保育実習とは。目的や一日の流れ、実習日誌の書き方や注意点など

保育実習とは、保育士養成校での単位取得のために必要な期間のなかで、学習した知識を実際の現場で体験できる実践活動のことをいいます。保育実習は、目的やねらいを明確にして目標設定をしたり、当日は自己紹介や日誌を書いたりとさまざまなことを行うようです。今回は、保育実習とはどんなものか、一連の流れをくわしく解説します。

子どもを抱っこしている若い男性と女性

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保育実習とは

保育士養成校で保育士資格を取るために、必ず行わなければいけないカリキュラムの一つである保育実習。

保育実習とはなにか、目的や目標などくわしく見ていきましょう。

目的

厚生労働省「保育士養成所における保育実習実施基準について」では「保育実習は、その修得した教科全体を知識・技能を基礎とし、これらを総合的に実践的なする応用力を養うため、児童に対する理解を通じて保育の理論と実践の関係について習熟させることを目的とする」と記述されています。

つまり保育実習は、保育士資格取得を目指す人が実際に保育現場において子どもに関わったり、保育士さんの働く様子や職場の人間関係を感じたりすることで現実的な「保育士の仕事」を短期間体験・経験することを目的としています。

そもそも保育実習を行うためには、保育士資格取得に必要な基礎資格科目を履修していることや「保育実習指導」のスクーリングを受講していることなどといったの条件を満たす必要があるようです。

目標

また保育実習の目標として、厚生労働省「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」によると

1.保育実習の意義・目的を理解する。

2.実習の内容を理解し、自らの実習の課題を明確にする。

3.実習施設における子どもの人権と最善の利益の考慮、プライバシーの保護と守秘義務等について理解する。

4.実習の計画・実践・観察・記録・評価の方法や内容について具体的に理解する。

5.実習の事後指導を通して、実習の総括と自己評価を行い、今後の学習に向けた課題や目標を明確にする。

との記述があります。

そのため、以上の目的と目標を理解したうえで、保育実習に臨むとよいでしょう。

出典:保育士養成所における保育実習実施基準について/厚生労働省

出典:指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について/厚生労働省

保育実習の種類

保育実習の内容には、いくつかの種類があります。それによって「自分が保育園で何をするのか」も変わってくるので、一つずつ確認しておきましょう。

見学実習・観察実習

保育園で子どもの姿と保育士さんの関わりを数時間見るのが、見学・観察実習です。それぞれの年齢の子どもの様子を観察しながら、実際に自分が関わった時のことも想像しておくとよいかもしれません。

見学・観察実習では、実際に子どもたちと関わったり、遊んだりすることがないため、特に指定がない場合はスーツを着用して臨むことが理想といえるでしょう。

参加実習

実際の保育の場で、保育士さんの補助などを行うのが参加実習です。保育士さんを手伝うことで、保育士としての仕事や役割、子どもへの関わり方を学びます。自分勝手な行動はとらず、指導担当者の判断を仰ぎましょう。助手的立場といっても、子どもたちにとってはこの時点ですでに「先生」という自覚を持つことが大切です。

部分実習・部分保育

1日のうち時間を区切ったその間だけ、先輩保育士さんのように実習生が自分で考え、子どもたちの前に立って声をかけたり、その場に適した指導したりするのが部分実習・部分保育です。実践的な体験を通して自分の今後の課題や問題点に気づくことが目的で、日案や指導案を書き、それに基づいて保育を行います。いくつか保育のレパートリーを考えておくと安心かもしれません。

責任実習・全日保育・完全実習

実習生が1日中クラス担任のように過ごすのが責任実習・全日保育・完全実習です。実習中、最大の山場とも言えるかもしれません。

目標とねらいを定め、子どもたちと何をして遊ぶか、何が必要かなど自分で考えます。保育活動の内容だけではなく、前後にどのような動きをするのか、他の保育士さんにはどのようなサポートをお願いするのか、遊びの導入はどうするのかなどの流れも含めた具体的な計画を立てて指導案や日案を作成・提出し、保育に臨みましょう。

保育実習の流れ

実習生さんの中には、保育実習期間だけでなくの前後にどのようなことをするのか知りたい人もいるかもしれません。保育実習前、実習中、実習後にそれぞれどのようなことをするのか、1つずつ説明します。

保育実習前

はじめに、保育実習前の流れについて見ていきましょう。

学校での事前講習

学校での事前講習授業で学んでいることが実際の現場でヒントになります。授業の内容をしっかりと理解し「自分の引き出し」にしておきましょう。

実習先から希望の保育園を選ぶ

実習を受け入れている複数の保育園の中から、自分で実習先を選びます。このとき卒園したところにするのか、自分が就職したい保育園にするのかも重要となるため、きちんと考えておきましょう。

オリエンテーションの日程を決める

日程の取り決めと準備しておくことなどの確認をするために、実習を受ける学生が直接実習先の園や施設に電話をかけます。園が実習前のオリエンテーションを実施しているかどうかを確認もしておきましょう。

オリエンテーション

実習を行う前に園や施設を訪れて、実際の保育環境を見ることができる大切な場です。担当指導者の先生に通勤時の服装や通勤方法、給食費、仕事の服装、保育中の履物などを確認しておきましょう。

このとき不明点を予めメモに書いておき解決しておくと、実習もスムーズに始められるかもしれません。また実際にどのような保育室なのか、物の位置や場所などをチェックし、その中で自分がどのような動きができるのかイメージしておくのもよいでしょう。

参考記事:「実習前のオリエンテーション。電話のかけ方や質問、持ち物や服装の確認方法/就活バンク」

実習前準備

オリエンテーションの後、具体的な実習前準備を行います。自分が何歳の子を担当するのかによって、必要な内容が変わってきます。実習中に必要なものは、余裕を持って準備しておきましょう。問題点や不明点があれば事前に保育園に確認や相談をして解決しておくとよいかもしれません。

保育実習中

次に、保育実習中の流れを紹介します。

一般的な保育園の一日の流れ

7:00   開園、順次登園、自由遊び

9:15   各クラスにて朝の会

10:00  各クラスでの自由保育・設定保育

11:15  昼食

12:30  午睡

14:30  起床、おやつ

15:30  帰りの会、自由遊び、順次降園

16:30  延長保育開始、合同遊び

19:00  延長保育終了、閉園

1日の実習時間は働く保育士さんと同じ8時間勤務、休憩時間を含めて9時間の拘束となることが多いようです。自由保育・設定保育の時間は、参加や観察をします。子どもの様子のほか、保育士さんがどのように動いているのかなどをしっかり確認しておき、実習日誌に記入できるようにしておくとよいでしょう。また部分実習や責任実習でどのようなことを実践したいか、自分はどのように動けばよいかイメージしておくことも大切です。

実習中は慣れない毎日で体調を崩すこともあるようなので、体調管理には十分気をつけましょう。また運動会や発表会などの手伝いとして土曜日、日曜日に行かなければいけないこともあるので実習期間中に行事があるかどうかも確認しておいてくださいね。

実習日誌の記入

実習日誌とは実習期間中毎日、1日の流れや自分と子どもの関わりなどを記録するもののことを言います。配られたら大切に保管し、なくさないようにしましょう。

実習日誌にはそれぞれ毎日「ねらい」と「課題」を書く欄がありますが、どちらも学びたいこと(=目的)が明確でないと、具体的な課題もねらいも見えてきません。自分はどのような保育をしたいのか、それによって子どもたちのどのような成長を促したいのかを意識しながら、レポートを書き進めましょう。

実習日誌の内容や書式は学校によって違うのですが、代表的な内容例として下記の通りです。

(1)時間
(2)環境構成
(3)本日の目標やねらい
(4)保育士の援助や配慮
(5)子どもの活動・様子
(6)実習生の気づき、子どもとの関わり
(7)1日を通して気づいたことや反省
(8)担任保育士からの指導や助言

実習日誌はその日の帰宅後に、前日の反省なども踏まえて1番~7番を記入し、翌日の朝に園長先生に提出します。その後主任の先生やクラスの保育士さんの元に流れて、上記の8番にある「担任保育士からの指導」を記入してもらうことになります。

実習日誌には感想や学んだことの他、反省点や辛いと感じたことなども記入しておくことで、先輩保育士さんからの助言がもらえたり、将来振り返ったときに役立ったりするかもしれません。

参考記事:「保育実習日誌の書き方。実習のねらいや時系列に沿った記録の書き方例/就活バンク」

指導案の記入

指導案とは、子どもに対してどのように働きかけをするのか具体的に計画するものです。実習で指導案を書くタイミングは、部分実習と責任実習をする前です。実習生が自分で考え「子どもたちとしたい遊び」の流れや呼びかけの導入、説明、必要な道具などを細かく記入して、部分実習や責任実習をする前に実習先の担任保育士さんに提出し確認してもらいます。

参考記事:「保育実習の指導案の書き方。部分実習や責任実習でのねらいや指導案の見本例/就活バンク」

日案の記入

保育園で日々行われている保育には、年間計画<月案<週案<日案という流れがあり、日案は週案を基に計画を立てる指導案です。実習で日案を書くタイミングは、責任実習の時です。
その日の保育をどのように展開するのか、1日の子どもの生活時間を見通して細かく計画しましょう。

保育実習後

最後に、保育実習後の流れをまとめました。

実習日誌を保育園に届ける

実習最終日のことを記録した日誌を後日、郵送または直接届けに行きます。どのようにすればよいのか実習最終日までに確認しておくとよいでしょう。後日届に行く場合の服装は、スーツが望ましいようです。

お礼状を書く

保育実習が終わったらすぐに、実習先へ貴重な体験をさせていただいたことへのお礼状を必ず書きましょう。実習を通して学んだことや気づいたこと、思い出に残ったこと、忙しいなか実習を受け入れてくれた保育士さんたちへの感謝などを自分の言葉で書くと、より気持ちのこもったお礼状になるかもしれませんね。

参考記事:「保育実習後のお礼状の書き方。季節毎の時候の言葉や例文/就活バンク」

保育実習をするときの注意点

ここでは、保育実習をするときに気をつけたいポイントについて紹介します。実習先が就職先になる場合も考えて、実習には準備万端で臨みましょう。

実習前のチェック

まずは、実習前に注意することを紹介します。

持ち物

一般的な保育実習の持ち物として、

  • エプロン
  • 実習日誌
  • 名札
  • 上靴
  • メモと筆記用具
  • 印鑑

などが挙げられます。

保育園によって必要なものが異なる場合もあるので、オリエンテーションのときなどに確認しておくとよいでしょう。

参考記事:「保育実習前に必要な準備とは。実習先の下調べや持ち物、事前練習など/就職バンク」

保育で使用するものの準備

実習中に使用する名札や自己紹介で使うペープサートなどを用意したり、手遊びなどの練習をしたりしておきましょう。いつまでに何を準備するかなど、スケジュールを立てておくと直前に焦らなくて済むかもしれませんね。

身だしなみ

身だしなみは、保育実習のなかで園長先生や先輩保育士さんから見られるポイントの一つになります。

長い髪は1つにまとめ、前髪は顔にかからないよう、清潔でさっぱりした髪型を心がけましょう。髪色は自然な色が基本です。明るすぎる髪色は実習までに黒に染めるか、黒に近い落ち着いた髪色に戻しておきましょう。

マニキュアやネイルは落とし、爪は自然な爪で、短く切っておきましょう。指輪などのアクセサリーは全てはずしておくことも大切です。

化粧

ノーメイクか、または自然なナチュラルメイクかは、園によって規定や考え方があるので、事前に確認しておきましょう。子どもの年齢によっては外遊びが多いため、日焼け止めはしっかり塗るとよいかもしれません。

服装

子どもにとって安全・清潔・動きやすいということをポイントに服装やエプロンを選びましょう。小さな部品や装飾は子どもの誤飲や怪我の恐れがあるので、ついていないものを選ぶか、ボタンなど脱落しそうな部品がある場合は事前にしっかり留めておくようにしましょう。

参考記事:「保育実習の通勤時の服装について。スーツや私服を着ていく際のポイントや注意点/就活バンク」

態度

保育実習における望ましい態度について紹介します。

挨拶、返事、マナー

子どもや保育士さんに対して、明るい笑顔とハキハキとした挨拶や返事を心がけましょう。そして敬語を正しく使い、相手によって言葉を噛み砕いたり、簡潔に伝わるよう工夫したりするなど丁寧な言葉遣いにすることが大切です。マナーとして、出勤時間には余裕を持ち、書類の提出期限は厳守するようにしましょう。

行動

「きびきびと迅速に」を心がけ、姿勢を正して保育に臨みましょう。また子どもたちの突然の動きにも対応できるよう地面にベタッと座らず、常にすぐ動ける姿勢でいることを意識しておくとよいかもしれません。

心構え

保育士さんは、実習生さん自体が楽しく子どもと関われているか、困っていることはないかなどを見ていることはもちろん、「子どもにどんなふうに話しかけているかな」「他の保育士や子どもたちとどのように関わっているかな」という点も実習の評価をするために見ていることもあります。

後輩たちへの影響が出る可能性もあるので、「〇〇学校の実習生は態度が悪い」などと言われないよう、学校の実習生として実習を受けるという心構えを忘れないようにしましょう。

参考記事:「初めての保育実習!ビジネスマナーは大丈夫?/就活バンク」

自分の強みを活かせる保育実習にしよう

今回は保育実習とはどのような流れで行うのかや注意点などについて紹介しました。

保育学生のみなさんは、普段は机の上で保育に関することや子どものことなど保育士になるために必要なことを学んでいることでしょう。保育実習は、それらの知識を活かし実際の保育の現場に出てみることを目的としている実践活動です。

現役の保育士さんたちがどのように子どもたちと関わっているのかなど、保育の現場に出てみないとわからないことを身をもって学ぶチャンスですから、自分の得意なことや試したいことをどんどん実践し、強みを発見・発揮できる保育実習になるとよいですね。

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