。
仕事への意欲や学ぶ姿勢を伝える
仕事を通じてどんな成長を目標にしているか伝えましょう。
園側が新卒の学生や未経験者に求めるスキルは、決して完璧なものではありません。また、転職者に求めるような経験やスキルではない部分を重視しています。
園が学生に求めるのは伸びしろです。就職後、知らないことをしっかりと学び取り、成長できる人材であるかどうかを重視しています。
つまり、学生側は、自己PRで学ぶ姿勢があるということを印象づけなければなりません。失敗談を語り、そこからどういうことを学び取ったのか、その後の行動などを話すとよいでしょう。
自身の体験や経験もアピールポイントに
志望前に保育についての体験や実務経験を積んでおくと、自己アピールに生かせるかもしれません。自己アピールに活用できる体験や経験について紹介します。
園見学、保育実習
園見学や採用説明会に参加することで、そこで働いている職員の話を聞くことができます。
また地域のイベントに保育園の出し物がある場合は、観覧して子どもたちの様子を見るなど、園のHPや求人情報だけではわからない部分を知ることもできるでしょう。
そういったことに積極的にかかわったという経験が、「この園に入職したい!」という気持ちのアピールにもつながります。
大学や専門学校で行う保育実習先の園を志望園にすることも、実習で学んだことを働きながらより深く実践したい、という気持ちの自己PRになるでしょう。
アルバイト、ボランティア
保育補助のアルバイトやボランティア活動に参加した経験もアピールポイントとして書くことができます。
実体験で学んだことや、そこで得た知識、感動などは、志望動機や仕事への意欲についての理由づけにもつながるかもしれませんね。
志望する園との接点を作ることで、自己PRにオリジナル性が増し、志望度の高さが採用側に伝わりやすいでしょう。
自己PRをまとめるときのポイントを押さえたところで、次に、新卒保育士の自己PRに生かせる長所について紹介します。
新卒保育士の自己PRや長所の例文
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実際に履歴書などへ自己PRや長所を記入するときに役立つ、具体的な例文を3つ紹介します。
新卒保育士を目指す保育学生さんは参考にしてみてくださいね。
【例文1】得意なスキルについての自己PR
1つめは、得意なスキルについての自己PRの例文です。
私は手芸や工作など、ものづくり全般が得意で、中学生のころから大学生の現在までコツコツ作り続けてきました。
保育実習で担当したクラスには工作を苦手とする子が多く、そういった子たちに対しては、つまづいたところからでも完成まで作れるように、折り目や貼り合わせる場所に目印のマークをつけるなど、自分なりにアレンジした作り方を提案することでサポートしました。
その工夫により、私が担当する以前と比較して完成まで作れる子が増えたと担当保育者の方から評価をいただき、このスキルをより保育の仕事に役立てたいと考えています。
貴園の教育方針にある、『子どもたちが自分ので考える力を伸ばすこと』を実現するにあたり、私は製作を通して園児のサポートをしていきたいと思います。
自分の特技を保育実習で生かした具体的なエピソードがあり、その特技を希望する園の教育方針とつなげてあることで、入職後も役立てたいという気持ちが伝わりやすい文ですね。
【例文2】短所を克服したことを伝える自己PR
2つめは、短所を克服したことを伝える自己PRの例文です。
私の短所は、頑固なことです。
自分の中で『これが正しい』ということに関しては決して曲げないところがあるため、友人たちと口論になったこともありました。しかし、大学生活やサークル活動の中で、こだわるべきは自分の基準だけでなく、友人たちや先輩たちのさまざまな視点から物事を見る、先輩にこまめに意見を聞くなど、じっくり話し合ってより視野を広げていくことの大切さに気づきました。
それ以降、コミュニケーションをとる際にはまず他の人の意見を聞くことから始め、お互いに意見の交換ができる場を設けるように注意しています。
保育においても、子どもたちや職場の方々とのコミュニケーションをとる際には、自分の意見を押し付けず、違う意見への共感や提案をし、一方的にならないよう気をつけていきたいと思います。
自分の短所を認め、結論として述べた上で、それを克服しようと思ったきっかけや今の習慣を伝えられていますね。
また短所をふまえた上で、保育ではどのようなことに気をつけたいかも述べられているので、園の方に好印象を与えられるかもしれません。
【例文3】経験や体験エピソードを交えた自己PR
3つめは、経験や体験エピソードを交えた自己PRの例文です。
私は福祉活動の一環で、児童養護施設のボランティア活動に取り組んできました。
高校3年生から現在まで4年間、夏休みのたびに活動に参加しており、子どもに愛情を注ぐ保育者の方々や児童指導員の方々の背中に、深い感銘を受けました。
また、自分もさまざまな子どもたちと接することで、年齢に応じた言葉かけの違いや子ども同士の関わりなど保育実習だけでは学べなかった援助について多く体験することができました。
貴園の子ども一人ひとりにしっかりと愛情をそそぐ保育理念を実現するために、ボランティアで学んだことを生かし子どもに愛情がしっかり伝わり、自立する力を援助する保育を行いたいと考えています。
ボランティア活動で学んだ体験談と、それをどのように保育に生かしたいかが具体的に伝わる文です。
自ら学ぶ機会を作っていたことや積極的に子どもたちと関わろうとする姿勢もわかって、とてもよいですね。
志望する園に印象を残す、魅力ある自己PRを考えよう
今回は、新卒保育士として就職活動する際の履歴書などに記載する自己PRについて、書き方のポイントや生かせる長所、具体的な例文などを紹介しました。
自己PRにエピソードを加えるときは、具体的な表現にしつつ、園の理念や求める人材を意識すると、より深みがあり魅力が伝わりやすい自己PRになるかもしれません。
自分の長所やこれまでの経験を生かして、保育士としての魅力がしっかり伝わるような自己PRを作れるとよいでいね。