保育学生さんにとって「就活の軸」とは、自分に合った園を見つけるための大切な判断基準です。施設の種類や保育方針や労働条件、福利厚生など、見るべきポイントはさまざま。就活を進めるうちに迷いや不安を感じることもあるでしょう。だからこそ、あらかじめ自分が重視したい条件を整理しておくことが大切です。今回は、園選びに役立つ「就活の軸」の考え方や園選びのポイントをわかりやすく解説します。
就活の軸とは?園選びの基準を明確にするべき理由
就活の軸とは、自分が就職先を選ぶ時に大切にしたい基準やゆずれない条件のことを指します。
一般的な就活ではよく使われる言葉ですが、保育学生さんにとってはあまり耳なじみがないかもしれません。
保育学生さんは「就活の軸=園選びの基準」と考えるとイメージしやすいでしょう。
たとえば「子どもとしっかり関われる園がいい」「生活を支えてくれる福利厚生が整っている園を選びたい」といった考え方が、就活の軸にあたります。
近年、保育現場では人材不足が続き、新卒保育士の採用をめぐる競争はとても激しくなっています。
そのため、就活は保育学生さんにとって「園に選ばれる立場」であると同時に、「自分に合う園を選ぶ機会」といえるでしょう。
複数の園から声がかかり、どこに就職するか迷うこともあるかもしれません。
納得のいく就活をして保育士としての一歩を踏み出すために、自分が大切にしたい園選びの基準を明確にしてみましょう。
【就活の軸】自分に合った園を見つける!基準を設けるポイント
「就活の軸=園を選ぶときの基準」ということはわかったとしても、実際にどのような視点で考えればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
保育学生さんは在学中、保育園や幼稚園などで実習を経験しますが、訪問できる園は限られています。
そのため、実習だけでは園ごとの違いを十分に知れず、就活では「何を基準に選べばいいのだろう」と迷ってしまうことも少なくありません。
まずは、自分に合った園を見つけるために意識するとよいポイントを整理してみましょう。
以下のように項目別に考えてみると、あなたがどのような園に就職したいかが見えてきます。
- どのような保育施設(形態や園児数)に就職したいか
- どのような保育理念・教育方針のもとで子どもに関わりたいか
- ワークライフバランス(労働条件)で何を重視したいか
- どのような福利厚生(園からのサポート)を求めているか
ここからは実際に、上記の項目別に園選びのポイントを詳しく見ていきましょう。
どんな求人があるかチェックしてみたい
【就活の軸】自分に合った園選び~保育施設の種類編~
保育の現場は施設の種類によって雰囲気や働き方が大きく変わります。
【各保育施設の特徴・向いている人・働き方のイメージ一覧】
施設の種類 | 特徴 | 向いている人 | 働き方のイメージ |
---|---|---|---|
認可保育園 | 0~5歳を幅広く受け入れ、安定した運営 | 幅広い年齢と関わりたい人 | シフト制で長期的に子どもの成長を見守れる |
認定こども園 | 教育と保育の両方を実施 | 教育・保育の両方を学びたい人 | 園児によって保育時間が変わるため、柔軟な対応が必要 |
小規模保育園 | 6~19名、家庭的な雰囲気 | 少人数でじっくり関わりたい人 | 1〜2歳中心。保護者との距離も近い |
企業主導型保育園 | 企業や企業の近隣に設置。縦割り保育の園が多い | 縦割り保育の経験を積みたい人 | 日常保育が中心。行事は少なめ |
私立幼稚園 | 教育活動中心。園ごとの特色が強い(英語・音楽・行事など) | 特色のある教育に関心がある人 | 午前は授業中心、午後は課外活動や預かり保育を担当する場合も |
認可外保育施設 | 独自の特色。夜間・24H園も | 託児など一時保育にも挑戦したい人 | 園によって勤務体制が大きく異なる |
院内保育所 | 病院内に併設。医療従事者の子どもが多い | 変則勤務に柔軟に対応できる人 | 夜勤・休日保育あり。少人数保育中心 |
ベビーホテル | 一時預かり・短時間利用が中心 | 夜間の保育経験を積んでみたい人 | 夜間や休日勤務も多い。柔軟な対応力が必要 |
上記のように施設の形態によって子どもの対象年齢や働き方が変わります。
どのような施設に就職したいかをイメージしてみるとよいですね。
自分がどの保育施設が合うのか相談したい
【就活の軸】自分に合った園選び~保育理念・教育方針編~
園を選ぶ時にチェックしたいのが、各園が掲げている保育理念や教育方針。
「子どもをどのように育てたいか」という園の考え方を表しており、園ごとに特色があります。
自分が共感できない保育理念・教育方針の園に就職してしまうと、「園の考え方が合わない」と早期離職につながることがあります。
反対に、自分が興味ある保育観と重なる部分を見つけられると、就活の軸が明確になるでしょう。
【保育理念・教育方針一覧】
・ヨコミネ式教育法
・モンテッソーリ教育
・英語教育・保育(インターナショナルスクール)
・自然保育
・縦割り保育(異年齢保育)
・音楽・リトミック教育
・レッジョ・エミリア・アプローチ
・食育を重視した保育
・スポーツ・体操重視の保育
・ICT活用型保育
自分が興味を持つ保育について考えてみましょう。※内容はあくまでも一例です。園によって異なる場合があります。
ヨコミネ式教育法
「すべての子どもが天才である。ダメな子なんて一人もいない。」という考えのもと、読み・書き・計算・体操をバランスよく取り入れ、子どもの「できる」を増やして自信につなげていくことを大切にしています。
モンテッソーリ教育
子どもの自主性を尊重し、「自分でできるように助ける」ことを大切にする方針です。
専用の教具を使いながら、生活や学びを子どもが自分で選び、
進めていけるよう支援します。
英語教育・保育(インターナショナルスクール)
英語を身近に感じられる環境をつくり、
日常のやりとりや遊びの中で自然に英語を取り入れます。
専門の英語講師が在籍する園もあり、
歌や絵本、会話を通して楽しく異文化に触れられる機会を用意しています。
自然保育
四季の変化や自然環境の中での体験を通して、子どもの感性や生きる力を育みます。
公園や森、田畑などの自然に触れ合う活動を、
積極的に取り入れることが特徴です。
縦割り保育(異年齢保育)
年齢の違う子どもたちが同じクラスで過ごし、思いやりや協調性を育みます。
小さい子は年上を見て学び、大きい子は小さい子を助ける経験を通して、
責任感や優しさを身につけることを目的としています。
音楽・リトミック教育
音楽やリズム遊びを通して、表現力や感受性、集中力を育みます。
ピアノや歌、リズム運動を取り入れ、
楽しみながら心と身体を育てます。
レッジョ・エミリア・アプローチ
子どもの主体的な遊びを重視し、探究活動や表現活動を大切にします。
絵や工作、言葉、音楽、身体を使った動きなど、
子どもが持つ “100のことば(多様な表現手段)” を尊重するのが特徴です。
食育を重視した保育
食べることを「生きる力」ととらえ、栄養や食文化への理解を育みます。
野菜の栽培や調理体験を通して、
食べ物への感謝や健康的な生活習慣を身につけることを目指します。
スポーツ・体操重視の保育
運動を積極的に取り入れ、体力づくりや挑戦する気持ちを育てます。
専門の体育講師を配置する園や、
遊びの中にマット運動・かけっこ・ボール遊びを組み合わせる園もあります。
ICT活用型保育
タブレットや電子黒板などのICT機器を活用し、時代に合った学びや表現方法を広げます。
子どもたちが楽しみながらデジタルに親しみ、
将来に必要な力を自然に身につけられるよう工夫されています。
なお、先輩保育士さんの就活体験記はこちらをチェック!参考にしてみてくださいね。
【就活の軸】自分に合った園選び~ワークライフバランス(労働条件)編~
就活では、ワークライフバランスを考えることも大切です。
【ワークバランス(労働条件)と求人の確認ポイント一覧】
項目 | 求人票のチェックポイント | 特徴 |
---|---|---|
給与 | 月給・年収の記載、有資格者手当や経験加算の有無 | 一人暮らしを考える場合、月給20万円以上が目安 |
賞与 | 年2〜3回支給が一般的 | 「賞与○ヶ月分」と記載。年2回・計3〜4ヶ月分 |
勤務時間 | 1日の労働時間、開園時間とシフト内容 | 固定勤務かシフト制かで生活リズムが変わる |
残業時間 | 月平均残業時間、行事前の残業有無 | 行事が多い園は残業多め。ICT導入園は削減傾向 |
持ち帰り仕事 | 連絡帳・指導案・製作準備の持ち帰り可否 | 「持ち帰り禁止」や「園内で完結」の方針なら負担軽減 |
休日・休暇 | 完全週休2日か/シフト制か、有給の取りやすさ | 土曜出勤の有無と代休の取り方を要確認 |
年間休日 | 120日以上だと長期休暇+週休2日制が多い | 120日以上は私生活との両立がしやすい目安 |
希望休・連休 | 希望休の提出可否、連休・長期休暇の取得可否 | 旅行や帰省を考える人は連休可否を確認 |
シフトの安定性 | 早番・遅番の頻度、固定/ローテーション | 生活リズムとの相性をチェック |
休憩の取得 | 休憩時間が実際に確保できているか | 人員に余裕ある園は休憩を取りやすい傾向 |
クラス体制 | 複数担任制か一人担任制か | 複数担任は負担分散、一人担任は裁量が大きい |
行事負担 | 行事の数と規模、準備物の分担 | 大規模園は行事多め、家庭的園は少なめ |
ICT活用度 | 連絡帳・計画・記録のICT化状況 | ICT化が進む園は事務負担を軽減 |
産休・育休・時短 | 取得実績、復帰率、時短勤務の運用 | 制度が「使える」か実績を確認 |
定着率 | 平均勤続年数、離職率 | 定着率が高い園は働きやすさが整っている |
通勤 | 最寄駅からの距離、車通勤可否 | 通勤ストレスは長期就業のネックになる |
これらを「自分が譲れない軸」と照らし合わせながら確認することで、希望の働き方をチェックしてみましょう。
希望の労働条件が叶う園を知りたい【就活の軸】自分に合った園選び~福利厚生編~
園ごとに用意されている福利厚生は内容や手厚さもさまざまです。
例えば、住宅手当や通勤手当といった生活をサポートしてくれる制度があると、長期的な勤務も視野に就職について考えられるでしょう。
就活では、「自分が重視したい福利厚生は何か」を整理してみましょう。
【福利厚生の特徴と求人の確認ポイント一覧】
項目 | 特徴 | 求人の確認方法 | 目安金額例 |
---|---|---|---|
住宅手当 | 家賃の一部を補助。地域によって金額差あり | 「住宅手当あり」と記載 | 月1~3万円程度 |
通勤手当 | 交通費をサポート | 「交通費全額支給」「上限あり」など | 上限 月1~2万円 |
奨学金返済支援 | 奨学金の返済をサポート。自治体や法人独自の制度あり | 「奨学金返済支援あり」「返済補助制度」など | 月5千円~1万円程度の補助例 |
処遇改善手当 | 国や自治体の加算制度。経験や役職に応じて支給 | 「処遇改善手当あり」「加算あり」など | 月5千円~数万円(園により差) |
昇給 | 勤務年数や評価に応じて昇給 | 「昇給あり」と記載 | 年1回・数千円程度 |
退職金制度 | 長期勤務者への保障 | 「退職金あり」「制度加入園」と記載 | 勤続3年以上で対象が多い |
育児休暇・時短勤務 | 出産後も働きやすい環境 | 「育休取得実績あり」「時短勤務可」など | ― |
健康診断・予防接種 | 職員の健康管理を支援 | 「年1回健康診断あり」と記載 | インフル補助あり |
福利厚生は「長く安心して働けるか」を左右する重要な要素です。就活時には給与だけでなく、どのようなサポートがあるのかもしっかりチェックしてみましょう。
福利厚生が充実している園を知りたい就活の軸が特にない…そんな時はどうする?
「自分が就活の軸にしたいことのイメージが浮かばない」「何を軸にしてよいかわからない」という方もいるのではないでしょうか。
そういった保育学生さん向けに、最後は、就活の軸の見つけ方を紹介します。
各園の紹介動画やホームページを確認する
園によっては公式サイトや紹介動画で、保育方針や園内の雰囲気を詳しく知ることができます。
写真だけではわからない子どもや先生たちの姿を見られるため、自分に合う園かどうかをイメージしやすくなります。
説明会や園見学の前にチェックしておくと、質問したいポイントも整理できるでしょう。
なお、保育士バンク!YouTubeチャンネルでは、実際の園の様子や保育士さんからの声を動画で紹介しています。園選びに迷った時の参考になるので、ぜひご覧ください。
新卒保育士さん向けのInstagramもチェック
さまざまな園を見る
各園を訪問したり説明会に参加したりすることで、就活の軸を決めるヒントが得られます。
多様な園を見ていくうちに、自身が魅力を持つポイントに気づけるかもしれません。
また、2つの園を比べて「働くならこちらがよいな」と決めていく、2社比較というやり方も効果があるでしょう。
さらに、就活フェアに参加すると一度に多くの園を知ることができ、効率的に情報収集ができます。
保育士バンク!新卒では全国各地で「就職・転職フェア」を開催しており、多くの園と直接話せるチャンスがあります。園選びに迷っている方や、効率的に就活したい方はぜひ活用してみてください。
近就職・転職フェアに参加してみたいネガティブな軸から考える
苦手なことや避けたい職場をイメージすることで、それらとは逆の園を探すという方法もあるでしょう。
たとえば、製作が苦手という方は、「壁面装飾や造形活動を重視していないこと」を軸にすることで働きやすい園が見つかりそうですね。
ピアノ演奏が得意でない場合は、「音楽活動が少ない」「ピアノ担当を固定していない」などの特徴がある小規模園を選ぶのも一つの方法です。
また、持ち帰り業務や残業が多い職場を避けたいなら、「ICT導入」「業務分担の工夫」がされている園を基準にするとよいでしょう。
ただ、なかなか自分の考えが整理できず、「就活が始まっているのに園選びに迷ってばかり…」という方もいるかもしれません。
そんな時は保育士バンク!新卒にご相談ください。
あなたが保育士としてしっかりキャリアを積める、成長できる園を探すサポートをさせていただきます。
保育士バンク!新卒に無料相談園選びに迷ったときは「就活の軸=園選びの基準」を考えてみよう
就活で園選びに迷ったときは、「自分が大切にしたいことは何か」という軸を意識することが重要です。
施設の種類や保育方針・教育理念、福利厚生や働きやすさなど、基準を持つことで納得のいく園に出会えるでしょう。
保育士バンク!新卒では、園の雰囲気や特徴がわかる情報や、就活に役立つサポートをしています。自分に合った園を見つけるためにお気軽にご相談くださいね。